とある海岸にある、青い屋根の屋敷。
白い看板には、こう書かれていた。

願いの叶うケーキ屋アジュール・エンジェル。

少女が扉を開けると、一人の男が出迎えた。

「おかえりなさい、ワルねこさん」
「ただいま…フリーザ様」

フリーザは少女…ワルねこを店の奥の部屋に連れていった。

「他の四人は?」
「別のお客様の所へ行きましたよ。ちゃんと仕事出来るか、不安ですがねぇ…私はともかく、あの四人は怠慢が酷いですから」
「まあまあ…あの四人も一生懸命なんですよ」

苦笑いを浮かべるワルねこに、フリーザは紅茶を差し出した。

「紅茶にはレモンとミルク、どちらを入れます?」
「ミルクでお願いします」

フリーザが淹れてくれたミルクティーを一口飲むワルねこ。
すると、フリーザはワルねこが手に入れてきたものを手に取った。

「…今回の収穫はどんなものですか?」
「フリーザ様の言った通りでしたよ。中洲亜矢さんの心は、なかなかの深みがありました…でも…」

ワルねこの言葉を遮るように、フリーザは小瓶の蓋を開け、エッセンスを一滴、口に含んだ。
そして唇を舐め、一言呟いた。

「…生温い…復讐心が弱いですねぇ」
「やっぱり…フリーザ様のお腹を満たせるまでは、深くなかったですね…」

残念そうにため息を吐くワルねこに囁くように、フリーザは言う。

「復讐は蜜のように甘い…それはケーキの最高のスパイスになる。もっともっと、たくさんの復讐心を集めなさい。我々を満足させる為に」
「…ええ、勿論。頑張ります」

微笑むワルねこの手に、フリーザはそっと口付けた。

「それでこそ、私の魔女ですよ…青木ワルねこさん」


ここは願いの叶うケーキ屋、アジュール・エンジェル。
お代はあなたの、心の奥に眠る、黒い感情…。

そう、復讐という願い。