あれから6年…
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あたしは乾の番号を出すと、通話ボタンを押した。
最初、こんなやつ好きにならないだろうと、そう思っていた。
データデータ言って、しまいには妙な汁まで作り出した。
それでも、
ふとした時に優しくて、誰よりもあたしの支えになってくれた。
見えないところで努力して、一生懸命なところを誰にも見せなかった乾。
だからあたしも見ないフリをした。プライドを傷つけたくなかったから。
あたしの気持ちを伝える事で、余計な考え事をさせたくなかった。
それが、あたしが乾にできる、精一杯だと思っていた。
「乾?」
『伝説のハジケリストか。どうした。』
「今どこにいる?」
『まだ駅だが…。』
「今行くから待ってて!」
あたしは走った。次にいつ会えるか分からない。
「やぁ。」
「あのね、あたしね、」
いざ本人を前にすると、何から話していいのか分からない。
それを察したのか、乾が口を開いた。
「さっき、手塚と不二と何やらもめていたみたいだな。」
「寝てたんじゃないの?!」
「寝ていながらでも話は聞ける。」
なんてタチが悪いんだ。そういえば、乾はそういうヤツだった。
そして、淡々と話を続けた。
「お前は二人からの思いもよらない告白に困惑し、俺に相談しにきたんだろう。二人の気持ちは知っていたが、まさかあんな勝負をするなんて、俺でも予想外だった。」
「うん。」
「それで、もう気持ちは決まったのか?」
「うん。」
あたしはあの頃に戻ったような、そんな錯覚に陥った。
乾の、眼鏡を直す仕草が、昔と全然変わってなくて。
優しい話し方も、全然変わってなくて。
だから…
「あたし、乾のことが好き。今も、昔も。」
「……。」
沈黙がしばらく続いた。乾は何も言わない。あたしは、何も言えない。
先に沈黙を破ったのは、やっぱり乾だった。
「これは予想外だな…。伝説のハジケリストの中の俺のポジションは、良き相談相手だと思っていた。だから…」
“恋愛対象としては見ていなかった。”
この言葉が、あたしの頭に浮かんだ。
フラれるのは覚悟していた。言えればそれでいいと、そう思ってた。
はずなのに、
胸が苦しくなってきた。
鼻の奥が、ツンとしてきた。
でも、乾から出た言葉は違っていた。
「恋人というポジションにつける確立は、極めて低いと思っていた。」
たくさんの人が行き交う駅の広場。だけど、不思議と乾の声だけがはっきりと聞こえる。
視界はぼやけてきてしまったけれど。
「飲み会に伝説のハジケリストが来ると聞いたとき、俺がお前に再び恋に落ちるのは想定内の範囲だった。だが、お前はあの頃から、俺の想定外のことをいとも簡単にやってのける。」
「え…?」
「これから、6年間分の伝説のハジケリストのデータを取らなくてはな。」
そう言って、乾はあたしの手を掴んだ。
大きくて、冷たい手。
「乾、それって…」
「帰ろう。電車がなくなる。」
あたしの手を引っ張って、改札に向かって歩きだした。
乾の耳が赤いのは、寒さのせいじゃない。そう思うと、さっきたまっていた涙がすっと引いた。
乾があたしの6年間分のデータを取るなら、あたしは乾に、6年間たまったこの気持ちをぶつけていこう。
久しぶりに二人で乗った電車の中で、そう誓った。
終わり
最初、こんなやつ好きにならないだろうと、そう思っていた。
データデータ言って、しまいには妙な汁まで作り出した。
それでも、
ふとした時に優しくて、誰よりもあたしの支えになってくれた。
見えないところで努力して、一生懸命なところを誰にも見せなかった乾。
だからあたしも見ないフリをした。プライドを傷つけたくなかったから。
あたしの気持ちを伝える事で、余計な考え事をさせたくなかった。
それが、あたしが乾にできる、精一杯だと思っていた。
「乾?」
『伝説のハジケリストか。どうした。』
「今どこにいる?」
『まだ駅だが…。』
「今行くから待ってて!」
あたしは走った。次にいつ会えるか分からない。
「やぁ。」
「あのね、あたしね、」
いざ本人を前にすると、何から話していいのか分からない。
それを察したのか、乾が口を開いた。
「さっき、手塚と不二と何やらもめていたみたいだな。」
「寝てたんじゃないの?!」
「寝ていながらでも話は聞ける。」
なんてタチが悪いんだ。そういえば、乾はそういうヤツだった。
そして、淡々と話を続けた。
「お前は二人からの思いもよらない告白に困惑し、俺に相談しにきたんだろう。二人の気持ちは知っていたが、まさかあんな勝負をするなんて、俺でも予想外だった。」
「うん。」
「それで、もう気持ちは決まったのか?」
「うん。」
あたしはあの頃に戻ったような、そんな錯覚に陥った。
乾の、眼鏡を直す仕草が、昔と全然変わってなくて。
優しい話し方も、全然変わってなくて。
だから…
「あたし、乾のことが好き。今も、昔も。」
「……。」
沈黙がしばらく続いた。乾は何も言わない。あたしは、何も言えない。
先に沈黙を破ったのは、やっぱり乾だった。
「これは予想外だな…。伝説のハジケリストの中の俺のポジションは、良き相談相手だと思っていた。だから…」
“恋愛対象としては見ていなかった。”
この言葉が、あたしの頭に浮かんだ。
フラれるのは覚悟していた。言えればそれでいいと、そう思ってた。
はずなのに、
胸が苦しくなってきた。
鼻の奥が、ツンとしてきた。
でも、乾から出た言葉は違っていた。
「恋人というポジションにつける確立は、極めて低いと思っていた。」
たくさんの人が行き交う駅の広場。だけど、不思議と乾の声だけがはっきりと聞こえる。
視界はぼやけてきてしまったけれど。
「飲み会に伝説のハジケリストが来ると聞いたとき、俺がお前に再び恋に落ちるのは想定内の範囲だった。だが、お前はあの頃から、俺の想定外のことをいとも簡単にやってのける。」
「え…?」
「これから、6年間分の伝説のハジケリストのデータを取らなくてはな。」
そう言って、乾はあたしの手を掴んだ。
大きくて、冷たい手。
「乾、それって…」
「帰ろう。電車がなくなる。」
あたしの手を引っ張って、改札に向かって歩きだした。
乾の耳が赤いのは、寒さのせいじゃない。そう思うと、さっきたまっていた涙がすっと引いた。
乾があたしの6年間分のデータを取るなら、あたしは乾に、6年間たまったこの気持ちをぶつけていこう。
久しぶりに二人で乗った電車の中で、そう誓った。
終わり
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