現代パロディ。女子中学生で厚くんとクラスメイト。審神者や刀剣男士は一切関係ない。ほぼ無いかもしれない名前変換機能です。
白昼夢なのかもしれない
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2月14日、年に一度のバレンタインデー。今日の私のミッションは今だに達成されていない。手元にあるのは厚くんにあげようと作った手作りのチョコレート。渡すだけ、言葉にすれば簡単だけど、当たり前のように難航していた。
男子も女子も、浮き足立った今日、異性にチョコレートを渡すなんてそう簡単なことじゃない。しかも相手はあの厚くん。義理や友チョコなんて思われたくはないが、本命チョコだと思われるのも少し怖い。周りの目だって気になる。
揶揄られたらどうしよう。
なんて、ぐるぐる考えていたら既に6限が終わった。後はもう部活動だけ。
どうしよう、厚くんを呼び出すにしたってそんなの渡すことがバレバレだし、いっそのこと、友チョコのようにスマートに渡してしまおうか。
いやいやいや、折角作ったのにそんな勿体無いことしたくない。だけど、渡せないくらいなら。
隣に座る厚くんをちら、と見遣る。綺麗な横顔は、淡々と帰り支度を進めている。
もしかして、もう本命を貰っているんだろうか。
教科書を詰めるその鞄の中に、綺麗に可愛く包装された、甘いチョコレートが隠されているんじゃないだろうか。きっと渡した子は勇気を出したんだろうな。厚くんは誠実だから、ホワイトデーにもしっかりお返しするんだろうな。
意気地無し。勝手に想像して、勝手に落ち込むなよ。
HRが始まるまで、あと数分だろうか。そろそろ先生も教室に来る。残されたチャンスはほとんどない。
今、友チョコとしてさっさと渡しちゃえ。
緊張をほぐすために小さく深呼吸をした時、厚くんが鞄から綺麗に包装された何かを取り出した。
それを見て、背中からすっと熱が冷めていった。
ああ、やっぱり、想像した通りじゃん。
それ、誰から貰ったの。同じクラスの人?他のクラス?先輩?後輩?
「厚くん」
あんなにタイミングを見計らってたのに、声は震えることなくいつも通り、世間話するみたいにするする話せた。
「これあげる」
数日前から練習して、昨夜ラッピングをした。お店でどれが可愛いかなって、たくさん迷って選んだラッピング。
他の友達よりも多くチョコレートが入っていて、出来栄えのいい物を選んだ。
「いつもお世話になってるし、友チョコね」
朝のドキドキが、嘘みたい。本当に、私の意気地無しめ。
厚くんの顔は見れなかった。そっとチョコレートを厚くんの机の上に置く。なんとも哀れなチョコレートだ。
「じゃあオレからも」
俯いた私の視界の中に映るのは、さっき見た、厚くんが鞄から取り出したそれ
これは、一体。
「オレのは手作りじゃないけど、こちらこそお世話なってるしな」
私の机に置かれたそれはみんなが知ってるお菓子ブランドのもの。
「え…これ、貰ったものじゃ…?」
「違う違う、今日持ってきたんだよ」
「なんで?」
声に出してはっ、とした。
なんで持ってきたとか、そんなこと聞くって大分野暮だろ私。もしかしたら野球部で分け合う用だったのかもしれないし。だけど、あわよくば私のために持ってきてくれたとか。
本命として渡せなかったくせに、一丁前に期待だけはして、本当に私は馬鹿だ。
「渡そうと思って、今日。バレンタインに」
それは、つまり、待って。
思わず手の甲で口元をおさえる。
期待とか、そんな次元じゃなかった。
何を言えばいい。思わせぶりな厚くんに今日こそは、今日こそは何か言いたい。本当は友チョコじゃない、って言え。勇気出せ、頑張れ私。
意を決して厚くんに顔を向ける。綺麗な顔は、私とは対照的に涼しげな表情だ。
「そっちは?」
「……え?」
意地悪げに口角を上げた厚くんは言葉を続けた。
「本当に友チョコ?」
見せつけるように渡したチョコを持ち上げる厚くん。何か言おうと口を開くも、音にはならず。タイミング良く担任が教室に入ってきた。
担任が明日の連絡事項を伝えるが、全て右から左へと流れていった。暖房で火照ったよう頰を熱はなかなか引かない。先生にバレないように慌てて手元に隠したチョコレートは、私の温度で溶けてしまわないだろうか。
HRの後、帰り支度を済ませていた厚くんはさっさと荷物を持って部活を向かおうとしている。
慌てて引き止めるように声をかける。
「部活っ、頑張ってね」
「おう、そっちも」
厚くんの言葉に私も頷く。
今日の目標は達成したけど、そうか、まだ部活あるんだった。
まだしていなかった帰り支度をしようと机の横に掛かっている鞄に手を伸ばす。
「あ、言い忘れてた」
椅子から既に立ち上がっている厚くんを見上げながら首を傾げる。
言い忘れていたとは、誰に対してなのか。もしかして、私に対してか。
