お題DEキリ番小説
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中学三年に上がる前日。部活を終えて小腹が減った庶民派のあたし達は、マックに寄る事にした。
がっくんやジローも誘おうとしたけど、がっくんは夕飯が唐揚げだからと言ってすぐ帰ってしまい、ジローは知らぬ間に消えていた。
「宍戸またタブルチーズバーガーなの?」
「そーゆーお前こそ、またてりやきバーガーじゃねーか。」
割とどうでもいい事を言い合いつつ、包みをあけてほぼ同時にハンバーガーを口にした。
「明日から三年生だね。」
「特に何も変わんねーだろ。」
「そうかなー?クラス替えあるじゃんか。」
好きじゃないのか、宍戸はピクルスを抜くと、ペーパーの上に置いた。
「クラス替えか。どうでもいいけどな。」
「どうでもよくないし。中学最後のクラス替えだよ?」
ピクルスを抜いた時指についたケチャップを舐めると、大きく一口ハンバーガーを口に入れた。
「なんだよ。誰か同じクラスになりてー奴でもいんのか?」
「その逆よ!」
そう。あたしは幼稚舎から今まで、ずーっと滝と同じクラスだった。
だが、別に滝が嫌いというわけではない。
「まだ言ってんのかよ。滝に失礼だろ。」
「宍戸は分からないだけだもん。滝の恐ろしさを。」
何故滝と同じクラスになるのを避けたいか。
「見られるくらい別にいいじゃねーか。減るもんじゃねーしよ。」
「減る勢いでガン見だから!しかも超至近距離!」
ずっと、本当にずっとあたしを見てくる。それだけでもちょっと嫌なのに、くすくす笑いながら見てくるのだ。
その距離僅か15㎝。幼少期から髪形が変わってないのも気になる。
「部活ん時は普通じゃねーか。」
コーラをごくごく飲み、ポテトを3本一気に口に入れた。よほど腹が減っていたらしい。
「跡部がいるからでしょ。つーかよく考えたらクラスもずっと一緒で、部活まで一緒なんだけど!」
あたしの人生滝一色みたいで、すごく嫌だ。
サブリミナル効果よろしく、滝が必ず視界にいる。
「席も隣だっけか。」
「Σ言わないでー!」
本当に呪われてるんじゃないかと思う。席替えをすれどもすれども、かならず滝が隣の席、もしくは前後に来るのだ。それはつまり、班がずーっと一緒だったという事実の裏付けなのだ。
「しかしすげぇよな。本当にずっとだもんな。」
運命じゃねーのくらいに言われ、なんか悲しくなってきた。
「もうやだ…。あたし明日学校行かない。」
「マジかよι」
「また滝と同じクラスになって、何かあるたび“やるねー”って言われるのが目に見えてるもん…。」
滝の事は本当に嫌いじゃない。嫌いじゃないけど正直キツイ。
「あのよ、こんな時に不謹慎かもしんねーんだけどよ…」
宍戸の声のトーンが変わったので顔を上げると、宍戸はすでに全て食べ終えていた。あたしはまだ、てりやきバーガーを半分食べたところだと言うのに。
「何?これ食べたいの?」
宍戸の目線の先には、あたしのてりやきバーガーがあったから。
「ちげぇよ!その…なんだ。滝が羨ましいって思ったっつーか…///」
「はぁ?」
「Σなっ!なんでもねーよ!!///早く食えよ!」
何ギレだか分からないが、コーラを勢いよく吸い込んで宍戸がむせた。
「大丈夫?」
紙ナフキンを渡すと、サンキュと言って口元を押さえた。
「明日、ちゃんと学校来いよ。」
「……。」
「俺が一緒に見てやるからよ///」
宍戸は優しい。ぶっきらぼうだけど、優しい。
「本当?」
「あぁ。本当だからしけたツラしてんじゃねーよ。ホラ、食え。食って元気出せ。」
「ありがとう。」
宍戸はあたしのポテトをごっそり取ると、ほらよと言って差し出してきた。
あたかも自分のものをあげるかのように差し出してきたので、最初から自分のポテトだということを忘れてしまいそうになったのは、まぁどうでもいい話だ。
