君が為
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第七師団の兵舎へと戻って来た。幸いまだ鶴見中尉達は帰ってきていないようだ。この舎が手薄な今しか人皮を確認する術はないだろう。私は慎重に且つ息を殺しながら、鶴見中尉の部屋へと盗み入る。鍵が掛けてあったが単純な造りであるため容易に針金で開けることが出来た
(部屋を見回す限りそれらしきものは確認できないな……、書類やら引きだしやらはあまり迂闊に触れない方がいいだろうし……。ん?あれは……)
ふとかかっていた水墨画に違和感を覚えた。絵にではなくその額にだ。それを手にしてみる
(異様に額が厚い。何かを重ねているのか、)
重なり合った木の額を剥がした
「……っ!」
中には額に縄で張り付けてある刺青人皮があった。私はそれに触れ手触りを確かめる。……確かにこの手触りは人の皮膚だ。まだ乾かしている段階だろうということは最近剥がされたものか、……外道が。胸に何か滞留するものを抱えその人皮をもとあった時のように元に戻した。そのまま部屋を後にし、情報整理のため自室へと元に戻る
尾形さんの情報からすると鶴見中尉は国へ叛逆を企てて新たな国を築こうという。そしてその資金源となるのがアイヌの黄金だ。一体どれ程あるかは把握していないが建国ともなれば相当量だろう。そしてそれが夢物語ではないことを証明するのがあの大事に隠されていた人皮の存在。だが本気で国相手に一個師団それも分隊が敵うものとでも考えているのだろうか?全て私を欺くための仕掛けであったなら?──いや、たかが私を欺くための芝居の為に人の皮までもちだすのはおかしい。なによりそれこそ相手の目的が分からなくなってしまう
(とりあえず、鶴見中尉の隊は黒。尾形上等兵はこちら側、鶴見中尉の当面の目的は刺青人皮を手に入れること……)
持ってきた書物に今までの経緯を暗号で記していく。もし盗み見られたとしてもいいようにただの日課報告書のように書いている。むしろ見られた方が警戒をされずに済む。この部屋のドアに挟んであった紙も二度破れていたのを確認した。恐らく何者かが侵入してこの報告書を読んだだろう。手荷物も調べたのだろうが、男性ホルモンはモルヒネと同じように保管してあるのでその他には怪しい点はない。大丈夫だ、私の潜入は順調に進んでいる
兵舎の玄関が騒がしくなってきた。鶴見中尉達が戻って来たようだ。報告書をしまい、玄関のほうへ駆け足で行く。
「鶴見中尉殿!夜分遅くまでのお勤め、お疲れ様です。それで……四人は見つかったのでしょうか?」
皆の雰囲気から察するに見つかってはいないのだろうが、心配気に尋ねる。答えは想像していた通りで鶴見中尉は首を横に振っただけだった
「そう、ですか……」
「アイヌの親子かその他の者か、に襲われたと考えている。町の住民にもおかしなやつがいたら通報しろと伝えている。常駐させる兵も増やした。**くんが心配することはない」
鶴見中尉が私の両の肩に手を置きさする。そこへ月島さんが入って来た
「鶴見中尉、手紙が届いておりますので急ぎ部屋に戻りご確認ください」
「分かった。じゃあ、**くん今夜は特別冷える。温かくしておきなさい」
「お疲れ様です。鶴見中尉も疲れをお癒しください。」
鶴見中尉を見届けた後月島さんの方を見やる。なんだか難しい顔をしている
「月島さん……お疲れ様です。明日も、捜索に出るのですか?」
「いや、この雪では全ての痕跡は覆いつくされてしまう。現状出来ることはほぼもう、ない。**くんも今日は一日ほったらかしてしまって悪かったな」
「いえ!第七師団が大変な時だというのに僕の我儘なぞ。それより……月島さんのお顔の色が悪いのが気になります。ちゃんと休息は取っていらっしゃいますか?」
月島さんの顔を覗き込む。すると今度は苦虫を嚙み潰したような顔になって距離を取られた。これは、嫌われたか何かやましいことがあるのか
「あッ、いいや。休みは充分にとっってますよ。流石にこの時間まで捜索を続けていたのは疲れてしまったようです。」
「そのようですね。月島さんもゆっくりお休みください」
笑みを含ませながら労う。月島さんの肩の力は抜けないままだ
「それとお借りした石鹸ですが、何時返しに行けば?」
「ああ!それなら別に返して下さらなくとも大丈夫ですよ!」
「いえ!お返しします。あ、いやその、……少々自分には刺激が強く……」
そうか、肌に合わなかったのか。申し訳ないことをしてしまった
「そうでしたか、すみません。僕が肌が荒れたことがなかったので気にしないで渡してしまいました。この後、部屋まで回収しに参りましょうか?」
「あー、……大丈夫です。今日はもう疲れたので明日の朝に」
「それもそうですね。お疲れ様です月島さん」
