お題DEキリ番小説
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ただ、なんとなくだけど、誰かと付き合う事になった時って、周りには言いづらい。
特にここでは。
「お、おはよう!」
「おう///」
朝練に行く途中、彼氏になったばかりの宍戸にバッタリ会った。お互い妙に照れ臭く、少し距離を置いて歩く。
「ねぇ、あたし達が付き合ってる事、まだ誰も知らないよね?」
「あぁ。今んとこ誰も何も聞いてこねーしな。」
あたしは氷帝のマネージャーとして公私混同したくない。岳人あたりに冷やかされて、仕事に集中できなくなるなんて以っての外だ。
「まだしばらくは黙っとこうね。」
「そうだな。あいつらにバレたらうるせーしな。」
宍戸もテニスに集中したいだろうし、まして激照れ屋の宍戸のことだ。跡部等に「お前らどこまでいったんだアーン?」なんて聞かれようものなら、自慢の髪をまた切り始めてしまいそうだ。
「でも、このままじゃ一緒に帰ることもできないし、付き合う前とあんまし変わらない気がする…。」
せっかく恋人ができたのだ。誰もいない教室でチョメチョメとまではいかないが、お昼ご飯を一緒に食べたり、一緒に帰って寄り道したりしたいじゃないか。
「おい、次部活が休みなのっていつだ?」
「え?次の休み?ちょっと待ってね。」
あたしの乙女発言を聞き流したのか、いきなりそんな事を聞いてきた。
あたしは鞄から手帳を取り出して、一番近い休みの日を確認した。
「えーっと、来週の土曜日が休みだよ。」
「そうか。じゃあよ、来週の土曜日…その…どっか行くか?///」
ドキーン(〃△〃)
「それってつまり…デデデ、デート…?///」
「そう…なるな///」
裸の大将張りにどもってしまったが、宍戸自らデートに誘ってきた。
さっきのあたしの乙女発言をシカトしたわけじゃなかったんだ。そりゃどもるってもんだ。
「どこ行く??」
「伝説のハジケリストの行きたい所でいいぜ?」
「うーん…。じゃあ、渋谷原宿あたりで買い物しよう!」
「分かった。俺もちょうど新しいスニーカー欲しかったしな。」
正直人込みは苦手だが、電話に乗って広くて人の多い街に出れば、誰にも見つかる心配なく堂々とデートができる。
あたしはそう思って場所を提案した。それに関しては宍戸も同じ考えだろう。
だが、この時のあたし達は、デートという言葉に浮かれていて、自分達の考えが浅はかだった事に気付いていなかった。
―土曜日―
「おはよう///」
「おう///」
滅多に私服で会わないので、やっぱり妙に緊張してしまう。
「先にスニーカー見よっか。」
「そうだな。」
土曜ということで、もの凄く混んでいる。いつはぐれてもおかしくないだろう。現にもう、宍戸の背中が遠くにある。
一生懸命追い掛けていると、あたしが後ろにいる事に気付いて、振り返って待ってくれた。
「ごめん。行こう。」
「いや、俺が悪かった。……手、繋ぐか?///」
「あ、うん…///」
やった。
初めて手を繋いだ。
渋谷最高!
ありがとう渋谷!
