お題DEキリ番小説
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
中学2年の秋のこと。
同じクラスの幸村に、お昼を一緒しようと誘われた。
正確に言うと、強制連行だけれど。
なぜかアイマスクを着用させられ、お弁当片手に自分がどこを歩いているか分からない状態で、幸村に手を引かれて歩く。
しかも、イヤホンを装着させられているため、周囲の音が聞き取りにくい。
大音量で流れる井上陽水の少年時代が終盤に差し掛かった時、あたしの耳のイヤホンが外された。
「アイマスクを外して下さい。」
幸村に言われアイマスクをとると、眩しくてしばらく目を開けられないでいた。
「あの…なんでアイマスクとイヤホンしなきゃいけなかったの?」
「電波少年だよ。知らない?」
うっすら目を開けると、優しく微笑む幸村がそこにいた。そして、ここが屋上の入り口だという事が分かった。
「わざわざ電波少年風にする意味が分かんないよ。」
「ふふ。お腹空いたね。お昼にしよう。」
会話が噛み合わない事この上ないが、幸村には下手に逆らわない方が身のためだと、自分の第六感がそう告げているので従う事にする。
「でも、いきなりどうしたの?あたしをお昼に誘うなんて。」
「会ってもらいたい人達がいるんだ。」
そう言って扉を開けると、かの有名な真田弦一郎が立っていた。
まさか!( ̄□ ̄;)あたしに会ってもらいたい人って真田?!真田に交際相手を紹介するというので、あたしを連れてきたんじゃ…。
演出ももちろん、内容的にもまさに電波少年だ。
「お待たせ。皆もうそろってる?」
「あぁ。こっちだ。」
みんな…?そういえば「人達」っていってたっけ。
半径50メートルくらいからしか見たことがない真田弦一郎を間近で見たので、気が動転してしまった。
「伝説のハジケリスト、行こう。」
「あ、うん。」
幸村に呼ばれ、あたしも真田弦一郎の後に続いた。
「皆お待たせ。」
「やっと来た~!早く食おうぜ!」
「マジ腹減ったっスよ~。」
「先に食べててもよかったのに。」
「真田が待ってろって言ったんだよ。」
なんだか聞いたことあるような声が聞こえたので、真田弦一郎の背後から顔を出して確認してみたら
「ブン太!?」
「伝説のハジケリストじゃん!」
思ったとおり、ブン太がいた。あぐらをかいて、足の間にコンビニの袋を置いていた。
ブン太とは1年生の時同じクラスだった。なんとなく気が合ったので、仲が良い方だったと思う。デニーズの新作スイーツが出ては、よく一緒に行ったものだ。
2年生になってからは、クラスが随分離れてしまったので、朝礼などで遠目に見かける程度になってしまった。
「感動の再開は後にして、話を始めよう。食べながらでいいから聞いて欲しい。」
幸村が言うと、ブン太と敬語を使っているハイパー無造作君が、物凄い速さで袋を開けだした。
他のみんなもお弁当を食べ始めたので、あたしも自分のお弁当を広げた。
幸村はと言うと、花柄のハンカチにくるまれた、いつもより二回りは小さいお弁当箱を広げようとせず、膝に乗せたままだ。
花柄とかマジ似合うなーと思いながらおかずをつついていると、
「丸井先輩!この人と知り合いなんスか?!」
ウルトラ無造作君がおにぎりを口に入れながら言った。
「あぁ。ひてぃめんふぉひっまはひょはっふぁんはひょ。(一年時仲良かったんだよ。)」
「何言ってんのか分かんねーっスよ!」
無理もないだろう。焼そばパンがここぞとばかりに口内に詰まっていて、その口からは焼そばがチョロッと出ている。
「ははは。汚いなぁ。話すか食べるかどっちかにしなよ。」
幸村は柔らかい口調で言ったのだが、ブン太の動きは止まってしまった。出ていた焼そばが、ゆっくりとブン太の口に引っ込んだ。
あのゴーイング・マイウェイブン太を封じる事ができるなんて、さすがだ。
「精市、早く話をすすめてくれ。」
「このままでは彼女がかわいそうですよ。」
糸目の彼と眼鏡の彼が言うと、幸村は「そうだね」と言ってあたしの方に向いた。
「テニス部は現3年生が引退して、新体制になったんだ。その主力がここにいる皆だ。」
あたしは言われて改めて見回すと、雰囲気的に確かに普通じゃない、と感じた。
「一人ずつ紹介していくから、覚えて欲しい。」
なんであたしに?と思ったが、卵焼きの味がいつもと違う事に気を取られたために話は進んでしまった。
