エースの6歳年上の姉。海軍本部中将で青キジの直属の部下。掲げる正義は「仁こそ正義」詳しくはネタにて。
冬来りなば春遠からじ【完結】
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※film Zの内容を少し含みます。
ルフィたち一行は、ドック島にサニー号を預け海列車に乗りセカン島に向かった。温泉で身を隠すルフィたちの元に元海軍大将のクザンと遭遇し、ゼットがセカン島にいることを知った。
「麦わら」
「なんだ」
「あー、その、なんだ」
「?なんだよ?」
歯切れの悪いクザンに対してルフィは怪訝な表情になる。何を言い淀んでいるのか、ルフィ以外の船員の視線もクザンに集まる。頭をかき、数秒黙り込んだクザンであったが、口を開いた。
「あの戦争の後、ある中将が事故死した。遠征で、白ひげの残党に襲われってのが報道されたが…知ってるか」
「…ああ、ジンベエから聞いた」
「そうか…まぁ、俺も驚いたんだが、あいつは生きてる」
「そうか。………ん?…えっ!?」
「航海続けてりゃ、どこかで会えるだろうさ。…って聞いちゃいねぇな」
クザンからの情報にルフィは目を見開いて固まった。名前も、関係性すら伏せられた人物の生存は、ルフィにとって驚くべきことだった。
レイリーの元での修行中、ジンベエから伝えられた。『お前さん、青剣のレギーナを知っておるな?』その先の言葉は信じがたいことだった。あのレギーナが死んだなんて。
ルフィはレギーナのことが嫌いではなかった。祖父のガープ同様、暴力的だし、口は悪いし、鬼みたいに強い女であったが、その手はとても暖かかった。鍛錬中に意識を飛ばし、いまだにぼんやりする頭だ目を開けるとダダンの家に横たわっていた。自分の身体に優しく触れる誰か。その誰かに目を向けると、レギーナがルフィの身体に包帯を巻いていた。キツすぎないように包帯を結んだ。
ルフィが起きているのを見て驚いた顔をしたレギーナだったが、小さく笑った後『まだ寝てな』と頭を撫でられた。その手は思ったより暖かくて、優しかったことを、ルフィは今でも胸に秘めている。
少なからず、レギーナが死んだことはショックだった。が、クザンからの朗報。レギーナは海軍、いずれ敵対するかもしれない、そう思っていた人。幼い頃は一度も勝てた試しがなかったが、今は違う。
サボに連れられ、ある島に立ち寄った麦わらの一味。訪れたのは長閑な島。森が多く、細々と島民が生活する小さな島。秋島らしく、食べ物が美味しいらしい。
たまたま上陸した島で、サボとルフィは再会を果たした。単独行動をしていたサボは、海を渡る足がなく、麦わらの一味の厚意により目的の島まで乗船させてもらう運びとなった。
いずれその島にルフィを連れて来たいと思っていた、と語ったサボ。島特有の特産品も美味しいということでルフィは二つ返事で了承したのだった。
一味がサボに連れてこられた家は島の裏の方、完全に森に囲まれた医者の住む家らしい。
「参謀総長、お待ちしておりました」
「ああ」
出迎えてくれたのはナース服に身を包んだ壮年の女性。サボを参謀総長と呼んでいることから、彼女は革命軍の人間なのだろう。
ただの民家のように見えたが、この島にとっては医療機関の一つなのかもしれない。
民家の中に通された一味は応接室に通され茶菓子でもてなされた。
ドリンクはコーヒーで、大皿に盛られた茶菓子は特産品の果物の果汁が生地に練り込まれたクッキー。
それを一味全員の目の前へと運んでくれたのは精巧な青年。名をエルマーと言った。
チョッパーの医者なのか?という質問に少し驚いた顔をすると、「いいや、ただの雑用だ」と苦笑した。大怪我を負った際に治療をしてもらい、大恩を感じ、ドクター達の手伝いを買って出ているらしい。
「革命軍の戦士ではないの?」
「それも違うな、支援みたいなことはしてるけど」
ロビンの問いにも首を横に降るエルマー。そんなエルマーに大袈裟に肩を竦めたサボ。
どうやら、なにか訳ありの様子だった。
サボが話題を逸らすようにルフィと一味に声を掛けた。
「ルフィ、ちょっと向こうで話したいことがあるんだが…船長を借りるが、いいか?」
「兄弟水入らずで話したいこともあるだろ」
「そうそう、随分久しぶりなんでしょ?時間は有限よ」
「ありがとう」
「おう!行こうぜサボ!」
クルー達からの了承を得たサボはルフィを手招き、応接室から廊下へと出る。
こっちだ、とサボにつられるルフィは階段を登り、ある部屋の前へと案内された。
「……ルフィに、合わせたい人がいるんだ」
「おれに?誰だよ」
「…会えばわかるよ」
優しく微笑んだサボにルフィは首を傾げ、扉を開けんとするサボの背中を見つめる。
