氷帝生活
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ホラ、まただ。
「伝説のハジケリスト先輩!はよっス♪」
「おう!おはよう!」
「元気ないみたいスけど、どーかしたんスか?」
そう聞いてみても
「あはは!何言ってんの!そんなことより、期末の英語どーだった?」
という具合にはぐらかされる。
いつもこんな感じだから周りの奴らは気付いてないし、伝説のハジケリスト先輩も俺が気付いてないと思ってる。
「それに関してはノーコメントで。」
「どーせ悲惨だったんでしょ(笑)」
俺はごまかせないスよ?
アンタを見てるから。
授業中、教室から理科室に移動することになった。
(おっ♪いるいる。)
理科室へ行く途中、伝説のハジケリスト先輩のクラスの前を通った。
伝説のハジケリスト先輩は窓の外を眺め、心なしか虚ろだ。
ギリギリのところにいて、張り詰めた糸のように、今にも切れてしまいそうな、そんな気がした。
「おい、何突っ立ってんだよ!早く行くぞ!」
「ワリィ…。」
ダチに言われて我に戻り、俺は足を進めた。
何もしてやれない、力のない自分を憎んだ。
「ウゼェ…。」
放課後、俺は伝説のハジケリスト先輩のとこへ急いだ。
「伝説のハジケリスト先輩!」
「あ…赤也。あたし今日部活休むから。真田に言っといて。」
そう言って力無く笑う伝説のハジケリスト先輩は、限界が近いといった感じで、今にも壊れてしまいそうだった。
「なら都合いいっスね♪ちょっと来てもらえません?」
「ごめん、帰るから。」
今、このまま帰したら俺は 本当の馬鹿だ。
「いいからいいから♪行くっスよ!」
「……。」
伝説のハジケリスト先輩は俺の手を振りほどく気力もなく、ほとんど俺に引っ張られるように歩いた。
俺は伝説のハジケリスト先輩の手を握ったまま、『立入禁止』のロープをくぐった。
「暗いから足元気をつけてくださいね!」
『立入禁止』と書かれているのはマンションの廃屋。ここに伝説のハジケリスト先輩を連れて来るのは告る時って決めてた場所だったりする。
俺のとっておき。
屋上のドアを開け、下を向きっぱなしの先輩の顔を無理矢理正面向かせた。
「どうスか?!」
恐る恐る先輩の顔を覗いた。
「うわ…」
先輩は眩しいくらいの夕日に照らされ、驚いたような顔をしていた。
今俺達が居るこの屋上からの眺めは、どんな絶景スポットも敵わないだろう。
迫るような夕日。それでいて優しく包み込まれるような光を放っている。
「俺、柳先輩とかヤギュー先輩みたく頭良くねーから伝説のハジケリスト先輩の悩みっつーかなんつーか、そーゆーの理解できねーと思うし、理解できても何も出来やしないんだろーけど…。」
伝説のハジケリスト先輩は夕日を見たままだ。
目に大粒の涙を溜めて。
「足りねー頭で考えた結果がこれっス♪綺麗でしょ!…ここ、誰もいないし泣いてもヘーキっスよ。」
「……。」
「俺も見てませんから!ね?なんなら俺も一緒に泣くっス!」
「あんたが泣いてどーすんのよ。」
伝説のハジケリスト先輩の目から、大粒の涙が溢れた。
こんな時にアレだけど、夕日に照らされて光って、めちゃめちゃ綺麗だった。
「…うっ…うっ…。」
苦しそうに肩で息をする伝説のハジケリスト先輩の頭からジャージを被せた。
「いいっスよ。」
その後、伝説のハジケリスト先輩は俺にしがみつくように泣いた。
人前では絶対に弱みや涙を見せない先輩がこんな風に泣くなんて初めて知った。
俺にもできることあったんスね。
「…ありがと。少しスッキリした。」
「またいつでも連れて来ますよ。」
落ち着いてから俺達は屋上を出た。外はもう暗い。
「暗いから階段気ぃつけて下さいね…Σおわっ?!」
まだあると思った階段が無くて、足を踏み外してこけた。
「いってぇ…」
「ぷっ。」
笑った!!
「ひでぇ!笑わないでくださいよ!!」
「だって…ふふっ!気をつけてって言ったそばから…ははは!」
いつもの笑顔だ。
「そーゆー伝説のハジケリスト先輩こそ目ぇ真っ赤っスよ~?」
「うるさい!目ぇ赤いとか赤也にだけは言われたくないもんね!」
「Σなっ…!」
とっておきの場所を使ってよかった。伝説のハジケリスト先輩が笑顔を取り戻してくれたんだから。
「また告る場所探さなきゃなぁ…。」
「ん?何か言った?」
「な、なんでもないっスよ~!やだなぁ。幻聴っスか?」
「何だと!」
「……。」
「……。」
「赤也にしかできない事…あるよ?」
「え?今何か言いました?」
「なんでもない♪幻聴じゃない?」
「Σなっ!!」
「「あはははは(笑)」」
いくら隠しても、俺は見抜くから。
「じゃあ、また明日ね。」
「っス♪また明日!」
何もできないけど、伝説のハジケリスト先輩が好な気持ちは負けねぇ。
どんな奴にもだ。
その日俺は、いつもと違う道を歩いて帰った。
終わり
[後書き]
腕も無いのにしゃしゃってごめんなさい!
こんなもの勝手に捧げてごめんなさい!迷惑ですね!
お読みいただいた伝説のハジケリスト様もごめんなさい!
ごめんなさいごめんなさい。