お題DEキリ番小説
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伝説のハジケリストが王者立海大テニス部のマネージャーという、何かと気苦労が絶えない役割に着かされて約半年が経った。
幸村によってほぼ無理矢理やらされた、参謀の計らいにより気付いたらマネージャーになっていた、という事態になるも、伝説のハジケリストはここまでついてきてくれた。もはや伝説のハジケリストがいないテニスコートはネギの無いすき焼き同然であると誰もが思っていた。ちなみに肉は幸村だ。
そんな日頃の感謝の意味を込めて、レギュラー全員でおもてなしをしようということになった。言い出したのは赤也だった。
「もうそろそろだな。」
蓮二が時計を見て言った。
「皆急がないと。真田、それもうちょっと右に。」
「うむ。」
もちろんこのことは伝説のハジケリストには内緒にしてあり、いつもどおりに部活をやることになっている。
伝説のハジケリストが部室に到着するまで(参謀計算で)もうじきだった。準備完了までもう少し時間が掛かりそうなので、各自ピッチを挙げて作業に取り組んだ。
外部からは見えないよう、視聴覚室からわざわざ暗幕を借りてきて部室の窓に取り付けている。他の外の部活の部員が見たら「テニス部あやしい」と言われるに違いないが、サッカー部も野球部も遠征でいないのが救いだった。
「仁王先輩、こっち持っててもらってもいっスか?」
「おう。」
迅速かつ丁寧に準備を進めていると、鍵の掛かったドアノブを開けようとする音がした。
「予想より早かったな。」
伝説のハジケリストの到着だ。鍵が掛かっているため、ガチャガチャと乱暴にノブを回した後、闇金業者のような感じでドアをドンドン叩いている。
「どーすんの?ドア壊れるぞ。」
「しかし、準備が終わるまで中に入れるわけにはいかない。」
外では伝説のハジケリストが、誰がいつの間に、そして何のために暗幕など取り付けたのかとか、中に誰もいないのかとか、なんで真田はモテないのかとか色んな疑問を浮かばせながらドアを叩いていたが、応答が無いので窓の方へ回った。
窓が開いてるかもしれないと、そう思って手を掛けたが、やはり窓も閉まっていたので幸村に電話することにした。
中では幸村の携帯が鳴り、ディスプレイを見ると当然伝説のハジケリストの名前が表示されていた。
「幸村部長の着うた尾崎っスか!シブイっスね!」
「『OH MY LITTLE GIRL』だろぃ?いい歌だよな。」
「しかも、伝説のハジケリスト限定の着うたじゃ。普段は『15の夜』。」
「へぇ、あいつはどう見てもリトルって感じじゃねぇけどな。」
一見合っていないが微妙に合っている尾崎と幸村。仁王から尾崎のアルバムを借りてからすっかり気に入り、自分が今15歳だからという理由で15の夜を設定した。伝説のハジケリスト限定のを設定したのはもちろん、幸村が伝説のハジケリストを大好きだからだ。色んな意味で大好きだからだ。
『あ、幸村?なんで部室閉まってんの?みんな来てないの?』
「ごめん、今皆着替えてるから、もうちょっと外で待っていてくれないかな。」
『今更何言ってんの。早く開けてよ。』
みんなが着替えをしている中で、いつも余裕で部誌を書いている伝説のハジケリストにそれが通じるはずはない。
幸村は中が見えないように暗幕の下から潜り込み、窓越しに伝説のハジケリストと対峙した。
「実は、真田の体中にヘンな斑点ができちゃったらしくて…。目に優しくないから、伝説のハジケリストには見せたくないみたい。」
『え…それって大丈夫なの?』
「うん。何かのアレルギーが出ただけだから、部活に支障はないらしい。」
『そっか…。』
「本当なら伝説のハジケリストを中に入れて真田を外で着替えさせたいところだけど、さすがに可哀相だから。」
勝手にアレルギストにされ、その上哀れまれているとは知らず、真田は黙々とお皿を並べている。
「伝説のハジケリストセンパーイ!」
『赤也!』
自分の作業が終わった赤也が、暗幕をくぐって窓際に来た。嬉しそうに手を振る赤也に対し、伝説のハジケリストも笑って手を振った。
『幸村、とりあえず窓だけでも開けてよ。電話代勿体ない。』
「分かった。」
「……。」
分かったと言って電話を切った幸村だが、一向に窓を開ける素振りを見せない。
「部長、窓開けないんスか?」
赤也の問いかけに対し、柔らかく微笑んでからまた窓の向こうの伝説のハジケリストに顔を向けた。赤也はワケが分からなかったが、赤也よりもワケワカメ意味ピーマンなのは伝説のハジケリストだ。