ノックもなしに部屋を訪問する男を非難する人間は、この場にはいない。
「ちょっと、いい加減ノックすることを覚えてよ」
「気配でわかってるからいいだろ、別に」
「あのねぇ……、あら、お客さん?エルマーじゃないし、どなた?」
デリカシーのないサボの行動を咎めるのは部屋の住人だった。2人の言い合いがヒートアップする前に部屋の住人が、サボの後ろに隠れて見えないルフィに気がついた。
サボに隠れて部屋の主が見えなかったルフィもまた、身体をずらして対面する。
部屋の主は黒いスキニーと白のシャツ、の上から肩にかけるようにオーバーサイズのグレーカーディガンを羽織っていた。ベッドに腰掛け、本を読んでいたらしいその人は、顔半分に大きな火傷跡が残っていた。
「ルフィ………」
「…レギーナ、」
己と再会した時のように、ルフィは泣きだすだろう、と予測していたサボは静かに名前を呼び合う2人に怪訝な顔をした。
レギーナは一瞬目を見開いたものの、顔から表情を消し、ルフィの方は麦わら帽子の唾で表情が伺えない。
もしや、失敗したか?とサボが顔を青くさせているとルフィがレギーナへと足を踏み出した。
突拍子も無い弟だが、突然レギーナに殴りかかるようなことはしないだろう、とサボは思い、静観する事にした。
「レギーナ、…おれ、レギーナに言いたいことあったんだ」
「……なに?」
レギーナの顔からは、相変わらず感情が読めない。が、心なしか握りしめている拳は少し震えている気がした。
レギーナとしての心情は、己の判決を待つ、死刑囚のような諦観の念が含まれていた。ルフィになにを言われても、レギーナには傷付く資格などない、レギーナは自分に、そう何度も言い聞かせた。
あの日、あの場所で、レギーナには決して出来ないことをやってのけたルフィ。愛しい実弟が、命を懸けて守った末弟。
レギーナは己を守るために、顔を少し俯かせた。
小さく息を吸う音が聞こえる。ルフィは、一体どんな風に、私をなじるのか、レギーナはその時を待った。
「……ありがとう」
「…………え、」
「昔、俺たちの事すんげぇ厳しく鍛えてくれただろ、ありがとう」
「……っ、なんでっ…」
「レギーナのお陰で、俺強くなれたから!あの頃はレギーナにも、エースにもサボにも、一回も勝てなかったけど、あれがなかったら俺はもっと大切なもん失くしてたかもしんねぇ。だから、ありがとう」
ルフィの思わぬ感謝に、レギーナは片手で口元を覆う。
瞳を覆った水の幕は、重力に逆らう事なくポツ、と開きっぱなしの本にシミを作った。
ルフィたち一行は、ドック島にサニー号を預け海列車に乗りセカン島に向かった。温泉で身を隠すルフィたちの元に元海軍大将のクザンと遭遇し、ゼットがセカン島にいることを知った。
「麦わら」
「なんだ」
「あー、その、なんだ」
「?なんだよ?」
歯切れの悪いクザンに対してルフィは怪訝な表情になる。何を言い淀んでいるのか、ルフィ以外の船員の視線もクザンに集まる。頭をかき、数秒黙り込んだクザンであったが、口を開いた。
「あの戦争の後、ある中将が事故死した。遠征で、白ひげの残党に襲われってのが報道されたが…知ってるか」
「…ああ、ジンベエから聞いた」
「そうか…まぁ、俺も驚いたんだが、あいつは生きてる」
「そうか。………ん?…えっ!?」
「航海続けてりゃ、どこかで会えるだろうさ。…って聞いちゃいねぇな」
クザンからの情報にルフィは目を見開いて固まった。名前も、関係性すら伏せられた人物の生存は、ルフィにとって驚くべきことだった。
レイリーの元での修行中、ジンベエから伝えられた。『お前さん、青剣のレギーナを知っておるな?』その先の言葉は信じがたいことだった。あのレギーナが死んだなんて。
ルフィはレギーナのことが嫌いではなかった。祖父のガープ同様、暴力的だし、口は悪いし、鬼みたいに強い女であったが、その手はとても暖かかった。鍛錬中に意識を飛ばし、いまだにぼんやりする頭だ目を開けるとダダンの家に横たわっていた。自分の身体に優しく触れる誰か。その誰かに目を向けると、レギーナがルフィの身体に包帯を巻いていた。キツすぎないように包帯を結んだ。
ルフィが起きているのを見て驚いた顔をしたレギーナだったが、小さく笑った後『まだ寝てな』と頭を撫でられた。その手は思ったより暖かくて、優しかったことを、ルフィは今でも胸に秘めている。
少なからず、レギーナが死んだことはショックだった。が、クザンからの朗報。レギーナは海軍、いずれ敵対するかもしれない、そう思っていた人。幼い頃は一度も勝てた試しがなかったが、今は違う。
サボに連れられ、ある島に立ち寄った麦わらの一味。訪れたのは長閑な島。森が多く、細々と島民が生活する小さな島。秋島らしく、食べ物が美味しいらしい。
