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混合夢
主人公の名前
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※急に終わる
side:Detective
秋から冬にかけてのこの時期、まだコートを着込むには早い。目に付いた理由はもうコートを羽織っていること、注意してみると外国人であったこと、そして何より…真っ黒だったこと。
高校生探偵の工藤新一こと、訳あって今は小学生をしている江戸川コナンは怪しげな男女二人組を伺っていた。
男の方は長い金髪を三つ編みにして一つで結わいている。服装は上質なスーツにトレンチコート。涼しげな表情の外国人だった。
女の方は金髪とも言い難い、綺麗なクリーム色の短いボブカット。癖毛がそうでないのか細かいウェーブを描いている。そして明るく薄い髪色と対照的に着ているのは真っ黒なコート。あの怪しげな組織が脳をよぎる。
まさかそんな訳ない、と言い聞かせても疑うことは止められない。この時期にコート、さらに外国人2人がいるこの場は観光地とは言い難い住宅街で、彼らが話しているのは英語。生憎在日外国人のようには見えない。
怪しくはあるが、人殺しを淡々とするあの恐ろしい組織の凶悪な人間のようには見えない。話しかけてみるか…?
「まじでアレンどこ」
「残念ながらこちらからの連絡に出なければ向こうから掛けてくることもありませんね」
「あんたアレンのお守り役なんだからしっかりしてよ…」
「私はウォーカーのお守り役ではありません!」
なんとも気の抜ける会話だがどうやら誰かを探しているらしい。英語はイギリス訛り、まぁなんにせよ、話しかける口実はできた。コナンは己の幼い容姿を生かして精一杯あどけない少年を演じる。
「お兄さん、お姉さん、誰か探してるの?」
「……?」
「なに?なんて言ったのこの子供」
「もしかして日本語わからねぇのか…?」
「ん?なんて?コニチハ〜」
「貴方それただの挨拶でしょう」
間抜けな外国人のようだ。日本語がわからないなんてやはり組織の人間である可能性は薄まっていく。いや、でもやっぱりこれは演技であるとか…?
「誰か人を探してるの?」
「おぉ!英語上手だね君!そうなんだよね、探してるの」
「白髪で顔に傷のある少年を見ませんでしたか?」
随分と奇抜な容姿をしているらしい。聞けば、方向音痴のきらいがあるらしくすぐいなくなるとか。日本人の知り合いの元に行く道中に見失ったらしい。連絡もつかず、大層困っているらしかった。
「その知り合いの人ってどこに住んでるの?」
「確かね、米花町ってところ」
「それなら僕も住んでるところだから案内できるよ!」
「しかし、それではウォーカーが…」
「もういいじゃんアレンは。あっちも住所は知ってるしなんとか来るでしょ。殺しても死なないような男だし」
なんとかなるって!女の方は楽観的なようだが男の方は渋っているらしい。迷子の少年は何というか逞しい少年らしく心配いらない、と女が言う。
「お姉さんたち名前は?僕は江戸川コナン!」
「コナン、が名前かな?私はオリヴィア・グレイ」
「ハワード・リンクです」
「よろしくね!グレイさん、リンクさん!」
知り合いと待ち合わせの喫茶店に案内中当たり障りのない会話を装いながらこの2人が何者なのか探る。リンクさんはほとんど喋らず受け答えはグレイさんがしてくれる。陽気な人の様に見えるグレイさんだが、怪しまれない様に踏み込んだことも聞いてみる。
彼女のコートの裾を引っ張り身を屈めてもらい、耳元で小さな声で聞く。
