君が為
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午前四時三十分、突き刺すような寒さの中昨日、指定された場所へ向かう。町並みはまだ夜の静けさを残していて辺りは暗い。雪が被った外灯が点々とあり、つららがびっしりと軒先を覆っている。なんだか違う世界に来てしまったかのような錯覚に陥った。しばらくすると昨日見た第七師団本部が見えてきた。人影があったのでまさか、と目を見張る。そこには約束の人物、月島軍曹が立っていた
「おはようございます、もしかして待たせてしまいましたか?」
少し駆け足で近寄り顔を見ると、月島軍曹は独特な鼻を赤くさせていてなんとでもないという風に首をふった
「いえ、三十分前行動は当たり前です。補佐官殿の行動がお早いお陰で大して待ってはおりません。」
「ですが、鼻が赤いですよ?寒かったのでは?僕のために申し訳ありません」
本当にこのような凍える寒さのなか申し訳ないことをした。それと同時に月島さんはやっぱり真面目で実直な方なのだと思って少し好感が沸いた。すると月島さんがふっと笑った
「いえ、本当に待ってはいません。お気になさらず、では行きましょう」
「はい。参りましょうか」
列車で小樽へ向かうらしく駅へ向かう。途中、朝ごはん用の釜飯を一緒に買った。そのまま切符を買い人が少ない列車へと乗り込む。乗り込んで十分程度経った後、列車が動き出した。これから小樽の鶴見中尉のもとへ行くのだ。鶴見中尉は大変頭が回り情報収集に長けていると大佐が言っていた。君のこともある程度調べているかもしれないから注意しろと。正直言って不安だ。私がそんな人物の目を掻い潜って第七師団の秘密を暴けることが出来るのか。だがやるしかない。これが私が選んだ道だ
「緊張しています?」
「え?あ、ああ…、はい。実はずっと憧れていただけにいざ会えるとなると少し緊張してしまいますね」
何か顔が強ばっていたのだろうか、頑張ると決めた瞬間から指摘されるとは我ながら阿保だ
「大丈夫ですよ。鶴見中尉、中央の補佐官殿に随分と興味ありげでしたから」
「本当ですかー?それは逆に緊張してしまいますね。というか月島さん、補佐官殿は何だか堅苦しいのでおやめになって下さい。鶴見中尉の元へ学びに行く、となったら僕が一番下っ端です」
「ですが、それは些か致しかねると言いましょうか……」
「僕がそうして欲しいのです。大佐の補佐に着いてからというもの未だにその呼び名に慣れていなくて、第一師団の方々も僕をそう呼ぶ人は少ないですし。それに大佐の補佐官といっても結局はただの補佐ですから、僕自身何の地位も権限もありません。どうぞお気にせず」
そういって向かいに座っている月島さんを見る。勿論、戦略的にそう申し出たのはあるが純粋に月島さんと仲良くなりたかった
「……では、**殿。」
「却下」
「……**さん」
「ノーセンキューです」
「…………**くん」
「もう一声!」
「流石にもう勘弁してください。補佐官殿……」
やれやれ、とでも言いたげにため息を吐く月島さん。少し意地悪が過ぎただろうか。だがこの人のどことなく苦労人なところが大佐を思わせてしまい少し甘えてしまいたくなってしまう。だがそれもハッと気づいて、振り払う。自分から懐柔されにいってどうするんだと
「いや、すみません。ふふ、月島さんの雰囲気が敬愛する方に近しいものがありまして。それと補佐官殿はやめてください。くん付けの方が距離が近くなったようで好きです」
「ですが、流石にくんは、」
「嫌ですか?月島さんがお嫌でしたら無理強いはしませんが……少しばかり寂しいですね」
「ぐ……、わかりました。そのようにお呼びしますよ、**くん」
「はい!月島さん!改めて、よろしくお願いしますね」
なんだか嬉しくなってしまった。予想通り人だ、ある程度甘やかしてくれる人なのかと邪な考えが浮かんだ。だがこの人は敵陣の人間だ。そこの線引きはしっかりと
「ところで、何故またこのような所に研修などで?」
水筒の蓋を開けながら問われる。探りを入れようというのか、目線はこちらではないが様子は伺っているはずだ。大丈夫、大丈夫平静を装って私には確固たる名目がある
「僕はまだ今の仕事に就きたてで……、補佐官だというのに戦争や軍事など実践に詳しくなく、第七師団の方々は北の最強の守りと言われていますし何より経験がおありだ。なのでより深いご指導が受けられると思ったからです」
えへへと頭をかいてはにかんで見せる。相手の視線がこちらへ向かった