「俺が部長になったんだ。不束者だけどよろしく。」
天使のような悪魔の笑顔に、“自分も紹介するんかい”とか“不束者って”等のツッコミなどとうていできなかった。
ブン太をチラッと見ると、5つあったパンのうちの最後に手を伸ばしていた。お構いなしだ。
「で、この老けて恐い顔してるのが副部長の真田。さっき入り口で会ったよね?」
「真田弦一郎だ。よろしく。」
「どうも…」
箸を置き、幸村に軽くひどい事を言われているにも関わらず、丁寧に挨拶をした。
「真田の隣にいるのが柳。頭がすごくキレるんだ。」
「よろしく。」
「あ、はい。」
テストの結果発表で必ず上位にある名前なので、名前だけなら見たことはあるが、こうして本人を目の当たりにするのは初めてだ。ちょっと坊ちゃん刈りっぽいので、いい家柄なのだろう。
ただの勝手な予想だけれど。
「眼鏡で七三分けの彼が柳生。見た目通り、紳士的だよ。最初はゴルフ部だったのを、あの銀髪がスカウトしてきたらしい。」
幸村は部長なのに、部員については何故か曖昧だ。アバウトだ。
「初めまして、柳生比呂士です。どうぞよろしくお願いします。」
「こちらこそ…」
握手を求められたので、軽く握った。紳士的な挨拶の柳生君のお弁当は、彼によく似合うサンドイッチだった。が、飲み物は伊衛門だった。
「彼は2年生の切原。髪型が独創的だろ?うちの期待のエースなんだ。」
「どーも!切原赤也っス♪赤也って呼んで下さい!」
髪型について、独創的という表現はいい表現なのだろうか。まぁ間違っちゃいないけど、特徴的と言った方がいいのではないだろうか。
もう私の中で、『切原君=髪の毛』という方程式が成り立ってしまった。髪しか見えない。
「そうだ、今日の俺のお弁当、わかめご飯なんだ。」
幸村が突然言い出したので、あたしはギョッとした。タイミング良過ぎだ。絶対わざとだ。
「わかめご飯いいなー!ちょっとくれよ!」
5つのパンを完食したブン太が、幸村のわかめを欲した。相変わらずの食欲に、思わず笑みがこぼれてしまう。
「丸井は本当によく食べるね。隣のわかめでもたべてなよ。」
幸村の言うわかめとは、おそらく切原君の事だろう。当の切原君はというと、気づいておらず、お弁当をかっ込んでいる。
「丸井の隣にいる、黒いピカリンがジャッカル。ハーフだよ。」
形の良い、バラの花びらのような口から、どうしてそんな言葉が出てくるのか。
「ヨロシクな!」
しかも本人気にしてないし。
ジャッカル君は、女子の間で割りと有名だから知っていた。あたしの友達で、誰か忘れたけど「ジャッカル君のお弁当って、ウサギの肉とか入ってんのかな。」と言った奴がいた。
残念ながら、お弁当はウサギではなくてスティックパンだったという事を報告しよう。
「おい!俺をとばすなっつーの!」
ブン太はジャッカル君のスティックパンを横から取ると、口に放り込んだ。
「だって、丸井と伝説のハジケリストは知り合いなんだろ?だったらいいじゃない。」
「改めてご挨拶したほうがいいと思いますよ。」
「だろぃ?さすがジェントル。分かってんじゃん☆」
幸村の小さな、本当に小さな舌打ちがあたしの耳に入ってきた。
「丸井ブン太。通称天才。シクヨロ!」
パンを口に入れてモムモムしながら言った。
「自分で天才って(笑)」
やっぱり相変わらずのブン太に、あたしは心があったかくなった。
「丸井、口にパンを入れながらしゃべらないでよ。はい、次ね。あそこにいるのが仁王。彼にはあまり近づかない方がいいよ。」
輪から少し離れて柵に寄り掛かっている、銀髪の人を見て言った。
「なんで?」
仁王君を見ると、口の端を上げていじわるそうに笑った。顎に付いてる黒いのは、彼が持ってる胡麻のおにぎりの胡麻だろうか。
聞いてみようか。
「仁王君は人を騙すのが趣味みたいな人ですから。」
やっぱりやめておこう。
「人聞き悪いのぅ。仁王雅治。…シクヨロ。」
ブン太を真似た事で、多少茶目っ気がある人なのだと、少しほっとした。それでも、幸村とはまた違った恐ろしさは隠しきれない。
「これで全員紹介し終わったね。」
あたしは食べおわったお弁当を片付け、お茶を飲みながら、テニス部って個性的だな、と考えていた。
「それじゃあ、こんどは伝説のハジケリストを紹介する番だね。」
前例から、幸村に何て紹介されるか分かったもんじゃない。短足、ノロマ、ドジ、マヌケ、カボチャ…さぁどれだ!
