君が為
name setting
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
大佐からの任務を受けてから三日ほど、今、目の前には雪景色が広がっている。ずっと帝都暮らしだったから見慣れない景色に若干浮き足立ってしまう。
青森の港から船に乗り北海道の地に足を下した。そして今現在は旭川の第七師団本部に向かっている。街並みは帝都とは違って雪が多く積もっているが人の多さはそんなに変わらないようにも思える。そろそろ本部が見えて来るころだが……、迷ってしまったかもしれない近くの女性に声をかける
「もし、そこのお嬢さん。第七師団の舎に行きたいのですが、道をお教え頂いてもよろしいですか?」
「あら、軍人さんここら辺のお方じゃありませんの?」
「そうなんです。帝都の方から来ていまして…、こちらは身も凍えるほどの寒さですね」
「えー!お兄さん帝都出身なの?通りでどこか垢抜けた雰囲気してらっしゃると思った!お兄さん、ちょっとよく見ると可愛いお顔してますねえ。どう?あたしのお店、この通りにあるんだけど、ちょっと覗いてかない?」
腕を絡ませ伏目がちに密着してくる女性。弱ったぞ、この女性は娼館の女性だったようだ。こんな身なりをしてはいるがそっちには疎いのが仇となったか
「い、いえ、あの……勤務中ですので」
「ふふっ、かあいい。お兄さんこういうのあんまり慣れてないの、ますますもっとお兄さんのこと知りたくなっちゃった」
「困ったな……」
にが笑いをして何とか拒絶の意思を伝えようとするがそんなもの女性はどこ吹く風だ
「すまないが、通行の妨げだ。そもそもここは客引きは許可されていない。商売なら許可された場で行ってくれ」
低い声が間に入るように聞こえた。振り返ってみるとそこには軍服を着た男性が立っていた
「あ、あらそうだったかしら…、最近物忘れがひどくてごめんなさいね。じゃ、お兄さん是非いらしてね」
女性は少しばつが悪そうにそそくさと立ち去って行った。とりあえず一応私は会釈だけをし、軍服の男性に向き直す
「どうも、助かりました。ああいったのは不得手でして」
「そうか、よくある手口だ。男前だ、たくましいだのなんだと言って店に引きずり込む。そのあとは別の女に変わってバカ高い料金を絞り取られる。気をつけろ」
随分と詳しいが、被害者だろうか。顔は苦いものでも噛み潰したようになっている。どうやら過去に一杯食わされたようだ
「ありがとうございます。ところで貴方も軍服を着ておられるということは第七師団の方ですか?」
「ああ、そういうあんたもか?何処の隊だ?」
訝しげに男性はこちらを見やる
「申し遅れました、帝国陸軍第一師団より参りました、****です。宜しくお願い致します。」
丁寧にお辞儀をしたあと警戒心を抱かせないように笑みを含め相手の目を見る。自身の所属を示した後相手の反応がどう変わるか、軍本部に反乱を企てている者ならば少なからず動揺をするはずだ
「陸軍本部の方でしたか、いやはやご無礼を。お話は伺っておりますよ、なんでも参謀長補佐の方で我ら第七師団へ研修へいらっしゃれると」
「ええ、そうなんです。お恥ずかしながら道に迷ってしまったようで…、先ほどの女性に尋ねようとしたのですがご覧の有り様で」
焦りや動揺、共に確認なし。目の動きや挙動にもおかしな箇所は見られない。平静だ。だが逆に怪しい。話に聞いていたとはいえこうもなんの反応もないのは却って不振だ
「まあここらの道は入り組んでおりますので、向かわれていたのは第七師団本部ですかな。ご案内します。どうぞこちらへ」
「かたじけないです。僕が道に迷っていたのはどうかご内密に。…えっと」
「これは申し遅れました、月島と申します。どうぞ宜しくお願い致します。」
「ええ、こちらこそ」
笑顔を返し握手を交わす。
実は事前に第七師団の要注意人物をピックアップし既に名前や経歴、家柄、ある程度の性格等は知っている。月島軍曹、鶴見中尉の側近であり性格は真面目で冷静。既に軍曹という地位を得ていることからもわかる通り有能な人物だ
