君が為
name setting
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
午前五時丁度、いつもと同じ時間に目を覚ます。布団をたたみ窓の外を見る。朝日に照らされた雪が雫を垂らしながら眩しい程に煌めいている。今日は清々しい程の晴天だ、朝からなんとも気分が良い
さて、午前中はやる事が多い。兵舎の前の雪かき、備品整理、第七師団の兵士の鍛錬の付き合い。とはいうが私はここの正規の兵ではないからやることは中央の頃よりは少ない。が雪国の雪かきは一仕事だ。午後は手が空くので尾形上等兵の元へ見舞いに行こう
*
「**くん!いや~中々な腕前でしたな!久しぶりに熱くなってしまった!」
「いえ、三島さんも体裁きがお上手でさすがの北鎮部隊です」
こうして第七師団の鍛錬に加わることはとても有意義だ。一人一人の癖や力量が測れるうえ、相手の良いところも盗み安い。男性ホルモンで筋力増強をしてはいるが日々鍛錬を欠かさない男相手では自分が勝負出来るのは技量や即時判断力となる。そういったこともありいずれ対立するかもしれない相手との手合わせは重要だ。勿論自身の奥の手や全力は見せてはならない。そして二人で兵舎の中を歩いていたら月島さんにあった
「ん?三島と**くんか」
「月島軍曹!風呂桶を持っているということはこれから風呂ですか?」
「ああ。お前は、修練場の帰りか」
「そうです。**くんの武芸の腕は中々ですよ!中央の出だけはあります」
三島さんはキラキラとした目で月島さんを見ている。中央にいた頃は大佐以外にあまり褒められたことがなかったので少し気恥ずかしい
「ほう、補佐官などやらず実働部隊の指揮につかれては?」
「とんでもない!結局負けてしまいましたし、三島さんの方が何枚も上手でしたよ」
基本的には油断をしてもらう為に弱く振る舞っていた方がいい。そちらの方が敵の目を掻い潜りやすい
「自分も彼を中央の補佐官にしておくのは勿体ないと思ってしまいます。あっそうだ、月島軍曹風呂にご一緒してもよろしいでしょうか!**くんも!汗をかいたろう?俺が背中を流そう!」
「……俺はいいぞ。**くんはどうでしょうか?」
風呂、か。こういった誘いは慣れている。故に上手く躱す方法も
「風呂ですか!良いですね!僕も一緒に……、あっ!すみません、昼を食べたらすぐに尾形さんのところに行かなくてはならないのでした。尾形さんの経過がやはり気になってしまって」
「尾形上等兵か、意識は以前戻っていないようです。まあ気になるなら行ってもいいか。三島、今日の午後の見張りは?」
「二階堂兄弟です。」
「そうか。ならば**くんにおつかいをお頼みしたい。二階堂兄弟に昼飯を届けてやってほしい。今日の炊事当番に頼めば何かしら作ってもらえる筈です。」
承知しました、と笑顔で返し三島さん、月島さんと別れる。食堂へ行く前に部屋で汗をぬぐい、着替えて必要なものを持ってから食堂へ行った。だが食堂には人はおらず炊事当番という人物も見受けられない。まあ少し遅くなってしまったからしょうがないか、と自身が厨房に立つことにした。二階堂兄弟、こちらも特出した点はないが二人での連携が上手く戦闘へと運ぶことになったらなるべく切り離すことが得策だ。あとは静岡の出自ということくらいか
など考えていたら自身を含めた三人分のおにぎりを握り終えた。ふむ、そうだな、話のタネを作るのならば少し工夫をしてみるか。そう思い少しおにぎりに細工をしておく。そしておにぎりを皿の上に盛り清潔な布巾で包む。さあ出発だ
着いた病院はこじんまりとしており収容できそうな人間は少なそうだ。受付にいた看護婦さんに一礼をすると何も言わず尾形さんの病室に案内してくれた。病室の前には二階堂、洋平?浩平?まあどちらでもいい。その一人が立っていた
「お勤めお疲れ様です。おにぎりを握ってきました」
