君が為
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「ほー、ここが第七師団本部ですか。堅牢な造りですね」
「本州ほどではありませんよ」
第七師団本部へ着いた。造りは赤レンガでしっかりとしている。冬の寒さにも負けなさそうだ。思わず見入っていると月島さんに中へと促される
「ただいま陸軍第一師団参謀長補佐官殿をお連れして参りました。」
「これはこれは、遥々遠いところからよくぞ来られました。私、第七師団聯隊長の中佐です。以後お見知りおきを」
「****です。しかしそんなに畏まらずともいいです。僕はただの補佐官なのですから、大した者ではありません。それより今回は北の最強の守りである第七師団の方々直々に教えを請うことが出来て光栄です。どうぞ宜しくお願い致します。」
しっかりと挨拶をし握手をする。この人物も中々の手練れだ。聯隊を率いるだけはある。
「それで今回まず最初に補佐官殿が行かれるところですが、どこがよろしいか」
「そこで提案ですが、我々小樽の小隊は如何でしょうか。**殿」
月島さんが急にそう提案してきたので少し面喰ってしまった。どのような意図だろうか、よく真意が読み取れない顔で続ける
「いえ、実は**殿が北海道に教習を受けに来るというのを知った上司、鶴見中尉が是非とも我が隊に迎えたいと申しておりまして。困ったことですが、鶴見中尉は新しもの好きで帝都の暮らしやらなんやらを聞きたいと」
「鶴見がか。あいつも頭が吹っ飛んでから何を考えているのかよくわからなくなったが、補佐官殿が行っても大丈夫なのか」
「鶴見中尉も特に他意はないと思われますが、回られるのは一個小隊のみではないのでしょう。でしたら我々が早めでも良いかと。小樽には海産物を使った美味い洋食屋も沢山あります」
洋食屋、北海道の海の幸を使った洋食屋さん……一体どんな料理があるのだろうか。帝都にも色々あったが、地方のものはやっぱり違うだろう。いや、考えるのはこんなことではない。ここまで食い下がるのは少々おかしい。何かあると考えるのが妥当だ。しかも鶴見中尉自身も目を付けられていることは知っているだろう。罠か、はたまた早めに嵐を過ぎ去らせてしまおうというのか
「**殿は如何でしょうか。勿論嫌だとおっしゃいますなら無理にとはいいませんが」
「…いいえ、喜んで!あの鶴見中尉から先にご招待頂けるだなんて、はぁ嬉しすぎて胸が苦しいです!」
こういった路線でいこう。私は鶴見中尉の大ファンということでいこう。鶴見中尉を狂信的に崇拝する輩は少なくない。それならば私のこれもある程度の効力はあるだろう
「あ、ああ、もしかして補佐官殿は鶴見中尉のことをご存じで?」
「ええ!勿論です!鶴見中尉の二〇三高地でのご活躍は聞いております!陸軍の英雄ですよ!そんな方のお側で月島軍曹は働かれているのですか、羨ましい限りです!」
相手の顔に動揺が見られた。ある程度は信じてもらえたのか。ナイス、私グッドジョブ。心の中でガッツポーズを決めながら話のつづきをする
「それでは明日早朝旭川を発ちます。大丈夫ですか?」
「ええ、今夜でもいいくらいですよ。鶴見中尉にお会いできるなら」
「…ということで中佐よろしいですか」
「ああ、しっかりご案内しろよ。月島」
「はっ。ところで**殿もう宿は取っておられますか?」
「!いえ、失念しておりました。」
「そうですか、では俺が泊っているところはどうですか?長旅に効く温泉だそうで」
どういった意図だ、これは甘えたほうがいいのか?いやさすがに不用意に標的に近づきすぎるのは得策ではない。やめておこう
「いえ、遠慮しておきます。そこまで世話になるわけにはいきませんし、丁度旭川に来たら泊まりたいと思っていた宿があったんですよ」
「……了解しました。では明日早朝五時にここでお待ちしてます」
「ありがとうございます。早朝五時ですね、承知致しました。中佐殿もありがとうございました。また何かございましたら電報を送ります」
中佐や月島軍曹と別れ市街地へ向かう。初日からこんな腹の探り合い、私に向いてなさすぎるこの任務。だがこの任務で一番警戒していた小隊へ一番最初に派遣が決まるだなんて、幸先がいいのか悪いのか
