短編
名前
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『俺の船に乗れよ、アキラ!』
そう言った少年は、勝手に船を出して、勝手に死んでいった。
******
彼の手配書を初めて見たのは確か17歳のとき。エースの手配書より早く出ていた記憶がある。
大きな目に、伸びた金髪は軽くウェーブを描いていた。左目の周りには昔はなかった火傷痕。「革命軍のサボ」、彼は生きていたのだ。
偶々その日が非番で2日、3日ほどの休みだったために近くの島まで行こう、と思って一人旅に出たのだ。部下もいない、正義のコートも羽織っていない私は、ただの1人の女の子だった。
全て偶然だったのだ。偶々の休暇で、偶々の旅行先で、偶々入った喫茶店に、偶々彼が居たのだ。
思わず息を飲んだ。残念ながら入口からは後ろ姿しか窺えないが、服装も、髪型も、手配書で見た通りだった。
優雅にコーヒーでも飲んでいるのかと思ったが、大量に料理を注文して大口を開けて食べている様子。後ろ姿からでもそれがわかるって相当だと思う。彼は少年の頃、あの頃と同じように大食漢のままらしい。
フッと思わず笑みが溢れたが、すぐにキュッと口元を引き締める。何度も何度も考えたが、やっぱり彼はサボなのか。でも生きているならばどうして、戻ってきてくれなかったのか…。一度海に出た男がそう故郷に戻ってくることは無いか。それにしたって手紙の一枚や二枚くらいよこしてくれても良かったじゃないか。
そう何度も考えて、いや、やっぱり似ているだけの他人ってこともあり得る。サボって名前も偶然に偶然が重なっただけかもしれない、とも思った。
結論は勿論出たことはない。怖い、真実を知るのが怖い。だけどこれは又とないチャンス。
私は真っ直ぐ彼の元へと足を進めた。正常を装って彼の目の前に座る。席は疎らだがかすかに空いている。でも私は彼と相席する事にした。私の存在に気がついたサボはパスタをつついていた手を止め、顔を上げる。手配書で見た通りの顔がそこにあった。
最初になんて声をかけよう、本人なのか聞いて確認しなくちゃ。まって、それは直球すぎるかもしれない。なんて聞けば、なんて、
「あなたに兄弟は居る?」
ある意味ストレートをかましてしまった。いや、仕方がないし取り消せない。しかも手っ取り早い質問はこれしかない。
サボは瞬きを二回、パスタを咀嚼しながら何かを考えている様子だった。
「居たかもしれねぇし居なかったかもしれない」
「?」
何だその答えは、思わずなぞなぞか何かかと思った。この期に及んで私を試しているのか?とも思ったがそうではないらしい。サボは私に対してあまり興味がなさそうだった。そんなサボに腹が立ってくる。勝手に船出して、死んだと思ったら生きてて、なのに連絡1つも寄越さない。絶対に殴ると思っていたが、本当に殴りそうだ。
しかし、サボの次の言葉で私は凍りついた。
「昔の記憶が無いんだ。だから、あんたの望む答えは出せそうに無い」
「むかしの、記憶が…無い…?」
「ああ、でも多分いなかったな。記憶は無くしちまったが、俺は故郷に帰りたくない、ってことは覚えてたから」
家族に思い入れがなかった気がするよ、そう言ってまた食事を始めた。
そのあと私はすぐに席を立って宿に戻った。気がついたらベットの上に倒れこんで、枕に顔を埋めていた。
記憶が無い。サボには記憶が無かったのだ。私のことは勿論、エースもルフィのことも覚えていない。故郷に帰りたくない、家族に思い入れがなかったって、
「なにそれ…」
やっぱりサボは死んだんだ。私の知っているサボはいない。あの日、あの時、勝手に船を出して、勝手に死んだ。なんて身勝手なやつなんだ。私とサボは赤の他人。私はルフィと血の繋がりはあっても、盃は交わしていない。所詮他人だ。もう私とサボは他人。いや、あの日から他人だったんだ。
夢を見た、幼い頃の夢。
『俺の船に乗れよ、アキラ!』
『えー、海賊でしょ?ていうかエースにも誘われた』
『はっ!?あいつ…抜け駆け…』
小さく言ったサボの言葉は聞き取れなかった。
エースもサボもルフィも海賊になると言って聞かなかったが、私は海兵になりたかった。海兵になるつもりでコルボ山にずっといた。でも、サボの船になら乗ってもいいかもと思っていたのは私だけの秘密だった。
『私が船長ならいいよ!』
『なんでだよ!俺が船長!お前は副船長だよ』
『サボ船長の下につくなら私は可愛い弟のルフィの側にいたいです』
『このブラコン!』
私がブラコンなのは今に始まったことじゃない。ずっとルフィが大切だった。ルフィが可愛くて可愛くて私は仕方がなかった。唯一無二の姉弟ってのもある。じいちゃんは忙しい人だったから。それでも私とルフィのためにわざわざフーシャ村まで足を運んでくれたりしたけど。
『気が向いたら、船に乗ってやらんこともない!』
上から目線で照れ隠し。素直じゃなかった幼少期。今も素直とは程遠いが。私の精一杯だった。それが恋だと、今になって思う。ちっぽけで、小さな恋だった。
サボが死んだ、そう聞いた時目の前が真っ白になった。
なにそれ、なにそれなにそれ。何勝手に海に出てるの。私に船に乗れって言ったじゃないか。私を乗せるつもりなんじゃなかったの。海賊になるなら、私を奪うくらいしてみせてよ。1人で行くからよ、嘘つき。
小さく芽吹いた私の恋は、確かに散った。呆気なく、風に煽られて。
それから私はすぐに海兵になることを決めた。ここにいても何も変わらない。いつか世界が平和になりますように、みんながみんな笑って暮らせますように。当時10歳の私なりの夢だった。貴族はグレイターミナルの人間を人間だとは思っていなかった。国は、彼らを捨てたのだ。そんな国で笑って暮らせる人間がいる?
