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今、あたしはこの廃屋のような部室で白玉粉を練っている。
―昼休み―
「今日、お月見やろうと思うんだけど、一緒にどう?」
サエさんがわざわざあたしのクラスに来て誘ってくれた。
「是非!」
二人きりのお月見。美しい満月の下、二人は……。
と思ってたのに!!
「サエさーん!おだんごまだー?」
「俺コンビニで飲み物買ってくるわ。ダビデ行くぞ!」
「はぁ…。」
言い出しっぺは剣太郎らしい。
満月みたいな頭して何がお月見か!
「どうしたの?溜め息なんかついて。白玉の調子が悪いのかい?」
あたしの心とは裏腹に白玉は絶好調だ。
「ううん。もうこのくらいでいいかな?」
「どれどれ?」
きゅっ…。
「Σサエさん!それあたしの手なんだけど!!」
「ははは。ごめんごめん。伝説のハジケリストがこの白玉のように白くて柔らかいから間違えちゃったよ。」
それ誉めてんの…??
でもサエさんに手、握られちゃった(*´▽`*)
「おまたせー!」
スイカの中身をくり抜き、器にしてフルーツポンチを作った。
お月見っぽさはないけれどこの方がいいだろう。
「わぁ~!伝説のハジケリストさんすごいや!」
「当然だろ?俺のお嫁さんなんだから。」
「そうそう。」
いつもこうやってサエさんの冗談に乗ってみるが、心のどこかで少し期待してしまう。
「始めるのねー。」
バネさんとダビデが買ってきたジュースを紙コップにつぎ、乾杯した。
満月が海面に映っていてとても綺麗だ。
「バネさん!頑張れ!」
「あが…あが…」
ダビデが白玉をバネさんの口に詰め込む。
あいつら何やってんだか…ι
「隣いい?」
「どうぞ。」
サエさんが同じ岩場に座った。
「寒くない?」
「平気。」
夜の海辺は少し冷えるが、サエさんとの距離が近いため気にならなかった。
「月、綺麗だね。」
サエさんの持つみそ汁用のマイお椀には、あたしが作ったフルーツポンチが入っている。
「うん。立派な満月だね。」
サエさんの横顔は月明かりに照らされていて、古めかしいお椀を持っているにも関わらず妖艶な美しさが出ていた。
「こんな満月見てたら俺、狼に変身しちゃうかもなぁ。すぐ横に伝説のハジケリストもいることだし。」
「はは。あたしはかぐや姫を思い出すよ。」
いつもなら「狼になってみてvV」と、のるところだが、月がとても綺麗で、潮風が心地良くて…そんな雰囲気の中サエさんといるのにどうにもならない切なさに負けて流してしまった。
「かぐや姫って、全ての男の求婚全部断って月に帰るんだよな。」
要約しすぎてかぐや姫がなんだか傲慢な女みたいになってるが間違ってはない。
「そうそう。結構好きなんだよねー。あの話。」
「…もし伝説のハジケリストがかぐや姫で、俺が求婚したら…断って月に帰る?」
サエさんはどこまで冗談か分からない。真剣な目をして平気で言うから読めない。
いい加減気付いて欲しかった。
サエさんの冗談はあたしの期待をどんどん募らせることを。
「もう!冗談ばっかり!」
そして、それに冗談で答えるたびつらくなることを。
「俺はいつでも本気なんだけどな。」
「え…?」
視線を月からサエさんに変えると、サエさんは悲しそうに笑っていた。
「伝説のハジケリストが冗談に取ってたのは知ってたよ。でも俺は…」
吸い込まれそうだった。
サエさんが見たことのない表情をしたから。
「あ、あたしは「サエさ~ん!伝説のハジケリストさ~ん!バネさんが死んじゃうよぉ~!!」
「いやー、死ぬかと思ったぜ!」
白玉が喉に詰まったらしい。27個という輝かしい記録が正の字で砂浜に刻まれていた。
「あーびっくりした!剣太郎が"死ぬ"なんて言うから!」
「とにかく無事でよかったよ。」
「みんなー!ワカメのみそ汁できたのねー。」
「わーい!おいしそーvV」
「ワカメを食べる若めの女性…ぶっ!うわ!バネさんたんま…!」
結局その夜、サエさんからさっきの続きを聞くことはできなかった。
「伝説のハジケリスト!"フルーツポンチ"を逆から読むと?」
「バネさん、やめてくれない?伝説のハジケリストは俺の前でしかチンポとか言わないから。」
「サエさんと伝説のハジケリストさんってそんな仲だったの?!うわぁー、大人だなぁー。」
「Σは?!」
「ははは。これから言わせるんだよ。楽しみだなぁ。」
これは冗談であって欲しいと、夜空に浮かぶ満月にひそかに祈った。
終わり
[後書き]
『友達以上恋人未満』の希望はおろか、胸キュン話にもなってない!せっかくリクして下さったのにごめんなさい…。苦情受け付けます!