現代パロディ。女子中学生で厚くんとクラスメイト。審神者や刀剣男士は一切関係ない。ほぼ無いかもしれない名前変換機能です。
白昼夢なのかもしれない
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冬は乾燥が気になる季節、周りの友達はみんなハンドクリームを手のひらに塗りたくっている中、それほど乾燥が気にならない私は誰のクリームが1番好みの匂いか、ということにしか関心が向かなかった。
休み時間、右隣の厚くんが何やら鞄から取り出したのが見えた。ハンドクリームだ。男の子でも塗るんだな。
ふと、先日のことが思い出された。厚くんの掌がマメで皮が剥け、少し硬くなっていたのを思い出して顔に熱が集まる。頭を振って一人慌てていると私が視線に気づいた厚くん。
「ん?」
不思議そうな顔で私を見つめる。
「ぁ、えっと、ハンドクリーム塗るんだね」
「おー、特に指の付け根とかボールキャッチした時切れたら痛いから」
そう言って入念に、指の間までしっかりとクリームを塗る厚くんの手元から何故だか目が離せなかった。
爪は短く、男の子らしく少しゴツゴツしているのに、長くて綺麗な指が滑らか絡み合う様子に少しドキドキした。
「クリームつけるとさ、ベタベタにならない?私アレ苦手」
「付けすぎると確かになぁ」
「でも私ハンドクリームの匂い好きなんだよね」
「1番好きなのとかあるのか?」
「レモンかな、匂いがキツすぎなくて爽やかだし」
「お、これもレモン。嗅いでみる?」
厚くんの付けているクリームもどうやらレモンらしい。パッケージが見たことのないものだから、多分私の知っているメーカーとは異なる。
お言葉に甘えてハンドクリームを手渡して貰おうと手を差し出すと、厚くんの手が重ねられた。
反射的に手を引っ込めるより先に、私より少しベタつく手が手の甲と掌を滑る。末端冷え性で、少し冷たい指先を厚くんが温めるように撫でる。私の手よりも固くて大きい手に全身から熱が広がっていく。首、頬、耳まで熱を持ち出す。
固いマメが厚くんの手に触れているという事実を嫌でも私に実感させてくる。
体感では1分以上手と手が触れ合っていたと思うが、実際は数秒ぽっちだ。する、と自然に離れていった熱に少し名残惜しくも感じてしまった。
「どうだ?」
「…えっ!」
厚くんに差し出していた手を慌てて引っ込め、赤い顔を隠すように顔の前で握り込む。
微かに香るレモングラスの香りは私の知っている爽やかな香りとはかけ離れていた。香りは強くて、何より甘い。だけど、
「いい、香りだと…思う」
「そっか」
今の今までの出来事など無かったかのようにいつも通りの厚くん。あっさりと頷くと手際よくハンドクリームをしまい、次の授業の準備に取り掛かっている。
まさか直接ハンドクリームを手に塗られるなんていう怒涛の展開に動揺を隠してきれず用もないのにトイレに駆け込んだ。顔を覆って溢れかえる気持ちを落ち付けようとするも、香るレモングラスにさらに打ちのめされた。少し熱を取り戻した指先の温度が先程の行為を思い出させる。