♪お誕生日のあなたへ♪
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その日土浦梁太郎は、いつもよりもかなり早起きをした。
しかし、微塵も苦に思わない。なぜなら、喜ばせたい人がいるからだ。
「ごめん、待った?」
「いや、俺も今来たところだ。」
先日土浦は、伝説のハジケリストをメールで呼び出していた。
『明日、昼休みに屋上に来い。昼飯持って来るなよ?』
そのメールに忠実に、手ぶらでやってきた伝説のハジケリストを見て、土浦は一安心した。なにせ伝説のハジケリストのことだから、うっかり弁当持ってきちゃってる可能性が高いからだ。
「どうしたの?お昼持って来るな、なんて。」
「まぁいいから座れよ。」
土浦がポンポン、と二回叩いた場所、それは土浦の隣。アニキ代表である土浦なので、特に下心など伺えない。土浦も自然にそうしたし、伝説のハジケリストも自然に隣に腰掛けた。
そしてこの後、土浦はお手製の弁当を渡そうとする。そう、彼の早起きの理由はこれである。
前からずっと、伝説のハジケリストに「土浦くんの作った料理食べてみたい」と言われ続けており、ようやくそれが果たされる時が来たのだ。
土浦にしても、そりゃあ伝説のハジケリストに自分の料理を食わせたい。美味しい、と言って喜ぶ顔が見てみたいのは山々だった。だが、家に呼んで手料理を振る舞うのも、普段何も無い時に伝説のハジケリストに手作り弁当を渡すのも気恥ずかしい。今日はまさに、土浦にとって都合の良い日であった。
しかし、何と言って渡そうか。いざ手作り弁当を差し出すとなると照れてくる。だが時間は限られているので、ぐずぐずしている場合ではない。
土浦はカバンからお弁当箱を二つ取り出し、小さい方を伝説のハジケリストの膝に乗せると
「飯、食おうぜ。」
それだけ言って、自分の分の弁当を広げた。
「え、待って!何、何で??」
「昼飯持って来るなって言ったろ?」
「いや、そうじゃなくて…もしかして、これ、土浦くんの手作り?」
「なんだよ、不服か?」
「え!いいの?!」
「いいから早く食えって。」
隣で今にも狂喜乱舞しそうな伝説のハジケリスト。その様子を見たいのに見れない土浦は、弁当を口に運び始めた。
「わぁ…ありがとう!開けてもいい?」
「あぁ。つーか開けなきゃ食えねぇだろ。」
「ちなみに土浦くんのお弁当と中身は…」
「さぁな。開ければ分かる。」
伝説のハジケリストは土浦の弁当を見てから、待ちきれないといった感じで包みを解き、蓋を開けた。
「ギャー!!!わ、ちょっ、キャー!!!」
屋上に響き渡る伝説のハジケリストの奇声。予想以上の大喜び具合に土浦の方が驚き、伝説のハジケリストを見ると、目をかっ開いて弁当と土浦を交互に見ていた。
無理もない。
土浦が早起きして伝説のハジケリストのために作った弁当の中身ときたら、お母さんも仰天の凝り具合である。
白米派の伝説のハジケリストには欠かせない白飯はもちろんのこと、伝説のハジケリストがいつも騒いでる仮面ライダー電王たちがそこにいた。
ウインナーとノリで綺麗に象られたモモタロス、どこから手に入れたのか水色のかまぼこで作られたウラタロス、カボチャで完璧なまでに再現されたキンタロス、茄子に錦糸玉子で細部までぬかりないリュウタロス。
その他にも、伝説のハジケリストが好きな唐揚げやアスパラのベーコン巻き等、神々しい弁当がそこにはあった。
土浦はもちろん電王を見たことがない。が、今回俄然張り切ってネットで調べた。その甲斐あって、伝説のハジケリストはもう壊れたカセットテープのように興奮しているのだ。
「すごい!これマジすごいよ!食べるの勿体ない!」
伝説のハジケリストは携帯を出すと、携帯カメラで弁当を撮り始めた。
「おいおい、ちゃんと食ってくれよ?せっかく作ったんだからな。」
「うん!ホントありがとう!マジ嬉しい!!じゃあいただきまーす♪どれから食べようかな…」
しばらく迷ったあと、リュウタロスから口に入れた。伝説のハジケリストがもぐもぐしている様子を、土浦がしばらく見ていると
「……!リュウタロス超美味しい!なにコレ!お母さんのより美味しい!」
「おいおい、大げさだろ。」
まんざらでもない土浦。正直小学校低学年の男の子のために弁当を作っている気分だったが、普通の女子とは一味違う、そんなわんぱくな伝説のハジケリストが土浦は好きだったりする。
バカな子ほど可愛いというか、一生懸命なところがほっとけないというか。夢中で自分の作った弁当を食べてる姿をみて、改めてそう感じていた。
