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「うわぁ~♪すごいねー!」
「おい剣太郎!ちょろちょろしすぎてはぐれんなよ!」
今日は地元の神社で夏祭りが開催されている。毎年テニス部のみんなで、こうして一緒に来ている。今回亮は、親戚が来ているからと言って欠席だ。
「サエさんもダビデも浴衣似合うね!」
集合してみて驚いたのが、今年は浴衣があたしを含め3人もいたことだ。
元がいいのか、ダビデはイイオトコ的な雰囲気が引き立ち、サエさんなんて色気がいつもの3割増だ。
「ありがとう。伝説のハジケリストもすごく似合ってるよ。今すぐ帯をほどきたいくらいにね。」
「帯を解かれたら帯(怯)えてしまう…ブッ!!」
「だからテメェは黙ってろ!!」
「∑うおっ!バネさんたんま…!」
いつでもどこでもお約束。一日約10回くらいのお約束。
それにしても、浴衣が似合うと言ってくれたのに、なぜ帯を解きたいのだろうか。あたしを裸にしたいのか、または似合うというのは建前で、今すぐ脱いで欲しいほど見苦しいのだろうか…。
そんな事を考えていると、視界にイカ焼き(を持ったいっちゃん)が入ってきた。
「どうしたのね~。」
「ううん。ねぇ、あたし浴衣似合わないかな?」
するとイカ焼き(を持ったいっちゃん)は、「そんなことないのね!とっても似合ってるのねー☆あ、ラムネ…」
と言ってラムネに誘われて行ってしまった。結局、みんな好き放題でバラバラに散った。
「あたしもイカ焼き食べたいな…」
「イカかい?ダメだよ、女の子がそんなこと言っちゃ。はい、どうぞ。」
指をくわえてイカ焼き(いっちゃん)の後ろ姿を見ていると、視界に焼きそば(を持ったサエさん)が入ってきた。
「いいの?!」
「もちろん。」
「わーい♪ありがとうvV」
サエさんから焼きそばを受け取り、早速頂くことにした。
「立ったままじゃ食べにくいから、あそこに座ろうか。」
サエさんが少し離れた石段を指差して言った。
「うん!」
サエさんから頂いた焼きそばを食べていると、頭に見たこともないキャラクターのお面をつけた剣太郎が、ヨーヨーをビヨンビヨンさせながらやって来た。
「サエさ~ん!伝説のハジケリストさ~ん!」
「バネさん達は?」
「知らなーい。今ね、いっちゃんがわたあめ列んでくれてるよー!あ、そうだ!はい、コレ伝説のハジケリストさんにあげる~♪」
そう言って、剣太郎はポケットからスーパーボールを出してきた。
「ありがとう。」
「へへへ!」
剣太郎かわいいなーと、あったかい気持ちになっていたら、
「じゃあ、俺のスーパーボールは後で見せてあげるから。」
と、サエさんがさりげにセクハラ発言をした。
「サエさんもスーパーボールすくいやったの??」
剣太郎がサエさんに真顔で聞いていたが、あたしは関与しない事にした。
「お待たせなのねー!」
いっちゃんがわたあめを両手に持ち、嬉しそうに駆けてきた。お祭りというのは、みんなを笑顔にする力があるらしい。
「これは伝説のハジケリストとサエで半分こするのね。」
わたあめを一つサエさんに渡すと、いっちゃんはあたし達が腰掛けている石段の下に座った。
「いっちゃん、バネ達見なかった?」
「さぁー?見てないのね。」
「ボクが電話してみるよ!」
剣太郎が折りたたみの携帯を開くと、すぐに着信音が鳴った。
剣太郎の携帯ではなく、横にいるサエさんから聞こえてくる。
このイントロは間違いなくタッチだ。サエさんも甲子園に便乗するんだと、少し意外に思った。
「もしもし。バネ?今剣太郎が電話しようとしてたんだ。今どこ?」
あたしは食べ終わった焼きそばのパックを片付け、わたあめに手を伸ばした。
「分かった。今行くよ。」
サエさんは携帯をしまうと、あたしからわたあめを、あたしの手ごと取った。
「バネとダビデが神社の近くの公園で待ってるって。行こう。」
「あー!サエさんずるい!ボクも伝説のハジケリストさんと手ぇ繋ぎたい!」
「しょうがないな、じゃあ剣太郎は左。今日だけ特別だよ?」
「やったー♪さすがサエさん!」