コートを触りわかったことだがこのコートもかなり上質なものだ。
「ねえねえリンクさんって義手なのかな?」
「……どうして?」
「だって本当に小さな音だけどカチャカチャって聞こえない?手袋もしてるし隠してるのかなって」
「うそ?そんな音する?でも彼は義手じゃないよ」
「そうなんだ。本人に聞くのは憚れたから教えてくれてありがとう」
「うん」
彼女の声のトーンが落ちたことはわかった。雰囲気も少し変わった。白か黒かと言われれば難しいところだが、と俺が考えているとアイコンタクトをとったらしい2人。さっきまで喋らなかったリンクさんが今度は俺に尋ねてくる。
「そういえば君はなぜ私たちにはなしかけてきたんですか」
「え?」
「私はともかく、彼女は大層怪しい見た目でしょう。君は頭が良い様ですが困っていた私たちを助ける、だなんて正義感で話しかけたのですか」
「自覚あるんだ…最初は怪しい人だと思ったけど、本当に困ってるみたいだったから…迷惑だった?」
「いえ、そんなことは」
「コナン君」
先程まで陽気にニコニコ俺と話していた彼女とは思えないほど感情が乗らない声、無表情で、俺の名を呼ぶ。背筋がゾッとした。やはり、俺の目は間違っていなかったのか。
「君が私たちに話しかけた本当の理由って」
「見つけた!!」
ゴクリ、俺が喉を鳴らして彼女の言葉を待っているそんなときに緊張感のないハスキーな少年の声が聞こえた。
声の主はフードから覗く白髪に、距離が遠いためそこまで詳しくわからないが顔に赤い傷?がある。そしてやはり黒い服に身を包んでいる。
「いや〜すみません、食品サンプルなるもに目を奪われている隙に見失ってしまって…すごいですねあの技術!本物かと思ったんですけど…どうしました?」
少年の雰囲気に流されることなく、俺たち3人の空気は凍ったままだった。少年は彼らの仲間、つまり敵が1人増えた。こんな状況でどう切り抜ければ良いのか…。
「アレン、この子」
「え、あ、えっと…大丈夫です」
グレイさんが俺について何かを確認した?少年が大丈夫というと張り詰めた空気感が和らいだ。何なんだ一体。俺が怪しまれていたのか?一体彼女はさっき俺に何を聞こうとしていた?確認することは叶わず、さっきまでの態度が嘘の様に3人は終始和やかな雰囲気で俺に話しかけてきた。(リンクさんはほとんど無言であったが)目的の喫茶店についてすぐに別れた。結局彼らが何者なのかわからなかった。
******
最近スケボーの調子が悪くて博士に預けていた。それが昨日返ってきたため今日早速試走している。人通りがあまり多くない道を走る。以前までの不調はすっかり治っているようだ。さすが博士、仕事が早い。
流れていく景色と気持ちのいい風を感じていると妙に鉄臭さを感じて眉を顰めた。スケボーから降りて辺りを見渡す。
何処からだ?この臭い。まさかな、血じゃないよな。ゆっくり元の道を戻っていく。するとより濃く鉄くさい臭いのするところに差し掛かった。この路地から…?先は暗くてよく見えない。
「……ぅ、」
小さな声だったが確かに聞こえた。ゴミ箱の影、確かにそこに人はいた。
左肩から先をなくし、元は白かっであろう白いシャツも赤黒く染まってしまっている。
「大丈夫!?」
「…ぅ、うぅ……と、…り」
「いま止血する!!」
何か言っているが生憎聞き取れない。ポケットからハンカチを取り出し、素早くキツく巻きつける。そこで違和感を覚えた。確かに鉄の臭いはする、それとは違う別の異臭もする。そもそも血ってこんなに油のように纏わりつくようなものだったか?
