♪お題♪
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授業中、急に腹が痛くなった。
「ここはテストに出るからよく覚えておくように。次は…」
テストに出る、というより尻から何かが出そうだ。ていうかむしろ出したい。
そんな感じで、先生の説明もまともに聞ける状態ではなくなってきた。
授業終了まであと5分弱。たかが5分がこの時ばかりはこんなにも長く感じる。
お腹が痛いといっても、別に便意ではない。恥ずかしい話、ガスがたまっている。
コンクール前のストレスなのか何なのか、お腹が張ってしまってしょうがないのだ。
冷や汗もそこそこに出てきた頃、
「では少し早いけど終わります。」
神はあたしを見放してなかった。
起立、礼、の後、ソッコーでトイレへと向かった。
が、
有名なラーメン店のごとく長蛇の列になっていた。そこの列から少し離れたところに天羽さんがいて
「あ、伝説のハジケリストちゃんもトイレ?今もうひとつのトイレが修理中で、みんなこっち来ちゃってるんだよねー。まいったなぁもう。」
と教えてくれた。なんてことだ。どう考えてもこの中で一番限界を迎えようとしているのはこのあたしだ。さっきからガスがお腹の中でぐるぐる言っている。出せ、出してくれと主張しているのだ。
「他の学年のトイレ借りるのも気が引けるしなー…って伝説のハジケリストちゃん!顔色悪いけど大丈夫?」
「あ、うん。大丈夫。」
いくら友達とはいえ、屁がしたいなどとはなかなか言い出せない。力の限り平静を装い、
「生理なだけだから。」
「そっかぁ。お大事にね!」
「ありがとう。」
全てが解決できる最強の武器を使う。生理と言えばもうそれ以上は聞かれないし、お腹を押さえていようが顔色が悪かろうが、それはしょうがないね、となる。
天羽さんとバイバイして、あたしは必死に考えた。
誰もいなくて音もにおいも気にしなくていい場所…
屋上だ。
今はお昼休みだし、いつもは柚木先輩か月森君がいるかいないかの静かな屋上。
屋上の広場とは逆の奥の方、もしくは階段を上がって風見鶏のところへ行ってしまえば完璧に事が為せる。
あと少しの辛抱だ、そう思って屋上の扉を開けると
「あ!##NAME2##ちゃん!」
トランペットを持った火原先輩が振り向いて言った。
なんで火原先輩がこんな時に限ってここにいるのだろうか。いつもはコートにいるのに、わざわざこんな時にここにおらんでも!
あぁ、そうか。コンクール前だからだ。
「##NAME2##ちゃんもここでお昼?」
「あ、いえ…ちょっと風に当たりたくて。」
「え?!どこか具合でも悪いの?!」
「大丈夫です」と言おうとした時、第二波が押し寄せて来た。これぞセカンドインパクト。第二の使徒襲来だ。使徒による怒濤の攻撃に、あたしの表情はどんどん強張っていく。
やばい、これはもう本当にやばい。
顔が上げられず、言い訳もできず、ただただ地面を見るばかり。冷や汗が再び背中をつたった。
「もしかして、何か悩んでる?」
悩んでる?まぁ確かに、放屁したいけど場所がない、という深刻な悩みを抱えている。
「それとも、やなことでもあった?」
やなこと、それは屋上にお前がいたことだ。いや、いつもならば火原先輩に会えると嬉しいのだが、今日この時ばかりは本当に誰にも会いたくない。
「本当に…大丈夫です。」
最後の力で言葉を振り絞り、頑張って笑顔を作ってみたけど、あからさまに引きつっていたのが自分でも分かった。
こうなったら体育館のトイレまで行くしかない。ちょっと遠いけど第二の使徒も引いて来たことだし、またいつ第三の使徒が来るかも分からないのでこれは行くしかない、そう思って屋上を去ろうとすると、
「待って!」
火原先輩に呼び止められた。
「あ、あのさ!その…トランペット、吹いてみない?!」
何を言い出すんだ。今この状態でトランペットなど吹いたら出る。確実に出る。トランペットの音に小爆発音がフューチャリングしてしまう。
