現代パロディ。女子中学生で厚くんとクラスメイト。審神者や刀剣男士は一切関係ない。ほぼ無いかもしれない名前変換機能です。
白昼夢なのかもしれない
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球技大会、一回戦早々に負けた私たちは他のクラスの試合とまだ勝ち残っているクラスメイトの試合観戦に徹していた。
私の競技はバレー。友達がバレー部で、私は別にバレーが得意という訳ではないのだが、仲が良いから同じ競技にした。案の定、特に活躍することもなく、足を引っ張りすぎることもなくあっさりと負けた。バレー部所属の友達はハンデもあって、それほど熱心に球技大会に望んだ訳でもなかったため、バスケの応援行こう、とあっさりとバレーコートから離れた。
球技大会の今日は給食ではなくお弁当だ。各々好きな場所でお好きな人と食べている。校庭や中庭で食べている生徒が多い中、私たちは人が少ない教室でお弁当を広げようとしていた。
私たち2人しかいない教室に向かって担任から友達を呼ぶ声が。開きっぱなしの扉から「ちょっと来て」と手招きされた友達は私に「先に食べてて」と言うと職員室へ向かった。
先に食べていいという許可は出ているが、一人でお弁当を食べても寂しいので巾着の紐から手を離した。
手持ち無沙汰になり、汗で少しベタつく体に嫌気がさした。まだ5月なのに暑いな、と窓の外を睨みつける。そろそろ夏服期間に入る、早くあの薄くて白いセーラー服に着替えさせてくれ、なんて気温を恨めしく思っていると右隣から椅子を引く音が。友達が帰って来たらしい。扉は開きっぱなしなので誰か来たのか気がつかなかった。私たちの教室はわたしと友達しか使っていなかったが、両隣は割と人がいるのか騒がしい。廊下を誰かが歩く足音は聞こえるはずもなかった。
「おかえり、」
友達と信じて声を掛けながら窓から右隣へと視線を移すが、座ったのは厚くんだった。私の言葉にちょっと驚いた顔をして首を傾げながら
「ただいま?」
と厚くんは答えた。いつもは少しつり気味の目尻が目を見開いていることにより丸くなり、いつもより可愛らしい表情になっていた。
友達と間違えてしまった私は恥ずかしくなって、それを誤魔化すために慌てて話を振る。
「午後も試合あるの?」
「うん、準決。1組と」
「そうなんだ、頑張って」
当たり障りのない返事だと思うが、厚くんからの返答はない。何か気に触ることを言ってしまっただろうか、と少し眉を下げながら私をじっと見つめる厚くんを見つめ返す。
普通の男子だったら汗臭い、なんて思うはずの距離でも厚くんからはそんな不快な臭いはしなかった。相変わらず、私には厚くんがキラキラして見えている。
何秒間黙って見つめ合っていると流石に居た堪れなくなり、視線を落とそうとするが、厚くんは目を細めて歯を見せながら快活に笑った。
「頑張れそう」
それだけ短くいうと、自分の席からから立ち上がり「じゃあな」と教室から出て言った。
『頑張れそう』、それは、私が、厚くんを応援したからだろうか。
私だって、それなりに恋だとか、愛だとか、興味はある。誰々が誰々を好きとか、女子中学生にとって、大好物の話題だ。
最近気になり出した男の子にそんな風に言われてしまうと、ちょろい私は勘違いしてしまう。彼の言動一つ一つを深読みしてしまう。もしかして、私のこと好きなのではないか、なんて。嬉しい、恥ずかしい、笑いかけられると体が熱くなって、心臓が大きな音を立てる。自分の世界に深く入り込み、周りの音が聞こえなくなって、まるで自分自身が心臓になってしまった気までしてくる。
耐えきれなくなってしまった私は熱を持った顔を冷やすために机に突っ伏す。冷たくはないが、少なくとも今の自分の体よりはマシだ。
「あんな風にも、笑うんだ…」
幾分か冷静になって、先ほどの笑顔を思い出す。何となく、クールだと思っていた厚くんだったが、そんなこともないのかもしれない。まだ同じクラスになって2ヶ月も経っていない。どんな人かも正直まだ把握していない。クラスメイトとそんなに騒いでいる様子はない。他の男子と違って割と大人っぽくて静かなイメージだったが、実際はそうでもないのかもしれない。
嗚呼、彼はどんな人間なんだろうか。他には、どんな風に笑うのだろうか。知りたい、気になる、もっと話したい、でも、恥ずかしい。