微笑みながら渡せば、驚いたように受け取ってくれた
「いいんですか?しかも**さんが作ってくださったので?ありがとうございます。おい、洋平!昼飯だぞ!」
ドアを開け中へ呼びかける。こちらは浩平さんの方だったか、軍服にほつれがあるほうが浩平さんと覚えておこう
「昼飯?今日の担当は岡田だっけ。うげー岡田の飯って不味いんだよなあ。……っ!中央の**さん!」
「ふふっ、どうも。今回のお昼は僕が作ってきました」
「取り敢えず中に入って食いましょう。これは三人分ですよね?」
「ええ。僕も昼がまだなのでご一緒させていただきます」
驚いている洋平さんを引き連れ三人で尾形さんの近くの椅子に腰掛ける。今は熱が出ているようで昨日発見された時よりも苦しそうだ
「尾形さん……」
「うわっ滅茶苦茶いい匂いする!これ、何塗ったんですか?」
洋平さんがおにぎりの包みを開けていた。お腹がとても空いているようだ。思わずフッと笑ってしまう
「食べてみてのお楽しみですよ。ではいただきます」
いただきます、と二人も手を合わせた後おにぎりをぱくりと口にした。一応味見はしてきたが二人の気に召すかわからない為若干ドキドキしながら感想を待つ
「うっま!これもしかして鰻のタレですか!焦げも美味いです」
「こっちのは抹茶の塩?**さん料理上手いんですね!岡田の飯よりずっとうめえ!これなら見張り当番も悪くないな!浩平」
「ああ!」
好評なようで何よりだ。おにぎりに少し工夫をしたくらいで料理上手と呼ばれるのは違う気もするが、黙っておこう。そこから二人の故郷の話になりこちらに配属されたいきさつ、戦時中の戦果などを聞いた。随分と打ち解けられたと思う。食は偉大だな。
明日の見張りも二人だそうでまたおにぎりを握って来てくれないかと遠回しに請われたので快諾をした。もとよりそのつもりだった。そして既に師団内部では尾形さんは何者かに襲われた説が濃厚であった。私は部外者の為見張りの当番にはつけない、ならばなるべく尾形さんの傍にいて目を覚ました時に一番に聞ける可能性を高めておこう。勘ではあるがそれが今重要な気がする
さて、午前中はやる事が多い。兵舎の前の雪かき、備品整理、第七師団の兵士の鍛錬の付き合い。とはいうが私はここの正規の兵ではないからやることは中央の頃よりは少ない。が雪国の雪かきは一仕事だ。午後は手が空くので尾形上等兵の元へ見舞いに行こう
*
「**くん!いや~中々な腕前でしたな!久しぶりに熱くなってしまった!」
「いえ、三島さんも体裁きがお上手でさすがの北鎮部隊です」
こうして第七師団の鍛錬に加わることはとても有意義だ。一人一人の癖や力量が測れるうえ、相手の良いところも盗み安い。男性ホルモンで筋力増強をしてはいるが日々鍛錬を欠かさない男相手では自分が勝負出来るのは技量や即時判断力となる。そういったこともありいずれ対立するかもしれない相手との手合わせは重要だ。勿論自身の奥の手や全力は見せてはならない。そして二人で兵舎の中を歩いていたら月島さんにあった
「ん?三島と**くんか」
「月島軍曹!風呂桶を持っているということはこれから風呂ですか?」
「ああ。お前は、修練場の帰りか」
「そうです。**くんの武芸の腕は中々ですよ!中央の出だけはあります」
三島さんはキラキラとした目で月島さんを見ている。中央にいた頃は大佐以外にあまり褒められたことがなかったので少し気恥ずかしい
「ほう、補佐官などやらず実働部隊の指揮につかれては?」
「とんでもない!結局負けてしまいましたし、三島さんの方が何枚も上手でしたよ」
基本的には油断をしてもらう為に弱く振る舞っていた方がいい。そちらの方が敵の目を掻い潜りやすい
「自分も彼を中央の補佐官にしておくのは勿体ないと思ってしまいます。あっそうだ、月島軍曹風呂にご一緒してもよろしいでしょうか!**くんも!汗をかいたろう?俺が背中を流そう!」