「大佐、必ず何か掴んで帰ります。……貴方のお身体が心配です」
北海道の夜空は星で埋め尽くされていた
「本州ほどではありませんよ」
第七師団本部へ着いた。造りは赤レンガでしっかりとしている。冬の寒さにも負けなさそうだ。思わず見入っていると月島さんに中へと促される
「ただいま陸軍第一師団参謀長補佐官殿をお連れして参りました。」
「これはこれは、遥々遠いところからよくぞ来られました。私、第七師団聯隊長の中佐です。以後お見知りおきを」
「****です。しかしそんなに畏まらずともいいです。僕はただの補佐官なのですから、大した者ではありません。それより今回は北の最強の守りである第七師団の方々直々に教えを請うことが出来て光栄です。どうぞ宜しくお願い致します。」
しっかりと挨拶をし握手をする。この人物も中々の手練れだ。聯隊を率いるだけはある。
「それで今回まず最初に補佐官殿が行かれるところですが、どこがよろしいか」
「そこで提案ですが、我々小樽の小隊は如何でしょうか。**殿」
月島さんが急にそう提案してきたので少し面喰ってしまった。どのような意図だろうか、よく真意が読み取れない顔で続ける
「いえ、実は**殿が北海道に教習を受けに来るというのを知った上司、鶴見中尉が是非とも我が隊に迎えたいと申しておりまして。困ったことですが、鶴見中尉は新しもの好きで帝都の暮らしやらなんやらを聞きたいと」
「鶴見がか。あいつも頭が吹っ飛んでから何を考えているのかよくわからなくなったが、補佐官殿が行っても大丈夫なのか」
「鶴見中尉も特に他意はないと思われますが、回られるのは一個小隊のみではないのでしょう。でしたら我々が早めでも良いかと。小樽には海産物を使った美味い洋食屋も沢山あります」
洋食屋、北海道の海の幸を使った洋食屋さん……一体どんな料理があるのだろうか。帝都にも色々あったが、地方のものはやっぱり違うだろう。いや、考えるのはこんなことではない。ここまで食い下がるのは少々おかしい。何かあると考えるのが妥当だ。しかも鶴見中尉自身も目を付けられていることは知っているだろう。罠か、はたまた早めに嵐を過ぎ去らせてしまおうというのか
「**殿は如何でしょうか。勿論嫌だとおっしゃいますなら無理にとはいいませんが」
「…いいえ、喜んで!あの鶴見中尉から先にご招待頂けるだなんて、はぁ嬉しすぎて胸が苦しいです!」
こういった路線でいこう。私は鶴見中尉の大ファンということでいこう。鶴見中尉を狂信的に崇拝する輩は少なくない。それならば私のこれもある程度の効力はあるだろう
「あ、ああ、もしかして補佐官殿は鶴見中尉のことをご存じで?」
「ええ!勿論です!鶴見中尉の二〇三高地でのご活躍は聞いております!陸軍の英雄ですよ!そんな方のお側で月島軍曹は働かれているのですか、羨ましい限りです!」
相手の顔に動揺が見られた。ある程度は信じてもらえたのか。ナイス、私グッドジョブ。心の中でガッツポーズを決めながら話のつづきをする
「それでは明日早朝旭川を発ちます。大丈夫ですか?」
「ええ、今夜でもいいくらいですよ。鶴見中尉にお会いできるなら」
「…ということで中佐よろしいですか」
「ああ、しっかりご案内しろよ。月島」
「はっ。ところで**殿もう宿は取っておられますか?」
「!いえ、失念しておりました。」
「そうですか、では俺が泊っているところはどうですか?長旅に効く温泉だそうで」
どういった意図だ、これは甘えたほうがいいのか?いやさすがに不用意に標的に近づきすぎるのは得策ではない。やめておこう
「いえ、遠慮しておきます。そこまで世話になるわけにはいきませんし、丁度旭川に来たら泊まりたいと思っていた宿があったんですよ」
「……了解しました。では明日早朝五時にここでお待ちしてます」
「ありがとうございます。早朝五時ですね、承知致しました。中佐殿もありがとうございました。また何かございましたら電報を送ります」
中佐や月島軍曹と別れ市街地へ向かう。初日からこんな腹の探り合い、私に向いてなさすぎるこの任務。だがこの任務で一番警戒していた小隊へ一番最初に派遣が決まるだなんて、幸先がいいのか悪いのか
「大佐、必ず何か掴んで帰ります。……貴方のお身体が心配です」
北海道の夜空は星で埋め尽くされていた