「あー…いきなりごめん。わけ分からないよね。何て言うか、##NAME2##ちゃん元気ないなって思って。」
元気はモリモリだ。ただ、迫り来る使徒の元気の良さに負けそうになっているだけだからお願い早くトイレに行かせて、っていう状況なだけだ。
「あのね?俺、落ち込んだ時に思いっきりトランペット吹くと元気が出るんだ。悩みと一緒に大きな音出してさ。そしてらね、すごくスッキリするんだよ!」
トランペットを今ここで吹いたなら確かにスッキリすることだろう。けど、思い切り吹いたと同時に下のトランペットからも大きな音が出てしまい、あたしは何かを失う。
「だから、##NAME2##ちゃんもどうかなって思ったんだけど…」
火原先輩の優しさに胸きゅんするところなのに、今はもうマジで勘弁して欲しい、お願いホントお願い見逃して下さい、としか思えない。そんな自分の状況に自己嫌悪する。
生理だと言ってしまえば万事解決なのだが、火原先輩には何となく言いづらい。先輩だし、なんだか言ったらかわいそうな気がする。
火原先輩の優しさを無駄にしないためには、そして自分のこの腹痛をどうにかするにはどうすればいいか。
一時的に地味に成り下がった腹痛を感じつつも、必死に考えた。
よし、これだ。
「その前に、お昼買ってきてもいいですか?」
「まだ買ってなかったの?!あ、そういえば何も持ってないね。」
「すみません、すぐ戻りますから…」
ちょっとフラつきながら、火原先輩に背を向ける。
「あ、##NAME2##ちゃん待って!俺が買ってきてあげるよ!」
「そんな、悪いですよ。」
「いいからいいから!ここは俺に頼って?」
「でも…」
「カツサンドはもう残ってないだろうけど、俺のオススメのパン買ってくるからさ、ちょっと待っててね!」
そう言って火原先輩は屋上から出て行った。
騙したみたいでなんだか申し訳ないけど、こちらももう限界だったのだ。
再び辺りを見回して、奥の方へと潜みこの戦争にピリオドを打つ。やっと戦いから解放される、そんなことを考えながら、あたしは自分のベストを尽くした。
「##NAME2##ちゃんおまたせー!」
「火原先輩…」
「チョコクロと、メロンパンと、クリームパンと、あとホイップあんパン!…あ、ていうか全部甘いパンになっちゃったね…ごめん、俺のサンドイッチ食べていいからね!」
「ありがとうございます。」
お腹がスッキリしたので、さっきよりも話すのが楽になった。体内がすっかり平和になり、火原先輩とのお昼を楽しめる。そう思うとさっきとは打って変わってテンションが上がる。
しかしここでいきなり元気ハツラツになるのは怪しい。
「火原先輩。」
「何?」
「あとでトランペット聞かせてくれますか?元気の出る、楽しい曲が聞きたいです。」
「うん!任せて☆##NAME2##ちゃんのリクエストだったら喜んで吹くよ!何がいいかなー。」
何事も、我慢は良くない。特に生理現象の我慢は本当にするものではない。ていうか、そもそも知らずに疲れを溜めてしまったのが原因だ。
火原先輩の真剣に悩む横顔を見て、体調を崩すと他の人にも迷惑が掛かるからしっかり気を付けなければならない、そう思った。
『きみが教えてくれたこと』
[後書き]
最低ですね。MANGE史上最も最低かもしれません。なんてったって主人公、しかも女性に放屁させてますからね。
最初火原先輩にはあまり興味がなかったのですが、ある日ふと、「そういえば先輩じゃん。先輩…年上…やべぇ、萌える!」と思い始めました。
あんな先輩がいたら毎日学校行くのわくわくするでしょうね。可愛いだけの男かと思いきや、ちょっと男らしさを見せてみたり。「俺も男だから…」とか言って妙な想像したことを謝ってきたらドキッとするじゃないか。
あれ?ちょっと火原先輩マジでよくない?
次こそなんかこう、ちょっと胸きゅんする話書いてみたい。
ここまでお付き合頂きまして、ありがとうございました。