白い世界で、君と
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“いつか王子様が、花束を持って迎えに来る”
あたしも一応女の子だから、そういうのって憧れる。
そう話したら
「今時、そんな人はいない」って
笑われたことを、新しいワンピースを着ながら思い出した。
もうずいぶん前のことだけど。
鏡の前に立って、自分の姿を見た。
可愛過ぎず、背伸びし過ぎず、上品な感じのワンピース。
それと、ワンピースに合ったネックレス。
グロスの色は、透明に近いピンクを選んだ。
あたしだって、“王子様”なんているわけないと思ってた。
有り得ないことだからこそ生まれる、憧れ。
ただ単に、夢を見てるだけ。
ふと見ると、窓の外は真っ白だった。
粉雪がサラサラと舞い、木を白く飾っていた。
白さが、今日がどれほど寒いかを教えているようで。
ハンガーに掛けてある、新しいコートに新しいマフラーを、丁寧に身につける。
髪を整えながら携帯を見ると
マナーモードにしていた携帯が、タイミングよく着信を知らせた。
「もしもし。………うん、今行く。」
電話を切って、新しいバッグの中にしまった。
手袋も、新しい物を着ける。暖かいけど、ごわごわしない優れ物。
玄関の収納から、新しいパンプスを出す。
少し踵が高いけど、履きやすくて、気に入っている。
もう一度、鏡で身だしなみを整えて、玄関を開けると
「上出来じゃねぇの。」
あたしの王子様が
「俺様の思った通りだ。」
薔薇の花束を片手に持って、満足そうに笑っていた。
「本当にいいの?こんな高そうな物ばかり…」
今日あたしが身に付けてるもの全て、跡部からのプレゼント。
誕生日でも何でもない、ただのデートなのに。
「気にするな、俺の気まぐれだ。」
そう言って、持っていた薔薇の花束を、あたしの差し出した。
深紅の、美しい薔薇。
雪その上にはらはらと舞い落ちてくる雪が、外の白さが、その紅さをより一層引き立てる。
「これも気まぐれ?」
「あぁ、そうだ。」
花束を受け取り、薔薇を眺める。
「おい、行くぞ。」
あたしの手を優しく引いて、車に乗せた。
“いつか王子様が、花束を持って迎えに来る”
嘘じゃなかった
花束を持った王子様は
本当にあたしを迎えに来た
そんなことを考えながら、ゆっくりと車内に乗り込んだ。
相変わらず乗り心地の良い車。
跡部の横で、雪が雫になって、薔薇の花びらを伝っているのを眺めていた。
「気に入ったか?」
「うん、ありがとう。」
今日のデートは、いつもと違う。
跡部もいつもより大人っぽい。
背もたれに回された腕が、今日はやけに恥ずかしくて
「雪、すごいね。」
気持ちを誤魔化すように、窓の外を見た。
はらはら
さらさら
はらはら
さらさら
静かに舞っている。
「去年の今頃も降ってやがったな。」
「そう言えばそうだったね。」
去年の今頃、あたしは何をしてたっけ。
「なかなか悪くねぇ演出だ。」
「何が?」
「祝福されてるみたいじゃねぇの。」
「あ…」
去年の今頃、もっと詳しく言えば今日、
あたしと跡部は特別な関係になったんだ。
今日みたく雪の降る夜だった。派手な演出の告白が跡部らしかったことを思い出し、小さく笑う。
そんなあたしを見て
「何がおかしい。」
眉をひそめて言うから、跡部の膝に手を置いて
「おかしいんじゃなくて、嬉しいの。」
今身に付けてるプレゼント、薔薇の花束。
やっと理由が分かった。
「フッ、そうかよ。」
跡部も、嬉しそう。
やっぱり、願ってた“いつか”は来るもので、
あたしはそれが、跡部で良かったと思う。
「伝説のハジケリスト」
名前を呼ばれて
見つめ合って、
ゆっくり唇を重ねるのも
その後決まって、
髪を撫でるのも
「跡…」
優しく口を塞がれて
「そうじゃねぇだろ?」
そんな甘い目で見るから
「景吾」
そんな甘いキスするから
たまに、夢なんじゃないかって、思ってしまう。
そんな時は、手を握って確認する。
夢のような、有り得ないような
現実の出来事だって。
終わり
[あとがき]
[後書き]
粉雪のイメージとして、“儚さ”“優しさ”が私の中にあります。跡部が恋人だったら、贅沢で、幸せな思いを沢山させてくれそうです。だからこそ、終わりが来るのがこわい、失うのがこわい。これは夢ではないだろうか、ふとそう考えてしまわなくもないような。
特に、静かに雪が降っているのを見た時は、感傷的な気分になりかねません。
ちょっとチョーシこいてこんなこと言ってしまいましたが、話の内容ワケワカメ意味ピーマン。しかも雪いらなくない?みたいな。
ここまで読んで下さってありがとうございました。
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