お題DEキリ番小説
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「え?校内放送…?」
「うん。」
部活が終わり、あたしは部誌を書き、みんなは着替えているときのこと。「皆でお昼の校内放送に出るから」と、幸村がいきなり言い出した。
「幸村、どういうことだ。」
「放送委員の人に頼まれたんだ。面白そうだから、承諾した。」
質問してきた真田の方を見ず、ワイシャツのボタンをとめながら、幸村はしれっと答えた。
「お昼の校内放送って、ラジオみたいなヤツっスよね?」
「ふーん。そんなのやってたんだ。で、どんな奴が出てんの?」
ブン太は食うのに夢中で、校内放送なんか聞いちゃいないんだろう。
「今週はバスケットボール部の皆さんが出演なさっています。部活動の話や生徒からの質問に答えるなど、実に興味深いですよ。」
「BGMも好きなものを流せるみたいだぞ。」
「あ、だからスラダンの初期のオープニングが流れてたのか!」
「そういやお前、俺のスラダン返せよ。」
「もうちょっと待てって!」
「ったく…。」
ブン太がジャッカルにスラムダンク(完全版)を借りたのは、確か去年だったと思う。ブン太のもうちょっとは当てにならないということを、ジャッカルが犠牲となって教えてくれた。
「校内放送を流すのは月曜から木曜の四日間だから、二人ずつ出ようと思うんだけど。」
「して、その組み合わせはどうすんじゃ?」
「ハイハーイ!俺伝説のハジケリスト先輩と一緒がいいっス!」
元気に挙手をする赤也だが、ズボンを履き替えていた最中だったために緑のチェックのトランクス丸出しだ。
そんな赤也がかわいいわけだが、前例からいくとマネージャーは参加していない。
「たぶん選手だけしか出られないんじゃないかな。」
「幸村部長!マジっスか?!」
「そういうわけでもないけど、放送委員に出るのは選手だけって言っちゃったんだ。ごめん。」
「ちぇー。」
「二人ずつと言ったであろう。人の話をちゃんと聞け。」
赤也は残念がっているが、あたしとしてはラッキーだ。ただでさえ、このテニス部のマネージャーやってるってだけで目立つんだ。出来る限り、あたしはひっそりと平和に学園ライフを送りたい。
「組み合わせなんだけど、ダブルスのペアはそのままで出て欲しい。あとは部長である俺と、副部長の真田。参謀の柳とエースの赤也。このペアで出よう。」
「分かった。」
「ウィッス!」
赤也は、真田と一緒じゃなくて良かったみたいな顔をして返事をした。
「なぁ、脚本とかってあんの?」
「ないよ。聞かれたことを答えていけばいい。あ、流したい曲を事前に放送委員に言えば用意してくれるって言ってたよ。」
「ねぇ、いつ出るの?」
心の準備をするために、あたしは手帳を出してメモの用意をした。
「俺達が出るのは再来週。だから来週までに曲を選んでおいてくれ。伝説のハジケリスト、楽しみにしてて。」
なんとなく嫌な予感というか、普通にはならないだろうと思いつつ、日は過ぎていった。
そして、いよいよテニス部の週がきた。
【月曜日】
教室で友達とお昼を食べながら、チラチラと時計を気にしていると、
「もうそろそろだね。大丈夫?」
と言われた。出る順番や話す内容、流す曲等一切知らされていないので、楽しみやら不安やら、落ち着かない。
『~♪~~♪~~♪』
「あ、始まったよ!」
「うん…。」
聴いたことあるけど名前が分からないクラシックが流れ、いよいよ始まってしまった。あたしはなんとか食事を続けながら、校内放送に耳を傾けた。
司会『立海大附属中等部の皆さん、こんにちは!今週も始まりました!お昼の校内放送ーイェーイ☆』
今週の司会の放送委員はテンションの高い男子だ。結構人気があるらしく、みんな笑ったりリアクションをとっている。