コツ、コツ、誰かがこちらに向かっている。ブーツからだろうか響く足音はもうすぐ近くだった。止血することに必死になっていた。まさかこの人を襲った奴かもしれない。足音のする方向にばっと顔を向ける。すると、数日前に会った怪しげな外国人だった。
「グレイ、さん…?」
「コナン君…?久しぶりだね、どうしてこんなところに?危ないから早くお家に帰りなさい」
武器らしいものを持っているようには見えない。だが、明らかにその雰囲気は堅気のものとは違う。やはり、黒の組織と何らかの関係があったのか。
「…この人をどうするの」
「どうもこうも、君には関係ない。いいから早くそいつから離れて。そして真っ直ぐ家に帰りなさい」
「殺すの?悪いことした人かもしれないけど、この国で人を裁くのは法だよ。貴方じゃない」
「何言ってんの。いいから早く、」
「……あと、ひ、ひ…り…」
張り詰めた空気の中俺とグレイさんとの言葉の応酬は続いた。どちらかというと落ち着いていた俺に対して何か焦っている様子だったグレイさん。押せばいけると思ったが血だらけの人が何か呟くと一瞬だったが、グレイさんは黙った。
「コナン君、いいかい?君が正義感溢れる少年だっていうことはわかった。でも時は一刻も争う。黙って私のいうことを聞いて」
「……そう言ってこの人殺すんでしょ?いま救急車を呼んだら間に合う」
「やめろ」
グレイさんの表情はどんどん険しくなっていく。そして焦っていく。彼女の語気が最も強くなったとき、先程から小さな声で譫言のように呟く其の人の言葉がはっきり聞こえた。
「あと、ひとり」
それが聞こえてから何か強い衝撃が身体を襲った。そこから俺の記憶は途切れた。
目を開けると目の前には見知った顔。俺と目が合うと一瞬驚いた顔をしたがすぐに頼り無さげないつもの表情に戻った。
「コナン君よかった〜!何処か痛いところはあるかい?」
「高木刑事?なんで?あれ、僕…」
「まだ気を失って1時間も経ってないよ。軽い脳震盪みたいだ」
「脳震盪…?あっ!」
思い出した、あのとき最後に見たのは凄い形相でこちらに向かって走ってくるグレイさんの姿。まさかあの衝撃はあの片腕をなくした人から…?
パトカーの中で寝ていたらしい俺は高木刑事とすぐに外に出た。手を繋ごうか?という高木刑事を断り自らの足で歩く。俺が襲われたであろう現場に2、3メートルほどの人型であっただろう機械というよりロボットか…?
「おぉ!コナン君、目が覚めたのか体調は?」
「目暮警部…うん、大丈夫だよ。このロボット…?なに?」
「何だったか、黒の、黒の…」
俺の質問に顔を顰める目暮警部の口から恐ろしい組織の名前が聞こえた。まさか、やっぱり黒の______
「黒の教団です。The Black Cultです。警部殿」
「あぁ、こりゃあ失礼しましたな、エクソシスト殿」
黒の教団、流暢な日本語でそう言ったのはグレイさんだった。日本語は話せないんじゃなかったのか。黒の教団って一体なんだ。エクソシスト…祓魔師、悪魔祓いのことだよな。
「やぁコナン君。大事なさそうだね」
「あ、ああ、うん。えっと…」
「まずは謝らせてほしい。本当に申し訳ない」
グレイさんは腰から90度以上しっかり曲げて頭を下げて謝ってくる。突然の謝罪についていくことができずに目を白黒させているの#苗字#さんが頭をあげる。
「君を危険な目に合わせてしまった。更に怪我もさせてしまうなんて…一体どう責任を取ったらいいのか…」
「どうしてグレイさんが謝るの…あ、えっと、僕まだ状況がよくわからないんだけど…」
「ああ、そうだね警部殿、彼には知る必要があります、ので少々お借りしても?」
「はぁ…どうぞ」
グレイさんに連れられ、寝かせられていたパトカーの中に再び戻る。
「話せばいろいろ長くなるんだけど、まずは私が一体何者なのかについて」
「悪い人じゃ、ないんだよね」
「悪い人?ふふ、確かにそう思われても仕方がないかも。大丈夫、悪い人じゃないよ」
私の名前はオリヴィア・グレイ、イギリス人だよ。年は18、所属は黒の教団で職業はエクソシスト。そうそう、エクソシストっていうのは悪魔祓いのこと。って言っても悪魔っていうのはAKUMAね、人の悲劇から生まれる殺戮兵器のこと。