「中央にも優秀な軍人は沢山いらっしゃると思いますが、特に第一師団の近衛師団はエリートではないですか」
「確かに彼らは大変優秀で、見習うべきところもあります。ですが陛下の身辺警護についている所為で実践力は第七師団には劣ります」
「理由は、それだけですか?」
しっかりと目を合わせた。彼の目は何か獲物を捕らえようとするような荒々しさとこちらの真意を覗こうとするような二つの色が見え隠れしていた。心臓の音が一回、いやに強く打ち付けた。これは……
「窓をしめろ!!」
「えっ?!」
突然声を張り上げる月島さん。頭が追い付かず何事かと情けない声を出してしまった。瞬間、視界が黒い煙に覆われる。ああ、理解した、トンネルに入ったから列車の煙が客室に入ってしまったのか。そして進行方向を見る形で座位していた月島さんが気づき声を上げた。それは間に合わなかったが。
「げほっげほげほっ!すみません、すぐに行動できず……」
「ごほごほっ、かは、いえ、こちらこそもっと早めに気づくことが出来ず」
二人してせき込みながら窓を閉め切る。涙目になりながら月島さんの方を見やる。月島さんの顔は煤に汚れていてなんとも面白いことになっていた。月島さんも私の視線に気が付き私の顔を見て笑いをこらえるような顔になった。黒煙を直に私も食らっただけに月島さんと同じ運命を辿ってしまったらしい。二人して笑い出す
「ふふふ、ふっ、なんですか月島さん、ふ。そのお顔!」
「は、そういう**くんも!!」
あははと二人で笑いあう。ああそうだ、と私は窓の縁に寄りかかりながら彼を見ながら言う
「私がここを選んだ理由。私の上司には内緒ですよ?ふふ、それはね……経費で鶴見中尉にお会いしたかったからですよ」
と言えば月島さんは一瞬キョトンとした顔になった後、そうですかそうですか、もの好きですなと笑った
その後小樽に着くまで私は鶴見中尉の様々な武勇伝を聞かされた。クールだと思っていた月島さんが素面でここまで上司のことを熱く語るとは、内に秘めている情熱は人一倍なのだと感じた。そう思ったあとなんだか月島さんが可愛らしく思ってしまい笑ってしまった。そしたらその武勇伝が気に入ったと捉えられてしまい第二ラウンドへ移行してしまった。だが私も仮だが鶴見中尉ファンを名乗るならば嫌々でなくノリノリでいかなくてはならないので夜が明けるまで鶴見中尉談義をし続けた。気絶するように眠った後、夢の中でまだ逢瀬を果たしていない写真の鶴見中尉が列車となって私を乗せる。私は白い西洋のワンピースを身に纏い鶴見中尉列車と共に銀河を駆け抜けるという夢……。
会う前から私は鶴見中尉が若干怖くなった
「おはようございます、もしかして待たせてしまいましたか?」
少し駆け足で近寄り顔を見ると、月島軍曹は独特な鼻を赤くさせていてなんとでもないという風に首をふった
「いえ、三十分前行動は当たり前です。補佐官殿の行動がお早いお陰で大して待ってはおりません。」
「ですが、鼻が赤いですよ?寒かったのでは?僕のために申し訳ありません」
本当にこのような凍える寒さのなか申し訳ないことをした。それと同時に月島さんはやっぱり真面目で実直な方なのだと思って少し好感が沸いた。すると月島さんがふっと笑った
「いえ、本当に待ってはいません。お気になさらず、では行きましょう」
「はい。参りましょうか」
列車で小樽へ向かうらしく駅へ向かう。途中、朝ごはん用の釜飯を一緒に買った。そのまま切符を買い人が少ない列車へと乗り込む。乗り込んで十分程度経った後、列車が動き出した。これから小樽の鶴見中尉のもとへ行くのだ。鶴見中尉は大変頭が回り情報収集に長けていると大佐が言っていた。君のこともある程度調べているかもしれないから注意しろと。正直言って不安だ。私がそんな人物の目を掻い潜って第七師団の秘密を暴けることが出来るのか。だがやるしかない。これが私が選んだ道だ
「緊張しています?」
「え?あ、ああ…、はい。実はずっと憧れていただけにいざ会えるとなると少し緊張してしまいますね」
何か顔が強ばっていたのだろうか、頑張ると決めた瞬間から指摘されるとは我ながら阿保だ
「大丈夫ですよ。鶴見中尉、中央の補佐官殿に随分と興味ありげでしたから」
「本当ですかー?それは逆に緊張してしまいますね。というか月島さん、補佐官殿は何だか堅苦しいのでおやめになって下さい。鶴見中尉の元へ学びに行く、となったら僕が一番下っ端です」
「ですが、それは些か致しかねると言いましょうか……」
「僕がそうして欲しいのです。大佐の補佐に着いてからというもの未だにその呼び名に慣れていなくて、第一師団の方々も僕をそう呼ぶ人は少ないですし。それに大佐の補佐官といっても結局はただの補佐ですから、僕自身何の地位も権限もありません。どうぞお気にせず」
