♪季節の行事♪
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「土浦くん!トリックオアトリート!」
「はぁ?」
向こうから伝説のハジケリストが走って来たと思ったら、いきなりこれだ。
何かくれ、と言わんばかりに両手を出してニコニコしてやがる。
「あぁ、今日ってハロウィンだっけか。」
「そうそう!」
「俺に言われてもなぁ。お菓子なんか持って…」
いや、今朝コンビニで買ったのど飴がある。でも、ただやるだけってのも面白くない。
「なぁ、お前ぷよぷよって知ってるか?」
「え?ぷよぷよって、あのぷよぷよ?」
「知ってるなら話が早い。俺と勝負して、お前が勝ったらお菓子をやるってのはどうだ?」
「ゲームなんてどこでやるの?」
「クラスのヤツからDS2台借りてくる。まだ教室に何人か残ってたからな。丁度今クラスで流行ってるから、ケーブルもあるぞ。」
「うーん…いいよ!受けて立ちます!つーか負けないし!」
「そう来なくちゃな。」
伝説のハジケリストのことだからのってくるだろうと思ったが、ここまで挑発にのってくる強気な女はこいつくらいだろう。
強気で負けず嫌いで、ガサツで不器用。けどこいつはいつも一生懸命で…
伝説のハジケリストを見てると飽きなくて、つい構っちまう。ていうか、放っておけないんだよな。
「じゃああたし教室で待ってるから。」
「おう。」
自分のクラスに戻り、まだ残ってた奴等からDSとソフト一式借りて伝説のハジケリストの教室に入った。
「お前ぷよぷよやったことあんのか?」
「スーファミでなら。」
「ハンデやろうか?」
「いりません。」
「ははっ、お前らしいっちゃお前らしいな。言っておくが、俺は上手いぜ?」
「うん、なんかそんな感じする。テトリスとか超うまそうだもん。」
「まぁな。最近全然やってないが…お、始まるぞ。」
話ながら接続が終わり、スイッチを入れるとスタート画面の音が流れた。
見つかると厄介だから、少しボリュームを落とす。
「手加減しないぜ?」
「うわ、懐かしいようなそうでないような!」
「人の話聞いてねぇだろ。」
伝説のハジケリストの楽しそうな顔を見て、まぁいいか、と思った時、勝負開始の音が小さく鳴った。
♪~♪~♪~♪~♪
「わー!負けたー!」
「相手が悪かったな。」
結果は俺の圧勝だった。
途中まで伝説のハジケリストが横積みして、まぐれの連鎖を繰り出していたが、そんなことをしたところで俺の計算された連鎖には敵わない。
悔しそうに頭を抱える伝説のハジケリストを見て、そろそろ喜ばせてやるかっていう気になった。
「お前もよく頑張ったから…ほら、やるよ。」
ポケットに入れてあったのど飴を出すと、
「え!いいの?!」
一瞬で表情が変わって、思わず吹き出しそうになった。
「あぁ、今回だけな。」
「やったー!ありがとう土浦くん!」
「おう。」
笑ったり怒ったり、喜んだり悔しがったり…ったく、調子狂うぜ。
まぁ、こいつに調子狂わされるのは嫌いじゃないっつーかなんつーか、むしろ…
「土浦くん?」
「な、なんだよ。」
「顔赤いけど。」
「んなこたねぇだろ。気のせいだ。じゃあ、俺はコレ返してくるから。お前はどうする?」
「んー、ちょっとまだ用事があるから。」
「そうか、じゃあまたな。」
「うん!飴ごちそうさま。」
「おう。つーか危ねぇからあんまり走るなよ?」
「はーい。」
自分のクラスに戻り、借りたヤツにDSを返した。その時も「顔が赤いぞ」って言われた。
自分ではそんなつもりじゃないんだけどな。
とにかくテキトーに誤魔化して、頭を冷やそうと外をぶらつくことにした。
♪~♪~♪~♪~♪
人が少なくなってきた頃、帰ろうと教室に戻ると、机の横に掛けておいたはずの俺の鞄が、机の上に置いてあった。
妙に思って近寄ると、
「なっ…!」
俗に言うエロ本が、俺の鞄からでかでかとはみ出していた。しかもこの前佐々木が持ってたエロ本だ。
表紙の半裸の女の胸には、黒マジックでぷよぷよらしき絵が描かれていた。
犯人に心当たりがありすぎる。
「伝説のハジケリスト…」
誰も教室にいなかったのが幸いだったが、今度はさっきとは違う意味で顔に熱が集中していくのが自分でも分かった。
きっとまだ校内にいるだろう。あいつのことだから、他にも色々まわってるに違いない。これ以上犠牲者が出る前に何とかしねぇとな…。
ため息だけが、誰もいない教室に響き渡った。
終わり