ぎこちなく繋がれた手がくすぐったくて、あたしは下を向いた。宍戸もきっと、真っ赤な顔をしているに違いない。
センター街を通り、大きい靴屋に入った。
「どんなスニーカーが欲しいの?」
「ナイキので、カチッとしたやつが欲しいんだよ。」
二人であれじゃないこれじゃない言いながら、スニーカーを物色していたその時。
「お!宍戸と伝説のハジケリストじゃん!偶然だな~☆二人もスニーカー買いに来たの?!」
ジローだ。
ジローに見つかってしまった。
どうやってこの場をやり過ごそうかと必死で考えていると、
「あぁ。お前もか?いいののあったか?」
宍戸は何事でもないように、至って普通に話だした。
「う~ん、バンズとナイキで迷ってんだよ!」
そして、おもいきり見られたのにジローは何も突っ込んでこない。
疑ってないのかなんなのか…。
「俺はナイキの買いに来たんだよ。な?」
「う?!うん!」
どうやら宍戸は、このままシラをきるつもりらしい。変に弁解したら、逆に怪しまれるからだろう。
「ふーん。じゃあオレこっちにしよっかな。なぁ、伝説のハジケリストはどう思う?」
「うん、いいと思うよ!」
「決まり!じゃ、またな~☆」
新しいスニーカーを抱え、ジローは嬉しそうにレジへと走って行った。
「うまくごまかせたみたいだな。」
「びっくりした…。」
「そういやジローと雑誌見てスニーカーの話してたんだよ。まさかあいつも今日買いに来るとは思わなかったぜ。」
いきなりのどっきりに、あたしの心臓は動きが早いままだ。
「でも、何も突っ込まれなかったね。」
「あいつは安全パイだからな。そういうの分かんねーんだろ?」
宍戸は根拠の無い自信に、あたしは少しだけ安心できた。
ジローが店から出たのを見計らい、宍戸が欲しかったというナイキのカチッとしたスニーカーを購入してあたし達も店を出た。
「お前どっか寄りたいトコあるか?」
「ううん。渋谷は特にないかな!」
「じゃあ原宿向かうか。その前にどっか入ってメシ食おうぜ!お前何食いたい?」
「なんでもいいよ?」
「じゃあ牛丼な。」
こーゆー気取らないトコが宍戸らしい。イタリアンとかフレンチとか言うおませさんは、跡部と忍足だけで充分だ。
一度駅側に戻り、ガード下の吉牛に入った。
「これくらい俺が出す。」
という宍戸の好意で、牛丼をごちそうになった。支払いが宍戸なので、あたしも大盛りが良かったとは言えなかった。
席について牛丼を待っていると、正面の美容院が目に入った。
「ねぇ、あの美容院オシャレだね。」
「あーゆートコって高いんだろうな。」
なんとなくその美容院をぼーっと見ていると、とても見覚えのある顔が美容院から出てきた。
「宍戸!あれがっくんじゃない?!」
「マジかよ!?あいつあそこで切ってんのかよ!」
美容院から出てきたがっくんの表情はとても清々しいものだった。あの頭に美容院で1時間かけているとは本人から聞いていたが、まさかこんなオシャレ美容院を利用してるとは思わなかった。
「でもよ、あんま変わってなくねーか?」
「そんな事言ったらかわいそうだよ。ほら、よく見たら前髪の角度が鋭くなってるかもしれないじゃん。」
「お前も曖昧じゃねーかι」
そんな話をしていると、牛丼が出された。
「しかしうろついてるもんなんだな。」
「何が?」
「テニス部の奴。どこで見られてるか分かんねーな。」
割り箸を割ると、宍戸は牛丼を食べ始めた。
「だね。…あっ!宍戸伏せて!」
「Σぶっ?!」
岳人があたし達のいる吉牛をちらっと見たので、慌てて宍戸の頭を押さえた。
また視線を戻すと、駅の方へ歩いて行った。
「ふぅ…、危なかった…。もういいよ!」
「Σお前が危ねーよ!もう少しで箸が喉にささるとこだったじゃねーか!」
「ごめんごめん。いただきまーす。」
岳人に見つかるのをなんとか防いで、あたしも牛丼を食べ始めた。
「ごちそうさま!」
「よし、行くか!」
お腹もいっぱいで満足したあたし達は、原宿に向かった。
原宿へ続く大通りを歩いていると、その途中にカラオケボックスを見つけた。そこでふと、宍戸は歌が上手い事を思い出した。
「ねぇ、時間あったらカラオケ行かない」
「はぁ?二人でかよ。」
「いいじゃん!あたし宍戸の『BELOVED』聴きたい!マジで上手いんだもん♪」
「分かったよ!///時間があったらな!」
照れる宍戸に萌え萌えしていると、これまた見覚えのある人がカラオケボックスから出てきた。
