走っても走っても薄暗い下水道。
右に曲がっても、左に曲がっても地上に上がるマンホールは見つからない。
息が上がって苦しい。こんなところまでリアルに再現されて本当に夢じゃないみたい。
足も疲れた、息が続かなくてもう走れない。名無しは重く感じる足をゆっくり止め始め、その場に立ち止まった。
大きく動く心臓、肺の息苦しさ、額から溢れる汗。壁を触ればコンクリートの感触。手に付いた埃。
1つ1つが夢じゃ無いと実感してしまう。そして同時に怖いと感じた。
この体は誰なのか、私は誰なのか、元の世界に戻れるのか。
埃の付いた手を見ながら今度は涙した。ボロボロと目から溢れる涙は手に付いた埃を洗い流す程の量だ。
足が震える。自分の体を支える力が無くなりそうでその場にしゃがんだ。
床が汚いとか、服が汚れるとかそんなのどうだっていい。そんな事考える余裕すらない。

泣いていると遠くの方から人の足音が聞こえる。
遠くから聞こえてたと思ったらすぐ近くで聞こえるようになり、名無しの目の前で止まった。
その人は名無しと同じ目線になるようにしゃがみ、頭を撫でるように手を置く。
「大丈夫か？」
声の主はレオナルドだった。私がタートルズの家を出た後皆で探してくれてたみたい。
けど今の気持ちは大丈夫じゃない。不安でいっぱい。
涙でぐしゃぐしゃの顔を上げればレオナルドは名無しを勢い良く抱き締めた。
「大丈夫さ、オレ達が守る。わからないけどそうしなきゃいけない気がするんだ。何でなんだろうな...初めて会うのに...
だから地上で倒れてた時も家に運んだんだ」
倒れてたのを助けてくれたのはレオナルドだった。

私を助けてくれたのはレオナルド

レオナルドは少し微笑みながら抱きしめる力を少し強めた。
守らなきゃいけない人を包み込む様に...周りの外敵から守るように...
名無しはレオナルドの胸に顔を埋めて目を閉じた。
レオナルドの匂い...なんでか、落ち着く。
名無しを守るレオナルドの意志が通じたのか名無しは少しずつ体の力が抜けて目を閉じた。
レオナルドが立ち上がり歩き出すとその振動の心地良さが眠気を誘う。
暫くするとゆっくりとふかふかした柔らかい場所に降ろされた。