小ネタ集
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夏も終わりに近付き、肌寒さを感じるようになってきた。その上今日は雨も降っており、半袖では冷えるくらいだった。
そんなある日の放課後、白石は図書室にいた。クラスで出された課題のレポートを片付けるため、資料に目を通し、それをまとめていく作業をしていた。
今回の課題は、白石の要領の良さと集中力をもってしても難しい内容であり、白石が図書室に入った時には大勢いたクラスメイトも、時間が経つごとに一人減り二人減り、現在では白石を含め三人しか残っていないという状況だ。出て行った生徒達は課題が終えて図書室を後にしたのではなく、今日のところは諦めて翌日に回した者、早い段階で諦めた者、評価を気にせず適当に切り上げた者と、音を上げた生徒がほとんどだった。
しかし、白石はその日中に終わらせるつもりでいた。何故なら一刻も早く部活に出たいからだ。一日練習をしなかっただけで、三日分の遅れを取ることを彼は知っている。もちろんこの後自主練習をして、今日する予定だった練習の倍をやるつもりだった。そのためには早く課題を終わらせなければならない。課題達成まであと数ページ。終わりが見えてきたその時。
「はぁっ…!はぁっ…!」
息を切らせた謙也が、慌ただしく図書室に駆け込んできた。
謙也は白石の姿を確認すると、一度呼吸を整えて向かいの席に腰を下ろした。
少し迷惑に思いながら謙也を見ると、何かに怯えた様子で辺りを見回していた。その尋常ではない様子に白石はペンを置いた。
「どないしてん。」
「いや、俺も課題やろ思てな。」
「そか。」
謙也は再び立ち上がり、本棚へと向かった。その後ろ姿もどこか落ち着きが無い。かと思えば、資料を持って戻って来たら、いつもの落ち着きを取り戻していた。
謙也のことだから、気にしなくでもいいだろう。謙也が課題に取り組む姿を確認し、白石は再びペンを走らせた。
そして数分経った時
「……奴が来た。」
謙也がそう呟いた。
図書室の扉は開いていないし、もちろん人の動きもない。
「は?奴て誰やねん。」
白石の問いかけも届いていないといった様子で、謙也は小刻みに震え、落ち着き無く踵を揺すり始めた。額にはうっすら汗が浮かんでいる。
「おい、さっきからどないしてん。お前おかしいで?」
その声も聞こえていないかのように、謙也は何かを誤魔化しているといった様子でひたすら資料をめくっていた。
そして
「…奴が引っ込んだ。」
謙也に落ち着きが戻った。
「なぁ、ほんまにどないしてん?」
そんな不可解な謙也の行動、言動に、白石は一抹の不安を覚えた。もしかしたら何かの事件に巻き込まれて、誰かに追われているのかもしれない、もしくは何かを目撃してしまい、そのショックを受けてしまっているのかもしれない。
「奴て誰やねん。謙也、言うてくれ。」
白石の真剣な声がようやく届き、謙也は深く息を吐いた後
「いやな、トイレ行きたかってん。」
「は?」
「せやから、トイレ行きたかってん。」
何を言っているのだろうと、疲れた頭で白石が考えようとするよりも早く、謙也が真相を語り始めた。
「さっきまで部活出てたんやけど、お前おらんやろ?なんでかなー思っててんけど、水飲み場でクラスのヤツらと会ってな。で、何でこんな遅くまでおんのか聞いたら課題出てる言うやんか。俺すっかり忘れててな。しかもめっちゃむずいんやろ?慌てて走ってきたわ。ほんで水飲んできたやろ?ここ寒いやん、奴が来たっちゅー話や。」
「せやから奴て誰のことやねん。」
「尿意のことや。」
その真剣だけれどアホみたいな発言に、白石はただただ呆れるばかりだった。
「で、何できょろきょろしとったん?」
「みんな課題終わったのか気になるやろ。他にもどんだけやってる奴おんのかとか。」
今までの疲れと呆れが一気に出て、白石は大きく息を吐き出した。
「心配して損したわ。」
「損するのはまだ早いで。課題手伝ってくれ。」
「この資料使えるから見たらええわ。」
「おお、ありがとな。帰りに何か奢るわ。」
嬉しそうに資料をめくる謙也を見ながら、少しイラッとしたけど何事もなくて良かった、本当にこいつには敵わないと思いながら、白石もペンを走らせたのだった。
終わり
[後書き]
~のだった。終わり。じゃないよね。何書いてんだホント。ここ数ヶ月何も書いてないのでちょっと練習してみようかと思いましたが、最高に残念な結果です。ちょっと頭に酸素入れて出直してきます。そんでちょくちょくリハビリしようと思います。
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