ジェスチャーゲーム
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「うぉっ、近っ!」
__________
杉元さんや月島さん達がカメラ(この時代では活動写真というらしい)でアイヌ昔話を撮影をしている間、
私は男性陣のチンポが視界に入らないようこっそり日の当たる木の根元でうつらうつら。
雪が積もっているとはいえ照り返しがあり、風もない良い天気だったため
ポカポカ体が温まるにつれ伴う眠気に勝つ気も放棄して休憩していたのだった。
アイヌの服に着替える際に脱ぎ捨てられた白石の上着を見つけ
その抜け殻を頭から被って太陽光を防ぎ、サァいよいよ就寝というところ。
ほの暗い視界と上着の饐えた臭いのほかに、僅かに音が聞こえた。
雪を踏んだとき独特のギュッ、ギュッ、という規則的なものだった。
まぁ足音が聞こえるのだからクズリではないだろう。
すぐそばには杉元さんもいることだし、と特に動かずにいると
顔を覆っていた上着がはぎ取られる。
視界一面のロシア人である。
「うぉっ、近っ!」
「…!」
目に飛び込んでくる空の7割を覆うのはヴァシリさんの顔だった。
今日の天気は生憎ですが一帯にロシア人が降り注ぐでしょう、そんな心持になって
私は一瞬の間に体を半分起こして後方へ飛びのいた。
上着剥ぎ取り事件の犯人は右手に酸っぱい香りのするそれを掴んだまま
私をぢっと見つめている。
「…?」
「……?」
無言である。
相手は長いまつ毛に縁どられた目をぱちくりとするばかり。
そこであっ、と傷のことに思い当たって、
特に言おうともしていなかった言葉を探して呼びかけてみる。
「…ヴァシリさん、撮影はもう済んだんですか」
後半の意味は伝わっていないだろうが名前を呼ばれたことは分かったようで
彼は目元だけでクシャッと笑った。
厳つい体格に反して表情は可愛いものだな、とこちらもニコニコし返すと
ヴァシリさんが撮影班が固まっている場所を指差した。
そこには何故か女装した鯉登さんと月島さんがおり、背景には…。
「松前城が建立されておる…」
規模は小さいが遠目には本物と見紛うばかりの立派な書き割りが置いてある。
フンフンと子犬のように息を漏らしてロシア人はその小さな城と自分を交互に指した。
「?あれ、ヴァシリさんが、描いたんですか?」
書き割りを見て、彼を見て、手を動かす動作をすれば、千切れそうなほど首が振られる。
「おぉ、凄いですね。私もあれほど上手ではないですし、少しですが描きますよ」
自分の胸に手を当て、絵を描くモーション。それに微笑みを足せば
目をキラキラさせたヴァシリさんが彼の背後でゴソゴソ何かを探し、私へ差し出した。
指先で摘ままれた紙切れは普段、彼が意思疎通に使っているのと同じものだった。
が。
「うーん?唇の絵…?」
見せられた小さな紙片には妙に写実的な唇だけが鉛筆で描かれている。
さてこれはどんな意味か、と首をひねる様子にヴァシリさんがワタワタと逡巡した後、
その紙を表にして彼自身の頬に人差し指で貼り付けた。
「……もしかしてキスしてほしいんですか…?」
自分の唇を指さし、彼の頬を指さす。
再び千切れが懸念される彼の首。
そしてパチパチといつもより多めに瞬く目が、期待に輝いている…ように見える。
「えぇ…いいですけど、っうわっ!」
こちらも緩く頷けば、待ってましたとばかりに両肩を掴まれる。
そのまま布越しにむにっ、と唇を押し当てられる。
頬ではなく思い切り真正面からの接吻でした。騙したな。
唇が離れた後も両肩の手は離れず、むしろ抱き込むように背中へ回された。
「…、……、!」
何か話したい彼の気持ちを汲みたいところではあるが
口元の布越しにでも分かるほど荒い、彼の息にドン引きである。
少しづつ拘束が強まる状況にもはや眠気も吹っ飛んで
二ホンウナギも驚きの暴れっぷりで抵抗を始めた。
「こら、顔が、良い、からって、いい、加減に、しとけよ、露助ェ!!」
エロティックロシア人(ホクホク顔のヴァシリ)の
ヒグマばりのホールドから抜け出した後の私は
月島さんからロシア語の暴言を教わろうと堅く決意したのであった。
1/1ページ