えっとね、例えば…コナン君にお母さんいる?お父さんは?そっか、それはいいことだね。そうそう、例えばお母さんが死んじゃうとする、するとお父さんはとっても悲しいでしょ?もう一度会いたいって思うかも。そんなお父さんの気持ちに漬け込んで千年伯爵っていう私たちの敵がもう一度会わせてあげるって言う。お父さんはその手を取って、お母さんの名前を呼ぶ、それでもう伯爵の思う壺…お母さんは伯爵の作った傀儡の中に魂を入れられて、抗うことなんてできずにお父さんを殺してお父さんの皮を被って…それでもうAKUMAの完成。人を殺すだけの殺戮兵器と化す。
なにが言いたいかはわかるよ、まぁ最後まで聞いてよ。
そのAKUMAを壊せるのはイノセンス…神の結晶と呼ばれる物質だけ。そしてこのイノセンスを扱うことができるのが、エクソシスト、私のこと。いや、誰でもなれるわけじゃない。試験とかでもないよ。イノセンスっていうのは人を選ぶっていうのかな…まぁ誰にでも扱える代物じゃないってことは言っておくね。
それから…え?黒の教団?あー…まあサイコパスオカルト組織って思ってればいいよ。そこまで重要じゃないから。
そして、コナン君が見つけたあいつはAKUMA、戦闘してたんだけど途中で逃しちゃって、そこでコナン君と会ったの。人型に戻ってたから勘違いしても仕方ないね。見たでしょ?あの壊れた機械仕掛けの、あれが奴らの本来の姿。君が怪我を負ったのは私のミスだ、急いで庇ったから脳震盪ですんだけど…流石に肝が冷えたよ。
「えっと、言ってもいい?」
「どうぞ?」
「俄かには信じがたい…」
「あはは!難しい言葉使うね!まぁ化学では証明できない不思議な出来事って言えばそうだからなぁ」
そういえば君、AKUMAのオイルに触れてたけど何ともなかったね。オイル?血液(オイルだよ。あれには致死性のウィルスが含まれてて体内に入ればそのまま死ぬんだけど…。え!?早く言ってよ!!止めたけど治療続けてたじゃない。それに体内に入った様子はなかったし、ペンタクルも浮かんでなかった。それはグレイさんが悪い人に見えて…ていうかペンタクル?
「ウイルスに犯されると全身に黒いペンタクルが浮かんできて、そしてそれが全身に巡って体が石のようになってそのまま身体が脆くなって崩れて〜みたいな」
グレイさんの説明は失礼ながら拙いものであまり俺には伝わらなかった。言葉通り想像するとやっぱり現実味がなく、しかし背筋を凍らすものには違いなかった。
オイル…確かにあれは血液、というより油(オイル)に近かった。
「なんで警察が来てるの?」
「AKUMAによって死人が出ちゃったからね。路地の奥の方に一応あるよ、ホームレスの死体だけど。見に行く?」
「……うん」
警部たちにお願いしてブルーシートが掛かっていた死体を見せてもらう。僕に見せることを警部たちは渋っていたけれど、グレイさんが一言言うと何も言わずに見せてくれた。
「…本当にこの人、人だったの?」
「そうだよ。これから彼をどこかに運ぼうとしても脆いからすぐ崩れちゃう。言うなれば、死体は残らない」
グレイさんの表情にはなんの感情も感じられない。もしかしたら俺もこんな姿になっていたのかもしれないと思うと、とても恐ろしい
「うっ、」
「警部殿、ありがとうございます。コナン君やっぱり気分が優れないみたいなので」
グレイさんの気遣いで路地からすぐ出る。死体を見て、吐き気がこみ上げることなんてほとんどなかったのに。グレイさんに背中をさすってもらいながら気分はどんどん下がって行く。
「ごめん、興味ありそうだったから…」
「ううん、僕が見たいって言ったんだ。ありがとう」
申し訳なさそうなグレイさんに俺の方が申し訳なくなる。背中の手はあったかく、俺を安心させてくれる。実年齢はそんなに変わらないのに、勝手に気恥ずかしくなってしまう。
俺が落ち着くまでグレイさんは無言で俺の背中をさすり続けていてくれた。もんもんと今聞いた話、見たことについて考えているとある疑問が思い浮かんだ。AKUMAは人型を取っている、どうやって見分けるんだ?エクソシストにはAKUMAと人間の違いがわかるとか…?