「荷物持ってあげるのね。」
いっちゃんに荷物を持ってもらい、何も言えないまま両サイドを塞がれ、そのまま公園へ向かった。
「よう!待ってたぜ!」
公園の入口に着くと、バネさんとダビデが大きなビニール袋を持って立っていた。
「どこ行ってたの?」
「ちょっとな!つーかなんでサエと剣太郎と手ぇ繋いでんだよι」
あたしが聞きたいくらいだ。
「ねぇねぇバネさん、その袋何??見てもいい?」
剣太郎はあたしの手を離し、ビニール袋に飛び付いた。
「ああ、見てみろよ!」
「わぁ~♪花火だー!」
「みんなでやろうぜ!」
というわけで、あたし達は花火をやることになった。バネダビセレクションの花火は、派手な物が多いだろうと思ったが、煙玉や普通の手持ち花火、線香花火もあって安心した。
「見て見てー!聖火ランナー♪」
剣太郎は手持ち花火を持って走り出した。
「聖火ランナーの成果を見よ…ぶっ!」
「うるせぇんだよ!これでもくらえ!」
「Σうおっ!!」
バネさんはベンチの後ろから、ダビデめがけてロケット花火を放った。ダビデは間一髪で避けたが、頭上をかすった。
「危ないのねー。」
いっちゃんは煙玉に火を付け、ウンチングスタイルで、地味にむくむく伸びる燃え殻を見ていた。その姿が妙にしっくりきていた。
あたしも何かやろうと、花火の山をあさっていると、視界に線香花火が入ってきた。
「一緒にやらない?」
顔を上げると、夜の電灯のおかけでさらに色っぽいサエさんが笑っていた。
「うん…。」
少しクラッときたのを自覚しつつ、サエさんから線香花火を受け取った。
「綺麗だね。」
「そうだね。」
サエさんに火を点けてもらうと、バチバチという、線香花火独特の小さな音がした。
周りではバカによるバカ騒ぎが巻き起こっているが、ここだけは別世界のように思えた。
「線香花火ってさ、綺麗だけどなんか寂しいよね。」
「そうだね。落ちる瞬間が、何とも言えないね。」
そう言ったサエさんの線香花火が、ポトッと落ちてしまった。
「ははは。言ったそばから落ちちゃったよ。もう一つやろうかな。」
その後を追うように、あたしの線香花火も落ちた。
「サエさん、あたしも。」
「どうぞ。」
「ありがと。」
二個目の線香花火を点けた後、あたし達はしばらく黙った。
二人とも、ただ線香花火を見ていた。
もう夏も終わりなんだ、そう思うとなんだか寂しくなってくる。
「伝説のハジケリスト。」
「んー?」
「好きだよ。」
落ちた。
あたしは落ちた線香花火を見つめ、サエさんの顔を見れずにいた。
サエさんの線香花火はまだバチバチと燃えている。
「好きだ。」
どうしていいか分からず、手を伸ばしてもう一つ線香花火を取った。
「点けるよ。」
「うん…。」
またサエさんに火を点けてもらい、それでもまだ、線香花火から目を離し、サエさんを見ることができない。
サエさんの線香花火の火が、少ししぼんできた。
サエさんは待ってる。
あたしの答えを。
待ってるはずなのに、無理には聞こうとしない。
そんなサエさんが
優しいサエさんが
「あたしも…好き…デス。」
また落ちた。
どうやらあたしは線香花火に向かないらしい。
「もう一回言って?」
「もう言わない///」
「お願い。」
「イヤ。」
「じゃあ、せめてこっち向いてくれないかな。」
きっと凄く真っ赤な顔をしてるだろうけど、夜なのでバレないだろう。
あたしは精一杯平静を装って、サエさんに向いた。
一瞬
サエさんの顔が、真ん前にあった。
唇が触れていた。
二人の線香花火はとっくに消えていたけれど、握り締めたままで。
今年の夏祭り。
みんなに内緒で、好きな人と、初めてのキスをした。
終わり
[後書き]
夏休み前から用意していたこの話。途中まで書いていたのですが、「夏終わるまでに書き終わればいいや」なんて放置していたら、もう夏終わるじゃないの!というわけで慌ててアップしてみました!
なぜ六角かと言いますと、夏と言えば六角、夏と言えばサエさん、みたいな考えが私の頭にあるんですよー。ハイ、なんでもありません。独り言です。
微妙な話ですみませんでした(>_<)