「ひっく……うっ……」

ぽろぽろと溢れ出る涙を無理矢理拭うけどそれは簡単に止まってくれなくて。

どうしてこんなことになったのかな…
最初に見た時から宮地君と月子ちゃんが想いあっていたのはわかっていたのに。

「名前、先輩…？」
「……あずさ、くん…？」

名前を呼ばれて顔をあげると

ふわり

梓君に優しく抱き締められた。

「先輩、泣かないでください…」
「………っ」

そんな彼の優しさも嬉しくて
また涙は溢れた。




梓君に助けてもらいながら寮に帰って…私は一人考え込んだ。

私は…
どうしたらいいのかな…

私は…
どうしたいのかな…

そもそもどうして私はこんなところに居るんだろう？
幼馴染みと学校から帰る途中だったのに
気付いたらこの学園の前に居て何故か転校生になっていた。

私には帰る場所があって…
でも帰り方がわからないから今を楽しんでしまおうって
考えなしに溶け込もうとしたのが間違いだったのかな…

ただの傍観者でいるつもりだったのに
弓道が出来ると言う誘いについてのってしまったのがいけなかったの？

今更…
こんなことを考えても無駄だってわかってる。
でも考えてしまう。

こんなことになるとわかっていたのなら…
こんな気持ちになるってわかっていたのなら…

私は彼を好きになったりしなかったのに…

望んでしまう。

こんなことになるなら…
いっそ出会わなければよかったと。



気分が晴れない。
沈む…
沈む…

でも…
二人の声が聞こえない…

聞きたい時に聞けなくて
聞きたくない時に聞こえる

大好きな二人の声。


もう苦しみたくないよ。
私が居ることで崩してしまった。
月子ちゃんに悲しい思いをしてほしくない。
宮地君にも、梓君にも。

元々居ることが可笑しいんだ。
早く、此処から消えてしまいたい。



そう思った時―――。

ザザッ...

頭を駆け抜けた情景。

嗚呼、なんだ…
案外簡単なことじゃないか。



同ジコトヲ繰リ返セバイインダ。