氷帝生活①
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俺は今、気配を殺して大木の上にいる。
だだ今缶蹴りの真っ最中。周りの様子を伺いながら、来たるべき時を待っている。
「鳳…めっけ…。」
「見付かっちゃいましたかー。」
今日は俺の誕生日だ。テニス部のみんなにお好み焼き屋で祝ってもらった後、近くの広い公園で缶蹴りをする事になった。
「何で分かったんですか?俺自信あったんですけど…。」
「ベンチの下から足丸見えやったで…。」
薄暗い中、みんな息を潜めて隠れている。
木の上は見晴らしがいい。ここから、隣の木の裏に隠れてる日吉と、便所の裏で鳳を気にしてるっぽい様子で、チラチラ缶の方を見てる宍戸が見える。
「ほな…ちょお行ってくるわ…」
「行ってらっしゃい!」
鬼である侑士が動き出した。
日吉が隠れてる木に、小走りで近付いてくる。俺はまぁ、木の上にいるから見付かんねーだろ!
「ここらへんが臭いねんけど…」
日吉は下手に動けねーはずだ。どっちにしろ見付かっちまうだろうけど。
ドンマイ日吉…
『いつのまにか~♪すきまあいた~♪こころーが~みた~さーれーてく~♪』
Σおわっ?!
「ん…?この着うた…岳人やろ…。」
やられた。この着うたは伝説のハジケリストからだ。俺は急いで携帯を切り、握り締めた。
「この辺から聞こえてきたな…。」
侑士の標的が俺に変わった。クソクソ伝説のハジケリストめ!道連れだ!
携帯のライトで見付かんないように、手で画面を囲って伝説のハジケリストにリダイヤルした。
『おかけになった電話は、電波の届かない場所におられるか、電源が入っていないためかかりません。』
最悪だ。
よりによって何で俺なんだよ!あいつ、俺のことぜってーキライだろ!
俺は腹をくくり、木から飛び降りると、全速力で走った。
「Σうおっ!上におったんかい…。逃がさへんで…?」
後ろから侑士が追い上げてきた。缶までは少し距離がある。
「だぁーーっ!!」
多分今速度を測ったら、自己最高記録が出てるに違いない。
缶まであと少しだ!
「こっちも本気でいくで…?」
侑士もさっきより速度を上げて追い掛けてきた。
二人とも本気モードに入った時、鳳の後ろから伝説のハジケリストが顔を出した。
「もーらい♪」
「Σアカン…!」
そして、サッカー部もびっくりのキック力で、缶を遠くに蹴り飛ばした
「やったw長太郎今のうち!」
「は、はい!」
すると、鳳は慌てて逃げ出した。
「おい!さっき俺の携帯にかけただろ!何てことすんだよ!クソクソ!俺をオトリにしやがって!」
「うっさいなー。ほら、早く隠れなきゃ!」
伝説のハジケリストは俺の手を掴むと、キョロキョロしながら走り出した。
「よし、あそこにしよう。」
「なぁ、なんで二人して同じ場所に隠れんだ?バラバラの方がいいだろ。」
「しっ。静かに。小声で話しなさいよ。見付かるでしょ。」
「……。」
伝説のハジケリストに連れられ、隠れた場所は倉庫の裏だった。伝説のハジケリストは携帯を取り出すと、次のオトリ役に電話をかけた。
「やっぱりダメかー。みんな電源切ってるよ。」
「つーかよくそんな事思い付くなι」
薄暗かった空が完璧に暗くなり、伝説のハジケリストが携帯を閉じると、周りがよく見えない。
「あ、また長太郎が見付かった。」
「あいつ才能ねーな。」
伝説のハジケリストがしゃがみ込んだので、俺もつられてしゃがみ込んだ。
「ねぇ、さっきの着うた何?」
「Σなっ!(〃□〃)別にいいだろ///」
俺の携帯には女子の番号が伝説のハジケリストしか入ってない。俺は『明日への扉』が好きだけど、男に使うのはキモいから。
そんな事こいつに言ったら、成人してからもからかわれそうだ。
「がっくんさ、うちらの他にプレゼント貰った?」
「もらってねーけど?」
「そう。」
「おぉ。」
伝説のハジケリストの事だ。どーせ、友達いねーのかよ、とか、モテなくてかわいそう、とか言うんだろ?さっきだって、俺のお好み焼きに紅生姜をもっさり入れやがったしよ。俺が紅生姜キライなの知ってるくせに。
そういや、テニス部入ってから伝説のハジケリストのいやがらせを受けない日はねーな…。気に入らねーならそう言えばいいのによ!