「ねぇ、AKUMAと人間の違いってなに?」
「え、全然違うってこと説明した筈…」
「そうじゃなくて、どうやって見分けてるの?」
「ああ、そういうことね。これ知ってる?」
「ローズクロス…」
グレイさんはコートの胸元にあるローズクロスを指差していった。曰く、黒の教団はヴァチカンの下にあり、ローズクロスは教皇の象徴。AKUMAはこのローズクロスを狙って襲って来るという。
「そんな危険なこと…!」
「だから私たちに近づいてくる人間はみんな疑ってるの。人間不信にはなりそうだけど…。手っ取り早いし便利だし、君にも出会えた」
「え…?」
ウィンクしながら呑気なことを言うこの人の本性がわからねぇ。俺に出会えたって…、なるほどそういうことか。ローズクロスを胸元で掲げているグレイさんたちに近づいた俺、それを彼女たちはAKUMAじゃないかと疑っていたのか。俺が黒づくめに反応したように向こうも同じように思っていたのか。
「『君が私たちに話しかけた本当の理由って』」
「殺すため?」
「違うよ…」
「知ってる」
あの時のグレイさんの言葉を繰り返したらあの時聞けなかった続きが聞こえた。本人は笑いながら話すが、物騒だ。
粗方の捜査が終わったのか路地に入っていた警察官が疎らだが出てきた。そしてあの時見かけなかったグレイさんの仲間だという人たちも合流しだした。その中にリンクさんとアレンさんはいない。聞こうと思ったが、彼女は忙しそうにしていたため大人しく車のそばで、大人が仕事のために忙しなく動いている様子をボーっと眺めていた。
この世に化学で証明されないことは信じずにいた。幽霊なんて、怪奇現象なんて、そんなことありはしない。警察側からイカれたオカルト集団、なんて悪口が聞こえた。いつもの俺なら賛同していたが、彼女が嘘をついているようには見えないし、何よりあのホームレスの死体がとても恐ろしかった。作り物だと言ってしまえばそれまでだが、そんな風には思えない。彼女とAKUMAの戦闘を間近で見たわけではない。気を失っていたわけだし。とてもじゃないが太刀打ちできそうにないあの人の形に近い殺戮兵器と対峙していたら、死体も残らず死んでいた。考えたくもないが。
俺は高木刑事の運転でパトカーに乗って毛利探偵事務所まで送ってもらった。一応頭を打って気絶してるし大事をとって病院も行くようにと勧められた。外傷はないが。そしてグレイさんも探索部隊、というらしい役職の仲間を数人連れて送ってくれた。保護者に挨拶させてほしい、と押し切られ一緒に階段を上る。
扉を開けると蘭が一目散に駆け寄ってきて俺を抱きしめた、とても照れるがされるがままにしているとグレイさんも事務所の中に進み、おっちゃんに頭を下げる。
「ローズクロス…!あんた、黒の教団の…」
「ご存知でしたか」
「えぇ、まぁ。頭を上げてください。確かにコナンは怪我をしたかもしれないが、貴方のおかげで、生きてる…!これ以上の幸運はない!」
蘭にとったら大げさに聞こえるかもしれないが俺からしたら確かにこれ以上の幸運はない、と妙に納得してしまった。
なぜおっちゃんが黒の教団について知ってるんだ?と思ったが確かにこの人昔警察官だったから知ってんのか。昔何があったかは知らないが、現場にいた警察官とは態度が全く違うことには驚いた。
「外傷はありませんが、念のため明日病院に連れて行って上げてください。医療費はもちろんお支払います。領収書はコムイ・リーでお願いします」
