サムライ祭
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とてもよく晴れたこの日。雨が降ることなど、誰が予測できただろうか。
そんな放課後、教室では、降り出した雨の対処法の話題でもちきりだった。
テニス部を含む屋外の部活は、急な雨で中止、もしくはミーティングとなり、生徒が教室から出て行くのがいつもよりも遅れていた。
傘のない人、置き傘のある人、折りたたみ傘を常備している人、これから誰かの傘をパクろうとしてる人、徐々に下校を始めた。
あたし達テニス部は、つい先日ミーティングをやったばかりなので、休養もかねて今日は部活無し、という伝言が回ってきた。
あたしは傘のない人。しかし、余裕でみんなに挨拶をし、教室を出た。
なぜなら、部室には予備のビニール傘が何本か置いてある。それを借りて帰ればいいので、焦る必要もへこむ必要もない。部活がなくなってしまったのは、嬉しいやらつまんないやらだけど。
きっと、英二や桃、タカさんあたりも傘なんて持ってないだろうから、鉢合わせたらカラオケでも誘おうかな、なんて考えながら、部室へと向かった。
濡れないよう、できるだけ屋根のある場所を通った。部室まであと少し、というところで屋根は途切れてしまっているため、諦めてダッシュ。
部室のドアを勢いよく開け、傘があるところへと歩みを進めると…
「ない。」
なんと、あるはずの傘が一本たりともなかった。
すでに誰かがここへ来て、傘を持って行ってしまった後だった。
しまった、どうしようと、大きなため息をつきながらがっくりと肩を落とした時だった。
「何してんスか?」
振り返ると、入り口にリョーマがいた。
「傘を借りようと思ったんだけど…」
「もしかして、ないの?」
「そう、ないの。」
リョーマも困った様子で短くため息をついた。
そうこうしているうち、屋根を打つ雨音は強くなっていき、あたしもリョーマも出るに出れない状況になっていた。
もうこれは諦めるしかないと、鞄を降ろしてベンチに腰掛けた。リョーマはというと、何故か彼もあたしの隣に少し間隔を空け、腰掛けた。
別に普通のことと思われるかもしれないが、あたしにとってはとても違和感を感じるのだ。なぜなら、あたしとリョーマは、特に仲が良い、というわけではなく、どちらかというと何を話したらいいか分からない相手だ。
よくリョーマと桃、英二なんかと一緒にあたしも遊ぶけど、考えてみれば直接会話をしたことがない。部活の時も必要最低限しか話をしないので、こう、いざ二人きりになるととても困る。
チラッと横目でリョーマを見ると、退屈そうにあくびをし、不機嫌そうに壁にもたれて顔だけで窓の外を見ていた。
わー、どうしよう、なんて思っていると、携帯のバイブが鳴った。天の助けとばかりに鞄から急いで取り出し、通話ボタンを押すと
『おっすー☆伝説のハジケリスト今何してんのー?』
英二からだった。
「今傘なくて、部室で雨宿りしてるとこ!」
『えっ?!伝説のハジケリストも傘無しさんだったの?!最後の一本オレが借りちゃったよー。』
「やっぱりね。英二あたりが持ってったと思ってたんだ。で、英二は今何してんの?」
『今ね、大石と桃と乾でラーメン並んでんの!ほら、前言ってたラーメン屋さん!』
「あぁ、あの!いいなー、あたしも食べたい。こんな時じゃないと行けないもんね。」
『そうそう!まだ全然入れそうもないから、傘持って迎えに行こっか?』
「え!いいの?!」
『うん、オレ達最後尾だしさ!今から大石が迎えに行くから。』
「あ、ちょっと待って!」
リョーマ