司会『はい、今週はテニス部祭り!好成績を残し、我らが立海の顔とも言えるテニス部、今日はそのテニス部から、ダブルスのお二人にお越し頂きましたー!』
柳生『柳生比呂士です。』
仁王『仁王雅治。』
仁王と聞いて、教室の女の子達が少しざわざわした。
司会『今日はよろしくお願いします!』
柳生『はい、こちらこそよろしくお願いします。』
仁王『プリッ。』
司会『今日のオープニングは柳生君のリクエストなんだけど、クラシック好きなの?』
柳生『えぇ、よく聴いています。特にこの“歓びの歌”はとても好きなんですよ。』
司会『柳生君は根っからの紳士ですね!仁王君のリクエストはエンディングで流しますのでお楽しみに☆ではではお待ちかね、質問コーナーに行っちゃいまーす!』
質問コーナーとは、放送委員が前もって生徒達から質問を募り、その中からランダムで一人2つ選んで質問するというものだ。
そのメインコーナーを早くも迎え、何故か無駄にハラハラしてきた。
司会『今回はたくさん質問が寄せられてますね!時間の都合上2つしか紹介できなくて残念です。では、サクサク進めていきましょう!最初の質問は…柳生君への質問です!』
柳生『はい。』
司会『えー、“家はお金持ちですか?”俺から見てもいい家に住んでそうだけど、どうなの?』
柳生『裕福な家庭の基準が分かりかねますが、今のところ不自由はないので至って普通だと思います。』
仁王『そう謙遜なさんな。お前さんの家、レトリバー二匹飼おるじゃろ。』
司会『お、それは確実に金持ちですねー!』
柳生『仁王君、公共の場で嘘を言うのはやめたまえ。』
司会『え、嘘だったんですか?!』
仁王『おう。』
司会『おっとぉ!さすがです。コート上の詐欺師は、普段からその一面を垣間見せているんですね!』
これは詐欺というより、ただのいやがらせではないだろうか…。柳生が気の毒に思えた。
司会『次はそんな怪しい雰囲気たっぷりの仁王君に質問です!“どうやったら人を巧く騙せますか?”うーん、物騒な質問ですね(笑)どうなんでしょう?』
仁王『そうやのう…先の先の先の、そのまた先を読みんしゃい。』
司会『なるほど。しかし、それはどうやったら読めるんですかね??』
仁王『それは自分で考えるんじゃな。』
答えになっているようでなってない気がしてならない。
司会『柳生君は相方としてどう思いますかね?』
柳生『私から言えるのは、普段の生活において、人を騙すのは良くない事だということです。』
司会『ごもっともですね!騙すのは試合の時だけにしましょう!』
仁王『……。』
司会『続いて柳生君に二つ目の質問です!“真の紳士の心得は何だと思いますか?”何だと思いますか?』
柳生『真の紳士を語るには、私なんてまだまだですが…。』
仁王『もったいぶらんとパパっと言いんしゃい。』
柳生に対する仁王の風当たりが強くなった。
柳生『すみません。ではお答えしましょう。あくまで私の個人的な意見ですが、常に相手の立場に立って物事を考え、誠意を持って接することが紳士としての心得ではないでしょうか。』
柳生がそう言うと、女子の何人かが大きく頷いた。
司会『なるほどー!中々できないことですね!男子の諸君、見習いたまえ!』
仁王『お、ええのう(笑)』
柳生『そうですね。』
司会『ありがとうございます!最後に仁王君への質問です。“女の子の表情で一番好きなのは?”』
すると、ざわめいていた教室が、一気に静かになった。騒ぐ男子は女子に制され、一言でもしゃべったら命の保証はなさそうな空気が流れている。
仁王『表情ねぇ…。怒った顔とか驚いた顔にそそられるけどな。』
司会『はっはー、なんとなく分かりますよ。』
仁王『でもまぁ、うちのマネージャーには笑ってて欲しいね。』