目の前の人物に悟られぬように思索する。大丈夫、大佐のお側を離れたとしても出来る。これからが腹の探り合いになっていくだろう
青森の港から船に乗り北海道の地に足を下した。そして今現在は旭川の第七師団本部に向かっている。街並みは帝都とは違って雪が多く積もっているが人の多さはそんなに変わらないようにも思える。そろそろ本部が見えて来るころだが……、迷ってしまったかもしれない近くの女性に声をかける
「もし、そこのお嬢さん。第七師団の舎に行きたいのですが、道をお教え頂いてもよろしいですか?」
「あら、軍人さんここら辺のお方じゃありませんの?」
「そうなんです。帝都の方から来ていまして…、こちらは身も凍えるほどの寒さですね」
「えー!お兄さん帝都出身なの?通りでどこか垢抜けた雰囲気してらっしゃると思った!お兄さん、ちょっとよく見ると可愛いお顔してますねえ。どう?あたしのお店、この通りにあるんだけど、ちょっと覗いてかない?」
腕を絡ませ伏目がちに密着してくる女性。弱ったぞ、この女性は娼館の女性だったようだ。こんな身なりをしてはいるがそっちには疎いのが仇となったか
「い、いえ、あの……勤務中ですので」
「ふふっ、かあいい。お兄さんこういうのあんまり慣れてないの、ますますもっとお兄さんのこと知りたくなっちゃった」
「困ったな……」
にが笑いをして何とか拒絶の意思を伝えようとするがそんなもの女性はどこ吹く風だ
「すまないが、通行の妨げだ。そもそもここは客引きは許可されていない。商売なら許可された場で行ってくれ」
低い声が間に入るように聞こえた。振り返ってみるとそこには軍服を着た男性が立っていた
「あ、あらそうだったかしら…、最近物忘れがひどくてごめんなさいね。じゃ、お兄さん是非いらしてね」
女性は少しばつが悪そうにそそくさと立ち去って行った。とりあえず一応私は会釈だけをし、軍服の男性に向き直す
「どうも、助かりました。ああいったのは不得手でして」
「そうか、よくある手口だ。男前だ、たくましいだのなんだと言って店に引きずり込む。そのあとは別の女に変わってバカ高い料金を絞り取られる。気をつけろ」
随分と詳しいが、被害者だろうか。顔は苦いものでも噛み潰したようになっている。どうやら過去に一杯食わされたようだ
「ありがとうございます。ところで貴方も軍服を着ておられるということは第七師団の方ですか?」
「ああ、そういうあんたもか?何処の隊だ?」
訝しげに男性はこちらを見やる
「申し遅れました、帝国陸軍第一師団より参りました、****です。宜しくお願い致します。」
丁寧にお辞儀をしたあと警戒心を抱かせないように笑みを含め相手の目を見る。自身の所属を示した後相手の反応がどう変わるか、軍本部に反乱を企てている者ならば少なからず動揺をするはずだ
「陸軍本部の方でしたか、いやはやご無礼を。お話は伺っておりますよ、なんでも参謀長補佐の方で我ら第七師団へ研修へいらっしゃれると」
「ええ、そうなんです。お恥ずかしながら道に迷ってしまったようで…、先ほどの女性に尋ねようとしたのですがご覧の有り様で」
焦りや動揺、共に確認なし。目の動きや挙動にもおかしな箇所は見られない。平静だ。だが逆に怪しい。話に聞いていたとはいえこうもなんの反応もないのは却って不振だ
「まあここらの道は入り組んでおりますので、向かわれていたのは第七師団本部ですかな。ご案内します。どうぞこちらへ」
「かたじけないです。僕が道に迷っていたのはどうかご内密に。…えっと」
「これは申し遅れました、月島と申します。どうぞ宜しくお願い致します。」
「ええ、こちらこそ」
笑顔を返し握手を交わす。
実は事前に第七師団の要注意人物をピックアップし既に名前や経歴、家柄、ある程度の性格等は知っている。月島軍曹、鶴見中尉の側近であり性格は真面目で冷静。既に軍曹という地位を得ていることからもわかる通り有能な人物だ
目の前の人物に悟られぬように思索する。大丈夫、大佐のお側を離れたとしても出来る。これからが腹の探り合いになっていくだろう