「おや?宍戸君じゃない??それと…氷帝のマネージャーさんだよねぇ?」
合コンなのだろうか。山吹中の千石ラッキー、あれ?まぁそんな名前の彼が、女の子数人と出てきた。
「ちっ…!逃げるぞ!」
「え?!ちょっ…」
宍戸はあたしの手を取ると、いきなり走り出した。振り返ると、千石君がニコニコしながら手を振っていたのが見えたけど、すぐに人込みで見えなくなった。
「ここまで来れば大丈夫だな。」
「ハァ…ハァ…ッ、何も…走る事…ないでしょ…!」
息一つ乱してない宍戸が、カッコイイやら憎いやら。
「悪かったな。あいつはジローと違って厄介だからな。何も話さないのが利口だ。ひそかに跡部と繋がってるしな…。」
「そう…なの?」
段々と呼吸が調ってきて、宍戸の中での色恋沙汰ランキングが分かった気がする。
千石君とは跡部のジュニア選抜の時に一度しか話した事がないけど、恋愛に関して鈍くなさそうだ。あたし達を見て大体察したに違いない。宍戸は言い訳すればするほど墓穴を掘るタイプなので、逃げるが勝ちだと思ったのだろう。
ジローもジローでそこまで鈍くはないと思うが、宍戸の中でジローは寝てるだけの激ニブと判断しているようだ。
「あぁ。それに…」
「それに?」
「千石は女好きだからな。俺の目の前で馴れ馴れしくされたら気分わりーんだよ///」
「宍戸…///」
「行くぞ!///」
すっかりいい雰囲気で表参道に差し掛かると、それを断ち切るように宍戸の携帯が鳴った。
宍戸はケツポケットから携帯を取り出すと、ワンタッチボタンを使って携帯を開けた。
「どーした?あ?あぁ。今原宿にいるぜ。」
よく聞き取れないのか、かた耳を塞いで話してしている。
「そうなのか?あー…わりぃ。今兄貴と来てんだ。また今度な!ははっ、分かってるって。じゃーな。」
宍戸は通話を終えると、溜息をついて携帯をポケットにしまった。
「誰から?」
「長太郎。渋谷のヤマハにバイオリン取りに来てるんだと。」
宍戸の着メロが『以心伝心』だった事に、あたしはあえて突っ込みを入れない事にした。
「で、調度近くにいるんだったら一緒にお茶でもしないかって。」
“お茶でもしませんか?”
お前はオバサンか!かわいいヤツめ!
しかしさすが宍鳳。二人の距離繋ぐテレパシー的なものを出し合ってるのではないか。
「そっか。なんか今日、渋谷原宿近辺にみんな集まってない?」
「あぁ。これからも油断できねぇな。」
「そうね!」
気持ちを引き締めたところで、ようやく竹下通りに到着した。
渋谷よりも人込みがすごく、中々スムーズに進む事ができない。
「後でクレープ食べたい。」
「そうだな。俺アイス入ってるやつ好きなんだよ。」
そんな話をしながらゆっくりゆっくり歩いていた。
あたしが視線を空寄りに上げた時、少し遠くにまさかという人物がいた。
「し、宍戸!」
「なんだ?」
「あれ…長太郎じゃない?!」
「まさか。さっき電話で帰るって……!Σ( ̄□ ̄;」
ほら見ろ。
人込みの中で頭一個分飛び出た、宍戸の以心伝心の相手が前方からやってくるではないか。
「どうしよう!」
「くっ…!こっちだ!」
慌てて近くの古着屋に逃げ込んだ。
服を物色するふりをしながら、長太郎がここを通り過ぎるのを待つ。
「中々通らないね。」
「見間違いだったんじゃねぇか?」
「まさか。モロ長太郎じゃん。略してモロチョタ。」
「略すな。」
こんなアホな会話をしていると、店の前に長太郎が現れた。
通り過ぎるのを、息を潜めて店内から見ていると、長太郎がチラッとこちらを見た。
「しゃがめ!」
「へ?!」
反射神経の男、宍戸に腕を引っ張られ、並ぶ古着に隠れるようにしてしゃがんだ。
「行ったか…?」
古着の横からコソコソ覗くと、宍戸臭を嗅ぎ付けたのか、なんと長太郎が店に入ってきた。
「長太郎って古着なんて着るの?」
「いや、あいつに古着は似合わねぇだろ。いつもマルイとかで買ってるんじゃねぇか?」
「だったら何で入ってくんのよ。」
「俺が知るかよι」
きっと古着を見て宍戸に思いを馳せるに来たに違いない。この服は宍戸さんぽい、とか。
「やべぇ!こっち来た!」
「どうするの?!」
「しゃがんだまま店から出る。」
言うと宍戸はそのまま足音を立てないように、素早く出入口へと移動した。
不振者極まりない。
「ちょっと待って!」
