立海生活
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休み時間。ふと隣の席のブン太に目をやると、いつものように何かをもぐもぐ食べていた。
空き時間に何かを食べているのはいつものこと。だからまたすぐにブン太から目を離す。おいしそうなものを食べている時は、ダメもとでちょうだいって言ってみるけど、(九割断られる)普段はほとんどごく当たり前のこととして気にもとめない。
がしかし。
あたしの目は今、ブン太が夢中で口へと運んでいる、ある物に釘付けだ。
「何?食いてぇの?」
あまりにもガン見していたためか、あたしの視線に気付いてそう聞いてきた。
まぁ普通に考えたらそう思うだろう。何せブン太が“ソレ”を口に入れている光景から目が離せないのだから。
でも、目が離せないのは“ソレ”が欲しいからじゃない。
「いや、そうじゃなくて…。」
「何だよ。」
「よくそんな物食べられるなーって思って。」
そう、今ブン太がおいしそうに食べている物。その名も##NAME2##が、あたしはとっても苦手である。そんな物、人間の食べ物じゃないと思っているほどに苦手、っていうか無理だ。
「えっ、お前##NAME2##嫌いなのかよ!」
「嫌いっていうか…まぁそうだね。絶対食べたくない物だね。」
「マジで?こんなにうめぇのに?」
そう言いながら、口いっぱいに##NAME2##を詰め込んだ。
「うわぁ…」
「うわぁって何だよ。つーか実際に##NAME2##食ったことあんのかよ。食わず嫌いとかじゃねぇの?」
「食べたことあるよ。」
「じゃあその時お前が食った##NAME2##が特別まずかったんだな!」
うんうん、と、##NAME2##を止まる事無く口に運び続けながら勝手に納得し始めるブン太。だが、
「どれも同じだよ。おいしくない。」
とあたしが言ったその直後、ブン太の手が止まった。
「お前##NAME2##に失礼だって。いいから一口食ってみろぃ。」
「いやだ。」
「いいから!」
「よくない!絶対嫌だ!」
持っていた##NAME2##をあたしに押しつけてきたので、逃げるようにして後ろへ身を引いた。
「うまい上に体にいいんだぜ?」
「いやもうホント無理。」
「絶対食わねぇの?」
「うん、絶対。」
「…ふーん。絶対、ねぇ。」
普段なら押しつけるような事など絶対しないブン太だが、今日は気分的に何か違うようだ。目を細めてにやりと笑った。何か企んでるというか、「言ったな?絶対だな?」みたいな悪戯っぽい笑いを浮かべている。
「こうなったら、意地でも今日中に食わせてやるぜ。」
「食べないもん。」
「じゃあ、もしお前が##NAME2##食ったらどうすんの?」
「どうすんのって…」
ブン太の言いたいことはなんとなく分かる。##NAME2##は二度と食べません宣言を破った場合、何かペナルティーをということだろう。
「そうだなー、チーズケーキ作って持ってこい。」
「えー…めんどくさい。」
「お前が##NAME2##食わなきゃいいんだから簡単だろぃ?」
「もしあたしが食べなかったら?」
「そしたら俺がチーズケーキ作ってきてやるよ。」
なんだかよく分からないけど、ブン太は無駄にノリノリだ。あたしは絶対食べないから、負ける気がしないので燃えもしない。
「よし、そうと決まれば…。」
ブン太は手に##NAME2##を持ったまま立ち上がると、「ついてこい」と言って教室を出て行った。
あたしは小さくため息をついてから、「早くしろぃ」と促すブン太のあとを、小走りでついて行った。
「ちょっと、どこ行くつもり?」
「いいからいいから。」
ちっともよくない。
真田と柳生のクラスを通り越し、ジャッカルのクラスも通り過ぎた。
このまま行くと…
「おーい、仁王ー!」
「やっぱり…」
