お題DEキリ番小説
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俺の首は今、固定されている。
「日吉!どうしたんだよ、その首!」
「うるさい。お前はいちいち大げさなんだよ。」
廊下でバッタリ会ってしまった鳳は、俺を見るなり目をかっ広げて叫びだした。
なぜこんなことになったのか。それは昨日の夜、親父と手合わせをしたその際、頭に強い衝撃を受け鞭打ちになってしまった。俺としたことがまだまだ修行が足りない。
「今日、部活休むのか?」
「あぁ、これじゃテニスできないからな。」
「日吉、お大事に。」
「フン。」
まったく、みっともないったらないぜ。あれくらいの攻撃すら避けられないなんてな、と自嘲気味に笑いながら、部活を休むと言うために跡部さんの教室へ向かった。
「若か…?」
三年生の校舎に入ると、すぐに後ろから名前を呼ばれた。
「あぁ、宍戸さん。こんにちは。」
「おい…どうしたんだ?」
「ちょっと跡部さんに用がありまして。」
「そ、そうか…。」
宍戸さんが俺の首にあるコレをチラチラ見ていることから、首をどうしたかと聞きたかったのだと気付いた。
しかし、わざわざ自分の失態を話すバカはどこにもいない。だから俺は気付かないふりをする。
「俺急いでますんで。」
「あ、あぁ。呼び止めて悪かったな。」
「いえ。失礼します。」
じゃあと言って、宍戸さんと別れた。未知の生物を見るたかのような表情をしていたのが、俺は気に入らなかった。
「お!日吉じゃん!」
宍戸さんと別れてすぐ、また名前を呼ばれた。教室の廊下側の窓から向日さんが顔を出し、俺の首を見るなり笑いだした。
「ガハハ!!なんだよソレ?!どーした?!」
「指ささないで下さいよ。」
大体この人は、俺より小さくてすぐ体力無くなるくせに誰よりも態度がでかいんだよ。
「で、なんでお前が三年の校舎にいるんだ?」
「フン。どこにいようと俺の勝手でしょう。」
「お前かわいくねーなー。」
そう言いながらもまだ笑う向日さんを無視し、跡部さんの教室を目指した。
「ねぇ、あれ何?」
「何ってお前…。」
三年生の視線がうざったくて下を向いて歩いていると、聞きなれた声が聞こえてきた。
「ゴーレム?」
「日吉やろ…。」
「えー?!」
後ろからバタバタと走ってきて、回り込んで俺の顔を見てきたのはマネージャーの伝説のハジケリストさんだった。
「こんにちは。」
「本当だ!日吉だ!どうしたのソレ!」
驚いた様子で俺の顔を見る伝説のハジケリストさんに続いて、忍足さんも俺の前に来た。
どうやら移動教室のようで、二人ともジャージ姿に彫刻刀を持っている。
「いえ、たいしたことはないですから。」
「たいしたことないって言ったって、たいしたことなくはなさそうなんだけど。」
「鞭打ち…か?」
言いながら忍足さんは、さりげなく伝説のハジケリストさんの肩に腕を置いた。
この人はどうしていつも伝説のハジケリストさんの体のどこかしらを触っているんだろうか。セクハラってやつか?
