氷帝生活①
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今日は部活がない。
そんな日はみんな暇なのか、放課後になるとたいていは部室に集まっていることが多い。
あたしも暇な一人。
宿題でもやろうかと部室に入った。
「あれ?一人??」
そこには専用ソファに腰掛け、優雅にティータイムしている跡部がいた。
「待ってたぜ。」
小指立ってる!
「待ち合わせしてないけど。」
「相変わらず連れねーじゃねーの。」
あたしはとりあえず跡部を無視して宿題をするべくもう一つのソファに腰を降ろした。
「アーン?お前、せっかく俺様と二人きりだっつーのに何しようとしてやがる。」
「宿題。あ、あんた頭だけはいいんだからあたしの代わりにやってよ。」
「…頭だけ、だと?」
跡部はゆっくりと立ち上がるとあたしの隣にやってきた。
つーか顔近いんですけど。
「俺様のいいところは頭だけじゃないぜ?」
あー…、毛穴とか絶対見られてる。やだなー。
「へー。どーでもいいけどもうちょい離れて。」
毛穴を見られるのを避けようと跡部の顎を押しのけようとした。
が、手首を掴まれた。
「大人しくしてな。今日こそ俺様に酔わせてやるぜ…。」
ある意味もう酔っている。酔いっぱなしだ。
跡部の顔がさらに近寄ってくる。
『ゴッ!!』
「っ?!なにしやがる!!」
手を塞がれたので反射的に頭突きしてしまった。
「あんたがなにしやがる!あーびっくりした。」
「だからって頭突きするこたないだろーが!俺様の美しい額が腫れたら責任…とってもらうぜ?」
「どう責任とるのさ。つーか"美しい額"ってなによ。」
額に美しいもなにもあるのだろうか…。まぁあるだろうけど。
それにしても発言が当たり屋みたいだ。
「そうだな…。俺様に一生仕えてもらおうか。アーン?」
「え~。」
正直嫌だ。
むしろお前があたしに貢いでくれと言いたい。
「え~。じゃねぇ!…お前、この俺様と暮らせるんだぜ?夜は最高な気分にさせてやるよ…ククッ。」
うわぁー…(;┐_┐)イタイなー。
つーか一緒に暮らすんだ・・・。
「あたしはごく普通の生活がしたいの。青学の手塚くんと。」
「なんだと?!お前、まさか手塚とデキてやがるのか?!」
跡部が勢いよく立ち上がった。
目が血走っている。
「とにかくあたしは手塚くんと清い青春を送るの!」
交換日記とか憧れる。
「…そうかよ。手塚は唯一俺様が認めたライバルだ。奴にならお前を任せてもいいと思ってる。」
あたしはうんうん、と首を縦に振った。
「じゃあ今度の練習試合青学と組んでよ!そこで勇気を振り絞って話し掛けるからさ!」
「ああ、監督に相談してやるよ。」
初めて跡部が天使に見えた。
「やった♪あー、ドキドキしてきた!何話せばいいか分からないなぁ。どーしよ…。」
「心配すんな。俺様がいいこと教えてやるよ。」
「えっ、なになに??」
あたしはノートとペンを用意し、跡部の方に身を乗り出した。
「一度しか言わねぇからよく聞いておけ。手塚は確か…シスプリってもんが大好きらしいぜ。」
えっ!Σ( ̄□ ̄;)
"好き"じゃなくて"大好き"かい?!あの硬派のお手本の手塚くんがシ、シ、シスプリ?!よりによって妹系?!『にいさまvV』とかって?!
「う、嘘だ~(^▽^;)」
信じられない。
あたしの中での手塚くんは硬派で、何でもできて、自分に厳しい素敵な人だ。
おまけにかっこいいときたもんだ。
まさかギャルゲーなんて…ねぇ…?
「着替えてるとき岳人が言ってたぜ?この前ゲームソフト買いに行ったら手塚がシスプリってやつを持ってたんだけどよ、その上に違うゲームソフトのっけてカモフラしてたってな。俺様には何のことか分からねぇけどよ。」
「そっか…。カモフラまでして…。」
なんか…手塚くんのイメージが…。
「カモフラに使ってたソフトだが、確か…『蚊』っつったかな。」
蚊!!
「話すことできたじゃねぇか。」
「そ、そうだね!ありがとう…。」
何を話せというのか。
あたしにもシスプリをやれと?
もしくは蚊に刺されろと?
「あぁ、一つ言い忘れてたが立海の真田も一緒にいたらしいぜ?」
「へぇー、真田くんもねぇ。」
…………なんですと?!
Σ(◎□◎;)
一人ならまだしも(?)もう一人の硬派真田くんまで?!王者が何やってんの!テニスしようよ!
