君が為
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*月島視点
鶴見中尉と中央から来た大佐補佐が談笑しているのを横から見る。正直言って鯉登少尉や宇佐美上等兵のような常軌を逸したような好意はあまり感じられない。彼が鶴見中尉を敬愛しているとしても抑制がとれた人物であって良かったと感じた。そして茶会の誘いを取り付けた後、**補佐官を見送る。鶴見中尉は実際にあの人間に会ってみてどう感じたのだろうか。そう考えているのを感じ取られたのか、鶴見中尉が口を開いた。
「彼、いいねぇ……」
「気に入られましたか?」
「うん、色んな意味でね、気に入ったよ。だって私のことを好きと言いながら腰が引けて怯えが目に出てる。その心理的なものが警戒からきているのか本当に畏敬からきているかはわからないけどね」
「そうですか、ではやはり中央に勘付かれたかもしれない可能性が?」
若干焦りを覚え鶴見中尉に問う
「そうだな、それをはっきりさせるためにある程度泳がせて彼の部屋に侵入して私物を見ておけ。確か列車の中じゃ荷物を大層大切に抱え込んでおったそうじゃないか」
「はっ、了解しました」
そうだ補佐官は同席したあの列車で談笑をし眠りながらも自身の荷物から注意を逸らさなかった。何か報告書などを隠し持っているのか?すると鶴見中尉が続ける
「特に尾形との接触に目を張っておけ。奴が密告したのやもしれん……」
「では造反者は尾形上等兵ということに……」
「まだ推測の域を出ない。慎重にな」
「了解です。もしそれが判明した場合は──」
「なるべく生かしておけ。あそこまでの射撃の腕を失うのは惜しい。まあ抵抗するなら殺してもいい。……だが****は殺してはならん。それこそ中央本部からの監視の目がきつくなるだろうし、なにより──」
鶴見中尉が一呼吸置く、なにより、なんだろうか。懐柔してこちら側に置こうとでもいうのだろうか。勿論、それが可能ならばそれに越したことはない。中央本部に強いパイプ、諜報員が出来るしそれに****がいる第七師団は今よりも少し楽しくなるだろう。だがそう容易く仲間に引き入れられるような人物とは思わないが
「なにより、鼻が好みの形だ。出来れば植物の花のように切り取るんではなくそのまま傍に置いて鑑賞していたい」
「は、はあ……、わかりました」
少しずれている所があるとは思っていたがここでもか。もしかして気に入った理由もそこなんじゃないかとくだらないことを邪推してしまう
「あと女に手は出せんだろう」
流石に呆れ半分で返事をしてしまう
「ホントにその信憑性の薄すぎる噂を信じてなさっておいでで?」
「いいや?けど面白いじゃないか、例え嘘でも。恐らく貶称 だろうが、実際に会ってみるとそんな感じの雰囲気も分かるよね!お前はどう思う」
またふざけた質問をしてくるこの人は……。鶴見中尉が****について調べてきた際についてきたこの噂話、というほどのものでもないが、は中央本部の男しかいない世界で女が軍に入っている可能性などここ北海道で猪に遭遇することより低い。否、零だ
「お戯れも大概にしてください。それともそっちのがいいんですか?」
「うーんそうかもね、そっちのが懐柔しやすい。抱くなら女のがいいに決まっているだろう」
上司の発言にまた頭が痛くなる。確かに士官学校や軍内部では男色が非常に盛んに行われているそうだが俺たちの隊は街に私娼窟があるせいかそういったことは最近はまずない。鶴見中尉はあんまり興味がないと思っていたのだが……
「はあ、まあ問題になるようなことはあんまりしないでくださいよ」
「はは、冗談だ。私に男色の気 はない」
明朗に言い放つ鶴見中尉にもはやなんの感情も抱かなくなった。****は確かに体格はいい方ではなく性格も柔和だ。だがそれも他の日露戦争帰りの兵士と比べればの話で明らかにそこらの女よりは体はしっかりとしている。彼をそう思わせてしまうのは東京から来たという想像が先行してしまっているのだろう。
だが彼のあの物腰では同じ師団の男から尻を狙われたりしなかったのだろうか。あの態度だ、極限状態なら手を出してしまいそうな男の一人でもいそうなものだが。……彼は床の中ではどのような顔をするのだろうか、どんな声で──そこまで考えて正気に戻る。ひどく恐ろしいことを想像してしまった気がする……。きっと鶴見中尉との会話がそうさせたのだろう。今日は気晴らしに外に女でも買いに行くか……