柳生『そうですね。彼女の笑顔あってこその我々と言ってもいいでしょう。』
女子からイタイ視線があたしに送られてきたので、下を向いてご飯を口に詰め込んだ。
嬉しいけど、気まずい。
司会『そうですか。いいマネージャーさんなんですね!』
仁王『まぁな。女とは思えんほどパワーあるぜよ。のう、柳生。』
柳生『ええ。とても逞しいですね。』
誉められてるのか貶されてるのか分からないが、女子の視線がイタくなくなったので貶されているのだろう。
司会『なるほど。テニス部のマネージャーをやるからには、並みの女子ではキツイということですね!番組も終わりに近づいてきましたので、そろそろお二人からテニスについて一言ずつ頂きましょう!柳生君からどうぞ!』
柳生『はい。テニスとは、自分との戦いだと私は考えます。』
仁王『一番楽しめる駆け引きの場…ってとこじゃな。』
司会『柳生君、仁王君今日はありがとうございました!』
柳生『こちらこそ、とても有意義な時間でしたよ。』
仁王『プリッ。』
終了間際、何故だかお魚天国が流れ出した。
司会『明日もダブルスから、有名なお二人が来てくれますのでお楽しみに!仁王君のリクエスト“お魚天国”を聴いてお別れです。ではみなさんまた明日ー☆』
お魚天国の流れる中、昼食の時間は過ぎていった。
【火曜日】
「今日は丸井君とジャッカル桑原だっけ?」
「うん。」
今日は教室ではなく、学食に来ている。もちろん学食にも校内放送は流れるわけで。
『~~♪~♪~』
流れてきたのはケツメイシの“さくら”。ブン太が選んだんだと分かる。
司会『立海大附属中等部の皆さん、いい飯食ってますか?お昼の校内放送始めまーす!イェーイ☆今日も引き続きテニス部から、もう一組のダブルスのお二方に来て頂いてます!』
丸井『三年、丸井ブン太。』
ジャッカル『三年、ジャッカル桑原だ。』
司会『二人ともよろしくね!』
丸井『へーい。』
ジャッカル『あぁ、よろしくな。』
この二人は安心だ。今日は落ち着いて食事ができるだろう。
司会『オープニングは丸井君のリクエストの“さくら”ですが、ケツメイシ結構聴くの?』
丸井『おう。ケツメと湘南乃風あたりよく聴くな。』
司会『テニス部の皆さんでカラオケとか行くんですか?』
丸井『全員でってのはあんまねぇけど、よく行くよな。』
ジャッカル『そうだな。』
よく行くカラオケメンバーは、ブン太、赤也、ジャッカル、あたしの四人だ。たまに仁王とか幸村が加わる。
司会『だそうです!カラオケ行ったらテニス部メンバーに会えるかもしれませんね☆ではでは質問コーナー行ってみましょう!ジャッカル君に質問です。』
『パチン!』
ブン太のガムが割れたと思われる音を、マイクが拾った。
司会『まずはジャッカル君に質問!“今冬ですけど寒くないですか?”』
丸井『頭のことだぞ?』
ジャッカル『分かってるよ!あー、寒くないと言ったら嘘になるな。』
司会『普段は帽子かなんか被ってるんですか?』
ジャッカル『冬場はニット帽被ってる。』
幸村が入院中に編んだやつだ。まだ夏だったのに、冬に向けてとか言って耳つきのを編んでいた。しかも結構上手に出来ていた。
司会『いいこと聞きましたね!ジャッカル君へのプレゼントには、ニット帽を贈ってみるといいですね。次は丸井君への質問です。“ダイエットを考えたことはありますか?”』
丸井『あるわけなねーじゃん。いくら食ったって、動いてっから太んねーもん。』
司会『なるほど。そんな丸井君は、今ここでもシュークリームを食べてます。テーブルにあるだけで三つはありますね。』
丸井『ここ来るとき後輩の女子にもらったんだよ。』
ジャッカル『お前口の周り汚ねぇぞι』
音声だけだが、現場の光景がはっきりと目に浮かぶ。友達に「丸井君って甘党なの?」と聞かれたが口にものが入っていたので頷くだけにした。