…あぁ、硬派が…(T_T)
「…跡部、やっぱ練習試合やめよ?そしてちょっと一人になりたいわ…。」
一人になって考える時間が欲しい。
硬派とはなんぞや。
硬派故にバーチャルか。
妹か。
「アーン?何言ってやがる。もう監督にメールしちまったぜ。」
ガ━(゚Д゚;)━ソ!いつの間にぃ?!
終わった。
今手塚くんを見ようものなら涙が止まらない。
つーか跡部と監督ってメアドまで交換してたんだ…。
(…ククッ。お前には俺様しかいないんだよ!手塚にはわりぃがせいぜい実物を前に幻滅するんだな!そして俺様の胸に泣き付いて来いよ!ハーッハッハァ!勝つのは………俺だ。)
(…よく考えたら青学にはいい男沢山いるじゃない。手塚くんはバーチャルで青春してるからもう駄目かもしれないけど…。)
硬派を信じられなくなったあたしにはもう一つの選択肢があった。
「…やっぱりこれからはカワイイ系だよね!菊丸くんとか越前くんとかさ!よし、燃えてきた。」
「そうかよ…。よかったじゃねぇか。祝いにいいこと教えてやるよ。これも聞いた話だがな、菊丸は…」
こんなやり取りが延々と続いた。
あたしは青学の人達の情報を得ることができた。が、同時に他校の男子を見る目が変わった。
人間見た目によらないし、見た目ではないと思った。
ああ…練習試合、目のやり場に困る。
あたしはメモしたノートを読み返して溜息と涙が出た。
【青学情報】
手塚くん→真田くんと共にギャルゲーオタク
大石くん→分からないことはコックリさんに聞く
不二くん→いつも靴下に穴があいている
菊丸くん→その辺に落ちてる草をよく食べる
乾くん→昆虫と会話できる
河村くん→寿司屋なのにパンしか食べない
桃城くん→屁でパンツに穴をあけることができる
海堂くん→ハエを食べる
越前くん→何でも匂いを嗅ぐ
この情報が全て跡部の嘘だと判明したのは練習試合が終わった後だった。
「あ~と~べ~(★_★)」
終わり
[後書き]
噂って信じないと思ってもその先入観は植え付けられますよね。まして本人に聞きづらいことなら尚更です。ここまで読んでいただいて有難うございました!!
そんな日はみんな暇なのか、放課後になるとたいていは部室に集まっていることが多い。
あたしも暇な一人。
宿題でもやろうかと部室に入った。
「あれ?一人??」
そこには専用ソファに腰掛け、優雅にティータイムしている跡部がいた。
「待ってたぜ。」
小指立ってる!
「待ち合わせしてないけど。」
「相変わらず連れねーじゃねーの。」
あたしはとりあえず跡部を無視して宿題をするべくもう一つのソファに腰を降ろした。
「アーン?お前、せっかく俺様と二人きりだっつーのに何しようとしてやがる。」
「宿題。あ、あんた頭だけはいいんだからあたしの代わりにやってよ。」
「…頭だけ、だと?」
跡部はゆっくりと立ち上がるとあたしの隣にやってきた。
つーか顔近いんですけど。
「俺様のいいところは頭だけじゃないぜ?」
あー…、毛穴とか絶対見られてる。やだなー。
「へー。どーでもいいけどもうちょい離れて。」
毛穴を見られるのを避けようと跡部の顎を押しのけようとした。
が、手首を掴まれた。
「大人しくしてな。今日こそ俺様に酔わせてやるぜ…。」
ある意味もう酔っている。酔いっぱなしだ。
跡部の顔がさらに近寄ってくる。
『ゴッ!!』
「っ?!なにしやがる!!」
手を塞がれたので反射的に頭突きしてしまった。
「あんたがなにしやがる!あーびっくりした。」
「だからって頭突きするこたないだろーが!俺様の美しい額が腫れたら責任…とってもらうぜ?」
「どう責任とるのさ。つーか"美しい額"ってなによ。」
額に美しいもなにもあるのだろうか…。まぁあるだろうけど。
それにしても発言が当たり屋みたいだ。
「そうだな…。俺様に一生仕えてもらおうか。アーン?」
「え~。」
正直嫌だ。
むしろお前があたしに貢いでくれと言いたい。
「え~。じゃねぇ!…お前、この俺様と暮らせるんだぜ?夜は最高な気分にさせてやるよ…ククッ。」
うわぁー…(;┐_┐)イタイなー。
つーか一緒に暮らすんだ・・・。
「あたしはごく普通の生活がしたいの。青学の手塚くんと。」
「なんだと?!お前、まさか手塚とデキてやがるのか?!」
跡部が勢いよく立ち上がった。
目が血走っている。
「とにかくあたしは手塚くんと清い青春を送るの!」
交換日記とか憧れる。
「…そうかよ。手塚は唯一俺様が認めたライバルだ。奴にならお前を任せてもいいと思ってる。」
あたしはうんうん、と首を縦に振った。
「じゃあ今度の練習試合青学と組んでよ!そこで勇気を振り絞って話し掛けるからさ!」
「ああ、監督に相談してやるよ。」
初めて跡部が天使に見えた。
「やった♪あー、ドキドキしてきた!何話せばいいか分からないなぁ。どーしよ…。」
「心配すんな。俺様がいいこと教えてやるよ。」
「えっ、なになに??」
あたしはノートとペンを用意し、跡部の方に身を乗り出した。
「一度しか言わねぇからよく聞いておけ。手塚は確か…シスプリってもんが大好きらしいぜ。」
えっ!Σ( ̄□ ̄;)
"好き"じゃなくて"大好き"かい?!あの硬派のお手本の手塚くんがシ、シ、シスプリ?!よりによって妹系?!『にいさまvV』とかって?!
