奔星ノ在リ処
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「つ、疲れた…。」
フラフラと覚束無い足取りで公園のベンチへと座り込んだ綱吉は、そのまま深く項垂れる。
今日も散々だった。フゥ太の頼みで遊びに付き合うことになったのはいいが、人数が多い方がいいとリボーンが山本と獄寺と了平を誘い、イーピンもランボもビアンキも、果てはハルや京子まで巻き込んだ大規模な鬼ごっこを始めた。このメンバーで問題が起きないはずもなく飛び交うボムやポイズンクッキング、10年バズーカで大人になったランボに同じく大人になったイーピンが技を決める。綱吉がどれだけ叫んでも騒動は止まらず、極めつけはたまたま通りかかった雲雀に群れているから、と言われボコボコにされた。
ほんと、疲れた…。
愚痴すら出てこない。ただただ理不尽に晒された身体は休息を求めている。皆と別れ1人になった綱吉は誰もいない公園で思いっきりため息をついたのだった。
「ごきげんよう。」
「うわぁ!」
突然隣から聞こえた声に驚いて叫び声を上げた。完全に気を抜いていたためベンチから転がり落ちた綱吉は強かに臀を打ってしまった。いてて、と擦りながら見上げるとそこには煌めく星の瞳。昴が目を瞬かせながら見下ろしていた。
「昴さん?!」
「元気なのは良い事だけれど、座ってくださる?」
そう言ってベンチに座った昴はトントンと己の隣を叩く。相変わらずだな…。引きつった笑みを浮かべながら綱吉は言われた通りに腰掛けた。この態度にも慣れたものだ。思えば初めて会った時から随分と時間が経ったが、昴の高飛車なこの感じは全く変わることなく、いつしか綱吉達の方が昴に適応していた。了平や山本は昴の発言を笑って流すし、綱吉もツッコミは入れるもまぁそんなものかと受け入れる。唯一獄寺だけが未だに突っかかっているが、初めの頃よりは大分落ち着いた。
それに…、と綱吉は昴を見る。最近よく合う昴の目は前ほど不気味さがなかった。
「今日も楽しそうだったわね。」
「見てたんですか?!」
「ねぇ、今日牛の子を庇ったわよね。なんで?」
牛の、子?なんの事か咄嗟には理解できず言葉を紡げない綱吉。しかしそんなことはお構いなしに昴は1人分空いていた距離にぐっと身を乗り出した。
「牛の子だけじゃない。前の動物園でも、甲冑の子だってそう。占いの子も守ってる。なんで?」
「な、」
「案外矜持を大切にするタイプなの?それとも死に急いでるの?」
「ちょっと待って!近い!近いです!!」
近い!良い匂いする!!
眼前一杯に映る昴に綱吉の心臓がバクバクと音を鳴らした。最近慣れてきていたがやはり昴は美人だ。そんな人に迫られれば嫌でも鼓動は高鳴る。いくら同じクラスに片想い相手がいる綱吉であっても、慣れないこの状況には言葉を詰まらせるしかなかった。
う、あ、と音にもならない息しか吐けなくなった綱吉に昴は少しだけ距離を取る。しかし2人の間は拳1つほどしかない。
「何かを守る男なんて腐るほど見てきたわ。でもみーんな駄目。どんなに強い男でも、愛は脆弱みたい。」
でも、と昴の瞳が綱吉を絡め取る。
「貴方は違う。なんで?なんで他人を守るの?なんで自分のために力を使わないの?貴方自身は弱いのに。」
「なんで、って…。」
じっとりと絡まる視線に綱吉は目を逸らしそうになる。けれど今それは駄目な気がして。吸い込まれそうになるのに耐えながら、綱吉は昴の言葉を反芻する。
なんで他人のために身を挺する事が出来るのか。確かに綱吉は弱い。喧嘩は出来ないしなんなら不良のパシリにされていた程だ。勉強も駄目で、運動も苦手。何をやっても駄目なダメツナ。それが周囲の評価であり、綱吉本人もそう思っている。でも…、
「…確かに俺は弱いけど、目の前で誰かが傷つくのを黙って見過ごすなんて出来ません。皆に何かあればそれが例えどんな相手だろうと、俺は戦います。」
まぁ喧嘩は嫌いだから本当はあまり戦いたくないけど、とそう締め括った綱吉に昴はポカン、と呆けた。そして次の瞬間には大きな口を開けて笑い始めた。
