♪さよならまでの7日間♪
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初めて月森くんと出会った時、なんてむかつく野郎だ、細かいこと言いやがって、お前本当に男か、良いのは顔だけじゃねぇか、と思った。
頑固一徹、他人を寄せ付けず、口を開けばイヤミ。自分以外の人間は興味ない、人との関わりなんてくだらない、とか思ってそうで
最初の印象はとにかく最悪だった。
でも
コンクールやアンサンブル、コンサートを通していろんなことがあって
徐々に月森くんを知っていくうちに、もっと一緒にいたいなって思うようになって
いつの間にか、好きになってた。
月森くんも、あたしともっと一緒にいたいって、そう言ってくれた。
月森くんはあたしに、音楽に対して“真剣に向き合う”ということを教えてくれた。月森くんと出会ってから、ヴァイオリンがこんなにも楽しいもので、音楽がこんなにも素晴らしいものだということを知ることができた。
あたしは月森くんの心にある壁を壊して、彼の音色と、彼自身を変えた。
お互いがお互いの、世界を変えた。
両想いになれたけど、相手は言葉の足りない不器用な人。付き合ってるのかどうかははっきりしなくて、最初はもやもやしてたけど
今となっては、それでよかったって思う。
あの日
ある日の帰り道。いつもみたいに月森くんと帰っていた。
急に足を止めて、真剣な目をして
『君はこの先、音楽を続けていくのか?』
そう、あたしに聞いてきた。
確かにヴァイオリンは好きだし、これからも続ていこうって思ってる。けど、それで生きて行くつもりはない。
正確に言うと、それで生きていくには難しい環境だった。家はごく普通の一般家庭だし、留学にしろ何にしろ、金銭的な面で問題がある。
そのことを説明したら
『そうか』
そして不安げにあたしの顔を見て
『だが、ヴァイオリンを弾くことはやめないで欲しい。』
もちろんだよって返すと、月森くんはほっとしたように、それでも少し淋しそうに笑った。
この瞬間、月森くんとあたしの歩む道が、別々の道になった。
それからしばらくして、月森くんのウィーン行きが決定した。
このまま一緒にいたら、別れが辛くなるからと、距離を置かれたこともあった。
けど、
それぞれ違う道でも、あたし達はヴァイオリンで繋がってるからと、言ってくれた月森くん。例え趣味程度だとしても、あたしがヴァイオリンを弾き続ける限り、音楽で繋がっていることを忘れないでいて欲しいって
あたしの手を握り、今度は優しく笑って言った。
『君と離れて、俺が大丈夫だなんて思わないで欲しい。……君と、離れたくない。』
それでも、月森くんには音楽しかないから、音楽が彼を呼んでいるから。
だからあたしは月森くんを応援するし、月森くんは音楽への道を突き進む。
辛くてもいい、苦しくてもいい。
月森くんと離ればなれになるまで、僅かな時間しか残されていないから
だから、約束をしたわけでも何でもないけれど、あたし達はできるだけ二人で過ごすようにしている。
これは、そんな月森くんとあたしの、さよならまでの7日間のお話。