四天生活
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いつものように登校し、いつものように自分の教室に入る。そこにあるのは見慣れたクラスメイトに見慣れた風景。けれど、今日はなんだか…
「おはよう。」
「おはようさん。」
隣の席の謙也に挨拶をし、鞄を横に掛けてコートとマフラーを取った。
「結構もらってんじゃん。」
「まぁな。」
そう、今日はバレンタインデー。だから、教室の雰囲気もいつもとちょっと違って、男子も女子もソワソワしている。
謙也もすでに貰ってるみたいで、机の横に掛けられた鞄から、ラッピングが顔を出していた。
あたしももちろん謙也にあげるチョコを持って来ているので、今渡しちゃおうかなって思っていると
「来よったで。」
「え?」
謙也が入口の方を見たので、あたしもつられるようにして目をやる。するとそこには
「今年もすごいなぁ。」
両手に抱えきれないほどのチョコを抱えた白石がいた。
教室にたどり着くまでに、もうすでに大きな紙袋2つ分はもらってるんじゃないかってくらいの量で、白石の顔がチョコに隠れて見えないほどだ。
「わー…あれお返し大変だね。」
「せやな。」
白石の机の上にも、よく見たら中にもすでに詰められていて、置くところに困っていた。
「助けてあげないの?」
「いらんやろ。」
やっとの思いでチョコを机の上に置くと、更に女の子達が集まっていく。
「女子はみんな白石や。今日はバレンタインちゃうな、白石祭りやわ。」
頬杖をついて、横目で白石を見ながら言う謙也が、なんだか可哀相な人に思えたけど
「謙也だってもらってんじゃん。」
「義理でな。」
「もらえるだけいいじゃん。」
「まぁな。」
気のない感じで言った。きっと数を気にしてるんだろう。なんでこう、男子って競争が好きかな。
「伝説のハジケリストも白石にあげるんやろ?」
「まぁ、一応。」
「はぁ~やっぱりお前もか。」
「何それ。」
「別に。」
そう言ってあくびをしたので、じゃあ先に白石とあと他の男子にあげてこようと思い、鞄からチョコの入ったビニール袋を取り出した。
それを見た謙也が
「そんなにあげるんか。」
少し驚いたように言った。
「うん、クラスの仲良い男子にと思って。」
「ちゅーかそれ何?」
「チョコバット。」
「チョコバット?!あからさまな義理やな!」
「だって義理だもん。」
「白石もそれか?」
「そうだけど。」
不思議そうに見る謙也を後にし、チョコバットを配り歩いた。
笑ったりがっかりしたり、色んな反応を楽しんでから席に戻ると
「白石どんな反応しとった?」
今度は体ごとこちらを向いて、謙也が聞いてきた。
「え?伝説のハジケリストらしいわって言って笑ってた。」
「へぇ。」
空になったビニール袋を縛りながら、謙也にいつ渡そうか考えていた。けどよく考えたら、義理チョコを見せてる上でちゃんとしたものを謙也にあげるとなると、いかにも本命ですって言ってるようなものだ。
これはしまった、どうしようと思っていると
「俺のチョコバットは?」
「え?」
「俺にはくれへんのか、チョコバット。」
ちょっと不機嫌そうにチョコバットを要求してきた。
「チョコバットもうないし。」
「何や、チョコバットすら俺には無いんか。冷たいやっちゃな。」
そう言って前を向いてしまった。今渡さなかったら、後でもっと渡しにくくなりそうだと思い、意を決して鞄の中のチョコを手に取った。
隣の席だし、いつもいっぱい話すし。だから手作りでもおかしくないよね、と言い訳を作って自分に言い聞かせる。
普通に、普通に渡せばいい。
「チョコバットじゃないけど…はい。」
「え…?」
すると、さっきよりももっと驚いた顔をした。
「ちょ、え!俺にか?!俺にくれるんか?!」
「そうだけど…チョコバットの方がよかった?」
「いや…もしや手作りか?」
「一応。」
あたしからそれを受け取ると、食い入るようにして見た。
「謙也?」
「俺もう他のチョコいらんわ。」
「え?」
「こっちの話や。ありがとな!」
なんだかよく分からないけど、ものすごく喜んでくれたみたいだった。
それがやたら照れくさくて、上機嫌の謙也の横で、しばらく顔を上げられずにいた。
終わり
【後書き】
サンが教えてくれた、ニコの『死ね!バレンタイン』の謙也がとても面白かったので、つい書いてしまいました。
観覧者のコメントに「あげるよ」「あげるあげる」というのが多く、それもまた面白かったです。
ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました。