お題DEキリ番夢小説
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【跡部 景吾】
一時間目の合同体育はよりによってマラソン。
広い氷帝学園の周りを孤独に走る。
あたしはもちろんビリだ。さっきまであたしの後ろを走っていたアキバ君にも、今し方抜かされた。友達にも先に行ってもらった。
「はぁ~。歩いちゃえ。」
すっかりやる気を無くしたあたしは、散歩気分で歩く事にした。
なんでマラソンなんてしなきゃいけないのか。いくらテニス部とはいえマネージャーなわけだし、マネージャーと言っても他の学校に比べたらずいぶん優雅なもんだし…
そんな事を考えながら歩いていると、見慣れたベンツが見えた。ちょうど裏門に差し掛かった時の事だった。
「ん…?」
ベンツのドアが開くと、思った通り跡部が出てきた。
が、
自ら鞄を抱え込み、変質者のように辺りをキョロキョロ見回している。
「跡部!何やってんの?」
「∑お、俺様は別に遅刻したわけじゃねぇ!」
「は…?(゚。゚)」
体をビクつかせ、額に汗をうっすらうかべ、瞳孔全開であたしを見てきた。
「はっ…なんだ。伝説のハジケリストか。ビビらせやがって。」
あたしを見て安心したのか、跡部はさっきと一転していつもの偉そうな態度に戻った。
「何ビビってんのよ。」
「アーン?俺様がいつビビったって?」
「たった今ビビらせんなって言ったじゃん…。ねぇ、跡部が遅刻なんてどうしたの?皆勤賞だったのに。」
あたしが“遅刻”という言葉を発すると、跡部の肩がピクッと動いた。
「遅刻じゃねぇ。たまたま起きた時間が遅かっただけだ。」
それを遅刻と呼ぶことを、跡部はご存知ないのだろうか。
「あぁ、寝坊ね。夜更かしでもしたの?」
「寝坊なんてみっともねぇネーミング使うんじゃねぇ!」
自分で寝坊しといてコレだ。
美にこだわる男。
跡部景吾。
「ごめん。あたしが悪かった!じゃあそろそろヤバイから行くね。」
あたしも授業中の身なので、本来ならばこんなことしてる場合じゃない。
「待ちな。」
跡部は再び歩き出そうとしたあたしの前に回り込むと、左手を顔に当て、ちょっと飽きてきたあの動作をした。
「その格好…どうやらお前は今、体育でマラソンをやっている。違うか?」
全身の毛穴がブチ開いてるのかは分からないが、目ん玉をかっ開き、名探偵のように話し始めた。
「そうだけど。」
「ククッ。やっぱりな…。そしてトロいお前は現在ビリ。やる気が失せて歩いてるってとこか。」
「まさにその通りだよ。じゃ!」
時計がないから定かではないが、もう後半グループがスタートした頃だろう。
見つかってしまっては、サボっていた事がバレてしまう。だからあたしは跡部を擦り抜けて歩き出した。
「おい、まだ話しは終わってねぇ!」
するとまた、跡部はまたあたしの前に回り込んだ。
「もう…。なに~?」
「お前、貧血で倒れろ。」
「え?何言ってんの?」
「伝説のハジケリストがマラソン中に貧血で倒れていたのを俺様が発見し、介抱していたから遅れた…フッ。完璧じゃねぇの。」
コイツ、人を遅刻言い訳にする気だ。
「そしたらお前もマラソンをサボれる。悪い話じゃねぇだろ?アーン?」
「それはそうだけど、いきなり倒れろって言われても困るんですけど。」
「困る必要なんてねぇよ。」
「∑うわっ!」
いきなり体が宙に浮いたと思ったら、跡部に抱き抱えられていた。
いわゆるお姫様抱っこというヤツだ。
「ちょっ…!降ろしてよ!」
「うるせぇ。お前は黙って俺様に抱かれてりゃいいんだよ。」
こんな事をしても遅刻をしたという事実は変わらないことを、遅刻初心者の跡部は知らないのだろう。
「ねぇ、重くないの?」
「どうってことねぇよ。それより、目を閉じて黙ってるんだぞ?分かったな。」