司会『丸井君の口周りも綺麗になったことだし、次の質問いっちゃおう!ジャッカル君に質問です。“頭洗うときってやっぱボディーソープで洗うんですか?”確かに気になりますね!』
丸井『つーか質問頭ばっかじゃん!(笑)』
ジャッカル『うるせーよ!ボディーソープっつーか、柳から貰った炭石鹸で洗ってる。』
丸井『合宿で風呂入った時も、タオル一枚と炭石鹸で済んでたもんな。』
ジャッカルの肌(というか頭皮)のツヤがいいのは、炭石鹸のお陰だったのか。あたしも柳に頼んでみよう。
司会『でも一度はやってみたいですよね?全身同じ洗剤で洗うの。』
丸井『まーな。』
ジャッカル『じゃあお前らも丸めたらどうだ?』
司会『質問コーナーラストの質問です!丸井君に質問。』
ジャッカルがスルーされた瞬間が電波に乗せられた。学食内でもクスクス笑いに近い笑い声が、所々から聞こえる。
司会『“ガムは最高何時間噛み続けましたか?”』
丸井『あー、分んねぇな。味無くなったら新しいの追加したりしてっから。』
ジャッカル『下手したら一日噛んでるよな。』
司会『お気に入りの味はあるんですか?』
丸井『やっぱグリーンアップルだな。でも最近はピーチも好きだぜ?』
司会『じゃあ丸井君に差し入れするならガムがいいですね!』
丸井『それプラス菓子な!』
また明日から、部室がブン太への差し入れのお菓子でいっぱいになるのかと思うとため息が出る。
司会『おっと、時間が来てしまいましたね。最後にテニスについて一言ずつお願いします!』
丸井『俺の妙技が冴え渡りまくりなんで、応援シクヨロ☆』
ジャッカル『テニスは俺の情熱だ。つーかお前の妙技についてじゃなくて、テニスについてって言ってんだろうがι』
丸井『細けーことは気にすんな。』
司会『丸井君、ジャッカル君、今日はありがとうございました!』
丸井『おう。』
ジャッカル『あぁ。』
司会『明日はシングルスから、二年生エースと成績表上位にいつも名を置くあの人が来てくれます!お楽しみに!エンディングはジャッカル君のリクエスト、“セーラー服を脱がさないで”を聴きながら今日はお別れです。』
ジャッカル『Σおい!そんなのリクエストしてねぇぞ?!』
司会『え?頂いた紙にはそう書いてありましたよ?ホラ。』
丸井『どれどれ…お、これあいつの字じゃね?』
ジャッカル『やられた…』
ジャッカルの嘆きも虚しく、おニャンコ倶楽部の“セーラー服を脱がさないで”が流れつづけた。
犯人は確実に仁王だろう。ジャッカルを気の毒に思いながら、学食をあとにした。
【水曜日】
今日は穴場である、屋上に続く階段の踊場で食べることにした。
「もうすぐだね。今日は柳君とワカメ君だっけ?」
「うん。」
腕時計を確認してから友達が言ってきた。
『~~♪~♪』
今日のオープニングはモンパチの“小さな恋のうた”だ。
司会『皆様お待ちかね、お昼の校内放送の時間がやってまいりましたー!イェーイ☆テニス部特集も三回目となりましたね!今日のゲストは、データテニスで追い詰めるテニス、パワーと動きで押せ押せテニスの、シングルスプレーヤーのこのお二人!』
柳『三年、柳蓮二です。』
切原『二年、切原赤也っス!伝説のハジケリスト先輩聴いてます?!』
教室で食べなくて良かったと、心底思った。友達はあたしを見ながら笑っている。
司会『このお二人には異名があり、柳君が達人で、切原君は二年生エースと呼ばれているそうです!今日のオープニングのモンパチは、二年生エースの切原君のリクエストなんですけど、切原君は昨日丸井君が言ってたカラオケメンバーに入ってるの?』
切原『ウィッス♪この歌もよく歌うっスよ!』
司会『柳君は?』
柳『ごくたまに、決まった人と行く。』