「ふふっ。あはは!」
見たこともないほど表情が崩れた昴にギョッとする。口元を動かしたり眉を上げたりくらいの表情しか見た事なかった綱吉は、まさかこんなに大笑いするところを見るとは思わず戸惑ってしまう。何か笑えるような事言ったかな…。自分の発言を思い出すも、こんなに笑われるような事を言った覚えはなく、ただただ綱吉は困惑するばかりだ。しかし昴はそんなのお構いなしに笑い続け、目には薄ら涙が滲んでいた。
「リボーン君のおまけだと思ってたけど…。ふっ、貴方結構なサイコパスなのね。」
「サイコパス?!」
「しかも元からなのっぽいのも、ふふっ!あははは!!」
普段の淑女な姿はどこへやら。腹を押さえて大きな笑い声をあげる昴は、あの取っ付きにくく凍てついたオーラは鳴りを潜めている。こんなに笑うんだ、この人。綱吉は若干現実逃避しながら爆笑し続ける昴を見るも笑い声が止むことはない。
ヒィヒィと浅い呼吸を整えながら昴は上体を起こす。まだ顔はニヤケているが、居住まいを正すと少し潤んだ瞳を綱吉へと向けた。
「沢田君。」
「は、はい!」
「貴方最高だわ。こんな面白いの初めて。」
「ど、どうも…?」
「だからファミリーに入るわ。」
「はい…、はい?!」
「光栄でしょ?喜ぶといいわよ。」
見た事もないほど美しい笑顔で、楽し気に声を弾ませた昴はそのまま上機嫌に公園を去っていった。何ひとつとして理解できないまま、綱吉は遠くなる背中を見つめ続ける。
「どうしてこうなった…。」
やっとの事で呟いた言葉に勿論何の反応はなく、綱吉はただただ先程の摩訶不思議なやり取りを脳裏で繰り返すしかなかった。
フラフラと覚束無い足取りで公園のベンチへと座り込んだ綱吉は、そのまま深く項垂れる。
今日も散々だった。フゥ太の頼みで遊びに付き合うことになったのはいいが、人数が多い方がいいとリボーンが山本と獄寺と了平を誘い、イーピンもランボもビアンキも、果てはハルや京子まで巻き込んだ大規模な鬼ごっこを始めた。このメンバーで問題が起きないはずもなく飛び交うボムやポイズンクッキング、10年バズーカで大人になったランボに同じく大人になったイーピンが技を決める。綱吉がどれだけ叫んでも騒動は止まらず、極めつけはたまたま通りかかった雲雀に群れているから、と言われボコボコにされた。
ほんと、疲れた…。
愚痴すら出てこない。ただただ理不尽に晒された身体は休息を求めている。皆と別れ1人になった綱吉は誰もいない公園で思いっきりため息をついたのだった。
「ごきげんよう。」
「うわぁ!」
突然隣から聞こえた声に驚いて叫び声を上げた。完全に気を抜いていたためベンチから転がり落ちた綱吉は強かに臀を打ってしまった。いてて、と擦りながら見上げるとそこには煌めく星の瞳。昴が目を瞬かせながら見下ろしていた。
「昴さん?!」
「元気なのは良い事だけれど、座ってくださる?」
そう言ってベンチに座った昴はトントンと己の隣を叩く。相変わらずだな…。引きつった笑みを浮かべながら綱吉は言われた通りに腰掛けた。この態度にも慣れたものだ。思えば初めて会った時から随分と時間が経ったが、昴の高飛車なこの感じは全く変わることなく、いつしか綱吉達の方が昴に適応していた。了平や山本は昴の発言を笑って流すし、綱吉もツッコミは入れるもまぁそんなものかと受け入れる。唯一獄寺だけが未だに突っかかっているが、初めの頃よりは大分落ち着いた。
それに…、と綱吉は昴を見る。最近よく合う昴の目は前ほど不気味さがなかった。
「今日も楽しそうだったわね。」
「見てたんですか?!」
「ねぇ、今日牛の子を庇ったわよね。なんで?」
牛の、子?なんの事か咄嗟には理解できず言葉を紡げない綱吉。しかしそんなことはお構いなしに昴は1人分空いていた距離にぐっと身を乗り出した。
「牛の子だけじゃない。前の動物園でも、甲冑の子だってそう。占いの子も守ってる。なんで?」
「な、」
「案外矜持を大切にするタイプなの?それとも死に急いでるの?」
「ちょっと待って!近い!近いです!!」
近い!良い匂いする!!
