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拘束願望

「いがわ、噛んでいいよ」首をとん、と指さし、挑発的な視線でこちらを見つめる木藤良先輩。ゆっくり、ゆっくりと引き寄せられるように顔を近づけて、むわりと香水の香りを感じながらやわく犬歯を突き立てた。「ん、」吐息が聞こえて、更に深く、跡が残る強さで噛み付いた。


頭のうしろ、うなじのところからまっすぐ背筋を通り下に降りて尾骶骨のあたりまで、電流が駆け抜けたような、このまま身体が沈んでしまいそうな重だるい快楽。腰をさすられて、声が漏れてしまった。熱い息が耳を撫でる。「僕を噛んで気持ちよくなっちゃったの?」


うぅ、と顔を真っ赤にして呻く。返事の代わりに、噛み跡を舌でなぞった。

「ね、こっちにもちょうだい」

目眩がするほど官能的な誘いに、操り人形の如く乗せられてしまう。  

水音がするほど激しいそれに、とうとう腰が抜けて先輩にしがみついた。「息、できないです」「じゃあもっと練習しないとね」


舌を絡め取られ、きつく吸われて、やわく唇を食まれて、はふ、はふ、と息があいだから漏れる。

「可愛いね、涙目になってる」

少し恨めしげに、相手を見上げると彼は美しい顔面を綻ばせて、頭を撫でた。


子供扱いされているな、と思っても今は何も言い返さずに、先輩の首につけられた、自分がつけた噛み跡を眺めていた。


……この美しい人は自分のものだ。



所有物の証を、少年はほんの少しだけ仄暗い眼差しを向けて愛おしく感じた。

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