切原『やぎゅー先輩とっスよね!』
柳『あぁ。』
新年会の時のことが思い出され、自然とため息がこぼれた。
司会『テニス部の人達は仲良しということが分かったところで、質問コーナー行ってみましょう!最初の質問は達人柳君にしましょう。“懐紙ってどこで買えばいいですか?”懐紙なんて持ち歩いてるんですか?』
柳『あぁ。懐紙は茶道用具専門店に行けば色んな種類が置いてある。値段はそこまで高くないから買ってみるといい。ちなみに俺は、鎌倉にある“四葩”という店の懐紙が気に入っている。』
赤也『カイシって、あの油取り紙みたいなやつっスよね?』
柳『確かに見た目は似ているな。』
司会『柳君は古風なんですねー。女性も古風な感じが好きなんですか?』
柳『いや。そうとも限らない。恋愛に関してはまだ完全に理解しきれていないからな。』
司会『なるほど。柳君ファンは、ありのままの自分をぶつけてみましょう!次は切原君への質問です。“目薬は何を愛用してますか?”』
切原『う~ん…。あんま使わねぇからなー。あ、伝説のハジケリスト先輩が買ってきてくれたヤツ!名前なんでしたっけ?』
柳『Vロートクールだ。』
切原『そう!それそれ!たまに伝説のハジケリスト先輩がさしてくれるんスけど、笑っちゃって失敗するんスよねー。』
頼むから、これ以上あたしの名前を言わないでくれと思った。まわりに人がいなくて、本当に良かった。
司会『目薬って、切原君コンタクトなの?』
赤也『いえ!俺の目充血しやすいんスよ!』
司会『大変だねー。切原君ファンは目薬をあげたらいいかもしれませんね!次行きます。柳君に質問です!“柳さんと話をする時は、何処を見て話したらいいですか?”』
柳『人と話をする時は、目を見て話すのが常識だな。』
赤也『え…、だって先輩目…………なんでもないです。』
今の間で、柳が開眼した確率99.9%!なんちゃって。
司会『そうですね、閉じてようが閉じてまいが、相手の目を見て話しましょう!ラスト、切原君への質問です!』
切原『ウィッス!』
司会『“そのくせっ毛にストパーをかけたらどのくらいの長さになるんですか?”どうなんでしょうねー。ストパーかけたことあるの?』
切原『ねーっスよ。もしストレートになったらどんくらいっスかね?丸井先輩くらいスか?』
柳『精市と同じくらいだろうな。』
赤也への質問なのに、なぜか柳が答えてる。自分にきた質問を他人にしてどうするって話だ。
後で真田に文句言われないといいけど…。
司会『思い切って一回かけてみるのもいいかもよ?幸村君みたいになったら今よりモテちゃったりして!』
柳『顔のつくりとキャラというものが違う。赤也が精市を真似た場合、女子からキモイと言われることになりかねないぞ。』
赤也『ひでぇ!』
司会『おぉ、さすが達人と呼ばれているだけのことはありますね。的確です!きっと切原君のファンは、そのままの切原君が好きだということでしょう。では、時間が迫ってきましたので質問コーナー終了です。最後に、テニスについて一言ずつお願いします!』
柳『テニスは俺を退屈させない、無くてはならないものだ。』
赤也『テニスは楽しいっス!』
言い回しは対照的だけど、同じことを言っている二人がなんだか微笑ましい。
司会『柳君、切原君、今日はありがとうございました!』
柳『あぁ。』
切原『どーも!』
司会『エンディングは、柳君リクエストの“君をのせて”です!明日でいよいよテニス部特集は終わりとなってしまいますね。』
赤也『ラピュタじゃないっスか!』
柳『あぁ。それがどうかしたのか。』
司会『聞いてないみたいですね。さて、明日は立海生なら知らない人はいないあのお二人が、最後を飾ってくれます!ではまた明日☆』
赤也『伝説のハジケリストセンパーイ!!好きっ(ブツッ!)