「皆もう分かってると思うけど、彼女は俺と同じクラスの伝説のハジケリスト。俺達のマネージャーになってくれる人だよ。」
「Σブーッ!>>>(☆ε◎)ゲホッ!ゲホッ!」
「Σキタネ!!」
「大丈夫か?」
まさかそう来るとは思わなかったので、思わずお茶を吹き出してしまった。あたしが吹いたお茶は、よりによって真田弦一郎の顔面にぶっ掛かってしまった。
「真田君ごめん!」
「構わん。話を続けろ。」
真田弦一郎は制服のポケットからティッシュを出すと、顔を拭いた。心なしか耳と頬が紅い。
「真田、何紅くなってるの?まさか、好きなの?ぶっ掛けプレイ。」
「ほほぅ。真田君にその様なご趣味が…。」
「真田も隅に置けんのぅ。」
「ぶっ掛けプレイって何スか?!」
「ええい!!そんな事あるわけなかろう!」
必死に弁解する真田弦一郎を見て、この人にもお年頃があるんだと、少し親近感を抱いた。
それにしても“ええい”って。
妙な雰囲気で盛り上がっているが、疑問は明らかにしなければならない。
「あの、あたしがいつマネージャーに…?」
そう言った直後、幸村の顔が一瞬大奥のようになった。
「やってくれないの?」
大奥だった顔から一変し、子犬のような、懇願した表情で言ってきた。
オーラ的には大奥のままだが。
「え…、その…。」
冷や汗みたいなのがあたしの背中をつたった。
なんであたしがこんな謎の珍獣達の中に身を投じなければならないのか。考えただけでも恐ろしい。幸村だけで十分だ。
だが、
断れない圧力。
助けを求め、ブン太に視線を移した。
「お前がマネージャーか。おもしれぇじゃん!やってくれんだろぃ?」
食後のガムを膨らませながら、けろっと言われた。
「そっスよ!伝説のハジケリストさんがマネージャーだったら、真面目に部活できそうっス♪」
隣のわかめ君まで便乗だ。
「異存がある人。」
幸村の問いかけに、みんな何も言わない。柳君も真田君も、「問題ない。」と頷く始末だ。
「決まりだね。俺からは以上だ。」
そう言うと、幸村はお弁当を広げて食べ始めた。
プリキュアのお箸で、タコさんウィンナーが口へと運ばれて行く。
「待ってよ!あたしはやるなんて一言も…!つーかお箸どうしたの?!」
「母さんが妹と俺の弁当間違えて渡したみたい。それより、今食事中だから、話すなら後にしてくれないか。」
なるほど。道理でいつもよりお弁当箱が小さいと…。いや、そんな事はどうでもいい。
「幸村!ねぇってば!」
「無駄ですよ。私もそうですが、幸村君はお食事中、極力お話しませんから。レディーの前ではなおさらです。」
「諦めんしゃい。」
「そんな…。」
待てよ?決められたからって、行かなければいいのではないか。入部届だっって、書かなければいい事だ。簡単だ。
「今、言われたからといって、部活に行かなくていいと思っただろう。」
「え。」
絶妙なタイミングで、柳君があたしの思った事をズバリと言った。
「入部届を出さなければいい、とも考えていたな。」
「いや…。その…。」
人の心が読めるというのか。細木数子ならぬ、細木数男だ。
とりあえず幸村が恐かったので、チラッと様子をうかがったが、黙々とお弁当を食べているだけだ。
「精市が直々に連れて来たんだ。そう簡単にいくと思うな。」
そう言って、柳君はブレザーの内ポケットから、一枚の紙切れを出して広げた。
「えー?!Σ( ̄□ ̄;」
それは入部届けで、あたしの字であたしの名前が書かれていた。
「二年の始めに、精市が持ってきた。」
………あぁ!そういえば。
クラス替えして間もない頃、クラス一の美男子である幸村に突然話し掛けられて、紙に名前と番号書かされた気がする。その時のあたしは、幸村の中の獣に気付いていなかった。
少女漫画のような展開におもわず感激して、何も考えずに書いちゃったんだったー(~_~;)
「逃げたとしても、捕まえるまでぜってー諦めないぜ?…ジャッカルが。」
「Σ俺かよ?!」
相手が相手だ。逃げる事はまず不可能だろう。
「分かったよ…。やりますよ!やればいいんでしょ!」
「ありがとう。伝説のハジケリストならそう言ってくれるとおもったよ。」
食事中はしゃべらないはずの幸村が、わかめご飯全開で言い始めた。