コナン君も、お嬢さんもまたどこかで。そういうとあっという間にグレイさんは帰って行った。我に帰り、急いで外に出るも、もう彼女たちが乗ってきた車は数十メートル先を走っていた。
side:Exorcist
長時間のフライトの末、やってきたのは極東の島国、日本。私は初めてこの国の地を踏む。
「はぁ〜飛行機怖かった…。いつ墜落するんじゃないかってハラハラしたよ」
「あはは、僕らの仕事の方が命がいくつあっても足りないじゃないですか」
「えっ、アレンってそんなブラックジョーク言うんだ…」
年下エクソシストの全く笑えないブラックジョークにドン引きしつつ、空港内に足を進める。今回の任務にエクソシスト2人、監査官1人、現地にもう着いている探索部隊が数名いる。
「ウォーカー!君はまた余所見を…!前を向きなさい!」
「あっ、これ知ってます?抹茶味!ちょっと苦いけど風味が上品らしいんですよね…食べたい」
「聞きなさい!」
「賑やかな任務になりそうだわ…」
アホくさい監査官とアレンのやり取りは無視して私は一歩先を歩く。今回の任務はイノセンス目的じゃない。アレンの方舟を日本からも繋ぐために赴いた。
日本は頭が硬い連中が多くて第二次世界大戦が終わるまで支部すら置かれていなかった。いろんな宗教が入り乱れていて自由度が高くどんな宗教にも寛容、といえば聞こえはいいが実際は信仰心の低さが玉に瑕だ。私たちがいくらヴァチカンの名の下の組織であっても胡散臭さは否めないだろう。ヨーロッパほど行動がしやすいとは思えない。
「オリヴィア!これ同じ抹茶なのに字が違います!なんでですか?なんの違いがあるんですか?なんて読むんですか?」
「こちらは"ずんだ餅"と書いてありますね…抹茶より淡い色」
「ずんだ餅は緑の豆をすり潰したものを団子に塗して…ていうかお土産は後!早く歩け!!」
幸先不安すぎる。
******
今から私たちが行くのは東都の米花町、犯罪率が日本で最も高い町。この町に日本支部は構えている。
他国の支部とは違い、表では喫茶店を経営し、裏…というか地下では研究やサポーターの情報交換、万が一AKUMAに遭遇した時のセーフハウスになっているらしい。中国のアジア支部同様、不可視の結界が張ってあるらしくAKUMAは感知できない。たしか陰陽師?とかいう術師が昔は強い力を持ってたらしいし日本の結界系は化学の力を超えた逸品とのこと。
「資料に書いてあった通り日本ではあんまりローズクロス通用しないからお金は現金を直接支払わなきゃいけない」
「交通機関までもとは厄介な…」
「ほーんとめんどくさいよね、あと日本人せっかちすぎない?歩くのめっちゃ早くね?」
空港からタクシーに乗ろうとしたのだが教団側から渡された額が駄賃かよ、という具合のケチさだったために電車を余儀なくされた。いつもなら飛び乗り乗車もしくは顔パス(団服パス)で改札を抜けられるのに今回は切符もしっかり買った。
クレイジーな満員電車に乗って人の波に揉まれ、改札どこだよ、と立ち止まると迷惑そうに速足の日本人に睨まれ散々だ。もっとゆっくり歩けよサラリーマン、会社は逃げないよ。
「さっきからアレン喋ってないけど気分悪い?」
「……ウォーカー?」
「まって、アレンいないじゃん」
監査官の顔色がどんどん悪くなって行く。いや、しょうがないよ…ここは日本の東都、別名コンクリートジャングルだ。ここはジャングル、遭難しても仕方がなかった。
来た道を戻ったり、進んだりしながらアレンを捜索するが一向に見つからない。連絡もつかない。バカなの?