あたしは跡部の言うとおり、目を閉じた。
保健室に向かう途中で、跡部の体温といい匂いに包まれて、あたしはいつの間にか寝てしまった。
目が覚めたのはお昼で、枕元を見ると跡部財閥のメモが置いてあった。
『お前の担任には俺様がちゃんと言っといてやったぜ。ありがたく思うんだな。ところでお前、太っただろ。 K.Atobe』
あたしはメモをたたみながら、今日の事を、跡部初遅刻の様子を、卒業文集に事細かに書いてやろうと思った。
終
【丸井 ブン太】
ある晴れた日曜日。あたしは今、息を殺してテニスコートの脇から中の様子を伺っている。
してしまったのだ。
“ち”のつくアレを。
すでに部活は始まっていて、各自準備体操をしていた。
「あぁ…。どうしよう。真田に殺される…。」
いや、待てよ。
そもそも昨日、寝る前に幸村から電話があって、無視すると後が怖いから仕方なく出たんだ。それで夜中まで付き合わされて寝坊したのだから、原因は幸村じゃないか。真田は幸村に逆らえないし、あたしは怒られなくても済むんじゃ…
「甘いな。」
「ひいっ!Σ(゚Д゚;あんたいつからここに?!」
耳のすぐ後ろからブン太の声がした。
「“それで夜中まで”から。つーかお前さ、もっと可愛いげのある驚き方できないわけ?」
「え?!あたし声に出してた?!」
「バッ…!静かにしろぃ!見つかりてぇのかよ!」
「ご、ごめん。」
ブン太に向き直ってみると、まだジャージのままだった。
「もしかしてブン太も遅刻…?」
「そうだよ。」
「珍しいじゃん。どうしたの?」
赤也と同じくらい遅刻してそうなイメージはあるが、何げにいつも、時間ギリギリにはちゃんと来ている。
「英語の宿題明日までだろぃ?だからやってたわけ。」
「へー。偉いじゃん。」
いつも柳生かジャッカルに写させてもらってるのに…。少し感心だ。
「でよー、久々に机に向かったらたまたま置いてあった三国無双3の猛将伝が目に入ってきたんだよ。」
「たまたま…ねぇ。」
「そ。そんで無性にやりたくなっちまってさ。分かんだろぃ?」
「まぁ…。」
感心したのもつかの間だった。確かに分かる。勉強しようと机に向かうと、無性に違う事がしたくなる。普段気にかけてなかった事をやってしまう。
眉毛をいじったりだとか、指の毛を抜いたりだとか、昔の手紙を読み返してみたりとか、してしまう気持ちは痛いほど分かる。
「ちょっとだけと思ったんだけど止まんなくてよー。夏侯惇の次は太史慈、その次は馬超ってやってたらいい時間になってたぜ。」
「そっか…。あたしは許してもらえる可能性あるけど、ブン太は諦めるしかないね。ドンマイ!」
「は?お前も許してもらえねぇって。」
「なんでよ。幸村絡んでんだから大丈夫でしょ。」
「見てみろぃ。」
「∑痛!」
ブン太はあたしの頭を掴み、力強く回した。
おかげで首がゴキッっていった。
首が痛いのを我慢してコート内を見ると、幸村が眠そうに柔軟をしていた。
「幸村は眠いの我慢して時間通りに来てんのに、お前は遅刻だ。真田じゃなくて幸村に絞られるんじゃねぇの?」
「え…」
自分の身体から、血の気が一気に引く音がした。
真田の怒りが『熱』だとしたら、幸村は『凍』だ。それも絶対零度。
神奈川のワル達の間でも、“立海の幸村とは目を合わせるな”
と言われているという噂があるほどに、幸村は恐ろしいのだ。
「その分俺はまだいい方かもな…。真田なら裏拳喰らうだけだし。安心しろぃ。伝説のハジケリストの骨は俺が拾ってやるぜ?」
幸村からのお仕置きだけは何としてでも避けたい。
こういう時に悪知恵というものは、本当によく働くと思う。
「生理痛…」
「は?」
「そうだ!生理痛があった!これなら誰にも怒られない!男には分からない痛みだもんね!」
「そうきたか…。女ってこーゆー時便利だよな。」