その後も、幸せそうに手作り弁当を頬張る伝説のハジケリストを見て、土浦こそが幸せそうにしていた。
けれどこれで終わりではない。
「ごちそうさまでした。」
「おう。」
「お弁当箱、洗って返すね。」
「別にいいって。」
「ううん、洗って返す!」
「気ぃ使うなって。」
そんな話をしながら、お腹もいっぱいになった二人は屋上を後にしていた。伝説のハジケリストが弁当箱を洗って返す、ということで話がまとまった時、土浦は次の行動に出た。
「まだ時間あるだろ?ちょっと付き合えよ。」
「うん。」
そう言って連れて来たのは練習室。空いてる部屋を見付けて入り、ピアノの準備を始めた。
いつもピアノを弾く前にするあのクセをしながら伝説のハジケリストを見ると、何が何やら、といった表情をして立っている。
「練習?」
「いや、俺からのプレゼントだ。」
「プレゼント…?あ!」
「誕生日、おめでとう。」
弁当もそういうことだったのかと、ようやく気付いた伝説のハジケリストは、嬉しさのボルテージがさっきよりも更に上がった。
そして、土浦が弾き始めた曲に、感激し過ぎて息を飲んだ。
『愛唄』
優しく、繊細なタッチで溢れてくるメロディ。
心が、熱くなった。
演奏が終わった後も、伝説のハジケリストはそこから動けないでいると、
「なんか、恥ずかしいな。」
ピアノを閉じて立ち上がり、照れくさそうに足下らへんを見て言った。
伝説のハジケリストは、ありがとう、と言いたいけれど、感動しすぎて言葉が出てこない。
その上、
「女子が好きそうな物なんて、俺には分からなかったから…気に入らなければ捨てるなりしてくれ。」
小さな袋を伝説のハジケリストに渡し
「じゃあ、俺は先に戻るから。」
カバンを持って練習室から出て行った。
袋を開けて中を見ると、昭和初期の漫才師の胸にあるような、良く言えばカジュアルな感じのグリーンのリボンのクリップ。そして、同じグリーンのくちばし型の髪留めが入っていた。
今日、正確に言えばもっと前から土浦は伝説のハジケリストの誕生日を祝っていたのだと、伝説のハジケリストはその時気付いた。
どんな気持ちで弁当を作ったのか、どんな気持ちでこれを選んだのか、
どんな気持ちで、愛唄を弾いたのか
伝説のハジケリストは急いで土浦の後を追った。ちゃんと、ありがとうって言うため、
それと
自分の気持ちを、伝えるために。
終わり
しかし、微塵も苦に思わない。なぜなら、喜ばせたい人がいるからだ。
「ごめん、待った?」
「いや、俺も今来たところだ。」
先日土浦は、伝説のハジケリストをメールで呼び出していた。
『明日、昼休みに屋上に来い。昼飯持って来るなよ?』
そのメールに忠実に、手ぶらでやってきた伝説のハジケリストを見て、土浦は一安心した。なにせ伝説のハジケリストのことだから、うっかり弁当持ってきちゃってる可能性が高いからだ。
「どうしたの?お昼持って来るな、なんて。」
「まぁいいから座れよ。」
土浦がポンポン、と二回叩いた場所、それは土浦の隣。アニキ代表である土浦なので、特に下心など伺えない。土浦も自然にそうしたし、伝説のハジケリストも自然に隣に腰掛けた。
そしてこの後、土浦はお手製の弁当を渡そうとする。そう、彼の早起きの理由はこれである。
前からずっと、伝説のハジケリストに「土浦くんの作った料理食べてみたい」と言われ続けており、ようやくそれが果たされる時が来たのだ。
土浦にしても、そりゃあ伝説のハジケリストに自分の料理を食わせたい。美味しい、と言って喜ぶ顔が見てみたいのは山々だった。だが、家に呼んで手料理を振る舞うのも、普段何も無い時に伝説のハジケリストに手作り弁当を渡すのも気恥ずかしい。今日はまさに、土浦にとって都合の良い日であった。
しかし、何と言って渡そうか。いざ手作り弁当を差し出すとなると照れてくる。だが時間は限られているので、ぐずぐずしている場合ではない。
土浦はカバンからお弁当箱を二つ取り出し、小さい方を伝説のハジケリストの膝に乗せると
「飯、食おうぜ。」
それだけ言って、自分の分の弁当を広げた。
「え、待って!何、何で??」
「昼飯持って来るなって言ったろ?」
「いや、そうじゃなくて…もしかして、これ、土浦くんの手作り?」
「なんだよ、不服か?」
「え!いいの?!」
「いいから早く食えって。」
隣で今にも狂喜乱舞しそうな伝説のハジケリスト。その様子を見たいのに見れない土浦は、弁当を口に運び始めた。
「わぁ…ありがとう!開けてもいい?」
「あぁ。つーか開けなきゃ食えねぇだろ。」
「ちなみに土浦くんのお弁当と中身は…」