だが、背に腹は変えられない。あたしも宍戸の後に続いた。
「なんか疲れたね…。外も暗いし。」
「もう夕方だもんな。」
予想外の遭遇者達のおかげで、結局宍戸のスニーカーしか買い物をしていない。渋谷原宿というあたしのチョイスが悪かったと思う。まさにバッテンチョイスだ。
「帰ろうか。門限あるし。」
「……ちょっと待ってろ!ここから一歩も動くんじゃねぇぞ!」
「え?!ちょっ…!」
そして宍戸はテレポートダッシュの要領で人込みに消えていった。
20分くらい経った頃、宍戸が大急ぎでこちらに駆け寄って来た。
「わりぃ!ヘンな奴に絡まれなかったか?」
「うん、大丈夫。なんか買いそこねたものでもあったの?」
「え?!いや、その、アレだよ!///」
「どれだよ。」
宍戸がいきなりきょどり出す意味が分からなくて、あたしは首を傾げた。
すると宍戸は、一つ咳ばらいをし、小さな紙の袋をあたしに差し出した。
「これ…お前にやるよ///」
「え…?何?」
袋を開けると、小さな苺のペンダントが出てきた。
「今日、逃げてばっかでまともに遊べなかったからよ///」
「あ、ありがとう…。苺の…西野さんみたいで嬉しい…///」
予想外すぎる出来事に、気の利いた言葉が出てこない。
「安モンだけどな///」
「つけてみていい?」
「あぁ///」
あたしの胸に、苺が光った。
「似合う?」
「おう///」
始めてのデートは、色々慌ただしかった。
けど、
距離がグッと近付いた。
―次の日―
朝練終了後、自分の着替えを済ませてからレギュラーの部室に入ると、日吉以外は全員いた。
「お疲れー。」
「お疲れさん…。なんや自分…可愛いネックレスして…。」
「あっ、コレ?!」
宍戸からのプレゼントを突っ込まれ、あたしと宍戸はビクッとした。
忍足は、少しでもあたしが髪の毛を切ったり色を変えたりすると気付く。少しの女の変化をも見逃さないという、敏感伊達眼鏡だ。
「えっと………拾った。」
「Σ拾ったんかい!」
自分でも間違えたと思った。
「そのわりには綺麗じゃねぇの。なぁ?樺地。」
「ウス。」
「苺のネックレスとかいって、西野つかさ気取りかよ!」
跡部と樺地と岳人まで忍足に便乗してきた。もはやあたしも宍戸も何も言えない。
「いいじゃないですか!俺はセンスいいと思います!」
長太郎の言葉が、宍戸をフォローしてるようにしか思えなくて、あたしはいてもたってもいられなくなった。
「あ、あたしもう帰らなきゃ!今日見たいテレビあるし!じゃあねみんな!」
そそくさと部室を出ると、時間差で宍戸も出てきた。やはりあの空気に耐えられなかったのだろう。
「危なかったね。」
「あぁ。冷や冷やしたぜι」
「ごめんね、忍足の目ざとさをあなどってたよ。」
「しょうがねぇよ。次はうまくやろうぜ。」
「うん。」
反省会と、今後の事を話し合いながら、あたし達は帰路についた。
「なぁ、あれって宍戸があげたっぽいよな!俺昨日美容院の帰りにあいつらが吉野家で飯食ってるの見たし。」
「吉野家かい…。色気ないなぁ…。」
「なんか伝説のハジケリストが宍戸の頭押さえ込んでたぜ?」
「俺も会ったよ!二人で仲良くスニーカー選んでた!しかも手ぇつないでたC~。」
「俺も昨日渋谷にいて、宍戸さんに電話したらお兄さんといるって言われちゃいましたよ。」
「別に隠さんでもええのにな…。初々しすぎて、見てるこっちが恥ずかしいっちゅーねん…。」
「見てておもしれーじゃん☆俺達にバレねーように必死だもんな~。」
「ほっとけ。あいつらなりに気ぃ遣ってんだろ?おい樺地、俺達も帰るぞ。」
「ウス。」
あたしと宍戸の関係は、引退するまで秘密にしておこう。
それまでの間、うまく逃げきるんだ。
あたしと宍戸なら、きっと大丈夫だよね。
終わり
[後書き]
大変お待たせ致しました!リク内容『回りにバレバレの秘密カップル』です。
が、長過ぎくど過ぎ普通過ぎですよね。なんも面白みが無くてすみませんm(__)m
無駄にページを使ったわりにはつまらない…
すみません!本当にすみません!
書いてる私自身は、宍戸とデートしたり、奴らから逃げたりと、妄想をフルに楽しみました。騎士様、素敵な設定をありがとうございました(^o^)それなのにこんなんで台なしにしてしまって申し訳ないです(;_;)
書き直し承りますので!
伝説のハジケリスト様、ここまでお付き合い下さってありがとうございましたm(__)m