「う、嘘だ~(^▽^;)」
信じられない。
あたしの中での手塚くんは硬派で、何でもできて、自分に厳しい素敵な人だ。
おまけにかっこいいときたもんだ。
まさかギャルゲーなんて…ねぇ…?
「着替えてるとき岳人が言ってたぜ?この前ゲームソフト買いに行ったら手塚がシスプリってやつを持ってたんだけどよ、その上に違うゲームソフトのっけてカモフラしてたってな。俺様には何のことか分からねぇけどよ。」
「そっか…。カモフラまでして…。」
なんか…手塚くんのイメージが…。
「カモフラに使ってたソフトだが、確か…『蚊』っつったかな。」
蚊!!
「話すことできたじゃねぇか。」
「そ、そうだね!ありがとう…。」
何を話せというのか。
あたしにもシスプリをやれと?
もしくは蚊に刺されろと?
「あぁ、一つ言い忘れてたが立海の真田も一緒にいたらしいぜ?」
「へぇー、真田くんもねぇ。」
…………なんですと?!
Σ(◎□◎;)
一人ならまだしも(?)もう一人の硬派真田くんまで?!王者が何やってんの!テニスしようよ!
…あぁ、硬派が…(T_T)
「…跡部、やっぱ練習試合やめよ?そしてちょっと一人になりたいわ…。」
一人になって考える時間が欲しい。
硬派とはなんぞや。
硬派故にバーチャルか。
妹か。
「アーン?何言ってやがる。もう監督にメールしちまったぜ。」
ガ━(゚Д゚;)━ソ!いつの間にぃ?!
終わった。
今手塚くんを見ようものなら涙が止まらない。
つーか跡部と監督ってメアドまで交換してたんだ…。
(…ククッ。お前には俺様しかいないんだよ!手塚にはわりぃがせいぜい実物を前に幻滅するんだな!そして俺様の胸に泣き付いて来いよ!ハーッハッハァ!勝つのは………俺だ。)
(…よく考えたら青学にはいい男沢山いるじゃない。手塚くんはバーチャルで青春してるからもう駄目かもしれないけど…。)
硬派を信じられなくなったあたしにはもう一つの選択肢があった。
「…やっぱりこれからはカワイイ系だよね!菊丸くんとか越前くんとかさ!よし、燃えてきた。」
「そうかよ…。よかったじゃねぇか。祝いにいいこと教えてやるよ。これも聞いた話だがな、菊丸は…」
こんなやり取りが延々と続いた。
あたしは青学の人達の情報を得ることができた。が、同時に他校の男子を見る目が変わった。
人間見た目によらないし、見た目ではないと思った。
ああ…練習試合、目のやり場に困る。
あたしはメモしたノートを読み返して溜息と涙が出た。
【青学情報】
手塚くん→真田くんと共にギャルゲーオタク
大石くん→分からないことはコックリさんに聞く
不二くん→いつも靴下に穴があいている
菊丸くん→その辺に落ちてる草をよく食べる
乾くん→昆虫と会話できる
河村くん→寿司屋なのにパンしか食べない
桃城くん→屁でパンツに穴をあけることができる
海堂くん→ハエを食べる
越前くん→何でも匂いを嗅ぐ
この情報が全て跡部の嘘だと判明したのは練習試合が終わった後だった。
「あ~と~べ~(★_★)」
終わり
[後書き]
噂って信じないと思ってもその先入観は植え付けられますよね。まして本人に聞きづらいことなら尚更です。ここまで読んでいただいて有難うございました!!