「ねぇ、ムチウチって何?」
「頭を強く打った衝撃で、首までおかしなんねん…。ねんざと同じで癖になるらしいで…?」
伝説のハジケリストさんは俺の顔を見てしばらく考えた後、忍足さんに尋ねた。
「じゃあその度にこのヘンなの装備しなきゃいけないってこと?」
「ギブスな…。」
言葉だけ聞くと心配しているように思えるが、その表情は明らかに楽しそうだ。
「跡部に休むって言いに来たんやろ…?」
「はい。」
「俺から言っといてもええで…?」
同情に満ちた口調だが、口の端がプルプルしているのを俺は見逃さなかった。
「結構です。自分で言いに行きますから。」
「日吉、お大事にね。」
かくいう伝説のハジケリストさんも、もう限界だという様子で体を小刻みに震わせている。
「失礼します。」
どいつもこいつも笑いやがってと思いながら、少し急ぎ足で歩き出した。
「後ろから見た方がおもろいなぁ…。」
「ホントだ!」
その会話の後、機会音が流れた。携帯のカメラで撮られたに違いない。
今すぐギブスを取ってしまいたくなったが、そんなことはできないという葛藤が、俺をイラつかせた。
もうテニス部の人に会いたくない。そう思いながらさっきよりも早足で歩く。
三年生の視線に慣れてきた頃、ようやく跡部さんの教室に辿り着いた。廊下に女子が大勢いて、黄色い声を抑えて教室を覗き込んでいる。
「すみません、跡部さんいますか?」
廊下側に入り口に一番近い席に座っていた男子生徒に話し掛けると、跡部部長を呼んだ。
すると、部長の代わりに樺地がやって来た。
「おい、部長はどうした。」
「入って来い…だそうです。」
ここまで来ているのに、なんで俺がわざわざ中に入らないといけないんだ。まぁそんなこと言っても仕方のない事だから、俺は言われたとおりに部長の席まで行った。
「こんにちは。」
「どうした。お前がここへ来るなんて珍しいじゃねぇの。」
部長は洋書を読みながら答えた。
「今日の部活、休みますんで。失礼します。」
部長が本を読んでいる隙に教室から出ようとしたが、そう上手くはいかなかった。
「待ちな。どっか悪いの…」
本から俺に目を移した瞬間、一瞬部長の瞳孔が開いた。分かっている。この後あの不敵な笑みを浮かべ、バカにしたような目で俺を見るんだろう。
そう思っていたが、予想は一つも当たらなかった。
部長は俺の目を、真剣な眼差しで見た。
「大事な時期だ、しっかり治すんだな。」
「はい…。」
それだけ言うと、また本を読み始めた。正直肩透かしを喰らった気分だったが、他の先輩達の反応が反応だったので、身構えすぎていただけなのかもしれない。この人は大人だと、改めて思った。
ただ、俺をみた時一瞬珍獣でも見たかのような驚き方をされたのと、読んでいた洋書のタイトルが『カーチャックの首輪』だった事だけが気に入らなかった。
「あれ~?ヒヨシ~?」
物珍しそうな視線にも慣れ、自分の教室へと向かっていると、渡り廊下で芥川さんに声を掛けられた。
どうやら近くの茂みで寝ていたようで、眠そうなボーっとした口調だ。まぁいつもの事だ。
「こんにちは。また寝てたんですか?」
「あ~、やっぱりヒヨシだ~。伝説のキノコかと思ったんだけどな~。」
この人は会話が噛み合わない上に失礼だ。ボレーの実力は認めざるを得ないが、俺はこの人が苦手だ。
「そうですか、それは残念ですね。俺急ぎますんで、失礼します。」
「うん…。首痛そうだね~…。早く治して…一緒にテニスしようね~。」
俺は少し驚いた。今までこの状態を見た先輩達の中で、芥川さんだけが唯一普通に労ってくれた。
伝説のキノコと言われたのは確かだが、腫れ物にさわるようにでもなく、爆笑するでもなく、瞳孔を開くでもなく…。
今まで芥川さんの事を、実はただの馬鹿なんじゃないかと思っていた事に少しの罪悪感を感じた。
「ありがとうございます。」
それだけ言って、お辞儀をして歩き出した。
俺のガラにもなく、芥川さんの言葉がやけに嬉しくて耳に残ったと同時に、伝説のハジケリストさんと忍足さんのことも心に残った。
労いの言葉をそれなりに掛けつつも、顔は笑ってたあの二人。爆笑された方がまだマシだ。
俺は今日の事を、先輩達が卒業し、俺達が卒業してもきっと忘れはしないだろう。
終わり
[後書き]
大変お待たせ致しました!リク内容『氷帝レギュメンバーで日常ギャグ夢!』なのですが…。日常というよりも、日吉の怨念話になってしまいましたね!ギャグなのかもキワドイです。(その前に話の内容がキワドイ)
またしてもリク内容に沿えなかったこのラリゴ(業界用語でゴリラの意)の乳首を、皆さんでひねるようにしてつねっちゃって下さい。乳首をつねられると、その痛さに大人でも泣きます。(中には喜ぶ大人もいますが)
奥村麻斗様、リクして待って損したぜと大きく舌打ちをなされた事と思います。申し訳ございませんでした(>_<)書き直し、爆竹攻撃、何でもお受けする次第であります!
伝説のハジケリスト様、ここまでお付き合い下さりありがとうございました!顔にパンスト被ってにっこりしますのでお許し下さい!