立海生活
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今日、俺は初めてデートをする。相手は仁王先輩と同じクラスの伝説のハジケリスト先輩。
俺が今気になってる人だ。
野暮用で仁王先輩の教室に行った時、入口で仁王先輩を探してる俺に、
『誰か探してんの?』
声を掛けてくれたのが伝説のハジケリスト先輩だった。
『あ、仁王先輩います?』
『仁王?あー、今どっか行ってるみたい。花でも摘んでんじゃない?』
『へ…?』
『すぐ戻って来るだろうから、仁王の席で待ってなよ!』
そう言って俺を教室に引き入れ、仁王先輩の席に座らせた。
そん時は、ヘンな女、としか思ってなかったけど、なんだか気になっちまって、無理矢理用事作っては仁王先輩の教室に遊びに行った。
そんで見てたら、よく笑う人だなって思って、もっと話したいなって思って…
まぁ、仁王先輩にはバレちまったわけだけど。つーかバレバレだったらしい。
バレたんなら仕方ない。仁王先輩から、伝説のハジケリスト先輩がどんな人か情報収集しようとして、そこで仁王先輩に言われたわけだ。
『デートしてこいよ。あいつのこと、知りたいんじゃろ?』
『えぇっ!だってそんな、まともに話したこともないのに!』
『相手を知りたければ、自分の目、耳で確かめるのが一番ぜよ。』
『そんな…無理っスよ。』
『やってみなけりゃ分からんて。』
『でも…』
『じれったいのう。おーい、伝説のハジケリストー』
『え、ちょっ!』
呼ばれた伝説のハジケリスト先輩はというと、普通に歩いてきて
『どーした?』
俺の横に立った。その距離わずか数十センチ。セーターからは、柔軟剤みたいないい匂いがした。
『俺の鉛筆は?』
『だと思って持ってきた。ありがとね。』
はい、と言って机に鉛筆を置いた。置いたんだが…
『…バトエンっスか?』
『そ、昨日マークシートのテストがあってさー、鉛筆忘れちゃったから借りたんだ。』
しかもよく見ると、修正液で消された上に、「全員に10000のダメージ」とか書いてある。
『これ卑怯でしょ?こんなの勝てないよね。でもあたしのバトエンの方がもっと強いから。』
誇らしげに言う伝説のハジケリスト先輩を見て、つい笑いが込み上げる。やっぱりヘンなヤツ。
『で、お前明日暇?』
『暇だけど。』
仁王先輩、まさか…
『こいつとデートしてやってくれん?』
『ちょっ!何言ってんスか仁王先輩!』
つい大声を出しちまって、クラスの注目の的になった。ああもう!何考えてんだよこの人は!とにかくなんかフォローしねぇと!
『いきなりそんなの困るっスよね?!全く何言ってんだか、気にしなくていいっスからね!ほら、仁王先輩からも何か…』
相談しなきゃよかったと、後悔し始めたその時
『いいよ!』
『ほらね、やっぱり急すぎたんスよ!ダメに決まって…』
『デートしようぜ!』
男らしく、肩を組まれてオッケーされた。
『だってよ。よかったのう。』
『あ、ありがと……ス。』
『番号とアドレス、交換しといた方がいいじゃろ。』
『そうね、ちょっと待ってて!ケータイ取ってくるから。』
そこからのことは何ていうか、舞い上がってよく覚えてない。
で、放課後練習終わった後、仁王先輩に手伝ってもらって、完璧なデートプランが出来上がった。
伝説のハジケリスト先輩のことが好きで、付き合いたいかっつったらまだ微妙だけど、なんとなく気になるっつーか、でもこーゆーのを好きっていうのか?とは思うけど、正直なところ俺自身もよく分かってない。
とにかくこの気持ちが何なのか確かめるためにも、伝説のハジケリスト先輩と仲良くなるためにも、俺は今日デートを成功させなければならない。
いや、絶対させてみせる。
待ち合わせ時間の10分前に、俺は待ち合わせ場所である駅前に着いていた。女は少し待たせる方がいい、みたいな話をどっかで聞いた気もするけど、仁王先輩いわく
『あいつは時間にシビアじゃ。遅刻したらブッ飛ばされる。』
ということで、部活ん時もこんなに早く行かねぇのに、なんとなく頑張ってみた。
でも、あんなにあっさりと、大して話したこともねぇヤツに誘われてオッケーするなんて、伝説のハジケリスト先輩って実は軽いのか?見た目はそんな感じしねぇんだけど…
そんなことを考えていると
『おっ、早いね!』
伝説のハジケリスト先輩が来た。
『おはようございます!』
『おはよう。』
楽しみの一つでもあった伝説のハジケリスト先輩の私服は、シンプルなワンピースにブーツ。花柄でもピンクでもなく、すげぇかわいい!ってわけじゃないけど、女子の服装では好きな感じだ。そんな俺の視線に気付いたのか、
「なに?どっかヘン?」
伝説のハジケリスト先輩も自分の服を見た。
「いえ!全然ヘンじゃないっス!」
「でしょ?これ使えるのに安くてお利口商品なんだ!」
そう言ってニッと笑う伝説のハジケリスト先輩は、服がどうこうよりかわいかった。
「で、どこ行く?」
「映画観ません?」
「いいね!何観る?」
「とりあえず映画館行きましょっか。」
デートプランその1、映画。実はもう観るものはこっちで決めている。仁王先輩と、伝説のハジケリスト先輩の好みを踏まえた上でどの映画がいいか決めた。仁王先輩の「これで間違いない」という後押しもあったけど、俺にしてみれば正直意外だった。
「今何やってるっけ」なんて楽しそうに話す伝説のハジケリスト先輩を見ながら歩くこと数分。駅ビルの中にある映画館に着いた。
「実はもうチケット買ってあるんスよ。」
「え!なになに?」
昨日の夜、インターネットで席を予約しておいた。俺からすれば現地で観たいの決めてその場でチケットを買えばいいのにと思うけど、仁王先輩いわく
『デートで重要なのは手際のよさじゃ。もたもたしてると伝説のハジケリストは暴れ出すぞ。』
らしい。最初のデートで暴れられても困るけど、伝説のハジケリスト先輩がどう暴れるのか見てみたい気もする。
「ちょっと待って下さいね。」
発券機まで行き、操作方法を見ながらチケットを出す。ちょっと面倒だと思ってたけど、なるほど、こりゃあ便利だ。
出てきたチケットを伝説のハジケリスト先輩に渡して
「はい、どうぞ!」
「“赤い糸”…?」
だいぶ前に流行ったケータイ小説が映画化されたやつで、俺も読んだことがある。本とか正直苦手だけど、不思議なことに携帯だと読めちまうんだよな。
まぁ恋愛ものは興味なかったけど、流行ってるってんでとりあえず読んでみたら、まぁまぁ良かった気がする。あんま覚えてねぇけど。
「知ってます?」
「うん、読んだことある。よく覚えてないけど、恋空みたいなハードな恋愛のやつでしょ?」
あんまし興味無さそうに言うもんだから、ちょっと不安になってきた。
「あ、あの…嫌でした?」
「嫌じゃないけど、レッドクリフとか地球が静止する日とかの方がよかったかも。ラブストーリーとか特に興味無いし!」
仁王先輩怨むっス。やっぱり、伝説のハジケリスト先輩はそういうタイプじゃない気がしたんだよ。俺だってラブストーリーなんざ興味ねぇし。あれ?そう考えると俺達気が合うのか?
いやいや、肝心の伝説のハジケリスト先輩が楽しめないと意味ねぇじゃん。あーあ、やっちまった。
そんなことを考えていると
「まぁいっか!観よう観よう!」
俺の肩をポンポンと叩いて
「チケット取ってくれてありがとね!」
飾りっ気のない笑顔でそう言った。こういう状況だと、フツー観たくなくても相手に合わせるもんかと思ったけど、伝説のハジケリスト先輩は自分の好き嫌いをハッキリ言って、しかもそれはやな感じじゃない。
そうか、この人は話しやすいんだ。
「何ぼーっとしてんの?あ、お金後ででいい?」
「いや、金はいいっスよ!誘ったの俺だし。」
「でも悪いよ。」
「いえ、ホントにいいっスから!」
「そお?じゃあお言葉に甘えちゃおっかな!ありがとね!」