奔星ノ在リ処
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少女が1人、防波堤を歩く。
キラキラと光る海面を眩しそうに見つめながらシワひとつないスカートをはためかせ、捨石の道を優雅に進んでいく。時刻は平日の昼時。学生服姿の少女は本来なら学校にいる時間だ。しかし周りに誰もいないこの場で少女が注意されることはないし、少女もまた時間を気にしたような素振りもない。ただただ映画のワンシーンのようにお只やかに歩くだけだった。
しばらくして端までたどり着つくと少女は静かに腰を下ろした。ザラザラとした小石が掌に食い込む。小さな痛みを取り除くため両手を打ち払い石を落とし、そのまま顔を上げて海を見つめる。陽の光を反射する海面はまるで星屑のようだった。
「ちゃおッス。」
はた、と少女が瞬きをする。いつの間にいたのだろうか。聞き馴染みのない可愛らしい声に胸を少しときめかせながら少女は隣に視線を落とした。
「ごきげんよう、ヒットマン。」
そこにいたのは少女が先日会った小さな殺し屋、リボーンだった。大きなハットとパリッとしたダークスーツ、赤ん坊にしては洒落た格好をしたリボーンはそのまま少女の隣へと腰掛ける。向かい側から覗くカメレオンの鼻先が忙しなく動く。潮の匂いを感じているのだろう。
「学校はどうした。」
「ちゃんと開校してるわよ?」
「そうじゃねーぞ。」
どこかズレた少女の返答にリボーンは出鼻をくじかれた。これがわざとならやりようはあるが、読心術を使って見ると彼女が本心から言っているのが分かる。おもしれーな。ひっそりと笑うリボーンに、少女も心が踊っていた。と言うのも先日の一件から少女はリボーンが気になっていたのだ。見るからに赤ん坊の容姿、なのに言語が堪能で自身を殺し屋と言う。愉快が服を着て歩いているその存在が堪らなかった。
自身の半分にもならない小さな足にワクワクしながら少女はそれで、と口を開いた。
「ご用件は何かしら。」
「お前、ツナのファミリーにならねーか?」
「つな…?」
パチパチと少女の目が瞬かれる。リボーンの言った言葉がひとつも理解できず首を傾げた。
「ツナはイタリアンマフィア、ボンゴレファミリーの10代目候補だ。オレはそのツナの家庭教師で仲間を集める仕事もしてる。」
そう言ってリボーンは帽子のカメレオンを少女に向ける。ぐにゃぐにゃと形状が変わりその姿は人の顔になった。大口を開け白目を向いた顔は随分と間抜けなものだが、沢田綱吉の顔ではあった。
「ツナはコイツだ。この前会ったろ。」
「生憎、退屈そうなものに興味は湧かないの。」
少女は軽くため息を着く。覚えていない、と言うことは覚える価値のない人物、即ち面白くないつまらない人だったと言うことだ。そんな相手に興味は湧かないし、ましてや記憶を使うこともしない。
そんな少女の心情をリボーンは笑って打ち砕く。
「分かってねーな。」
自信たっぷりなその物言いに少女の片眉が上がる。
「ツナほど規格外もいねーぞ。関わってけばきっとアイツの面白さがよく分かる。」
「私の時間を奪うつもり?」
「後悔はさせねーぞ?」
少女はリボーンを見下ろす。コーヒー豆のような艶のある両目からは何を考えているかは分からない。それが、少女の好奇心を駆り立てる。
少女にとってリボーンの言い分はどうでもいい。マフィアもファミリーも本当か嘘かどうかなど関係ない。ただ楽しければいい。少女の中身が満ち足りて、満足出来ればどんなものでもいいのだ。
生ぬるい風が間を何度か通る。じりじりと皮膚を焼く日光が反射し、リボーンは鍔を少し下げた。
「北大路 昴よ。」
少女の、昴の果実のようにみずみずしい唇が引き上がる。新しい玩具を見つけた子供のように笑うその顔は、加虐の色が差していた。
「いい名前だな。オレはリボーンだ。」
「知っているわ。」
