♪突撃!ヴァイオリンロマンス♪
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あたしの名前は天羽菜美。報道部二年。今回の特集は、
“ヴァイオリンロマンス~愛の時間~”
にしようかと考えてる。学院の言い伝えであるヴァイオリンロマンス。これが現実のものとなってる。こんなに話題性のあるものはないと思うんだ。
これから本人達に許可を取って、OKなら取材をしようかと伝説のハジケリストちゃん達を探してるんだけど…
教室を見る限り、二人の姿はない。
「ねぇ、伝説のハジケリストちゃんと加地くんは?」
「あの二人なら、屋上に行くって言ってたけど。」
「ありがと!」
伝説のハジケリストちゃんのクラスの子に教えてもらい、急いで屋上に向かった。
どうでもいいけど遠いんだよね、屋上。
呼吸を整えて、入り口のドアに手をかけると、伝説のハジケリストちゃんの楽しそうな笑い声が聞こえてきた。
ゆっくりドアを開け、顔だけ覗くと
「加地くん!こっちこっち!」
「うーん、こっちかな?」
「違う違う!こっち!」
手を叩きながら移動する伝説のハジケリストちゃんを、タオルで目隠しをした加地くんが、手探りでゆっくり追いかけていた。
何、やってるんだろう…
「もうちょっとだよ加地くん!ホラ!」
ベンチの後ろに立って手を叩く伝説のハジケリストちゃん。
「分かった、こっちだね…いてっ。」
ベンチの角にすねをぶつける加地くん。
「ぶっ!(笑)」
それを見て笑う伝説のハジケリストちゃん。
「あ、今笑ったでしょ?」
「笑ってないよ!加地くんあとちょっと!」
そしてまた手探りで探す加地くん。
「ここだ!つかまえたよ、伝説のハジケリストさん。」
「すごい!今までで一番早いよ!」
今までで?ていうことは、もうすでに何回もやってるってことだよね。
ていうか…これ、何?
「ふふっ。例え見えなくても、君がどこにいたって迎えにいけるね。」
「じゃあ次あたしの番ね!」
あらら、加地くんスルーされちゃったよ。
「しっかり結んでね。」
「うん、こんな感じでどうかな。大丈夫?痛くない?」
「大丈夫。さ、いつでもいいよ!」
今度は伝説のハジケリストちゃんが目隠しをして、加地くんが少し離れて手を叩いた。
「伝説のハジケリストさん、こっちだよ。」
「えーっと…こっちかな。」
「うん、そうそう。こっち。」
目隠しをしてゆっくりゆっくり、手探りで頼りなく、へっぴり腰で歩く姿は正直マヌケそのものだ。もちろんさっきの加地くんも。
「やっぱこれコワイねー。加地くんこっち?」
「あ、何で右行っちゃうの、僕はこっちだよ?」
「え、あたし右行ってた?」
伝説のハジケリストちゃんが方向転換しようとした時、
「危ない!」
体勢を崩して転びそうになったところを、加地くんが抱き留めた。
「ふぅ、怪我はない?」
「大丈夫、ありがとう。」
目隠しを取って、見つめ合う2人。お互いを見る目が、こっちが照れるほどに優しい。
「また自分の力で加地くんのことつかまえられなかったね。」
え、また?またって…
「いつもあたしの足がもつれると、加地くんの方から来ちゃうんだもうん。これじゃあ意味ないよ。」
「でも、黙って見てるなんてできないよ。それに、僕はどちらかというと君につかまりたいしね。ていうか、もう最初からつかまってしまっているんだけど。」
「バカ…」
本当にバカだよあんたたち。
「ふふっ、伝説のハジケリストさん照れてる。」
「照れてないし!」
「照れた顔も可愛い…まるでアマリリスのように頬が染まってる。」
「キリギリス?!」
色んな意味でバカな二人だけど、あたしはこの二人が好き。
だから、本人達が幸せならそれでいいと思うんだけど…
「ねぇ、このまま屋上にいない?せっかく良い天気だし、なんといっても次は自習だし。」
「賛成!」
「そう言ってくれると思って、お菓子を持ってきてるんだ。鞄の中に入ってるよ。」
「だから鞄持ってきてたんだ。加地くん最高!甘い物食べたかったんだー。」
「喜んでくれて嬉しいよ。君の笑顔よりは甘くないかもしれないけどね。」
こんなやり取りは記事にできそうにない。ていうかしたくない。
今からでも違う特集にしよう、そう考えさせられた。
~fin~