軽い頭痛を覚えながら市街地の商店街へ向かった。
鶴見中尉と中央から来た大佐補佐が談笑しているのを横から見る。正直言って鯉登少尉や宇佐美上等兵のような常軌を逸したような好意はあまり感じられない。彼が鶴見中尉を敬愛しているとしても抑制がとれた人物であって良かったと感じた。そして茶会の誘いを取り付けた後、**補佐官を見送る。鶴見中尉は実際にあの人間に会ってみてどう感じたのだろうか。そう考えているのを感じ取られたのか、鶴見中尉が口を開いた。
「彼、いいねぇ……」
「気に入られましたか?」
「うん、色んな意味でね、気に入ったよ。だって私のことを好きと言いながら腰が引けて怯えが目に出てる。その心理的なものが警戒からきているのか本当に畏敬からきているかはわからないけどね」
「そうですか、ではやはり中央に勘付かれたかもしれない可能性が?」
若干焦りを覚え鶴見中尉に問う
「そうだな、それをはっきりさせるためにある程度泳がせて彼の部屋に侵入して私物を見ておけ。確か列車の中じゃ荷物を大層大切に抱え込んでおったそうじゃないか」
「はっ、了解しました」
そうだ補佐官は同席したあの列車で談笑をし眠りながらも自身の荷物から注意を逸らさなかった。何か報告書などを隠し持っているのか?すると鶴見中尉が続ける
「特に尾形との接触に目を張っておけ。奴が密告したのやもしれん……」
「では造反者は尾形上等兵ということに……」
「まだ推測の域を出ない。慎重にな」
「了解です。もしそれが判明した場合は──」
「なるべく生かしておけ。あそこまでの射撃の腕を失うのは惜しい。まあ抵抗するなら殺してもいい。……だが****は殺してはならん。それこそ中央本部からの監視の目がきつくなるだろうし、なにより──」
鶴見中尉が一呼吸置く、なにより、なんだろうか。懐柔してこちら側に置こうとでもいうのだろうか。勿論、それが可能ならばそれに越したことはない。中央本部に強いパイプ、諜報員が出来るしそれに****がいる第七師団は今よりも少し楽しくなるだろう。だがそう容易く仲間に引き入れられるような人物とは思わないが
「なにより、鼻が好みの形だ。出来れば植物の花のように切り取るんではなくそのまま傍に置いて鑑賞していたい」
「は、はあ……、わかりました」
少しずれている所があるとは思っていたがここでもか。もしかして気に入った理由もそこなんじゃないかとくだらないことを邪推してしまう
「あと女に手は出せんだろう」
流石に呆れ半分で返事をしてしまう
「ホントにその信憑性の薄すぎる噂を信じてなさっておいでで?」
「いいや?けど面白いじゃないか、例え嘘でも。恐らく
またふざけた質問をしてくるこの人は……。鶴見中尉が****について調べてきた際についてきたこの噂話、というほどのものでもないが、は中央本部の男しかいない世界で女が軍に入っている可能性などここ北海道で猪に遭遇することより低い。否、零だ
「お戯れも大概にしてください。それともそっちのがいいんですか?」
「うーんそうかもね、そっちのが懐柔しやすい。抱くなら女のがいいに決まっているだろう」
上司の発言にまた頭が痛くなる。確かに士官学校や軍内部では男色が非常に盛んに行われているそうだが俺たちの隊は街に私娼窟があるせいかそういったことは最近はまずない。鶴見中尉はあんまり興味がないと思っていたのだが……
「はあ、まあ問題になるようなことはあんまりしないでくださいよ」
「はは、冗談だ。私に男色の
明朗に言い放つ鶴見中尉にもはやなんの感情も抱かなくなった。****は確かに体格はいい方ではなく性格も柔和だ。だがそれも他の日露戦争帰りの兵士と比べればの話で明らかにそこらの女よりは体はしっかりとしている。彼をそう思わせてしまうのは東京から来たという想像が先行してしまっているのだろう。
だが彼のあの物腰では同じ師団の男から尻を狙われたりしなかったのだろうか。あの態度だ、極限状態なら手を出してしまいそうな男の一人でもいそうなものだが。……彼は床の中ではどのような顔をするのだろうか、どんな声で──そこまで考えて正気に戻る。ひどく恐ろしいことを想像してしまった気がする……。きっと鶴見中尉との会話がそうさせたのだろう。今日は気晴らしに外に女でも買いに行くか……
軽い頭痛を覚えながら市街地の商店街へ向かった。