「宍戸と同じクラスになれたらいいのに…」
「あ?何か言ったか?」
「なんでもない!ごちそうさま。」
少しだけ、元気が出た気がした。
―翌日―
「やっぱやだ!怖い!」
「ここまで来て何言ってんだよ!行くぞ!」
廊下にある掲示板の手前でしゃがみ込むあたしを、宍戸が無理矢理立たせようとあたしの腕を引っ張る。
「無理!マジ怖い!滝怖い!」
「いい加減にしろ!悪い方にばっか考えんな!もしかしたらって事もあんだろ?!」
「でも…」
あたしの腕から、溜息と共に宍戸の手が離れた。
「…分かった。俺は見てくるぜ?ついでに伝説のハジケリストのも見てきてやるよ。」
呆れられた。
仕方ない。あたしは逃げてるだけなのだ。
「そこで待ってろ。」
宍戸の背中が、“激ダサだな”と言っているようだった。
「待って!」
「あ?」
「あたしも行く!自分で見る!」
あたしは立ち上がり、腹を括った。
「よし、よく言ったな!じゃあ…行くぞ。」
「うん!」
掲示板の人だかりを掻き分け、宍戸と二人でどうにか真ん前に来た。
「毎年そうだけどよ、見付けんの一苦労だよな。」
「だね。」
バカみたいに広い氷帝学園。もちろん生徒数もバカみたいに多い。その中から自分の名前を見付けるのは、ウォーリーを探すより時間が掛かる。
「おい、あったぞ!お前の名前!」
「えっ、どこどこ?!」
宍戸が自分の名前より先に、あたしの名前を探してくれたのが嬉しかった。
が、
「あ…」
いた。
滝がいた。
同じクラスに
滝がいた。
またしても、
滝がいた。
滝がいた。
滝がいた。
滝が…
ティー、エー、ケー、アイ、TAKIがいた…。
「あ、あのよ、ほら、あ、アレだよ!」
「どれだよ…」
慌てまくる宍戸の横で、あたしの頭には『やるねー』という言葉がこだましている。
With・滝
feat→滝
いっその事、メールアドレスにしてしまおうという考えがよぎった。
「おい伝説のハジケリスト!」
「はーい、どうしました萩之介。」
「お前の隣のクラスに俺の名前があったぜ?!」
「隣のクラスじゃ意味ないで萩之介…」
「語尾にいちいち萩之介って付けるな!( ̄□ ̄;」
もう、あたしは色々諦めかけていた。エンドレス滝、それがあたしの運命…。
「ふふふ。宍戸バイバイ…。今までありがとね。」
「バカ!よく考えてみろ!俺が隣のクラスっつー事は、体育一緒になるだろーが!そん時だけでも助けてやれんだろ?!」
宍戸は言いながらあたしの肩を揺さ振った。
しっかりしろ、と。
「体育かぁ~…体育が終わったら滝パラダイスだわね~フフフー。」
「休み時間とか、朝とか、俺のクラスに来いよ!面倒なら俺が行ってやるからよ!だからそんなラリった目すんな!」
「宍戸…。」
宍戸が必死に、かつ熱烈にあたしを励ましてくれるのは、とても嬉しい。
宍戸の熱意によって、自分を取り戻せた。
けど、それによって見えてきたものがある。
「うん…。ありがとう。でもね…」
「何だよ。まだ何かあんのか?」
「みんなが見てる…///」
「!!Σ(〃□〃 )」
それから、あたし達が付き合ってるという噂があっという間に広がった。
それでも律義に、掲示板の前で言った通りに毎日来てくれる宍戸に惚れるのに、そう時間はかからなそうだ。
「やるねー。」
「?!Σ( ̄□ ̄;)」
終わり
[後書き]
すみません。滝がヒドイ扱いになってしました…。そして何故滝を絡めたか、それは私にも分かりません。リクについてあまり指定がなかったので、自由にやらせて頂きましたがどうでしょうか?宍戸は人情の男だと、私は思います。
抹茶様、お待たせしておいてコレは有り得ないと思ったら、遠慮なくおっしゃって下さい(>_<)書き直します!
伝説のハジケリスト様、ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました☆