謎の連載
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「なんだよ、また結局このメンツじゃねぇか。」
校門に集まったのは、バネくん、ブン太、ゴリ江、あたしの4人。
当日につかまる子なんてそうはいないし、あまり多すぎても面倒だ。
「またって、ゴリ江彼氏いるからあんま来れないじゃん。いいから早く行こうよ、お腹空いた。」
「そうだな、じゃあ行くか!何食いたい?」
いつもと同じ。
この感じがすごく好き。
「あたしは何でもいいや。ゴリ江とブン太は?」
「食いたいもんありすぎて決んねぇ。」
「あたしも何でもいい。」
「何でもいいが一番困るんだっつーの。じゃあファミレスでいいな!」
こういう時は、いつもバネくんが決めてくれる。そこに甘えちゃってて申し訳ないんだけど。
「そういえばブン太、毎週いるけど彼女いいの?」
「俺がいねぇとお前らさみしいだろ?」
ガムを膨らましながら言うブン太に、
「調子乗ってんじゃねぇぞ!」
ゴリ江が突っ込む。
このやり取りも、聞いてて楽しい。
「彼女さみしがってないの?」
「だって今長野にいるし。」
ブン太の彼女は今、長野の高校に通っているらしく、あまり会えないという。寮に入ってるから、次に会えるのは冬休みなんだって。
夏休みは?って聞いたら、夏は彼女も合宿だから帰って来れないそうで。
彼女のご機嫌はナナメらしいけど、それって愛されてる証拠だよね。
あたしには、特定の会いたい人なんていないから羨ましいと思った。
「ゴリ江こそ、彼氏と仲良くやってんの?」
「うん、まぁまぁ。」
まぁまぁとか言ってるけど、ゴリ江は彼氏と仲が良い。何でも言い合える友達みたいな付き合いをしている。たまにケンカもするみたいだけど、仲直りするたびに仲良くなっている。
彼氏彼女がいる二人の会話は、聞いてて本当に羨ましい。
「バネくん、彼女作らないの?」
「そうだな…お前こそどうなんだ?」
「うーん、まだいらないかも。」
ていうか、好きという感情を忘れてしまったのかもしれない。
中学2年の冬、あたしは初めて本気で人を好きになった。相手はジロー。独特の感性で、話してて楽しかった。授業を抜けて、二人で寝て、お昼ご飯も一緒に食べた。
マンガの話、ゲームの話、下らない話、色んな話をしていっぱい笑った。
けど、ジローには違う学校に彼女がいた。
彼女がいるって知ってて好きになるなんて、あたしもバカだなって思う。でもやっぱり止められなくて、辛くて。
クラス替えをする前の春休み。思い切って気持ちを伝えた。伝えるだけでも、そう思って。
『え?俺??うそっしょ??』
返って来た言葉に、分かってはいたけどショックを受けた。
その可能性が、ジローの中ではなかったんだって、あたしは女として見てもらえなかったんだって
悲しくて、悔しくて
涙がいっぱい溢れてきた。
初めてだった。
こんなに人を好きになるのも、こんなことで涙を流すのも、
初めてだった。
『あのさー、俺ね?伝説のハジケリストと付き合うっていうの、想像できないんだ。』
言葉のナイフが、次から次へとあたしの心を刺していく。
『いつも俺に対して冷静だし、そんなこと感じさせなかったし。』
傷つきたくないから、気付かれないようにしてただけだよ。
『今まで通り、友達でいよう?』
それはできないよ。あたしはもう、ジローを友達としては見れない。だからいっそ、友達関係も終わらせて。
そう言ったら
『彼女とは、長く付き合ってるから別れられないよ。けど、伝説のハジケリストと離れるのもやだ。』
その言葉にあたしが返した言葉
“じゃあ、2番目でもいい。だから、ジローの側にいたい”
その日から数ヶ月、あたしはジローと関係を持った。
今まではあまり好きじゃなかったセックスも、ジローに抱かれて初めて気持ちが良いと思った。
幸せだった。
けど、人間は本当に欲深い生き物。身体は繋がっても、心は絶対に繋がらない。
あたしが心を欲しがるほど、遠ざかっていく。
もう、やめよう。
ふと、そう思った。
好きだったから、辛かった。思い出にしたかった。
ちょっとジローに幻滅してたのかもしれない。どんな男でも、浮気ってするんだなって。
それを学んで、あたしは想いを閉じた。
最初は忘れるのに苦労して、まだ涙が出る時期もあったけど、今となってはいい思い出。
あの時は醜くジローにすがってしまったけど、素直に気持ちを言えて良かったと思う。言わなかったらきっとまだうじうじしてたし、悲しいままで終わってた。
あたしはあの時、確かにジローが好きだった。幸せだった。
好きになってよかった。
そう思えることが嬉しい。
次はもっといい恋をしよう。
一から始められる恋をしよう。
そうやって、前向きになることが出来たあたしは、強くなったなって思えるよ。
ありがとう、ジロー。
もしどこかで偶然会ったら、きっとお互いに笑って話ができるよね。