「ちょっと、開けてよ。」
さすがテニス部、窓ガラスはとても良い品質のものを使っており、ボールが当たっても割れない上に防音効果もある。よって全く聞こえないのだ。
伝説のハジケリストが何て言っているか幸村には分かっていたが、わざと首を傾げて見せた。聞こえない、もう一度、と言わんばかりに嘘くさい苦笑もしてみせた。
「あーけーてー」
伝説のハジケリストはそれに応えるように、口を大きく開けてはっきりと動かした。外は暑い。どうにかして中に入りたくて必死だ。
「“かけて”って…。まったく、伝説のハジケリストは大胆だな。」
え、「開けて」って言ったんじゃないんスか?と赤也は言いたかったが、幸村のイキイキとした横顔を前にそんなことはとてもじゃないけど言えなかった。
「伝説のハジケリスト、どうして欲しいの?」
それからまた首を傾げて見せた。あぁ、幸村部長はやっぱりすげぇ、と、思春期中の思春期である赤也はなんだか少しテンションが上がった。
「いーれーてー!」
伝説のハジケリストは窓越しの幸村にそう訴え、窓に掌を押しつけた。
「伝説のハジケリストは本当にかわいいな。」
窓越しの伝説のハジケリストの掌に自分の掌を重ねると、携帯を取り出し電話を掛けた。
「悪いけど、窓も開けられない。」
『何で!』
「あと少しの辛抱だから、それまでそこにいてくれ。」
『えー…』
話していると、ジャッカルが幸村を呼んだ。幸村の作業をジャッカルが代行していたので、シカトするわけにもいかなかった。
「すまない。」
『ちょっ…!』
電話を切り、名残惜しそうに窓から手を放すと、暗幕をくぐって中へと入っていった。
残った赤也は窓を叩いて、マジわけ分かんないんですけどと言わんばかりの表情の伝説のハジケリストの気を引いた。なんとか注意を逸らしたかった。
「先輩、もう水着買いました?」
ジェスチャーで精一杯伝えるも、伝説のハジケリストには赤也がイカレたダンスを踊ってるようにしか見えなかった。
「そちらの様子はどうですか?」
幸村と交代で、今度は柳生が来た。
「伝説のハジケリスト先輩明らかにヘンに思ってるっスよ~。」
「それは致し方の無い事です。が、女性をいつまでも暑い場所へ閉め出しているのは忍びないですね。」
「準備はどうっスか?」
「もうすぐ完了です。それまで私が伝説のハジケリストさんの気を紛らわせるとしましょう。」
柳生は携帯を取り出すと、伝説のハジケリストに電話を掛けた。
「もしもし、柳生です。」
『見れば分かるし。ねぇ、まだ入れないの?』
「えぇ、もうしばらくお待ち下さい。」
『暑くて溶けちゃいそうなんだけど…お願いだから早く中に入れて…。』
「は、破廉恥な!///」
『はぁ?( ̄△ ̄;)』
横で柳生の電話に耳を近づけていた赤也も、ちょっと先輩言い方エロいなーと思ったが、柳生がものすごく取り乱したのでそっちの方が気になった。
「そんな官能小説のような台詞を言うのはやめたまえ!確かに伝説のハジケリストさんは清らかな女子とは言い難いですが、女子であることには変わりありません。自覚を持って下さい。」
「やぎゅー先輩なにげに失礼っスねι」
伝説のハジケリストに白い目で見られていることに気付いた柳生は、咳払いをしてメガネを直し、心を落ち着かせた。
「私としたことが、取り乱してしまって申し訳御座いませんでした。」
『いえ…』
誰の目から見ても明白なくらいドン引きである伝説のハジケリスト。それにもめげずに柳生は続けた。
「伝説のハジケリストさんは今週のトリビアの泉をご覧になりましたか?」
『ううん、見てない。』
「携帯電話で通話しながら、二人同時に歌を唄うことは出来ないそうですよ。」
『へぇ~』
「いい反応ですね。どうです、試してみたいとは思いませんか?」
『結構です。』
そう言って伝説のハジケリストは電話を切った。容赦なく切った。何を言っても手遅れな柳生に赤也が同情していると、ブン太と仁王がカーテンの中に入ってきた。
「はい交代。」
「お?どうした柳生。浮かない顔して。」
「はは、聞かないであげて下さい…。」
時間をかけて築いてきた信頼を失うのは、たった一瞬だ。赤也は柳生からそう学んだ気がした。日々勉強である。
「伝説のハジケリストもシケた顔しとんのー。天才的なテクニックでどうにかならん?」
「おう、任せとけ!」
ブン太は伝説のハジケリストの真っ正面に立ち、ガラスを叩いて柳生よりも浮かない顔をしている伝説のハジケリストの気を引いた。
「よし、見てろぃ!」
