お題DE夢小説
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「そういうことだから。」
「へ?」
とてもマヌケな声を出してしまった。
「次の休み時間よろしく、ジュリエット。」
「え、ちょっ…。」
髪を撫でた後、爽やかに去っていくサエさんの背中を見ながら、頭の中は疑問符でいっぱいだった。
中休みにサエさんが教室に来て、「ゲームに負けたから、廊下でロミオとジュリエットをやらなきゃいけないんだ。」と、淡々と言った。
テニス部の人達と黒ヒゲ危機一髪をやって当たり、罰ゲームでこう言い渡されたらしい。
『廊下で彼女とロミジュリごっこしろ』
彼女はあたしだ。いやしかし、何であたしまで巻き添えにされなければならないのか。あたしは黒ヒゲを飛ばしてない。つーかテニス部はテニスしてないのだろうか。
こんなこと言い出したのは、絶対バネ君だ。ブラックウィングめ。
「ちょっと、なんであたしまであんた達の遊びに付き合わなきゃいけないのよ。」
バネ君の席まで行ってそう言うと、読んでいるキャプテン翼から一瞬あたしに目を移し、また戻した。
「まぁいいじゃねぇか。」
「よくない!ていうか言ったのバネ君でしょ。こんな事言うのバネ君くらいじゃん。あたしを巻き添えにしたのがいい証拠だね。」
「俺じゃねぇって。」
「じゃあ誰!」
「うちの部長。」
あの一年生のボウズの子だ。サエさんの練習を見に行った時、人なつっこく話しかけてきたちょっと可愛いあのボウズの子だ。
あのボウズ!
「去年サエがロミオとジュリエットやっただろ?剣太郎が見たかったって騒いでな。」
「ビデオに撮ったやつ見せてあげればいいじゃん。」
「めんどくせぇから実際見せてやるよってことになったんだよ。」
「へぇ、それでソレを罰ゲームにしたんだ。」
「おう、そういうことだ!」
「じゃあやっぱり言ったのお前じゃん!」
バネ君は、HA HA HA、そうだな!と陽気に笑うけど、こっちは笑えない。
下を向いて絶望チックに顔面を両手で覆うあたしの肩に、バネ君は手を置いた。
「諦めろ。サエはノリノリだったぞ。」
そんなに落ち込むならやめてやるとか、そうでなくてもフォローするかと思いきや「諦めろ」ときたもんだ。
頭にきたのでバネ君からキャプテン翼を取り上げ、クラスで一番の巨乳の子の胸に挟んでやった。
真っ赤な顔して慌てふためくバネ君を見て、ざまーみろと思ったけど、よく考えたら喜ばせてしまったかもしれない。
サエさんがノリノリである以上、ロミジュリごっこをやらなければいけないのは確かだ。
……
………
…………逃げよう。
授業終了のチャイムと共に、あたしは廊下に飛び出した。
「やぁ、やる気満々みたいだね、ジュリエット。」
ソッコー捕まった。
「待ってサエさん、あたしロミオとジュリエットあんまり知らない。」
「去年俺の劇見てたろ?」
「見てたけど、詳しいストーリーは覚えてないよ。教えてもらってからでもいい?」
休み時間が終わる直前まで話を引き延ばそうと思った。
けど、サエさんはそんなに甘くない。
「分かった。でも、そこまで本格的にやらなくていいから、大体分かってればいいよ。後は俺の言うとおりにすればいいからさ。」
「はい…。」
「じゃあ、とりあえず脱ごうか。」
「Σえっ?!」
「ははは、冗談冗談。」
そう言って、肩をポンと叩く要領であたしの胸をポンポン、と二回ほど叩いた。これも冗談なのだろうか。
「いいかい?ロミオとジュリエットは、家柄の関係で決して認められない仲なんだ。でも、愛し合ってしまう。」
サエさんの目がとても情熱的で、去年ジュリエット役をやった子に今更ながら嫉妬してしまった。
「二人の出会いは、ジュリエットの家の舞踏会なんだ。ロミオがジュリエットに一目惚れして、一緒に踊って…」
言いながらサエさんはあたしの手を取り、腰に手を回すとにこっと笑った。おいおい、その笑顔は反則だろう、一撃必殺だ、心の底から本当にそう思う。
「それから二人は恋に落ちる。」
とろけそうなサエさんの視線に、腰が砕けそうになる。なんでこの人はこんなにも男前なのだろうか。
ただただサエさんに見とれていると、サエさんの腕が離れた。
「でも、舞踏会が終わったらお互いが敵同士だと分かってしまうんだ。それでも忘れられなくて、ロミオはジュリエットに会いに行くんだけど、その時ジュリエットが何て言ったか覚えてるかい?」
「えっと…あなたはどうしてロミオなの?…だっけ。」
「そう、それを聞いて居ても立ってもいられなくなったロミオは、ジュリエットに近づくんだ。」
するとまた、サエさんはあたしにぐっと近付いてきた。
「君を愛してる。狂いそうなほど、君を愛してるんだ。」
そして、唇が触れた。
少し長めに。
あまりにも突然の出来事に、目を瞑る余裕などなかった。唇が離れると同時にチャイムが鳴り、サエさんは満足そうに笑ってあたしの頭を撫でた。
「残念だけど、ここまでだね。」
はっと我に返り周りを見渡すと、みんながあたし達を見ていた。その中にはボウズもバネ君の相方の二年生もいて、
「うわぁ~、サエさんすごいなぁ…(〃Д〃)やっぱサエさんはカッコイイや!」
「廊下でチューしてると、チューイ(注意)されますよ…ぶっ。」
「てめぇはつまんねーんだよ!」
バネ君と過激な漫才をしている。
「サエは大胆なのね~。」
「伝説のハジケリストも苦労するよな。」
樹君も木更津君もいて、テニス部全員集合だ。それもそうか、罰ゲームを見届けにきたんだもんね。
「もういいでしょ?」
罰ゲームっていうのを思い出し、少し腹が立った。
「うん。これで確実に悪い虫は寄ってこないし、伝説のハジケリストともキスできたしね。みんなに見せつけられただろ?」
そんなこと言われたら、怒るに怒れない。呆れたため息が出た。
バネ君達も、ハイハイごちそうさま、と言って呆れて教室に戻って行った。ボウズの子の目がキラキラしてたのが何とも言えなかった。
「この続きはまた後でしよう。」
「え?もう罰ゲーム終わったじゃん。」
「続きって言っても、ロミオとジュリエットの続きじゃないよ。」
「何の続き?」
「何って、キスの続き。」
「Σなっ?!///」
「ははは、冗談冗談。…多分。」
爽やかに笑いながらサエさんも自分のクラスに戻って行った。
何だか色々上手なサエさん。彼の冗談が冗談にならないのは覚悟している。
あたしはこっそり、自分の今日の下着を確認した。
終わり