隣の席の白石くん
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◎3日目◎
今日は謙也が先に来ていて、何故か私の席の横に立っていた。
「おはよう。」
「おはようございます。」
「ていうか、何それ?どういうつもり?」
丁寧な標準語に、安っぽいテロテロのスーツみたいなのを羽織り、蝶ネクタイみたいなのがついた胸元に片手(バスの運転手がつけてるような白い手袋をつけている)を当て、お辞儀しだした。
「今日は天気がよろしいようで。陽も出てポカポカしてはりますわ。まるでお嬢様の頭のように。」
「余計なお世話だし。分かった、執事でしょ。」
「正解でございます。」
口の端を少し上げて気持ち悪く笑ってみせる謙也。笑いが取りたいのか怖がらせたいのか、最早意味不明だ。
「キモい!」
「キモいとはなんや!今流行の執事やで!女子の憧れやん。あ、お前女子やなかったな。すまんすまん。」
「マジぶっ飛ばす!つーか謙也が執事とか嫌だし。」
「何でや!」
「全てにおいて急がされそう。」
「そうや、スピードスターは甘ないで!着替えもメシも40秒で支度せな!」
「ドーラかよ(笑)」
そんなこんなで謙也の執事ごっこはすぐに崩れ、朝っぱらから笑わされていると
「おはようございます。」
白石がやって来た。だが、
「ちょ、おま、何カブっとんねん!」
「あなたこそ私の真似をしないで頂けますか?」
謙也と同じく、ヘンな蝶ネクタイにテロンテロンのスーツ、そして白い手袋を付け、胸元に手を当てて挨拶をしてきた。
「どうせお前も小春かユウジに借りたんやろ?ここまでがっつりカブるとはな。」
「何のことでしょう?あ…もしよろしければ、いい病院を紹介しますが?」
「頭の検査しろってか?つーかもうええわ、もうこれ以上やってもお前がイタイだけやぞ。」
謙也に言われた白石は、ふぅとため息をついて自分の席に鞄を置いた。
「なんかすごいね。二人とも別に打ち合わせとかしてないんでしょ?」
「してるわけないやん。コンビやあらへんし。なぁ?」
「せやで?どっちかっちゅーと、謙也も俺もツッコミやしな。」
「で、なんで今日は執事にしようと思ったわけ?」
すると謙也が、
「せやから水嶋ヒロやー言うてるやろ。」
と言って、またお辞儀をしてきたので
「お前が水嶋ヒロになれると思うなよ。」
静かに言ってやった。すると白石が
「はは、キビシイな。でも、水嶋ヒロより俺のが男前やろ?」
なんて言ってきたが、そう言われればそんな気もするし、何しろ女子の間で白石は高嶺の花的な存在(何故かみんな遠くから見てカッコイイと言うだけ、まぁ中には告る子もいるらしいけど)であるので、シャレになってない気がする。
返答に困っているあたしを見かねたのか
「アホか。お前が水嶋ヒロより男前やったら、俺なんかどないすんねん。もう普通に道歩かれへんやろ。」
「ブサイク過ぎてか?」
「ブサイク過ぎて犯罪や、むしろブサイク通り越して猥褻物やで。そら道歩いとったら捕まってまうわなぁっていい加減にせぇよ!」
「謙也ええで、今日のお前は最高や。」
謙也のノリツッコミが冴えている中、白石はそれを受け流す。あたしはというと、よく笑わずにいられるなぁと感心するばかりだ。
「なんやねんまた。」
せや、と言って、謙也はあたしの方を向くと
「水嶋ヒロにはさすがに敵わんけど、テニスしてる時の俺らはなにげにイケとんねんで?白石なんかは部長やし、こんなでも部活ん時はみんなのことまとめとんねん。」
「へぇー」
「暇やったら見にきたらええやん。な?」
「せやな。けど、どうせなら試合見てほしいな。」
「あぁ、それがええやん。部活よか試合のが見てておもろいやろ。」
「エクスタシーな試合、見せたるで。」
え?
「ごめん、今なんて言った?」
ものすごくヘンな単語を聞いた気がするけど…
「エクスタシーな試合、見せたるで。」
エクスタシーって何。ていうかこの人たちテニス部だよね?テニスの試合でそんないやらしいことするのかしら。某中学卓球部のように、ハミチンサーブとかするのかしら。
そんなことをグルグル考えていると、あたしの肩に謙也が手を置き
「そこはあんま気にせんといて。」
そう言った。
テニスをしている白石を見れば、彼がどんな人なのか分かるのかもしれない。けれど、知るのが恐い気もする。
二人のエセ執事に囲まれながら、白石に対する興味が少し大きくなったのを感じた。