「……俺はいいぞ。**くんはどうでしょうか?」
風呂、か。こういった誘いは慣れている。故に上手く躱す方法も
「風呂ですか!良いですね!僕も一緒に……、あっ!すみません、昼を食べたらすぐに尾形さんのところに行かなくてはならないのでした。尾形さんの経過がやはり気になってしまって」
「尾形上等兵か、意識は以前戻っていないようです。まあ気になるなら行ってもいいか。三島、今日の午後の見張りは?」
「二階堂兄弟です。」
「そうか。ならば**くんにおつかいをお頼みしたい。二階堂兄弟に昼飯を届けてやってほしい。今日の炊事当番に頼めば何かしら作ってもらえる筈です。」
承知しました、と笑顔で返し三島さん、月島さんと別れる。食堂へ行く前に部屋で汗をぬぐい、着替えて必要なものを持ってから食堂へ行った。だが食堂には人はおらず炊事当番という人物も見受けられない。まあ少し遅くなってしまったからしょうがないか、と自身が厨房に立つことにした。二階堂兄弟、こちらも特出した点はないが二人での連携が上手く戦闘へと運ぶことになったらなるべく切り離すことが得策だ。あとは静岡の出自ということくらいか
など考えていたら自身を含めた三人分のおにぎりを握り終えた。ふむ、そうだな、話のタネを作るのならば少し工夫をしてみるか。そう思い少しおにぎりに細工をしておく。そしておにぎりを皿の上に盛り清潔な布巾で包む。さあ出発だ
着いた病院はこじんまりとしており収容できそうな人間は少なそうだ。受付にいた看護婦さんに一礼をすると何も言わず尾形さんの病室に案内してくれた。病室の前には二階堂、洋平?浩平?まあどちらでもいい。その一人が立っていた
「お勤めお疲れ様です。おにぎりを握ってきました」
微笑みながら渡せば、驚いたように受け取ってくれた
「いいんですか?しかも**さんが作ってくださったので?ありがとうございます。おい、洋平!昼飯だぞ!」
ドアを開け中へ呼びかける。こちらは浩平さんの方だったか、軍服にほつれがあるほうが浩平さんと覚えておこう
「昼飯?今日の担当は岡田だっけ。うげー岡田の飯って不味いんだよなあ。……っ!中央の**さん!」
「ふふっ、どうも。今回のお昼は僕が作ってきました」
「取り敢えず中に入って食いましょう。これは三人分ですよね?」
「ええ。僕も昼がまだなのでご一緒させていただきます」
驚いている洋平さんを引き連れ三人で尾形さんの近くの椅子に腰掛ける。今は熱が出ているようで昨日発見された時よりも苦しそうだ
「尾形さん……」
「うわっ滅茶苦茶いい匂いする!これ、何塗ったんですか?」
洋平さんがおにぎりの包みを開けていた。お腹がとても空いているようだ。思わずフッと笑ってしまう
「食べてみてのお楽しみですよ。ではいただきます」
いただきます、と二人も手を合わせた後おにぎりをぱくりと口にした。一応味見はしてきたが二人の気に召すかわからない為若干ドキドキしながら感想を待つ
「うっま!これもしかして鰻のタレですか!焦げも美味いです」
「こっちのは抹茶の塩?**さん料理上手いんですね!岡田の飯よりずっとうめえ!これなら見張り当番も悪くないな!浩平」
「ああ!」
好評なようで何よりだ。おにぎりに少し工夫をしたくらいで料理上手と呼ばれるのは違う気もするが、黙っておこう。そこから二人の故郷の話になりこちらに配属されたいきさつ、戦時中の戦果などを聞いた。随分と打ち解けられたと思う。食は偉大だな。
明日の見張りも二人だそうでまたおにぎりを握って来てくれないかと遠回しに請われたので快諾をした。もとよりそのつもりだった。そして既に師団内部では尾形さんは何者かに襲われた説が濃厚であった。私は部外者の為見張りの当番にはつけない、ならばなるべく尾形さんの傍にいて目を覚ました時に一番に聞ける可能性を高めておこう。勘ではあるがそれが今重要な気がする