「まじでアレンどこ」
「残念ながらこちらからの連絡に出なければ向こうから掛けてくることもありませんね」
「あんたアレンのお守り役なんだからしっかりしてよ…」
「私はウォーカーのお守り役ではありません!」
そんな漫才かのようなやり取りをしていた私たちに話しかけて来たのは、眼鏡をかけた少年だった。事前の打ち合わせ通り、私たちは彼と会話をする。
「お兄さん、お姉さん、誰か探してるの?」
「……?」
「なに?なんて言ったのこの子供」
「もしかして日本語わからねぇのか…?」
「ん?なんて?コニチハ〜」
「貴方それただの挨拶でしょう」
アレンにはAKUMAと人間を見分ける左目がある。しかし監査官と私にはそんな便利なものはない。日本人は殆どが英語を話せないと聞く。そこで私たちの考えた作戦はこう、『No speak Japanese』作戦。なんかダセい…概要は日本語で話しかけてくるAKUMAに対して英語でしか応答しないエクソシスト、その隙をついて仕掛けてくるであろうAKUMAにカウンターを仕掛けるという何ともおつむの足りない作戦だ。三徹していた監査官と任務疲れで半分寝ていた私には何の非もないと思いたい。
ていうかあざとい子供だな〜って思ったけど小さい声で話した日本語結構口悪くない?AKUMAの可能性あり。
どうやら彼の名前は江戸川コナン、英語が堪能な怪しい少年だった。ただの親切なのか私たちを殺すためなのか彼は喫茶店まで案内してくれると言う。観察してみると喫茶店が日本支部だと知っている様子はない。最後まで化けの皮が剥がれなかったら結界に弾かれてそこから戦闘かな、と考えていると益々彼は私が怪しむ言葉をかけてくる。
「ねえねえリンクさんって義手なのかな?」
「……どうして?」
「だって本当に小さな音だけどカチャカチャって聞こえない?手袋もしてるし隠してるのかなって」
私は直接見たことはないけれど監査官が鴉であることは知っている。彼が腕に暗器を隠していることも知っている。出会ってまだ数分で普通そんなことまで気づくか?
対処できるように監査官に口を閉じてもらっているのは作戦の一つだ。
「うそ?そんな音する?でも彼は義手じゃないよ」
生憎私には監査官の腕から暗器の擦れる音など聞こえない。そもそも暗器なのだから存在がバレるような音を出すか?あの監査官がそんなヘマをするようには思えない。ただの鋭い少年か、AKUMAの能力か。
監査官が勝負に出たがこのくらいの年齢の子にそんな言い方する?と思ったがティモシーにもこんな感じだった確かに。この少年はずいぶん聡明なようで監査官を打ち負かそうとしていた。8割、私は彼がAKUMAであろうと思っていたため直球で言葉をかけようとした。
「コナン君、君が私たちに話しかけた本当の理由って」
少年は顔の色をどんどん無くしていく。最後まで幼気な少年の演技か?まだ隙を狙ってるのか?
決定的な言葉を吐き出そうとしていたその時、私たちの探し他人の声が聞こえた。
「いや〜すみません、食品サンプルなるもに目を奪われている隙に見失ってしまって…すごいですねあの技術!本物かと思ったんですけど…どうしました?」
「アレン、この子」
「え、あ、えっと…大丈夫です」
この際アレンの説教は後だ。監査官は完全に怒ってる。アレン、君は本当に反省したほうがいい。
空気の読めないアレンに尋ねると瞬きを二回、合点がいったように少年に目を向けるアレンが間抜けな登場した時点で何となくわかっていたが、やはり少年は人間だった。
安堵と疑っていたことへの申し訳なさとで喫茶店まで優しく接していたが変な顔をされた。解せぬ。
その後無事に方舟を日本支部と繋ぎ、支部から日本の現状を聞いた。頻繁に私たちが駆り出されるAKUMAの数はヨーロッパに比べると少ないらしいがやはり被害は出ているらしい。地方よりやはり東都などを中心に名古屋、京都、大阪、そして福岡で比較的被害が大きいとのこと。しかしその昔陰陽師が活発であった頃の名残もあって結界術やらなんやら日本独自の能力をもつ術師が日本中で今も活動はしているらしい。そして日本支部の研究やサポーターはその出なのでなんとか被害は抑えられていると。
明日は先に日本に降り立っていた探索部隊と合流して東都のAKUMA殲滅に向かう私と、新幹線に乗り名古屋、関西、飛行機で福岡まで飛んで順次方舟を繋げる役目をアレンと監査官、と言う形で別れることとなった。