そういって向かいに座っている月島さんを見る。勿論、戦略的にそう申し出たのはあるが純粋に月島さんと仲良くなりたかった
「……では、**殿。」
「却下」
「……**さん」
「ノーセンキューです」
「…………**くん」
「もう一声!」
「流石にもう勘弁してください。補佐官殿……」
やれやれ、とでも言いたげにため息を吐く月島さん。少し意地悪が過ぎただろうか。だがこの人のどことなく苦労人なところが大佐を思わせてしまい少し甘えてしまいたくなってしまう。だがそれもハッと気づいて、振り払う。自分から懐柔されにいってどうするんだと
「いや、すみません。ふふ、月島さんの雰囲気が敬愛する方に近しいものがありまして。それと補佐官殿はやめてください。くん付けの方が距離が近くなったようで好きです」
「ですが、流石にくんは、」
「嫌ですか?月島さんがお嫌でしたら無理強いはしませんが……少しばかり寂しいですね」
「ぐ……、わかりました。そのようにお呼びしますよ、**くん」
「はい!月島さん!改めて、よろしくお願いしますね」
なんだか嬉しくなってしまった。予想通り人だ、ある程度甘やかしてくれる人なのかと邪な考えが浮かんだ。だがこの人は敵陣の人間だ。そこの線引きはしっかりと
「ところで、何故またこのような所に研修などで?」
水筒の蓋を開けながら問われる。探りを入れようというのか、目線はこちらではないが様子は伺っているはずだ。大丈夫、大丈夫平静を装って私には確固たる名目がある
「僕はまだ今の仕事に就きたてで……、補佐官だというのに戦争や軍事など実践に詳しくなく、第七師団の方々は北の最強の守りと言われていますし何より経験がおありだ。なのでより深いご指導が受けられると思ったからです」
えへへと頭をかいてはにかんで見せる。相手の視線がこちらへ向かった
「中央にも優秀な軍人は沢山いらっしゃると思いますが、特に第一師団の近衛師団はエリートではないですか」
「確かに彼らは大変優秀で、見習うべきところもあります。ですが陛下の身辺警護についている所為で実践力は第七師団には劣ります」
「理由は、それだけですか?」
しっかりと目を合わせた。彼の目は何か獲物を捕らえようとするような荒々しさとこちらの真意を覗こうとするような二つの色が見え隠れしていた。心臓の音が一回、いやに強く打ち付けた。これは……
「窓をしめろ!!」
「えっ?!」
突然声を張り上げる月島さん。頭が追い付かず何事かと情けない声を出してしまった。瞬間、視界が黒い煙に覆われる。ああ、理解した、トンネルに入ったから列車の煙が客室に入ってしまったのか。そして進行方向を見る形で座位していた月島さんが気づき声を上げた。それは間に合わなかったが。
「げほっげほげほっ!すみません、すぐに行動できず……」
「ごほごほっ、かは、いえ、こちらこそもっと早めに気づくことが出来ず」
二人してせき込みながら窓を閉め切る。涙目になりながら月島さんの方を見やる。月島さんの顔は煤に汚れていてなんとも面白いことになっていた。月島さんも私の視線に気が付き私の顔を見て笑いをこらえるような顔になった。黒煙を直に私も食らっただけに月島さんと同じ運命を辿ってしまったらしい。二人して笑い出す
「ふふふ、ふっ、なんですか月島さん、ふ。そのお顔!」
「は、そういう**くんも!!」
あははと二人で笑いあう。ああそうだ、と私は窓の縁に寄りかかりながら彼を見ながら言う
「私がここを選んだ理由。私の上司には内緒ですよ?ふふ、それはね……経費で鶴見中尉にお会いしたかったからですよ」
と言えば月島さんは一瞬キョトンとした顔になった後、そうですかそうですか、もの好きですなと笑った
その後小樽に着くまで私は鶴見中尉の様々な武勇伝を聞かされた。クールだと思っていた月島さんが素面でここまで上司のことを熱く語るとは、内に秘めている情熱は人一倍なのだと感じた。そう思ったあとなんだか月島さんが可愛らしく思ってしまい笑ってしまった。そしたらその武勇伝が気に入ったと捉えられてしまい第二ラウンドへ移行してしまった。だが私も仮だが鶴見中尉ファンを名乗るならば嫌々でなくノリノリでいかなくてはならないので夜が明けるまで鶴見中尉談義をし続けた。気絶するように眠った後、夢の中でまだ逢瀬を果たしていない写真の鶴見中尉が列車となって私を乗せる。私は白い西洋のワンピースを身に纏い鶴見中尉列車と共に銀河を駆け抜けるという夢……。
会う前から私は鶴見中尉が若干怖くなった