“君をのせて”のメロディーとは裏腹に、教室へ戻りたくないという気の重さにあたしは襲われていた。
【木曜日】
今日も階段の踊場で食べることにした。こんな時は、気を許した友人と二人で食事するに限る。
「今日で最後だね。」
「うん。」
「ちょっと、大丈夫?」
「うん。」
疲労で「うん」としか言えてないが、ラストは幸村と真田なので完全に安心だ。ここへ赤也だのブン太だのが混じるとロクなことにならないが、二人だけなら問題ない。
『~~♪~♪』
流れてきたのは“涙そうそう”。これはどちらの選曲かジャッジし兼ねる。
司会『今週もいよいよラストとなりました!今日も張り切っていきたいと思います!イェーイ☆テニス部ウィーク最後を飾るのは、部長と副部長のこのお二人!』
幸村『部長の幸村精市です。』
真田『副部長の真田弦一郎だ。』
司会『今日はよろしくお願いします!』
幸村『あぁ、よろしく頼む。』
真田『うむ。』
司会『オープニングは真田君のリクエストということですが、涙そうそうには何か思い入れみたいなのがあるんですか?』
真田のリクエストだったか…。校歌とか君が代じゃなくてよかったと、そう思いながらご飯を口に運んだ。
真田『思い入れはないが、NHK歌謡コンサートで聴いて以来気に入ってな。』
司会『うんうん、名曲ですよね!さて、真田君の嗜好が分かったところで質問コーナーに行っちゃいましょう!最初は幸村君への質問です。“自分のことをどう思ってますか?”中々難しい質問ですねー!』
幸村『そうだなー。俺は自分のことを、弱くて小さい人間だと思ってるよ。』
真田『何を言う。お前は誰よりも強い男だ。』
幸村『そんなことないよ。うちのマネージャーを校内放送に出させなかったのだって、他の奴に声聞かせたくなかっただけだし。』
完全に安心だとか思っていた自分が、完全にバカだった。
司会『おっと!これは熱愛発覚か?!大人気の幸村君に彼女が!』
幸村『今は彼女じゃないけど、とても大事な人だよ。真田もそう思ってるよね?』
真田『声を聞かせたくないとまでは思わんが、あいつの根性は認める。』
幸村『ふふ。素直じゃないね。』
一番警戒すべきは、幸村だったのかもしれない。友達は「見かけによらずすごいね、幸村君。」などと言ってお弁当を美味しそうに食べている。
ただでさえ男が寄って来ず、彼氏が未だに出来ないというのに。
赤也は別として、仁王といい幸村といい意図的だ。あたしを困らせて何が楽しいというのか。
司会『次、真田君に質問です!“寝るとき、どんな格好ですか?”ちょっとマニアックですね(笑)どうなんですか?』
真田『なんでそんなことを知りたがるんだ。』
幸村『真田。』
幸村『う、うむ。寝るときは普通の寝巻きを着ている。』
司会『浴衣とかじゃないんですか?』
真田『夏場にたまに着るが、大体は寝巻きだ。』
確実に、幸村の脅しが入った。普通に聴いてたら分からなかっただろうけど、部員は絶対に反応したはずだ。
司会『真田君は寝相良さそうですよね!』
真田『自分の寝ている姿がどうなっているかなど、さすがに分からんな。』
司会『そうですよね。真田君の寝姿を見てくれる子募集してます☆』
真田『Σなに?!』
司会『続いて幸村君への質問です!“視線だけで人を動かせるって本当ですか?”え?!そんなことできるんですか?!』
幸村『まさか。そんなことできないよ。』
真田『いや、お前の目には力がある。お前が言わんとすることは部員たちに伝わっているぞ。』
確かに幸村が何も言わなくても、みんな行動に起こす。視線で人を動かしてるというのは間違っていない。だが、肝心の真田は、幸村の目に宿った真田に対する悪ふざけだけを見抜けていないようだ。
幸村『そうだね。じゃあ想いを込めて、うちのマネージャーを見つめてみようかな。』
司会『幸村君に見つめられてときめかない女子なんていそうにないですもんねー。マネージャーさんは覚悟が必要ですね!』
幸村に見つめられて心に芽生えるのは、ときめきではなく恐怖だということを教えてやりたい。
司会『最後の質問ですね。真田君準備はいいですか?』
真田『もったいぶらずに早く言わんか。』
司会『す、すみません…。“正直なところ、何歳ですか?”うわー。』