「やり♪今日から来てくれるんスよね!楽しみだぜ!」
「何かと大変でしょうけど、頑張って下さい。これからよろしくお願いします。」
やはり内容も電波少年だった。幸村からの着信音は、ダースベーダーのテーマ決定だ。
その幸村は、お弁当をたたんで立ち上がった。
「そういうわけだから。常勝の名に恥じぬよう、皆気を引き締めて頑張ろう。解散!」
幸村が言うと、みんな一礼をして立ち上がった。それから、それぞれの教室へと歩き出した。
「伝説のハジケリスト、行こう。」
あたしも教室に戻ろうと、方向転換した時、ブン太からサボりの合図がでた。1年の時よく使ってたもので、ブン太がガムを口で鳴らすと、サボりのお誘いの合図というわけだ。
「ごめん幸村、先行ってて。」
「……分かった。」
みんなの後ろ姿を見送って、あたしは屋上に残った。
「久しぶり。」
「おう。」
ブン太とこうして二人でゆっくり話すのは、本当に久しぶりだった。去年よりも身長は伸びてるし、なんとなく男っぽくなったと思う。
「あの合図、忘れてたらどうすんの?」
「さぁな。」
さっきまで危険な香りの胡麻おにぎりの彼が座っていた場所に並んで腰掛け、柵に寄り掛かっている。あたしはなんとなく、ブン太の顔を直視できなかったので、コンクリートを見つめていた。
「嫌なのかよ。」
「何が?」
「マネージャー。」
ガムの味が無くなったらしく、包みにくるんでまた新しいガムを口に入れた。
「嫌っていうか…いきなりじゃん。心の準備も出来てなかったワケだし。」
「お前、よっぽど幸村に気に入られてんのな。」
「そうかな?」
ブン太の風船ガムが膨らんだ音がした。
「2年になって、お前のそばにはずーっと幸村がいたしな。」
まぁやたら話し掛けられたけど、その内容なんて、菊花賞がどうのとか、三連単がどうのとかばっかだ。後は、聞いた事の無い植物の名前と特徴くらいで。
「そうだね、全然遊ばなくなっちゃったね。またバイキングとか、スイーツ食べに行きたいね。」
「これからいくらでも行けんだろぃ。マネージャーなんだし?」
今度は、更にもう一個ガムを追加した。ブン太の行動で、これは見た事がない。
「そっか!そーゆー考え方もあるわけだね。」
「そーゆーコト☆今日の帰り、早速デニろうぜ!新しいの出てんだろぃ?」
「うん!行こう!やっぱりブン太と食べるのが一番だね。」
「なぁ、俺と話せても一緒に食いに行けないのと、一緒に食いに行けるけど話せないの、どっちが嫌だ?」
「はぁ?どっちも嫌だし。」
「ふーん。」
相変わらず何言ってるのか分からないが、この相変わらずがいい。珍獣の檻の中にしろ、またブン太と楽しくやれるんだ。
ホント、自分の単純さには驚かされる。マネージャーなんて、最初は本当に勘弁して欲しかった。けど、ブン太がいるだけで、こんなにも空気が違うから。
感謝すべきなのかもしれない。
「話すのも、食べるのも、ブン太とじゃなきゃつまらないよ。」
そう言ったあたしに、ブン太は何も言わずにガムを差し出した。
口の中に、懐かしいグリーンアップルの味が広がった。
本日をもって、ワタクシ伝説のハジケリストは、晴れて立海大付属中男子テニス部のマネージャーになりました。
終わり
[後書き]
大変お待たせ致しました(>_<)自分でもびっくりです!本当に申し訳ございませんでしたm!!(__)m
リク内容は、①立海ギャグ②マネージャー設定③ブン太寄り、でございます。
ハイ、しまった事に①しかできてませんね!しかもギャグかどうかも微妙です。続いて②。マネージャー設定ではなく、マネージャーになった瞬間設定ですね!時間差もいいトコです。最後に③。ブン太寄り…なのか?って感じですね!お題も使いこなせてないっぽいですね!
マジですみません(激土下座)
いつも仲良くして頂いている、ほかならぬ乃依様の初リクということで、気張りすぎました…(沈)
これでもかというくらいにお待たせしてしまったのに、期待はずれですみません(>_<)苦情、書き直し、百叩き、なんでも受け付けます!
伝説のハジケリスト様、ここまでお付き合い下さってありがとうございました☆そしてこんな私を罵って下さい。