眼前一杯に映る昴に綱吉の心臓がバクバクと音を鳴らした。最近慣れてきていたがやはり昴は美人だ。そんな人に迫られれば嫌でも鼓動は高鳴る。いくら同じクラスに片想い相手がいる綱吉であっても、慣れないこの状況には言葉を詰まらせるしかなかった。
う、あ、と音にもならない息しか吐けなくなった綱吉に昴は少しだけ距離を取る。しかし2人の間は拳1つほどしかない。
「何かを守る男なんて腐るほど見てきたわ。でもみーんな駄目。どんなに強い男でも、愛は脆弱みたい。」
でも、と昴の瞳が綱吉を絡め取る。
「貴方は違う。なんで?なんで他人を守るの?なんで自分のために力を使わないの?貴方自身は弱いのに。」
「なんで、って…。」
じっとりと絡まる視線に綱吉は目を逸らしそうになる。けれど今それは駄目な気がして。吸い込まれそうになるのに耐えながら、綱吉は昴の言葉を反芻する。
なんで他人のために身を挺する事が出来るのか。確かに綱吉は弱い。喧嘩は出来ないしなんなら不良のパシリにされていた程だ。勉強も駄目で、運動も苦手。何をやっても駄目なダメツナ。それが周囲の評価であり、綱吉本人もそう思っている。でも…、
「…確かに俺は弱いけど、目の前で誰かが傷つくのを黙って見過ごすなんて出来ません。皆に何かあればそれが例えどんな相手だろうと、俺は戦います。」
まぁ喧嘩は嫌いだから本当はあまり戦いたくないけど、とそう締め括った綱吉に昴はポカン、と呆けた。そして次の瞬間には大きな口を開けて笑い始めた。
「ふふっ。あはは!」
見たこともないほど表情が崩れた昴にギョッとする。口元を動かしたり眉を上げたりくらいの表情しか見た事なかった綱吉は、まさかこんなに大笑いするところを見るとは思わず戸惑ってしまう。何か笑えるような事言ったかな…。自分の発言を思い出すも、こんなに笑われるような事を言った覚えはなく、ただただ綱吉は困惑するばかりだ。しかし昴はそんなのお構いなしに笑い続け、目には薄ら涙が滲んでいた。
「リボーン君のおまけだと思ってたけど…。ふっ、貴方結構なサイコパスなのね。」
「サイコパス?!」
「しかも元からなのっぽいのも、ふふっ!あははは!!」
普段の淑女な姿はどこへやら。腹を押さえて大きな笑い声をあげる昴は、あの取っ付きにくく凍てついたオーラは鳴りを潜めている。こんなに笑うんだ、この人。綱吉は若干現実逃避しながら爆笑し続ける昴を見るも笑い声が止むことはない。
ヒィヒィと浅い呼吸を整えながら昴は上体を起こす。まだ顔はニヤケているが、居住まいを正すと少し潤んだ瞳を綱吉へと向けた。
「沢田君。」
「は、はい!」
「貴方最高だわ。こんな面白いの初めて。」
「ど、どうも…?」
「だからファミリーに入るわ。」
「はい…、はい?!」
「光栄でしょ?喜ぶといいわよ。」
見た事もないほど美しい笑顔で、楽し気に声を弾ませた昴はそのまま上機嫌に公園を去っていった。何ひとつとして理解できないまま、綱吉は遠くなる背中を見つめ続ける。
「どうしてこうなった…。」
やっとの事で呟いた言葉に勿論何の反応はなく、綱吉はただただ先程の摩訶不思議なやり取りを脳裏で繰り返すしかなかった。
