現代パロディ。女子中学生で厚くんとクラスメイト。審神者や刀剣男士は一切関係ない。ほぼ無いかもしれない名前変換機能です。
白昼夢なのかもしれない
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7月、早い部活ではもう既に2年生がキャプテンだったり、私たちの学年が中心となって活動する季節。私たちの部活はまだ3年生が勝ち残っており、次の大会の初戦が強豪校のため、引退試合かもしれない、なんて先輩たちは話している。
気温もすっかり夏と言っても差し支えなくなり、私は肩あたりまで伸びた髪をバッサリ切った。シャンプーする時に軽くなった頭に慣れるのはまだ少し先かもしれない。
「髪切ったのか」
「え、あぁ、うん」
朝のHRが始まるまで、各々が好きに過ごしている時間、右隣の厚くんは机に頬杖をつきながら話しかけてくれた。
さ、様になる…朝だからなのか、キリッと凛々しい目つきが今は少し気だるげに見える。そんな姿も様になるのだから、美形とは罪だと思う。いや、恋の力かもしれない。
実は厚くんに何か言われるだろうか、と少しドキドキしながら今日は登校してきたのだ。短くしすぎたかもしれない、でも部活では短い方が楽だしな、なんて昨夜は少し不安だった。いざ登校して話題を振られるとすごく緊張してしまう。
「へぇ…」
今まで見たことのない笑い方だった。控えめに、優しげに微笑む厚くんと、快活に笑う厚くんしか見たことのなかった私は少し驚いた。何かを企むように、意地悪く目を細める厚くんに心臓が音を立て、少し呼吸が苦しくなる。一体、何を言われるのだろうか。似合ってない?男っぽい?不安にかられる自分と、いつもと雰囲気の違う厚くんに惹かれる自分がいる。
初めて見る表情に思わず見惚れていると頬杖をついていない左手を私の方へと伸ばす厚くん。なんだろうか?少し首を傾げで左腕の動向を見守っていると厚くんの少し焼けた綺麗な手が私の髪に触れた。
「似合ってる」
さっきとは違い、柔らかく目を細めて私の顔を覗き込む厚くん。私の髪に触れていたのは一瞬で、タイミングよくHRが始まるチャイムがなる。それと同時に担任も教室の敷居を超えた。
いつも通りHRが行われる教室で、私は溶けて無くなりそうになる自分を必死に保っていた。短くなった髪では茹で蛸のように真っ赤に染まった顔も、耳も、首も隠せない。
暑い、熱い、あつくてたまらない。そんなことは決してないのに、触れられた髪が1番熱を持っている気がした。
私がアイスだったらとっくに溶けている。棒から落ちて、地面に無残に落っことされて、アリに食べられるんだ。
私ばっかり振り回されている。普通の男の子は女の子の髪に触れるのだろうか。『似合ってる』なんて、髪に触りながら言うもの?いや、絶対に言わない!
なんでこんなことするの、なんでそんなこと言うの。嬉しくて、恥ずかしくて、悔しくて、右隣の厚くんから隠れるように、触れられた髪をくしゃりと掴み、存在を消すように、隠れるように、小さくなるように下を向いて耐えた。
好き、好きです厚くん。
先生の声より、私自身の心臓の音が大きくて、気持ちを落ち着けるのに必死だった。
厚くんの思わせぶりな言動に、私はすっかり振り回されて、狂わされってぱなしだった。
あんなに恥ずかしくて、必死に厚くんから隠れたがっていたのに、少ししたらまたあの宝石みたいな綺麗な瞳に見つめられたい、なんて、すっかり骨抜きにされてしまっている。