氷帝生活
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うちのマネージャーは明るく、細かいことは気にしないタイプだ。
いつも誰にでも優しい。
だが、今日は違った。
「伝説のハジケリスト先輩どーしたんスか?元気ありませんけど…」
「黙れ陰毛。」
「Σい?!」
今日の伝説のハジケリストはおかしい。いつもの明るい表情が無い代わりに、真田といい勝負なシワが眉間に寄っている。
「なんだよお前。機嫌わりぃのか?」
「うるせーな。バブリシャスみたいな頭しやがって。」
「Σバッ?!」
ドスの効いた声で言い放つ伝説のハジケリスト。機嫌が悪いという次元を越えている。
まるで別人だ。
「伝説のハジケリストさん、どうかなさいましたか?私でよければ話をお聞きますよ?」
「お前に話すことなんてねーし。この会社員が。」
「そんな…」
比呂士にまであんな態度を取るなんて、やっぱりただ事じゃねぇ。
「下手に話掛けん方がええみたいじゃな。」
小声で言いながら、仁王が俺の方に来た。一体、伝説のハジケリストに何があったっていうんだ…。
「皆揃っているか?」
部室のドアが開き、真田と柳が入ってきた。俺は少し嫌な予感がした。
「今し方雨が降ってきた。今日はこのままミーティングにしようと思う。…ん?どうしたんだお前達。」
いつもと違う雰囲気に真田は気付いたようだ。
様子がおかしい伝説のハジケリストに暴言を吐かれた奴らはすっかりへこんでいた。無理もないだろう。
「ちょっとな。」
俺が真田にそう伝えた瞬間、外が光った。雷だ。
「おかしな奴等だ。伝説のハジケリスト、ミーティングの記録を取れ。」
「チッ。」
伝説のハジケリストは軽く舌打ちをすると、部誌を取りに棚へ向かった。真田とのやりとりにハラハラしてしまう。
「む…?おい伝説のハジケリスト。」
「何。」
真田が伝説のハジケリストを呼んだので、俺はテーブルを出しながら様子を見た。
「スカートの丈が短いと、何度言えば分かるんだ。」
伝説のハジケリストはいつも真田に言われているが、その度笑って受け流している。
でも、今日の伝説のハジケリストはそうはいかなかった。
「は?あたしはあんたの女じゃないんですけど。」
「な……」
嫌な予感は的中した。真田が怒ってるのか驚いてるのかは分からないが、これ以上会話させるのは危険だ。
「ち、違うんだよ!伝説のハジケリストにも色々事情が…」
持っていたテーブルを置き、急いで真田の方へ歩いた。
変な汗が背中を伝う。
「真田…」
真田の顔を見ると、何故か真っ赤だった。
「弦一郎、精市はまだか?」
「あ、あぁ…。クラスの活動で少し遅れるそうだ。」
そう言って、早足で柳のところへと移動した。
俺も出しかけのテーブルを何とかしようと方向を変えると、
「伝説のハジケリスト。すまないが青学戦の記録も持ってきてくれ。」
今度は柳が話し掛けた。
「自分で取りに来いよ。」
「………。」
俺は肝が潰れる思いで柳を見た。が、柳は普段どおりだった。
「どうやら虫の居所が悪いらしいな。」
そう呟いて、自分でノートを取りに行った。柳は大人だと俺は思った。
「ゆっきーが来てから始めるんじゃろ?」
「そうだ。来てすぐ始められるようにこうして準備したわけだが、手持ちぶたさではどうしようもあるまい。宿題でもやるか。」
ここは真田の提案に乗った方がいいだろう。下手に会話して、伝説のハジケリストがいつ爆発するとも限らない。いや、もうすでに爆発しているのかもしれないが。
みんなで宿題を始めたが、いつものにぎやかさは無かった。
伝説のハジケリストをチラっと見てみると、宿題をやらずに携帯をいじっていた。その伝説のハジケリストに、またしても真田が話し掛けた。
「伝説のハジケリスト。」
「……。」
「皆勉強中だ。携帯はしまえ。」
「……。」
変な汗が、今度はこめかみのあたりを伝った。
「聞こえていないのか?携帯をしまえと言ってるんだ。」
「うるさい。そして臭い。」
その瞬間、バリバリという雷の音が近くに聞こえた。雨の音も、さっきよりも強くなった。
「今日のお前はおかしいぞ!一体何があったというのだ!」
「うざい。きもい。」
「きもいとは何だ!言いたい事があるならはっきり言え!」
真田は立ち上がると、テーブルを両手で強く叩いた。親子喧嘩みたいになってきて、俺はもう居ても立ってもいられない。
これ以上は本気でマズイと、俺の第六感が告げている。
「ジャッカル!どこへ行くんだ!」
「すぐ戻る!」
真田に怒鳴られながらも部室を出た。外はすごい雨だが気にしていられない。
俺はフルダッシュで幸村の教室に向かった。
