奔星ノ在リ処
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「それで?ご用はそれだけ?」
何事もなかったかのように笑顔を引いた昴に綱吉は慌てたように口を動かす。
「あっ。は、はい。」
「なら早めの帰宅をご提案するわ。ここに男性がいるのは好ましくないから。」
そう言って目線を自身の後ろに移した昴に釣られて校舎の方を見ると、そこではスーツを着た女と紺の制服を着た数人の男が訝しくこちらを見ていた。あれって…。よくよく目を凝らす綱吉は、男達の制服がデパートなどで見た警備員と同じだと分かった。
「随分厳重だな。」
「部外者と意思疎通を図っているもの。家畜をみすみす逃がす飼育員はいないわ。」
「家畜?」
言葉の意味が分からず思わず反芻する綱吉。しかしそれに答えることなく昴は綱吉達が来た森の奥を指した。
「さ、ご理解頂けたなら来た道を戻ってちょうだい。」
門の格子越し、だけではない壁を感じ綱吉は少しだけ狼狽えた。なんだよ、勝手に距離を縮めてきたかと思えばこの態度。ほんと訳分かんねー。
若干のつまらなさを感じ内心口を尖らせた綱吉を、目敏く見抜いたリボーンは地面を蹴ると勢いよく飛び上がった。
「いってー!!」
「ボスのくせに女々しい顔すんな。」
「女々しい顔って何?!」
突然の暴力に綱吉の絶叫が木霊する。けれどリボーンがそんな事で止まるわけもなく、さっさと歩けと言わんばかりに2発目の蹴りを同じく綱吉の尻に叩き込んだ。
痛い痛いと大騒ぎしながら挨拶もそこそこに、そそくさと森の向こうに帰っていく綱吉。その小さなる背中に昴が手を振っていると、リボーンが昴の名前を呼んだ。見下ろした先のまろい頬は帽子のつばで陰が差していた。
「1つ頼みがある。」
リボーンの言葉に昴の口角が大きく歪んだ。
「面白いことなら、是非。」
◇
あの後、並盛に戻った綱吉にリボーンがこの一連の騒動は綱吉への宣戦布告だと言った。驚愕する綱吉にリボーンはフゥ太から譲り受けていた『並盛喧嘩ランキング』なる紙を見せる。確かに襲われ時に抜かれた歯の数とランキングの順位が一致していた。
「骸を倒すしかねーな。」
リボーンの言葉に綱吉は反対の声を上げる。今回の事件の首謀者、六道骸とその仲間達に対して綱吉とて憤りを感じていた。けれど雲雀すら帰ってこない現状にしり込みしてしまう。ダメツナの自分には何も出来ない。脳裏に過ぎる見知った人達の傷ついた顔を見ないふりした。
しかし、リボーンがそんな弱音を許すはずもなく、また山本やビアンキ、重症の獄寺までも同行を申し出て、綱吉はやっと腹を括る。死ぬ気弾は残り一発。制限のある中で自分がどれだけ出来るかは分からない。けれど卑劣な相手からフゥ太を救い出すため、綱吉達は敵のアジトである黒曜ランドへと乗り込むのであった。
1番初めの敵である城島犬は山本が、2番目のM・Mはビアンキが相手をし何とか勝利を収め、3番目に対峙したバーズと言う男も、不利な状況に追い込まれたも打破できた。
リボーンの指示とは言えピンチの時に助けてくれる仲間がいることに言葉に綱吉はじんわりと心が温かくなった。
「くそっ!よくもっ!…でも、まぁいいでしょう。人質はこれだけではありませんよ!」
自身の策が破られ青ざめさせていたバーズは、しかし次の瞬間声高らかに言い、パッとモニターを切り替えた。そこに映し出されたのは見知った我が家で。丁度玄関から出て道路に向かう買い物袋を下げた母、菜々の姿と近くの塀に潜む邪悪な影が上の方から撮られていた。
「母さん!」
「ヒヒヒッ。出来ればこの男は使いたくなかったですが…まぁ仕方ない。この男はね、先程の双子より残虐で制御の効かないモンスターなんですよ。合図を出したら最後、肉片すら残さずすり潰してしまうでしょうねぇ。」
綱吉に殴られたせいで流れる鼻血を止めながら、バーズは下世話な笑みを浮かべる。
モニターの中では黒曜中学の制服を来た、まるでファンタジーの世界に出てくるオークのような見た目の男がのっそりと姿を見せる。今か今かとその時を待つかのように、5本の指を曲げ伸ばしする様は獲物をいたぶる準備運動に見えた。
「さぁ!母親を殺したくないのならナイフを刺せ!はやく!!」
唾を飛ばし曲がった鼻から血を撒き散らすバーズは、もう常軌を逸していた。骸からのミッションなど関係ない。自分のプライドを折り、傷をつけた相手を痛めつけたい。報復してやりたい。青ざめる綱吉の顔を反射する眼鏡の向こうの瞳は、そう雄弁に語っていた。
母さんが危ない。はやく何とかしなきゃ。