考えれば考えるほどムカムカしてきた。
侑士に言わせれば、いじられてるうちが華らしい。けど女にいじられても、いや、男にもだけど、ちっとも嬉しくねーし。
「じゃあ…誰からもプレゼント貰えなかったかわいそうながっくんに…」
ほらな、かわいそうとか言うだろ?かわいそうだけじゃなくて、かわいそうな理由まで言うだろ?
「何だよ。」
次はなんだ?どんなやな事言ってくるんだ?
「あたしからもう一個、プレゼントあげる。」
そう言うと伝説のハジケリストは、しゃがんだまま体勢を俺の方に向けてきた。
「い、いらねーよ!」
殴る気か?それともつねる気か?プレゼントとか言って、俺に暴行を加えようってのかよ。
伝説のハジケリストの手が、俺のほっぺたに伸びた。
反射的に目を閉じると
「誕生日おめでとう。」
いい匂いがしたと思ったら、手おさえられた方と逆のほっぺたに、柔らかいもんが当たった。
な、なんなんだ…///?
「よしっ。たまにはあたしがオトリになるか。じゃ、また後でね!」
伝説のハジケリストが走り去った後、俺は動けなかった。
「伝説のハジケリストめっけ…。」
「あー!もう!なんで誰も来ないのよ!」
「伝説のハジケリストさん、大丈夫です!宍戸さんが助けに来てくれますから!」
「甘いで…、先にこっちから宍戸を見付け出したるわ…。」
俺は単純だ。
ほっぺたにキスされたくらいで、着うたの設定をあれにしといてよかったと思うなんて。
俺は単純だ。
今までムカついてたやつを、ほっぺたにキスされたくらいで好きになるなんて。
「あ!宍戸だ!」
「本当だ!宍戸さーん!頑張って下さーい!」
助けに行こう。
宍戸が倉庫の近くに来たら、出てって缶を蹴るんだ。侑士が宍戸を追い掛けてる間に、缶を遠くに蹴り飛ばしてやる。
そしたらもう一回、伝説のハジケリストをここに連れてきて聞いてやる。
「オラどーした!蹴っちまうぞ!」
「さすが宍戸…足速いわ…。でも、負けへんで…!」
今だ!
「へへっ!残念だったな侑士!」
「ちっ…!」
侑士がまたスピードを上げてきた。
宍戸との差が少し縮んだ、
「あ、向日さんも来ましたよ!」
「これ、逃げられんじゃない?」
侑士が宍戸を必死に追い上げるけど、もう無理だ。
「行け岳人!」
「任せとけっての!」
俺はこの缶を何が何でも蹴って、伝説のハジケリストに聞くんだ。
俺の事、どう思ってんのかを。
俺の勘違いで、単なる冗談かもしんねーし、新手のいやがらせかもしんねー。
誕生日だっつーのに最悪な気分になるかもしんねー。
けど、好きになっちまったもんはしょーがねーだろ!
単純で悪かったな!
「行くぞ!!逃げる準備しとけ!」
俺のつま先が缶を蹴るまで、あと数㎝。
終わり
[後書き]
がっくん可愛いです。R&Dで、私は彼にやられました。
がっくんがオッサンになったらどんな感じになるのでしょうか?ハゲるでしょうか?腹は出るでしょうか?
ちなみに跡部は樺地の裏に隠れて見え見えでしたが、忍足は見えない事にしてあげていました。
ジローはもちろ、ん隠れながら寝てしまいました。
がっくん誕生日おめでとう☆