「伝説のハジケリストの様子が変?」
「そうなんだよ!とにかく急いでくれ!」
幸村の教室にいったら誰もいなくて、職員室に行ってみたら幸村の担任がいた。聞けば文化祭に向けてクラスの全員でソーラン節の練習をしてるとかで、音楽室にいるという。
気が早すぎだろと思う余裕は、今の俺にはなかった。
俺は音楽室へ全力疾走し、幸村を連れて部室に戻った。
「伝説のハジケリストは?!」
部室のドアを開けると、さっきよりも不機嫌そうな伝説のハジケリストが帰り支度をしていた。
「おい、お前帰るのか?!」
「うっせーな濡れハゲ。」
実際に伝説のハジケリストに言われると、ものすごくショックだ。赤也と丸井と比呂士の気持ちがよく分かった。
「どうしたの?真田に何か言われた?」
幸村は俺の後ろから来て、すぐに伝説のハジケリストに近付いた。
「幸村!俺は…」
真田が言い掛けたのを、柳が制した。幸村に任せておけと、そういうことなんだろう。
「帰るの?傘はある?」
幸村はいつもの調子で聞いたが、伝説のハジケリストはフイッと横を向いてしまった。
「伝説のハジケリスト?」
「うるさい。」
幸村にまでうるさいと言うなんて、よほど重傷だ。でも、二言目の暴言は無かった。
「じゃあ俺も帰ろうかな。なんかめんどくさくなってきたし。」
「なっ!」
叫びそうになる真田を、また柳が制して「そうか。」とだけ言った。
俺を含めた他のやつらも、ただ幸村を見るばかりだった。
「傘は昇降口からパクればいいよね。伝説のハジケリスト、一緒に帰ろう。」
幸村らしからぬ発言に、今まで下を向いてた伝説のハジケリストが顔を上げた。
「あとお腹空いちゃったから、何か食べて帰りたいな。伝説のハジケリストは何食べたい?」
「………。」
伝説のハジケリストが困ったように顔を逸らすと、幸村は伝説のハジケリストの手を取った。
「行こう。おいしいケーキがあるんだ。あ、その前に教室寄って俺のカバン取って…傘パクんなきゃね。」
そう言って、伝説のハジケリストのカバンを手を握ってる方の逆の手で持ち、伝説のハジケリストを連れて部室を出た。
外はまだ雨が強く降っている。
「まったく…伝説のハジケリストはどうしたというのだ。」
「伝説のハジケリストにも色々あるんだろう。精市に任せておけ。」
「伝説のハジケリスト先輩って怒るとコワイんスね…。」
「でもよー、何で怒ってたんだ?」
「“怒る”とは違うぜよ。まぁ俺達が原因じゃないことは確かだから安心しんしゃい。」
口振りからして、仁王も伝説のハジケリストを理解しているようだ。
「とにかく、俺達に出来ることは、戻ってきたときにいつも通りに接してやることだ。話したくなったら伝説のハジケリスト自身から話すだろう。」
「そうですね。理由を聞き出そうとしてしまった自分が恥ずかしいです。」
「気にする事はない。弦一郎、叱ってやることも大事だが、それは今回の場合不適当だ。」
「そうか。では俺は口を出すまい。」
すでに口出し済みだが、真田も伝説のハジケリストを気にしていることには違いない。
外を見ると、雨は徐々に小降りになってきていた。
部長とマネージャーが欠席のこのミーティングは、以外と遅くまで続いた。
―次の日―
「ジャッカルおはよう!」
昇降口で伝説のハジケリストに会った。昨日の出来事が嘘みたいに、いつもどおりの伝説のハジケリストだ。
「おう、今日も寒いな。」
気温は低いが、天気はいい。昨日の雨もまた嘘みたいだ。
「昨日、ごめんね?」
伝説のハジケリストは恥ずかしそうに、申し訳なさそうに俺に言った。
「気にすんなって。あいつらも気にしてねぇだろうし。」
「でも…」
「お前も色々あるんだろ?」
しかし幸村はすごいと思う。たった一晩であの状態をなおしてしまった。伝説のハジケリストがああなった原因と、それをなおした方法が俺には見当もつかない。
「ホントごめん。」
「だから謝んなって!ホラ、チャイム鳴るぜ?」
「うん!」
何はともあれ、伝説のハジケリストが元気になって良かったと思う。
また何かの拍子で伝説のハジケリストにブラックが降臨したその時は、喜んでハゲと呼ばれよう。それで伝説のハジケリストの気が済むなら安すぎるってもんだ。昨日、赤也も丸井も比呂士もそう言ってた。
性格も好みも見事にバラバラな俺達だけど、全員一致のモンが二つだけある。
一つは『常勝』
もう一つは
『伝説のハジケリストが大事な存在』
だということだ。
終わり
[後書き]
もう何が何やらって感じですね!
幸村は伝説のハジケリスト様のドロドロを掻き出すのを手伝ってくれたわけです。そして柳は何でも知ってます。
そしてジャッカルは優しいです。
超つまんない話ですみませんでしたm(__)m