冷や汗が尋常でないくらい吹き出し、ナイフを握る手が滑りそうになった。
「さぁさぁ!はやくしてくださいよ!」
「このっ!クソ野郎が!!」
獄寺達の怒号がどこか遠くに聞こえる。息が詰まりそうな程の緊迫感に背を押されるように、綱吉は目を開く。陽の光を反射した刃のギラつき以外何も見えなくなっていた。
『ぎゃぁっ!』
突如、潰れたような男の悲鳴と共に鈍い音が響いた。ハッとしてその場の全員がモニターを見つめる。しかし画面にはただ晴れやかな青空だけが写っていた。
「今度はなんだ!」
バーズのイラついたような、焦った声が事態の予想外さを物語る。直ぐさま画面を切り替えるがどれもこれも現状を映すものがない。
やっとの思いで繋がった画面には倒れ伏した巨体。
それと、キラキラ輝く星屑。
『ごきげんよう。』
濡羽色の髪先を風に靡かせ現れたのは人形と見紛うほど美少女、昴であった。
「昴さん?!」
「なんでアイツが?!」
驚愕する綱吉達。その少し下でリボーンがニヤリと笑う。まさか、これも計算して…?したり顔のリボーンを見つめながら、綱吉は無意識に生唾を飲み込んだ。
「くそっ!なんだこれは!どうなってるんだ!!」
モニターに映る菜々は、音に多少驚きはしたものの何事もなくその場を去って行った。
母さん、少しは気にしろよ…。自身の母の能天気さに少しばかり呆れながら、それでも無事であることに安堵したのもつかの間、痙攣していた巨体が突如として起き上がった。
『あぁぁぁああ!!!』
『あら。』
「昴さん逃げてっ!」
倒してなかったんだ!恐ろし形相で昴に襲いかかる大男に綱吉が叫ぶ。心臓が異常にはやく打ち付けた。
危ない!
山本の声に周りも息を飲み込んだ。
けれど、
『あんまり面白くないわね…。』
ドゴォ。
高らかと上げていた足を下ろしスカートを整える昴は心底つまらなさそうに息を吐く。長いスカートを翻し半回転で威力の乗った蹴りが、大男の顔面に叩き付けられたのだった。
『やっぱり私、沢田君でいいわ。はやく帰ってきてくださる?』
そう言ってモニター越しにこちらを射抜く昴は美しく、背筋を凍らせる恐ろしさを感じた。
オレ、これが終わっても無事なのかな…。
骸を倒してもなんだか安心出来ないかもしれない。そう悟って綱吉はひっそりと頬を引き攣らせた。
何事もなかったかのように笑顔を引いた昴に綱吉は慌てたように口を動かす。
「あっ。は、はい。」
「なら早めの帰宅をご提案するわ。ここに男性がいるのは好ましくないから。」
そう言って目線を自身の後ろに移した昴に釣られて校舎の方を見ると、そこではスーツを着た女と紺の制服を着た数人の男が訝しくこちらを見ていた。あれって…。よくよく目を凝らす綱吉は、男達の制服がデパートなどで見た警備員と同じだと分かった。
「随分厳重だな。」
「部外者と意思疎通を図っているもの。家畜をみすみす逃がす飼育員はいないわ。」
「家畜?」
言葉の意味が分からず思わず反芻する綱吉。しかしそれに答えることなく昴は綱吉達が来た森の奥を指した。
「さ、ご理解頂けたなら来た道を戻ってちょうだい。」
門の格子越し、だけではない壁を感じ綱吉は少しだけ狼狽えた。なんだよ、勝手に距離を縮めてきたかと思えばこの態度。ほんと訳分かんねー。
若干のつまらなさを感じ内心口を尖らせた綱吉を、目敏く見抜いたリボーンは地面を蹴ると勢いよく飛び上がった。
「いってー!!」
「ボスのくせに女々しい顔すんな。」
「女々しい顔って何?!」
突然の暴力に綱吉の絶叫が木霊する。けれどリボーンがそんな事で止まるわけもなく、さっさと歩けと言わんばかりに2発目の蹴りを同じく綱吉の尻に叩き込んだ。
痛い痛いと大騒ぎしながら挨拶もそこそこに、そそくさと森の向こうに帰っていく綱吉。その小さなる背中に昴が手を振っていると、リボーンが昴の名前を呼んだ。見下ろした先のまろい頬は帽子のつばで陰が差していた。
「1つ頼みがある。」
リボーンの言葉に昴の口角が大きく歪んだ。
「面白いことなら、是非。」
◇
あの後、並盛に戻った綱吉にリボーンがこの一連の騒動は綱吉への宣戦布告だと言った。驚愕する綱吉にリボーンはフゥ太から譲り受けていた『並盛喧嘩ランキング』なる紙を見せる。確かに襲われ時に抜かれた歯の数とランキングの順位が一致していた。
「骸を倒すしかねーな。」
リボーンの言葉に綱吉は反対の声を上げる。今回の事件の首謀者、六道骸とその仲間達に対して綱吉とて憤りを感じていた。けれど雲雀すら帰ってこない現状にしり込みしてしまう。ダメツナの自分には何も出来ない。脳裏に過ぎる見知った人達の傷ついた顔を見ないふりした。
