BARの常連の人達となんだかんだ関わっていく話
ヨコハマのオーダー
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BAR White
ここは女性店主がきりもりするBAR。
黒とチャコールグレーを基調と落ち着いた空間でカウンターが8席とテーブル4人席が3つ。奥にはVIP席がある。照明は少々落としてあり、間接照明の明かりが柔らかい。
バーカウンターの後ろにはたくさんの酒、リキュール、ワインボトルがずらりと綺麗に並び、ワイングラスやカクテルは曇りがなく完璧に磨かれている。
リズミカルなシェイクの音が聞こえ、店内にはジャズが流れる。
今いる客が多くないせいで、そのふたつの音が響く、
と言うより私とバーテンダーしかいない。
決してこの店が流行っていないから、客がいないわけではない。
時間帯だ。
こんな夕方からBARに来る人なんて少ないだろう。
そもそもこの時間からやってるBARも少ないが。
「お待たせしました。ブルームーンです。」
カクテルグラスが目の前に出される。
すみれ色が美しい。
薄いグラスに口を付ければ、すみれの香りが広がりあとからジンの独特な味がする。
「……、ここのブルームーンは美味しいですね」
「恐れ入ります。」
店主は上品に口角をあげシェイカーを洗う。
「このカクテルに使われてるクレームドバイオレットは菫の香りがするんです。いいリキュールが入ったので、綺麗な紫でしょう。」
そう言って、少し自慢げにボトルをみせてくれる。
そんな店主の顔をちらりと見てからグラスの紫に再び目を落とす。
「そうですね、綺麗だ。……白さん、チーズ貰ってもいいです?」
「かしこまりました。…入間さん、ほかのお客様がいる時は名前、呼んじゃダメですよ?」
店主、もとい成宮 白さんは困ったように眉を寄せ、テキパキと注文の品を用意する。
白のスクエア型の皿にチーズを綺麗に並べ、最後にハチミツをかける。その動作には無駄がなく美しい。
その様子をずっと観察していた。
「…入間さん、そんなに見ないでください。緊張します。」
「緊張する白さんですか…、それはそれで見てみたいですね。」
「意地悪ですね。」
「意地悪で結構です。」
この店の空気はとても落ち着くし、酒と肴が美味い。
なんといっても、店主の空気が落ち着かせてくれる。
このBARの名前と同じでとても無垢だ。
このBARは半年程に見つけ、気まぐれで入りこの店とカクテルと彼女にひかれた。それから、週に1度とまではいかないが、2週間に1度は通い、常連になってしまった。
この店のことはチームのメンバーにも秘密にしている。俺の休息の地を荒らされたくはない。
彼女を恋愛対象としては見ていない。
だが、ついからかいたくなる。
彼女の無垢な空気がそうさせるのだろうか。
彼女は俺の事は何も知らない。
俺も彼女の事は店主をしていることしか知らない。
…名前と年齢と好きな食べ物は知ってるか。
まあ、それくらいだ。
普段は夜に1人で来るが今日は非番だったため彼女と会話ができる夕方に来たというわけだ。
その後少し会話をし、もう一杯カクテルを貰った。
他の客が来たことろで会計をし店をでた。
「ありがとうございました、またのお越しをお待ちしております。」
微笑み軽く頭を下げる彼女をみて、軽く会釈をして店をでる。
店を出ると空は暗い。
「こんな時間か。」
腕時計は20時を軽く過ぎたところ。
ポケットからタバコを取り出し火をつける。
紫煙を吐き出し帰路へとつく。
足取りは軽い。
この時俺の後ろ姿を見てたヤツがいたなんて、
思いもしなかった。
-つづく-