クスクスと笑う昴にリボーンもにやりと口角を上げた。似た者同士の密約は、こうして当の本人を置いて進められていくのだった。
◇
その日の夜、沢田家ではコロッケが出た。綱吉の母である奈々がじゃがいもを潰し手ずから揚げたものだ。サクサクとした黄金色の衣と薄く塩の味が着いた柔らかいじゃがいものギャップに箸が止まらない。美味しい。今日はランボもビアンキもいないので落ち着いて頬張っていた綱吉はそう言えば、と話し始めたリボーンを見た。
「ツナの新しいファミリーを見つけたぞ。」
「なっ!お前また勝手に!」
「つっくんご飯中よー。」
母親の注意で渋々綱吉は浮いた腰を下ろす。しかしリボーンの言葉は聞き捨てならないものだったので、どう言うことだと責めた。
「ファミリーとか…。だからオレはマフィアにならないって!第一他人に迷惑かけるなよ!」
「だって面白そうな奴だったんだもん。」
「もん、じゃないから!っあぁ、もう!」
マイペースなリボーンに綱吉はどっと力が抜ける。いつもこうだ。オレの意見は無視して勝手に話を進めていく。マフィアなんてならないって言ってるのに。しかし1度決めればリボーンが意見を絶対に変えないことは過去何度も経験済みなので綱吉はため息をつくしかなかった。せめて変な人じゃありませんように…。内心そう祈っていた綱吉はふと、脳裏に星空が過ぎる。…いや、いやいやいや。まさかそんなこと、あるわけない。いくらリボーンでも2度会っただけの大して関わりもない女の子をマフィアなんて物騒な事に巻き込まないだろう。
内心誰にともなく弁明していた綱吉は、けれど不安は拭えず恐る恐るリボーンに声をかけた。
「因みに…その人って…。」
ニヤリ、と口角を上げるリボーンは綱吉に答えない。それが尚更不安を加速し嫌な想像が頭を巡る。
「近いうちに会わせてやる。ちゃんとボスらしくしてろよ。」
「ボスらしくって何?!」
嫌な予感がする…。何故か震えが止まらない綱吉はその夜隕石に潰される夢を見たのだが、それが何かに関係あるのかは分からずじまいだった。
キラキラと光る海面を眩しそうに見つめながらシワひとつないスカートをはためかせ、捨石の道を優雅に進んでいく。時刻は平日の昼時。学生服姿の少女は本来なら学校にいる時間だ。しかし周りに誰もいないこの場で少女が注意されることはないし、少女もまた時間を気にしたような素振りもない。ただただ映画のワンシーンのようにお只やかに歩くだけだった。
しばらくして端までたどり着つくと少女は静かに腰を下ろした。ザラザラとした小石が掌に食い込む。小さな痛みを取り除くため両手を打ち払い石を落とし、そのまま顔を上げて海を見つめる。陽の光を反射する海面はまるで星屑のようだった。
「ちゃおッス。」
はた、と少女が瞬きをする。いつの間にいたのだろうか。聞き馴染みのない可愛らしい声に胸を少しときめかせながら少女は隣に視線を落とした。
「ごきげんよう、ヒットマン。」
そこにいたのは少女が先日会った小さな殺し屋、リボーンだった。大きなハットとパリッとしたダークスーツ、赤ん坊にしては洒落た格好をしたリボーンはそのまま少女の隣へと腰掛ける。向かい側から覗くカメレオンの鼻先が忙しなく動く。潮の匂いを感じているのだろう。
「学校はどうした。」
「ちゃんと開校してるわよ?」
「そうじゃねーぞ。」
どこかズレた少女の返答にリボーンは出鼻をくじかれた。これがわざとならやりようはあるが、読心術を使って見ると彼女が本心から言っているのが分かる。おもしれーな。ひっそりと笑うリボーンに、少女も心が踊っていた。と言うのも先日の一件から少女はリボーンが気になっていたのだ。見るからに赤ん坊の容姿、なのに言語が堪能で自身を殺し屋と言う。愉快が服を着て歩いているその存在が堪らなかった。
自身の半分にもならない小さな足にワクワクしながら少女はそれで、と口を開いた。
「ご用件は何かしら。」