しかし、リボーンがそんな弱音を許すはずもなく、また山本やビアンキ、重症の獄寺までも同行を申し出て、綱吉はやっと腹を括る。死ぬ気弾は残り一発。制限のある中で自分がどれだけ出来るかは分からない。けれど卑劣な相手からフゥ太を救い出すため、綱吉達は敵のアジトである黒曜ランドへと乗り込むのであった。
1番初めの敵である城島犬は山本が、2番目のM・Mはビアンキが相手をし何とか勝利を収め、3番目に対峙したバーズと言う男も、不利な状況に追い込まれたも打破できた。
リボーンの指示とは言えピンチの時に助けてくれる仲間がいることに言葉に綱吉はじんわりと心が温かくなった。
「くそっ!よくもっ!…でも、まぁいいでしょう。人質はこれだけではありませんよ!」
自身の策が破られ青ざめさせていたバーズは、しかし次の瞬間声高らかに言い、パッとモニターを切り替えた。そこに映し出されたのは見知った我が家で。丁度玄関から出て道路に向かう買い物袋を下げた母、菜々の姿と近くの塀に潜む邪悪な影が上の方から撮られていた。
「母さん!」
「ヒヒヒッ。出来ればこの男は使いたくなかったですが…まぁ仕方ない。この男はね、先程の双子より残虐で制御の効かないモンスターなんですよ。合図を出したら最後、肉片すら残さずすり潰してしまうでしょうねぇ。」
綱吉に殴られたせいで流れる鼻血を止めながら、バーズは下世話な笑みを浮かべる。
モニターの中では黒曜中学の制服を来た、まるでファンタジーの世界に出てくるオークのような見た目の男がのっそりと姿を見せる。今か今かとその時を待つかのように、5本の指を曲げ伸ばしする様は獲物をいたぶる準備運動に見えた。
「さぁ!母親を殺したくないのならナイフを刺せ!はやく!!」
唾を飛ばし曲がった鼻から血を撒き散らすバーズは、もう常軌を逸していた。骸からのミッションなど関係ない。自分のプライドを折り、傷をつけた相手を痛めつけたい。報復してやりたい。青ざめる綱吉の顔を反射する眼鏡の向こうの瞳は、そう雄弁に語っていた。
母さんが危ない。はやく何とかしなきゃ。
冷や汗が尋常でないくらい吹き出し、ナイフを握る手が滑りそうになった。
「さぁさぁ!はやくしてくださいよ!」
「このっ!クソ野郎が!!」
獄寺達の怒号がどこか遠くに聞こえる。息が詰まりそうな程の緊迫感に背を押されるように、綱吉は目を開く。陽の光を反射した刃のギラつき以外何も見えなくなっていた。
『ぎゃぁっ!』
突如、潰れたような男の悲鳴と共に鈍い音が響いた。ハッとしてその場の全員がモニターを見つめる。しかし画面にはただ晴れやかな青空だけが写っていた。
「今度はなんだ!」
バーズのイラついたような、焦った声が事態の予想外さを物語る。直ぐさま画面を切り替えるがどれもこれも現状を映すものがない。
やっとの思いで繋がった画面には倒れ伏した巨体。
それと、キラキラ輝く星屑。
『ごきげんよう。』
濡羽色の髪先を風に靡かせ現れたのは人形と見紛うほど美少女、昴であった。
「昴さん?!」
「なんでアイツが?!」
驚愕する綱吉達。その少し下でリボーンがニヤリと笑う。まさか、これも計算して…?したり顔のリボーンを見つめながら、綱吉は無意識に生唾を飲み込んだ。
「くそっ!なんだこれは!どうなってるんだ!!」
モニターに映る菜々は、音に多少驚きはしたものの何事もなくその場を去って行った。
母さん、少しは気にしろよ…。自身の母の能天気さに少しばかり呆れながら、それでも無事であることに安堵したのもつかの間、痙攣していた巨体が突如として起き上がった。
『あぁぁぁああ!!!』
『あら。』
「昴さん逃げてっ!」
倒してなかったんだ!恐ろし形相で昴に襲いかかる大男に綱吉が叫ぶ。心臓が異常にはやく打ち付けた。
危ない!
山本の声に周りも息を飲み込んだ。
けれど、
『あんまり面白くないわね…。』
ドゴォ。
高らかと上げていた足を下ろしスカートを整える昴は心底つまらなさそうに息を吐く。長いスカートを翻し半回転で威力の乗った蹴りが、大男の顔面に叩き付けられたのだった。
『やっぱり私、沢田君でいいわ。はやく帰ってきてくださる?』
そう言ってモニター越しにこちらを射抜く昴は美しく、背筋を凍らせる恐ろしさを感じた。
オレ、これが終わっても無事なのかな…。
骸を倒してもなんだか安心出来ないかもしれない。そう悟って綱吉はひっそりと頬を引き攣らせた。
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