「ブン太ゴメン!骨は拾ってあげるから!」
あたしはルンルンで立ち上がると、ブン太に腕を掴まれた。
「そうはさせねぇっての!お前一人だけ助かろうなんて許さねぇ!」
「いい加減覚悟決めなさいよ!男は度胸!猪木に気合い入れてもらうんだと思って頑張れ!」
ブン太の手を離そうと試みるがやはり男子。握力がハンパない。しかも容赦ないので指先から血が止まってきた。
「残念ながら俺は猪木崇拝してねぇんだよ!」
「う、腕がちぎれる…!離して…!」
「誰が離すかよ!死ぬときは一緒だ!!」
「コラ!お前ら何をしとる!」
「「!Σ( ̄□ ̄;」」
ブン太から家なき子ばりの熱烈なセリフを聞いた直後、コートから鬼の怒鳴り声が響いてきた。
「やべ…!」
ブン太は素早く身を隠したが、もう遅かった。
真田はもう目の前に来ていた。
「とっくに部活は始まっているぞ。」
「腹いてぇ…」
「はっ?!」
ブン太は屈んだ体勢をうまく利用し、腹痛に持ち込んだ。
「しょうがない奴だな。また食い過ぎたんだろう。」
「わりぃ。すぐ行くから…」
そう言ってブン太は腹を抱えてヨロヨロと歩き出した。
迫真の演技だ。天才的だ。
「回復次第練習に参加しろ。ところで伝説のハジケリスト。お前は何をしている。」
「え、あ、あたしはその…せ、生理痛で!」
「ほぅ…。その割には元気ではないか。」
真田の肩越しにブン太の後ろ姿を見ると、振り返ってあたしにむかってピースをかました。
「今回のは割と軽いみたいで…」
「では単なる遅刻ということだな?」
「あ…」
ブン太め…!
自分だけ逃れようったってそうはいかない。
「ブン太の腹痛だって嘘だもん!」
あたしが叫ぶと、ブン太の足が止まった。
「あいつ昨日夜中までゲームやってたって、さっき言ってたよ!」
「丸井、それは本当か?」
「ち、ちげーよ!伝説のハジケリストだってさっき生理痛って言えば怒られねーとか言ってたんだぜ?!」
「なっ!あんたが俺は裏拳だけで済むけどお前はそうはいかないって脅すからじゃん!一人だけ仮病使って逃げようなんて、そうはいかないんだから!死ぬときは一緒だって言ったのはブン太じゃーん!!」
「そんなこと言った覚えねーし!」
「あーら、ずいぶん都合のいい記憶力だこと!」
「なっ!大体お前が大声出すからいけねぇんだろぃ?!」
「いい加減にせんか!!」
真田は再び怒鳴ると、あたし達を並ばせた。
「言い訳とは感心せんな。お前達二人には罰として校内の便所を清掃してもらおう。」
「「え…」」
「終わるまで帰さんからな。返事は!」
「「はい…」」
結局バレたあたし達は、夕方になるまでトイレを掃除しまくった。
後から幸村に、
「ごめん。遅刻したのって俺のせいだよね。」
と謝られた。
「ったく。何で俺がこんなこと…。なぁ、今度から助け合おうぜ。俺もフォローしてやっからさ。」
「うん。そうだよね…。困った時はお互い様だもんね。」
トイレの掃除用具を片手に、あたし達は反省したのだった。
次の日の朝礼で、あたしとブン太は校長から校内のトイレ掃除をたった二人でやった事を、名指しで、全校生徒の目の前で誉められた。
みんなの視線を浴びながら、もう何があっても遅刻はしない。絶対しないと、そう心に誓った。
終
[後書き]
大変お待たせしました!リク内容が『跡部かブン太のギャグ甘』だったのですか、やはり選べない私は両方書いてしまいました(>_<)
しかも、ギャグ甘じゃないじゃん!ただのギャグじゃん!
あぁ…すみません(T_T)もう本当にすみません!お気に召されなければ、遠慮なく書き直しを申し付けて下さい!苦情も24時間受け付けてます!
陸様、心中お察ししますが、これに懲りずにまた来て下さいm(__)m
伝説のハジケリスト様、ここまでお付き合いいただいてありがとうございました!