月島さんはお疲れ様、と言ったあと自室へと帰っていった。そして月島さんが私の横を通り過ぎた時に微かに匂いがしたのだ。硝煙の匂いが。一体何があったのか、聞くことは叶わなかった
(部屋を見回す限りそれらしきものは確認できないな……、書類やら引きだしやらはあまり迂闊に触れない方がいいだろうし……。ん?あれは……)
ふとかかっていた水墨画に違和感を覚えた。絵にではなくその額にだ。それを手にしてみる
(異様に額が厚い。何かを重ねているのか、)
重なり合った木の額を剥がした
「……っ!」
中には額に縄で張り付けてある刺青人皮があった。私はそれに触れ手触りを確かめる。……確かにこの手触りは人の皮膚だ。まだ乾かしている段階だろうということは最近剥がされたものか、……外道が。胸に何か滞留するものを抱えその人皮をもとあった時のように元に戻した。そのまま部屋を後にし、情報整理のため自室へと元に戻る
尾形さんの情報からすると鶴見中尉は国へ叛逆を企てて新たな国を築こうという。そしてその資金源となるのがアイヌの黄金だ。一体どれ程あるかは把握していないが建国ともなれば相当量だろう。そしてそれが夢物語ではないことを証明するのがあの大事に隠されていた人皮の存在。だが本気で国相手に一個師団それも分隊が敵うものとでも考えているのだろうか?全て私を欺くための仕掛けであったなら?──いや、たかが私を欺くための芝居の為に人の皮までもちだすのはおかしい。なによりそれこそ相手の目的が分からなくなってしまう
(とりあえず、鶴見中尉の隊は黒。尾形上等兵はこちら側、鶴見中尉の当面の目的は刺青人皮を手に入れること……)
持ってきた書物に今までの経緯を暗号で記していく。もし盗み見られたとしてもいいようにただの日課報告書のように書いている。むしろ見られた方が警戒をされずに済む。この部屋のドアに挟んであった紙も二度破れていたのを確認した。恐らく何者かが侵入してこの報告書を読んだだろう。手荷物も調べたのだろうが、男性ホルモンはモルヒネと同じように保管してあるのでその他には怪しい点はない。大丈夫だ、私の潜入は順調に進んでいる
兵舎の玄関が騒がしくなってきた。鶴見中尉達が戻って来たようだ。報告書をしまい、玄関のほうへ駆け足で行く。
「鶴見中尉殿!夜分遅くまでのお勤め、お疲れ様です。それで……四人は見つかったのでしょうか?」
皆の雰囲気から察するに見つかってはいないのだろうが、心配気に尋ねる。答えは想像していた通りで鶴見中尉は首を横に振っただけだった
「そう、ですか……」
「アイヌの親子かその他の者か、に襲われたと考えている。町の住民にもおかしなやつがいたら通報しろと伝えている。常駐させる兵も増やした。**くんが心配することはない」
鶴見中尉が私の両の肩に手を置きさする。そこへ月島さんが入って来た
「鶴見中尉、手紙が届いておりますので急ぎ部屋に戻りご確認ください」
「分かった。じゃあ、**くん今夜は特別冷える。温かくしておきなさい」
「お疲れ様です。鶴見中尉も疲れをお癒しください。」
鶴見中尉を見届けた後月島さんの方を見やる。なんだか難しい顔をしている
「月島さん……お疲れ様です。明日も、捜索に出るのですか?」
「いや、この雪では全ての痕跡は覆いつくされてしまう。現状出来ることはほぼもう、ない。**くんも今日は一日ほったらかしてしまって悪かったな」
「いえ!第七師団が大変な時だというのに僕の我儘なぞ。それより……月島さんのお顔の色が悪いのが気になります。ちゃんと休息は取っていらっしゃいますか?」
月島さんの顔を覗き込む。すると今度は苦虫を嚙み潰したような顔になって距離を取られた。これは、嫌われたか何かやましいことがあるのか
「あッ、いいや。休みは充分にとっってますよ。流石にこの時間まで捜索を続けていたのは疲れてしまったようです。」
「そのようですね。月島さんもゆっくりお休みください」
笑みを含ませながら労う。月島さんの肩の力は抜けないままだ
「それとお借りした石鹸ですが、何時返しに行けば?」
「ああ!それなら別に返して下さらなくとも大丈夫ですよ!」
「いえ!お返しします。あ、いやその、……少々自分には刺激が強く……」
そうか、肌に合わなかったのか。申し訳ないことをしてしまった
「そうでしたか、すみません。僕が肌が荒れたことがなかったので気にしないで渡してしまいました。この後、部屋まで回収しに参りましょうか?」
「あー、……大丈夫です。今日はもう疲れたので明日の朝に」
「それもそうですね。お疲れ様です月島さん」
月島さんはお疲れ様、と言ったあと自室へと帰っていった。そして月島さんが私の横を通り過ぎた時に微かに匂いがしたのだ。硝煙の匂いが。一体何があったのか、聞くことは叶わなかった