「さぁな。開ければ分かる。」
伝説のハジケリストは土浦の弁当を見てから、待ちきれないといった感じで包みを解き、蓋を開けた。
「ギャー!!!わ、ちょっ、キャー!!!」
屋上に響き渡る伝説のハジケリストの奇声。予想以上の大喜び具合に土浦の方が驚き、伝説のハジケリストを見ると、目をかっ開いて弁当と土浦を交互に見ていた。
無理もない。
土浦が早起きして伝説のハジケリストのために作った弁当の中身ときたら、お母さんも仰天の凝り具合である。
白米派の伝説のハジケリストには欠かせない白飯はもちろんのこと、伝説のハジケリストがいつも騒いでる仮面ライダー電王たちがそこにいた。
ウインナーとノリで綺麗に象られたモモタロス、どこから手に入れたのか水色のかまぼこで作られたウラタロス、カボチャで完璧なまでに再現されたキンタロス、茄子に錦糸玉子で細部までぬかりないリュウタロス。
その他にも、伝説のハジケリストが好きな唐揚げやアスパラのベーコン巻き等、神々しい弁当がそこにはあった。
土浦はもちろん電王を見たことがない。が、今回俄然張り切ってネットで調べた。その甲斐あって、伝説のハジケリストはもう壊れたカセットテープのように興奮しているのだ。
「すごい!これマジすごいよ!食べるの勿体ない!」
伝説のハジケリストは携帯を出すと、携帯カメラで弁当を撮り始めた。
「おいおい、ちゃんと食ってくれよ?せっかく作ったんだからな。」
「うん!ホントありがとう!マジ嬉しい!!じゃあいただきまーす♪どれから食べようかな…」
しばらく迷ったあと、リュウタロスから口に入れた。伝説のハジケリストがもぐもぐしている様子を、土浦がしばらく見ていると
「……!リュウタロス超美味しい!なにコレ!お母さんのより美味しい!」
「おいおい、大げさだろ。」
まんざらでもない土浦。正直小学校低学年の男の子のために弁当を作っている気分だったが、普通の女子とは一味違う、そんなわんぱくな伝説のハジケリストが土浦は好きだったりする。
バカな子ほど可愛いというか、一生懸命なところがほっとけないというか。夢中で自分の作った弁当を食べてる姿をみて、改めてそう感じていた。
その後も、幸せそうに手作り弁当を頬張る伝説のハジケリストを見て、土浦こそが幸せそうにしていた。
けれどこれで終わりではない。
「ごちそうさまでした。」
「おう。」
「お弁当箱、洗って返すね。」
「別にいいって。」
「ううん、洗って返す!」
「気ぃ使うなって。」
そんな話をしながら、お腹もいっぱいになった二人は屋上を後にしていた。伝説のハジケリストが弁当箱を洗って返す、ということで話がまとまった時、土浦は次の行動に出た。
「まだ時間あるだろ?ちょっと付き合えよ。」
「うん。」
そう言って連れて来たのは練習室。空いてる部屋を見付けて入り、ピアノの準備を始めた。
いつもピアノを弾く前にするあのクセをしながら伝説のハジケリストを見ると、何が何やら、といった表情をして立っている。
「練習?」
「いや、俺からのプレゼントだ。」
「プレゼント…?あ!」
「誕生日、おめでとう。」
弁当もそういうことだったのかと、ようやく気付いた伝説のハジケリストは、嬉しさのボルテージがさっきよりも更に上がった。
そして、土浦が弾き始めた曲に、感激し過ぎて息を飲んだ。
『愛唄』
優しく、繊細なタッチで溢れてくるメロディ。
心が、熱くなった。
演奏が終わった後も、伝説のハジケリストはそこから動けないでいると、
「なんか、恥ずかしいな。」
ピアノを閉じて立ち上がり、照れくさそうに足下らへんを見て言った。
伝説のハジケリストは、ありがとう、と言いたいけれど、感動しすぎて言葉が出てこない。
その上、
「女子が好きそうな物なんて、俺には分からなかったから…気に入らなければ捨てるなりしてくれ。」
小さな袋を伝説のハジケリストに渡し
「じゃあ、俺は先に戻るから。」
カバンを持って練習室から出て行った。
袋を開けて中を見ると、昭和初期の漫才師の胸にあるような、良く言えばカジュアルな感じのグリーンのリボンのクリップ。そして、同じグリーンのくちばし型の髪留めが入っていた。
今日、正確に言えばもっと前から土浦は伝説のハジケリストの誕生日を祝っていたのだと、伝説のハジケリストはその時気付いた。
どんな気持ちで弁当を作ったのか、どんな気持ちでこれを選んだのか、
どんな気持ちで、愛唄を弾いたのか
伝説のハジケリストは急いで土浦の後を追った。ちゃんと、ありがとうって言うため、
それと
自分の気持ちを、伝えるために。
終わり