サボは天竜人に撃たれたらしい。船で横切った、それだけで。この世で必要なのは強さだった。この世で力のあるのは権力だった。
目が覚めたとき、とっくにお昼は回っていた。いつ寝たのか覚えていない。ていうか寝過ぎた、頭が痛い。怠い。
無意識のうちに泣いていたせいか瞼は重く腫れぼったいし、熱を持ってる。
お風呂に入らなきゃ、顔を洗わなきゃ、着替えなきゃ。でも何にもやる気が起きなかった。どうでもよかった。
サボはやっぱり死んでいた。
遣る瀬無くて、虚しくて、寂しくて、また涙で視界が霞んでくる。もういいじゃん、たくさん泣いたじゃん。そう自分に言い聞かせても出てくるものは止まらない。また一筋、私の頬を濡らす。
一応設定
モンキー・D・アキラ(20→22)
ルフィの実姉。ブラコン。でも公私混同しない(しないとは言ってない)。
海軍本部少将→中将。クザンの部下だったが頂上戦争後は藤虎の部下に。一応どちらも尊敬はしている。
エースとサボとは盃を交わしていないので幼馴染設定。
超人系ガチガチの実の能力者(ルフィと対比の能力がいいな、って考えてこれ)全身を硬化することができる。(mhaの切島くんみたいな感じ)肉弾戦が得意だけど銃も刀も常備してる。
訓練は鬼だが部下からは慕われている様子。ブラコンであることは周知の事実。アキラの弟自慢に付き合わされた部下は数知れず。食事中に寝ることはないがガープとの会話中に同時に寝る、ということはある。
容姿は特に考えてないけど頬に縫い跡がある。傷が耳にまで及んでいて耳も若干切れたまま。(ルフィが山賊に襲われた際に助けようとして負った傷)その後シャンクスがルフィを助けてくれて泣きながら感謝した。「あなたは海賊だけど、自分の腕を犠牲にしてまでルフィを助けてくれた。本当にありがとう」「身分なんて関係ない、あなたがルフィを助けてくれただけで、その事実だけで私はあなたに感謝する理由は十分」とかなんとか言う。まぁそれでもシャンクスのことは好きでも嫌いでもない。
mhaの影響を受けすぎてヒーローみたいなキャラを作りたくてできた夢主。(メインはサボとの恋愛)人種差別はもちろん嫌いだし、犯罪も嫌い。困ってる人を助けることに理由なんている?勝手に体が動くんだから仕方ないでしょ。いい具合に自己犠牲精神。
能力者になって暫く、海賊が設置した爆弾から民間人を守るために爆弾に覆いかぶさり周囲への被害を少なくしようとした。お陰で怪我人は出なかったが本人は重傷。腹には大きな傷が出来たし胃は小さくせざる負えなくなった。幼い頃は大食漢だったが今は小食。人並みには食べれる。その場にスモーカーもいた。そしてその場にいた民間人の子供1人がアキラに憧れて海軍に入隊し、今では部下の1人。
サボとは記憶を取り戻した後、なんやかんやある。
なんやかんやのの部分を文章にできるかわからないので一応ネタだけ。
貴族同士のパーティーに潜入していたサボ(記憶を取り戻した後)はガープの孫として形だけの婿探しのためにパーティーに連れてこられたアキラと再会する。
人の気配の無い廊下で再会を果たしたサボとアキラだったが、喜んでいるのはサボだけ。アキラはサボに自分が結婚相手を探しに来たことを告げて「今は海兵じゃ無いから見逃すけど、次会ったら敵だから」と行って会場に戻ろうとするが、サボがそれを許さない。
記憶を取り戻したサボとしてはあの日からアキラに対しての時間は止まったまま。船に乗せたいと思った好きな人、その人が自分以外と結婚するのが許せないサボは衝動に駆られるままアキラに深いキスを。(一番書きたいところ)アキラは驚くも、サボの唇を噛んで突き放し、そのままビンタ。
アキラとしては記憶を無くしたままの頃に会ったあの時の傷がずっと癒えていない。
「あの時の私はもういないの、変わったの。時間が止まったままのあんたとは違う。もう二度と顔も見たく無い」とかなんとか言う。
というなんやかんや。