真田『うわーとは何だ。十五歳に決まってるだろう。大体この質問は何なんだ。』
幸村『真田って、落ち着いてるから中学生とは思えない風格だってことだよ。威厳もあるしさ。』
真田『そ、そうか。』
幸村『うん。顔もふけてるしね。』
フォローしといて落とす。これがうちの部長だ。
ハイテンションだった司会の人も、さすがにこの空気には耐えられないらしい。
司会『え、えーと、残念ながら時間ですので質問コーナー終了です!最後に、テニスについて一言ずつお願いします!』
幸村『俺にとって、テニスは空気みたいなものかな。』
真田『そうだな。同感だ。俺達テニス部は立海の名に恥じぬよう、常勝を貫いて行く。そして…』
幸村『真田、一言でいいから。』
真田『す、すまん。』
司会『あはは…。幸村君、真田君、今日はありがとうございました!』
幸村『こちらこそ。』
真田『うむ。』
司会『テニス部の皆さんとこうして一週間やらせて頂きましたが、皆さんとても個性的で素晴らしい人達ばかりでしたね!これからも応援していきましょう!では、幸村君のリクエスト“15の夜”を聴きながらお別れです。来週は剣道部特集!お楽しみに~☆』
短いようで長かった四日間が、ようやく終わりを迎えた。
【金曜日】
練習が始まる前の部室。着替えながらみんなで校内放送の話をしていた。
「伝説のハジケリスト、どうだった?」
幸村がにっこりしながら聞いてきた。機嫌はいいようだ。
「どうって…。あれから知らない人にまで“幸村君と付き合ってるんですか?”って聞かれまくって困ってるんですけど。」
「そうか。苦労かける。」
そう思うならあんなこと言わないでもらいたい。
「でも出てよかったよな!俺あれから食料もらいまくり♪」
前にも増して大量のお菓子を貰ってきたブン太が、とても幸せそうにお菓子の山を見た。
「ゴミは自分で捨ててね。あたし掃除すんのやだよ。」
「分かってるって☆」
そう言いながら、カスをボロボロこぼしながらスナック菓子を食べ始めた。
「伝説のハジケリスト先輩!俺の愛の告白聴いてくれました?!」
「ハイハイ、聴いてた聴いてた。」
あの放送が終わってから、二年生の廊下の前を通り辛くなってしまった。
「赤也。お前は自分にきた質問に、自分で答えられないとはたるんどるぞ。」
「真田副部長だって最初答えようとしなかったくせに。」
「何か言ったか。」
「い、いえ…。」
やっぱり赤也はお小言を貰ってしまった。かわいそうに。
「おい仁王!お前だろ、俺のリクエスト書き換えたの!」
「覚えとらん。」
こっちでは、ジャッカルが事の真相を確かめていた。
「ジャッカル何リクエストしたの?」
「恋のマイアヒだ。」
「Σ今更?!」
まぁおニャンコよりはマシだけど。
ジャッカルは、あれからみんなにいじられていると言って肩を落とした。
そんな中、部室の扉がノックされた。
「はい。」
扉を開けると、制服姿の男子生徒が立っていた。
「突然すみません。新聞部の者です。部長さんいます?」
すると幸村があたしの肩越しから顔を出した。
「あ、幸村君。今度の校内新聞でテニス部を特集したいんだけどいいかな?」
おそるおそる幸村の顔を見ると、
「うん。いいよ。」
と、新しい遊びを見つけた子どもみたいな表情をして即答した。
「これで虫除けは完璧だね。」
と言ってあたしに微笑み掛かる幸村を見ながら、意識が遠のいていった。
終わり
[後書き]
お待たせし過ぎました。もうかなりお待たせし過ぎてしまいました。それなのに…ごめんなさいm(__)m
リク内容は『立海ギャグ』です。毎度のことながら無駄に長く、ギャグでも何でもない普通の話になってしまいました。散々待たせてリク内容に沿ってないというこのダメっぷりに、自分でも驚愕しております。
リンゴ様、完全に忘れた頃にアップしてしまって申し訳ございません(>_<)書き直しの要請、百叩き、顔ストッキング、何でも承ります!本当に申し訳ございませんでした!
伝説のハジケリスト様、ここまでお付き合いありがとうございました!
アンケートに協力して下さった皆様、私を単車で引きずるなどして気の済むまでいたぶって下さい!
他にも寄せられた立海メンバーへの質問は、全て奴等に答えさせてから後にアップします!