教室の入り口から遠慮無しに叫ぶと、呼ばれた雅治が友達との雑談から抜けてこちらへ歩いてきた。
彼氏である雅治から言われれば、##NAME2##を食べるとでも思っているのか。というより、雅治の詐欺テク、もしくは巧みな話術でどうにかしようと考えてるんだろうけど。
残念だけど、そうはいきません。
「どうした?二人揃って。」
「ちょっと頼みがあってよ。今平気?」
「あぁ。」
校内では何だかんだで部活でしか会っていないから、校内で雅治と話すのがなんか新鮮だ。休みの日は私服だし。全校集会とかがないかぎり、こうしたただの男子的な雅治を間近で見ることができない。
ただの男子的なと言っても、やっぱり雅治には独特のフェロモンがある。キケンな匂いとでもいうのだろうか。
でも本当は、とても思いやりのある人。まぁたまに子どもみたいなイタズラをしてきたり、ちょっかいを出してきたりするけれど、実際はびっくりするくらい優しくて安心感のある人だ。
顔が整っているというのもあるけど、こう見てるだけでドキドキするというか、この人になら汚されてもいい、何をされてもいいわ、いけない娘だと噂されてもいい、と山口百恵的なことを図らずも思ってしまう。
「おい伝説のハジケリスト、よく見とけよ?」
着崩した制服がなんともまたセクシーな雅治に見とれまくっていたが、ブン太の声によって我に返った。
「仁王、すぐ終わるから動かないでくれな。どこも動かすなよ?」
「おう。」
雅治がやけに物分かりがいいのは、自分は絶対的に危害というか被害を被らないという自信があるからだ。相手の裏を読むのが何しろうまいので、ブン太が何かヘンなことをしようとしているならすぐに分かるはずだ。
「それじゃ、失礼して…」
するとブン太は、持っていた##NAME2##をゆっくりと
「(〃□〃)!!」
雅治の形の綺麗な唇に、ソフトに押しつけた。もう当たってるっていうより挟んでるって感じで、##NAME2##が雅治の唇に触れまくっている。
「ほら、お前これでも食わねぇ気か?」
「うっ…!」
正直食べたい。かなり味わって食べたい。食べたいに決まってる。いや、いっそのこと##NAME2##になりたいと心からそう思う。
「おい、何じゃ今のは。」
「いや、こいつが##NAME2##嫌いで二度と食わねーとか言うからさ。」
「ほう。栄養もあってうまいのにのう。」
「そうだろぃ?でもぜってー食わねーとか言うんだぜ?好き嫌いはよくねーよな!」
「なるほど。お前さんはどうしても伝説のハジケリストに##NAME2##を食べてもらいたいってわけか。」
「そういうこと☆」
「伝説のハジケリスト、そんなに##NAME2##嫌いか?」
雅治を味方につけられ、いざとなるとなにげに自分が不利な気がしてくる。
「嫌いっていうか、…苦手?」
「俺に聞くなよ。」
ついブン太に振ってしまった。気まずいっていうのもあるけど、雅治の、少し緩めたネクタイがどうしよもなくかっこよくて、色っぽくて、どうしたらいいか対応に困る。
自然に俯いてしまう。
「食べ物の好き嫌いをどうにかするのは難しいからの。それに、俺の口に当たったものなら余計に食べたくなくなるんじゃなか?」
「そ、そんなことは…」
そんなことは決してない、むしろ今すぐ食べてもいい、と言いたいけど、ここは校内。生徒もたくさんいる中、公衆の面前でそんなことは言えない。
なんだか気まずい空気が流れる中、ブン太は平然としている。
そして、雅治の耳元で何かを言った。
「伝説のハジケリスト。」
「はい。」
ブン太がひそひそと何かを言ったあと、雅治はあたしの肩に手を乗せて言った。
「ほんの少し、一ミリ程度でいいから食べてみんしゃい。」
「え…」
ブン太が何を言ったのかは知らないが、この状況はひじょうにマズイ。もう駆け引きはとっくに始まってるんだろうけど、ナイフのように鋭くて真っ直ぐな瞳が、あたしを捕らえて話さない。この瞳で見据えられたらNOとはいえない。