たまたま上陸した島で、サボとルフィは再会を果たした。単独行動をしていたサボは、海を渡る足がなく、麦わらの一味の厚意により目的の島まで乗船させてもらう運びとなった。
いずれその島にルフィを連れて来たいと思っていた、と語ったサボ。島特有の特産品も美味しいということでルフィは二つ返事で了承したのだった。
一味がサボに連れてこられた家は島の裏の方、完全に森に囲まれた医者の住む家らしい。
「参謀総長、お待ちしておりました」
「ああ」
出迎えてくれたのはナース服に身を包んだ壮年の女性。サボを参謀総長と呼んでいることから、彼女は革命軍の人間なのだろう。
ただの民家のように見えたが、この島にとっては医療機関の一つなのかもしれない。
民家の中に通された一味は応接室に通され茶菓子でもてなされた。
ドリンクはコーヒーで、大皿に盛られた茶菓子は特産品の果物の果汁が生地に練り込まれたクッキー。
それを一味全員の目の前へと運んでくれたのは精巧な青年。名をエルマーと言った。
チョッパーの医者なのか?という質問に少し驚いた顔をすると、「いいや、ただの雑用だ」と苦笑した。大怪我を負った際に治療をしてもらい、大恩を感じ、ドクター達の手伝いを買って出ているらしい。
「革命軍の戦士ではないの?」
「それも違うな、支援みたいなことはしてるけど」
ロビンの問いにも首を横に降るエルマー。そんなエルマーに大袈裟に肩を竦めたサボ。
どうやら、なにか訳ありの様子だった。
サボが話題を逸らすようにルフィと一味に声を掛けた。
「ルフィ、ちょっと向こうで話したいことがあるんだが…船長を借りるが、いいか?」
「兄弟水入らずで話したいこともあるだろ」
「そうそう、随分久しぶりなんでしょ?時間は有限よ」
「ありがとう」
「おう!行こうぜサボ!」
クルー達からの了承を得たサボはルフィを手招き、応接室から廊下へと出る。
こっちだ、とサボにつられるルフィは階段を登り、ある部屋の前へと案内された。
「……ルフィに、合わせたい人がいるんだ」
「おれに?誰だよ」
「…会えばわかるよ」
優しく微笑んだサボにルフィは首を傾げ、扉を開けんとするサボの背中を見つめる。
ノックもなしに部屋を訪問する男を非難する人間は、この場にはいない。
「ちょっと、いい加減ノックすることを覚えてよ」
「気配でわかってるからいいだろ、別に」
「あのねぇ……、あら、お客さん?エルマーじゃないし、どなた?」
デリカシーのないサボの行動を咎めるのは部屋の住人だった。2人の言い合いがヒートアップする前に部屋の住人が、サボの後ろに隠れて見えないルフィに気がついた。
サボに隠れて部屋の主が見えなかったルフィもまた、身体をずらして対面する。
部屋の主は黒いスキニーと白のシャツ、の上から肩にかけるようにオーバーサイズのグレーカーディガンを羽織っていた。ベッドに腰掛け、本を読んでいたらしいその人は、顔半分に大きな火傷跡が残っていた。
「ルフィ………」
「…レギーナ、」
己と再会した時のように、ルフィは泣きだすだろう、と予測していたサボは静かに名前を呼び合う2人に怪訝な顔をした。
レギーナは一瞬目を見開いたものの、顔から表情を消し、ルフィの方は麦わら帽子の唾で表情が伺えない。
もしや、失敗したか?とサボが顔を青くさせているとルフィがレギーナへと足を踏み出した。
突拍子も無い弟だが、突然レギーナに殴りかかるようなことはしないだろう、とサボは思い、静観する事にした。
「レギーナ、…おれ、レギーナに言いたいことあったんだ」
「……なに?」
レギーナの顔からは、相変わらず感情が読めない。が、心なしか握りしめている拳は少し震えている気がした。
レギーナとしての心情は、己の判決を待つ、死刑囚のような諦観の念が含まれていた。ルフィになにを言われても、レギーナには傷付く資格などない、レギーナは自分に、そう何度も言い聞かせた。
あの日、あの場所で、レギーナには決して出来ないことをやってのけたルフィ。愛しい実弟が、命を懸けて守った末弟。
レギーナは己を守るために、顔を少し俯かせた。
小さく息を吸う音が聞こえる。ルフィは、一体どんな風に、私をなじるのか、レギーナはその時を待った。
「……ありがとう」
「…………え、」
「昔、俺たちの事すんげぇ厳しく鍛えてくれただろ、ありがとう」
「……っ、なんでっ…」
「レギーナのお陰で、俺強くなれたから!あの頃はレギーナにも、エースにもサボにも、一回も勝てなかったけど、あれがなかったら俺はもっと大切なもん失くしてたかもしんねぇ。だから、ありがとう」
ルフィの思わぬ感謝に、レギーナは片手で口元を覆う。
瞳を覆った水の幕は、重力に逆らう事なくポツ、と開きっぱなしの本にシミを作った。