噛んでいたガムを紙に包むと、新しいガムを取り出そうと制服のポケットに手を入れた。
「あれ??」
「どうした。」
「あ、カバンの中に…………ックショイ!!」
伝説のハジケリストからしてみれば、真ん前のブン太が「俺を見ろ」という合図を送ってきたので、言われたとおりにしたとたんくしゃみをかまされたのだ。ブン太からとんだ汁は窓に吹き掛かったのだが、窓越しとはいえ微妙なアトラクションに遭遇した気分になった。
果たしてブン太が何をしたかったのか、伝説のハジケリストは勿論仁王にも分からなかった。
「平気か?」
「あ゛~、平気平気。ちょっとムズムズ来ただけ。ティッシュ取ってくるわ。」
ブン太は目的を果たさずくしゃみこいただけで、マイペースに中へと戻っていった。仁王は伝説のハジケリストと目を合わせて肩をすかした。
伝説のハジケリストもいよいよ限界を迎えようとしていた。窓越しに仁王とあっち向いてホイをしていたのだが、疲れて座り込んでしまった。
それを見かねた仁王が中へ入ると、丁度全ての準備が完了したところだった。
「伝説のハジケリストは?」
「外におるよ。」
「あ、俺呼んでくるっス!」
部室から飛び出して窓の方へ回ると、しゃがみ込んで木の枝で地面に「暑い」「キモい」と書いている伝説のハジケリストがいた。
「伝説のハジケリスト先輩お待たせっス!さ、中入って下さい!」
「もー!遅いよー!斑点なんて気にしないっつーの!」
そういえば真田に謎の斑点ができたからという理由で閉め出していたんだと、赤也は思い出して笑いを堪えた。
伝説のハジケリストよりも前に行き、ドアをゆっくりあけて伝説のハジケリストを招き入れるようにして通した。
「え、真っ暗で何も見え…」
その瞬間、いくつかのロウソクに火が灯り、部室内が仄暗く照らされた。
「伝説のハジケリスト、今日が何の日だか分かるか?」
ロウソクの向こうで蓮二が揺れている。夏と言えば怪談、怪談と言えば俺、そんな雰囲気を醸し出している。
「その様子だと、分かっとらんようだな。」
「あ、真田、斑点大丈夫なの?」
「斑点?何の話だ。」
「今日はね、伝説のハジケリストがマネージャーになって約半年が過ぎたお祝いをする日だよ。」
こりゃ面倒だと思った幸村が、とっさに口を挟んだ。
「いつも頑張ってるから、そのお礼だ。」
暗闇に紛れ、海外のオカルトみたいになっているジャッカルが伝説のハジケリストの頭をポンと叩いた。
「みんな…」
「さぁ、始めようか。伝説のハジケリスト、こっちへおいで。」
「やっと食えるぜ!」
「腹減ったっスよね!」
「伝説のハジケリストさん、先ほどのことですが…」
こうして伝説のハジケリストいつもありがとうの会が始まったわけだが、最後まで暗幕にロウソクだったその理由が伝説のハジケリストにはイマイチよく分からなかった。演出なのか、それとも他に目的があったのだろうか。
そしてどういうわけか、部室の壁には小池徹平がたくさん貼られていた。ここまで来るとむしろ悪意を感じるほどの枚数だ。コレを貼るのにかなりの時間が掛かっていたのだ。
女子はみんな小池徹平が好きだからという認識からそうしたのだが、伝説のハジケリストが小池徹平を好きかどうかは定かではない。それに、暗闇にロウソクというシチュエーションのおかげで小池徹平を呪う会みたくなっているのも、伝説のハジケリストは気になって仕方なかった。
仁王の料理とブン太と幸村の作ったケーキを食べながら、伝説のハジケリストは初めてマネージャーになって良かった、正確には無理矢理させられたけどやめなくて良かったと思い、柳生も大目に見てやることにした。
「みんな、ありがとう。」
伝説のハジケリストが言ったありがとうはとても小さい声だったけど、全員にしっかりと届いていた。
終わり
[後書き]
大変お待たせしました!リク内容は『下ネタばんざいな立海ギャグ』です。ところがどっこい、下ネタはどこにあるのか、お前カマトトぶってんじゃねぇ!という感じになってしまいました。すみません、もう本当にすみません!もうしないからぶたないで!
いつも誰かの視点で書いていましたが、ちょっと変えてみました。読みづらかったら申し訳ないです。(犯罪者が犯罪を重ねた瞬間はこんな感じ)
林檎様、私はあなたに何から謝ったら良いかサッパリ分かりません。お礼にととても素晴らしいイラストを頂いておいて…。本当に申し訳ございません(>_<)非難中傷、書き直し承ります!24時間体制です!
伝説のハジケリスト様、ここまでお付き合い下さってありがとうございました!プレステ2の角に頭打ち付けてきます!