雅治の横では、そんなあたしの心情を知ってるブン太がしてやったり顔をしながら、雅治に##NAME2##を渡した。
「大丈夫、きっと好きになる。」
そんなことを言われたら、もうあたしの負けだ。
「唇に当たったら、少しだけかじれよ。」
「え、ちょっと待って!自分でできるから!」
片方の手で肩を掴んだまま##NAME2##を構えてあたしの方へ向けるので、それだけはと雅治を制した。食べさせてもらうなんて、そんな恥ずかしいことはできない。
「ここは仁王の好意に甘えろって!」
「Σちょっ…!」
ブン太があたしの背後に回り、羽交い締めにしてきて身動きが一切取れない状態になってしまった。
逃げることなど到底無理だ。これはもう腹をくくるしかない。チーズケーキの作り方を調べないといけないと思っていると、徐々に雅治と##NAME2##が近付いてきた。
あと少しで口に来るところで、反射的に目と口を思いっきりきゅっと瞑った。
『ぱくっ』
「おぉ!さすが仁王!」
何とも言えない感覚に目を開けると、視界には雅治の頬。鼻腔には雅治の匂いと##NAME2##の匂い。でも、あたしの口の中には何も入っていない。
つまり、
「おいしかったか?」
##NAME2##を食べたのは雅治で、あたしが食べたのは……
「ちょっ!マジありえない!///」
「伝説のハジケリストに食われるってのも悪くないな。」
羽交い締めから解放されると腰が抜けたように足ががくんとなった。あと少しでおしりが床に着きそうなところで、雅治に腕を掴まれてなんとか立てたけど。
「よっしゃ~!チーズケーキ♪チーズケーキ♪」
「あぁ、ナルホド。伝説のハジケリストに##NAME2##を食べさせることができたら、チーズケーキを奢ってもらえるって話か。」
「そ☆正確には伝説のハジケリストが作ってくるんだけどな。サンキュー仁王!お礼に一切れやるからさ。」
すると、雅治があの笑みを、何か企んでる時のような、あの口の端だけを上げた笑みををブン太に向けた。
「それなら賭けは丸井の負けじゃ。」
「へ?何でだよ。」
「今伝説のハジケリストが食べたのは、##NAME2##じゃなくて俺の唇だからのう。」
「え…?」
「伝説のハジケリストは、##NAME2##を食べた俺の口を食べたってことぜよ。」
「ちょっと雅治!///」
「Σえぇ?!マジかよー…」
これだから、あたしは雅治には敵わない。
結局あたしは##NAME2##を食べずに済んだし、賭けにも勝てた。ただ廊下が騒々しい。
本当に雅治には敵わない。
大きなため息をついて肩を落とすブン太も、意味は違えど同じ事を思ったに違いない。
ブン太の敗因は、味方に付ける相手を間違えたこと。
もう一つは、雅治のあたしに対する甘さを見抜けなかったこと。
それはあたしも同じ事だけど。
ブン太には勝ったけど、雅治には負けたような、そんな気がした。
終わり
【後書き】
バイト中、お客さんと嫌いな食べ物の話をしてて思い付きました。そしてずっと考えてました。(お客の話など聞いちゃいない)嫌いな物は食べなくてもいいような気がします。余所で出された時は頑張って食べた方がいいとは思いますが。
そんなことはどうでもいいのですが、今回は仁王君にしてみました。最初はテニミュのレンレン効果(幸村役の八神蓮君です)で幸村で書いてましたが、仁王の方がそれっぽいかなーと思って仁王君にしてみました。相変わらず口調がよく分かりません。
仁王は何だかんだで彼女に甘いような気がします。合宿先のご飯のおかずで嫌いな物があったら、「もらっていいか?」とかってさりげに食べてくれそうな感じです。彼女の嫌がることは全て自分がやるぜよ!みたいな。
でもアッチの方ではたまにイジワルする、つまり床Sだと思います。
最近妄想暴走癖がついてしまいました。本当に申し訳ない!