「オレのは友チョコじゃないから」
いつも見る快活な笑顔で私の言いたかったことを一方的に伝えると、彼はさっさと教室を出ていった。
早く帰り支度をしなきゃいけないのに、まだ暫くは時間がかかりそうだった。
男子も女子も、浮き足立った今日、異性にチョコレートを渡すなんてそう簡単なことじゃない。しかも相手はあの厚くん。義理や友チョコなんて思われたくはないが、本命チョコだと思われるのも少し怖い。周りの目だって気になる。
揶揄られたらどうしよう。
なんて、ぐるぐる考えていたら既に6限が終わった。後はもう部活動だけ。
どうしよう、厚くんを呼び出すにしたってそんなの渡すことがバレバレだし、いっそのこと、友チョコのようにスマートに渡してしまおうか。
いやいやいや、折角作ったのにそんな勿体無いことしたくない。だけど、渡せないくらいなら。
隣に座る厚くんをちら、と見遣る。綺麗な横顔は、淡々と帰り支度を進めている。
もしかして、もう本命を貰っているんだろうか。
教科書を詰めるその鞄の中に、綺麗に可愛く包装された、甘いチョコレートが隠されているんじゃないだろうか。きっと渡した子は勇気を出したんだろうな。厚くんは誠実だから、ホワイトデーにもしっかりお返しするんだろうな。
意気地無し。勝手に想像して、勝手に落ち込むなよ。
HRが始まるまで、あと数分だろうか。そろそろ先生も教室に来る。残されたチャンスはほとんどない。
今、友チョコとしてさっさと渡しちゃえ。
緊張をほぐすために小さく深呼吸をした時、厚くんが鞄から綺麗に包装された何かを取り出した。
それを見て、背中からすっと熱が冷めていった。
ああ、やっぱり、想像した通りじゃん。
それ、誰から貰ったの。同じクラスの人?他のクラス?先輩?後輩?
「厚くん」
あんなにタイミングを見計らってたのに、声は震えることなくいつも通り、世間話するみたいにするする話せた。
「これあげる」
数日前から練習して、昨夜ラッピングをした。お店でどれが可愛いかなって、たくさん迷って選んだラッピング。
他の友達よりも多くチョコレートが入っていて、出来栄えのいい物を選んだ。
「いつもお世話になってるし、友チョコね」
朝のドキドキが、嘘みたい。本当に、私の意気地無しめ。
厚くんの顔は見れなかった。そっとチョコレートを厚くんの机の上に置く。なんとも哀れなチョコレートだ。
「じゃあオレからも」
俯いた私の視界の中に映るのは、さっき見た、厚くんが鞄から取り出したそれ
これは、一体。
「オレのは手作りじゃないけど、こちらこそお世話なってるしな」
私の机に置かれたそれはみんなが知ってるお菓子ブランドのもの。
「え…これ、貰ったものじゃ…?」
「違う違う、今日持ってきたんだよ」
「なんで?」
声に出してはっ、とした。
なんで持ってきたとか、そんなこと聞くって大分野暮だろ私。もしかしたら野球部で分け合う用だったのかもしれないし。だけど、あわよくば私のために持ってきてくれたとか。
本命として渡せなかったくせに、一丁前に期待だけはして、本当に私は馬鹿だ。
「渡そうと思って、今日。バレンタインに」
それは、つまり、待って。
思わず手の甲で口元をおさえる。
期待とか、そんな次元じゃなかった。
何を言えばいい。思わせぶりな厚くんに今日こそは、今日こそは何か言いたい。本当は友チョコじゃない、って言え。勇気出せ、頑張れ私。
意を決して厚くんに顔を向ける。綺麗な顔は、私とは対照的に涼しげな表情だ。
「そっちは?」
「……え?」
意地悪げに口角を上げた厚くんは言葉を続けた。
「本当に友チョコ?」
見せつけるように渡したチョコを持ち上げる厚くん。何か言おうと口を開くも、音にはならず。タイミング良く担任が教室に入ってきた。
担任が明日の連絡事項を伝えるが、全て右から左へと流れていった。暖房で火照ったよう頰を熱はなかなか引かない。先生にバレないように慌てて手元に隠したチョコレートは、私の温度で溶けてしまわないだろうか。
HRの後、帰り支度を済ませていた厚くんはさっさと荷物を持って部活を向かおうとしている。
慌てて引き止めるように声をかける。
「部活っ、頑張ってね」
「おう、そっちも」
厚くんの言葉に私も頷く。
今日の目標は達成したけど、そうか、まだ部活あるんだった。
まだしていなかった帰り支度をしようと机の横に掛かっている鞄に手を伸ばす。
「あ、言い忘れてた」
椅子から既に立ち上がっている厚くんを見上げながら首を傾げる。
言い忘れていたとは、誰に対してなのか。もしかして、私に対してか。
「オレのは友チョコじゃないから」
いつも見る快活な笑顔で私の言いたかったことを一方的に伝えると、彼はさっさと教室を出ていった。
早く帰り支度をしなきゃいけないのに、まだ暫くは時間がかかりそうだった。