「お前、ツナのファミリーにならねーか?」
「つな…?」
パチパチと少女の目が瞬かれる。リボーンの言った言葉がひとつも理解できず首を傾げた。
「ツナはイタリアンマフィア、ボンゴレファミリーの10代目候補だ。オレはそのツナの家庭教師で仲間を集める仕事もしてる。」
そう言ってリボーンは帽子のカメレオンを少女に向ける。ぐにゃぐにゃと形状が変わりその姿は人の顔になった。大口を開け白目を向いた顔は随分と間抜けなものだが、沢田綱吉の顔ではあった。
「ツナはコイツだ。この前会ったろ。」
「生憎、退屈そうなものに興味は湧かないの。」
少女は軽くため息を着く。覚えていない、と言うことは覚える価値のない人物、即ち面白くないつまらない人だったと言うことだ。そんな相手に興味は湧かないし、ましてや記憶を使うこともしない。
そんな少女の心情をリボーンは笑って打ち砕く。
「分かってねーな。」
自信たっぷりなその物言いに少女の片眉が上がる。
「ツナほど規格外もいねーぞ。関わってけばきっとアイツの面白さがよく分かる。」
「私の時間を奪うつもり?」
「後悔はさせねーぞ?」
少女はリボーンを見下ろす。コーヒー豆のような艶のある両目からは何を考えているかは分からない。それが、少女の好奇心を駆り立てる。
少女にとってリボーンの言い分はどうでもいい。マフィアもファミリーも本当か嘘かどうかなど関係ない。ただ楽しければいい。少女の中身が満ち足りて、満足出来ればどんなものでもいいのだ。
生ぬるい風が間を何度か通る。じりじりと皮膚を焼く日光が反射し、リボーンは鍔を少し下げた。
「北大路 昴よ。」
少女の、昴の果実のようにみずみずしい唇が引き上がる。新しい玩具を見つけた子供のように笑うその顔は、加虐の色が差していた。
「いい名前だな。オレはリボーンだ。」
「知っているわ。」
クスクスと笑う昴にリボーンもにやりと口角を上げた。似た者同士の密約は、こうして当の本人を置いて進められていくのだった。
◇
その日の夜、沢田家ではコロッケが出た。綱吉の母である奈々がじゃがいもを潰し手ずから揚げたものだ。サクサクとした黄金色の衣と薄く塩の味が着いた柔らかいじゃがいものギャップに箸が止まらない。美味しい。今日はランボもビアンキもいないので落ち着いて頬張っていた綱吉はそう言えば、と話し始めたリボーンを見た。
「ツナの新しいファミリーを見つけたぞ。」
「なっ!お前また勝手に!」
「つっくんご飯中よー。」
母親の注意で渋々綱吉は浮いた腰を下ろす。しかしリボーンの言葉は聞き捨てならないものだったので、どう言うことだと責めた。
「ファミリーとか…。だからオレはマフィアにならないって!第一他人に迷惑かけるなよ!」
「だって面白そうな奴だったんだもん。」
「もん、じゃないから!っあぁ、もう!」
マイペースなリボーンに綱吉はどっと力が抜ける。いつもこうだ。オレの意見は無視して勝手に話を進めていく。マフィアなんてならないって言ってるのに。しかし1度決めればリボーンが意見を絶対に変えないことは過去何度も経験済みなので綱吉はため息をつくしかなかった。せめて変な人じゃありませんように…。内心そう祈っていた綱吉はふと、脳裏に星空が過ぎる。…いや、いやいやいや。まさかそんなこと、あるわけない。いくらリボーンでも2度会っただけの大して関わりもない女の子をマフィアなんて物騒な事に巻き込まないだろう。
内心誰にともなく弁明していた綱吉は、けれど不安は拭えず恐る恐るリボーンに声をかけた。
「因みに…その人って…。」
ニヤリ、と口角を上げるリボーンは綱吉に答えない。それが尚更不安を加速し嫌な想像が頭を巡る。
「近いうちに会わせてやる。ちゃんとボスらしくしてろよ。」
「ボスらしくって何?!」
嫌な予感がする…。何故か震えが止まらない綱吉はその夜隕石に潰される夢を見たのだが、それが何かに関係あるのかは分からずじまいだった。