東都以外に支部は置いてないがその他の都市には大きな術師の家系があるらしくそこをつなげて行くらしい。サポーターたちや研究者たちからの信頼も厚く、アジア支部で絶対的権力を持つチャン家とも懇意である、とのことなので方舟を繋げるに当たって問題はないと本部からの御達しだ。
打ち合わせ後、来客用の部屋で各々休み朝食は本部の人間揃って食べたがアレンたちは食べ終わると同時に身支度は昨夜に終わらせていたのだろう、そのまま駅に向かった。
私たちの方はと言うと支部の裏口に(表は喫茶店であるため)8時に集合ということで一旦別れた。
エクソシストはイノセンスさえあれば戦闘に必要なものはないため準備もクソもない。紅茶を一応店主をやっているサポーターに入れてもらい、ティーブレイクしてから裏口に向かった。日本はイギリスと違って本当になんでも美味しい。紅茶もイギリスに負けず劣らず美味しかった。(ジェリーの料理はまた別、そもそも彼女はイギリス人ではない)
******
「Hello. アレン、そっちの調子はどう?」
「今から福岡行きの飛行機に乗るところです」
「了解。こっちは東都を粗方調査済みだから今日が終わったら一旦本部に引き上げる」
「わかりました。では、気をつけて」
「うん、そっちもね。またね」
アレンと別れてから数日。着々と東都のAKUMAを破壊しつつ、被害数などの調査も進めていた。やはり米花町に数は集中しており治安の悪さも関係しているのだろう。色々調べていると、とある組織に行きついた。正式名称は無く、仮に我々は黒の組織と呼んでいる。端的にいえば裏の人間たちがするような極悪非道な行いをしている組織らしく、協力者(ブローカー)がいてもおかしくないとのこと。黒の組織については支部を通して黒の教団とも関わりがある、日本の警視庁のとある部署から直接教えてもらった。閑話休題。
黒の組織については教団に持ち帰り上に掛け合う、と言うことにした。そしてアレンと通話でざっくりと向こうの現状、こちらの現状を伝え合い通話を切る。
今日は初日に調査に入った米花町をもう一度見回って終了、ということになる。とある部署の情報網によると人気の少ない廃工場の付近で3人ほど行方不明者が出ているらしい。そしてその近辺に人の腕にそっくりな欠けた真っ黒な彫刻が見つかった…と。完全にAKUMAによる仕業だと私たちは踏んでいる。初日に取り逃がしたか。
「此処ら一帯ホームレスの住処になってますね」
「どうします?」
「堂々と私が歩いてれば襲いかかってくるでしょ…んん?あれ、警察じゃない?」
私たちの進む先、30メートル程先に『keep out』のテープ。また被害者?
探索部隊と目を見合わせそのまま構うことなく足を進める。勿論テープも構わず潜ってしまう。
「えっ!?ちょっと!一般人は…!」
「大丈夫、大丈夫〜」
やっぱり浸透してないローズクロス。仕方のないこととはいえ厄介だな、と思いながら下っ端であろう警官に軽く手を振ってかわす。
ブルーシートの周りには何人かの警官。スーツ姿だし多分地位も高いと見た。探索部隊にブルーシートの下について任せ、警官と話をする為し足を進める。
「えっ!?だ、誰ですか!?一般人は入っちゃダメですよ!?」
「生憎一般人ではないので。この場で1番偉いのは貴方かな?」
「ローズクロス…」
気弱そうなグレーのスーツの男を躱し、トレンチコートを着こなす貫禄のある警官に近づく。私の胸元を見て小さな声で呟いた言葉に私は口角を上げた。
「初めまして、エクソシストのオリヴィア・グレイです」
「こ、これはこれは…捜査一課の目暮です」
「エクソシスト…?あっ、同じく高木です…」
軽く自己紹介を交わし、こちらの任務について軽く話す。そしてここいらのホームレスの不審死についても聞き、捜査一課の方々に私たちの説明をしてもらう。目暮警部はローズクロスは知っているようだが黒の教団については曖昧。警官の間で交わされる「オカルト…」「頭がおかしい…」なんて耳の痛い悪口に苦く笑う。
「この変死体が悪魔の仕業ぁ?」
「また突飛な…」
「悪魔ではなくAKUMAです」
教団と関わりのない一般人なら当然の反応に何度繰り返てきたかわからない訂正を入れる。
その後ホームレスを殺したAKUMAを見つけるも取り逃がし、コナン君と遭遇、という展開。
警視庁公安部とはなにやら親密な関係なご様子。警察庁はわかりませんが。
ぶつ切りここで終わり。